プロローグ 韓国サイド
20XX年 韓国 ソウル 大統領府 青瓦台 某日
韓国の政治中枢のこの場所である会議が開かれていた。
この内容を知っているのは大統領と軍部を含めて極僅かの者達であった。その内容が今回の会議で全閣僚に対して公開されていた。
閣僚1「こんなことが……」
閣僚2「いつの間に……」
資料の内容を見た閣僚達は皆驚きの表情を浮かべていた。
資料の表紙にはハングル文字でこう記されていた。
《対馬奪還作戦概要》
韓国が日本の対馬に対する軍事進攻作戦の内容がしるされていた。
韓国国内では対馬は古来から韓国の領土であり日本に不法占拠されているとする世論が少なくない。
その不法占拠されている島を奪還し、日本に対して謝罪と多額の賠償金を迫る。
大まかな話の内容はそう書かれていた。
閣僚1「大統領、本当このような事を……なにかの冗談ではないのですか?」
大統領「当然だ。既に決定されたことであり、冗談などではない。」
韓国の国家元首たる大統領はさも当然のように答えた。
彼は極度の反日家として有名であり、事実彼が大統領に就任してからは前任者以上に日本に対して強硬な姿勢を取ってきた。しかし、そういった政策は徐々に綻びが生じ始めていった。時間をかけて日本に譲歩を迫る方法から目に見える形での成果を韓国国民は求めるようになったのである。
その答えが今回の対馬奪還作戦であった。作戦名に『侵攻』ではなく『奪還』と言う文字を入れているのも今回の作戦が韓国側に正統性があると内外にアピールしたいと言う大統領の意図が込められていた。
閣僚1「しかしながら閣下、かの国の軍事力は陸軍はともかく我が国よりも強力です。正面から戦えば多大な被害が予想されるかと愚考いたしますが……」
?「その点につきましては、ご心配には及びません。」
今回の会議の軍事方面進行担当者は自信に満ちた声で答えた。
軍事「この作戦は資料にも書かれていますが初戦において対馬を奇襲し、電撃的に奪還し、反撃の隙を与えません。日本が事態を把握する前に全島の防備を固めます。これは夜間に全てを行い、完了する予定となっています。」
担当者の説明に、少し都合が良すぎるのではないかと思わないでもなかったが現代の戦闘はスピーディーであるゆえ閣僚はそれ以上の疑問はもたなかった。
担当者は説明を続ける。
軍事「まず、我が第7機動艦隊の艦載機が対馬の主要な軍事施設及び電波塔を破壊します。その直後に空挺部隊と独島を旗艦とする揚陸艦部隊が敵軍事施設と空港と港を確保します。港及び空港の確保が完了しだい、待機していた輸送船舶及び輸送機により対艦、対空ミサイル他の重装備を可及的速やかに輸送し、日本の再侵略に備えます。」
大統領「その後に我が国が対馬の領有権を国際社会へ宣言し、日本に対して謝罪と賠償金を要求する。もし日本側がこれを拒否すれば九州方面への攻撃をちらつかせ、ノコノコと出てきた日本軍を叩く、と言う訳だ。」
軍事担当から説明を繋げた大統領は真底楽しそうな顔を浮かべていた。
理由があった。
現在韓国大統領の任期は一期五年のみとなっているが、現大統領はこの法律を改正すべく策を練っていた。
そしてそれを後押しする材料として今回の対馬進攻(奪還)作戦を利用しようと考えていた。
憎き日本から長年奪われていた領土を取り戻し、日本に懲罰をくわえる。そんな英雄像を演出することが出来れば大統領の任期の延期も容易くなる。
そんな計算が彼の内にあった。
結局の所、この軍事作戦には現大統領の権力欲が背景として存在していた。
そんな隠れた意図に気づくことなく閣僚が質問した。
閣僚3「米国の方へはなんと説明しますか?日本への軍事作戦をあの国が許すとは思えませんが……」
米国は日本と韓国、両国とも同意関係にある。米国からすれば大陸への足掛かりである韓国とその後方兵站基地となる日本が矛を交えるなど断固として認めることは出来ない事態であった。
軍事「その点に着きましても問題はありません。」
担当担当がまたしても自信たっぷりに答えた。
軍事「米国へは既に今回の兵力移動は全て演習のためと通達しており、在韓米軍司令官も承認しています。また、対馬を奪還した後の対応ですが、我が国防部の予測としては米国はあまり積極的な対応をとってくることはないと思っております。」
閣僚3「どういうことかね?」
閣僚の一人が疑問を投げ掛ける。
軍事「米国は近年、在韓米軍を縮小し、その土地を我が国へ返却しています。これは我が軍の能力が向上したことにより自分達なしでも作戦遂行能力があると判断してのものだと思われます。また、表だって我が国を非難した場合、我が国の国内世論は親中へと向かう恐れがあります。このため米国は積極的な実力行使には出ず、双方の速やかな終結を容貌する程度に留まる可能性が大です。」
軍事担当の予測は一方では間違っておりもう一方では当たっていた。
2010年代後半から在韓米軍が規模を縮小していたのは財政な余裕が失くなって来たからであり、それ以上でもそれ以下でもなかったからである。
一方で米国は大陸への足掛かりと言う価値を韓国に対して有しており、対馬進攻の制裁が親中国の世論を形作るきっかけとなることを恐れるだろうとの予測は当たっていた。
大統領「素晴らしい。諸君!今こそ生意気な島国の劣等人種共に我が国の正義を知らしめる時なのだ!奴等は700年もの昔から回りの国を蹂躙し侵略してきた。他国の血を浴びることを楽しんでやまない野蛮人なのだ!その野蛮人から我が国の領土を奪った報いを奴等に支払わせてやる時なのだ!!」
大統領がここぞとばかりに声を張り上げる。その熱に殆どの閣僚は飲み込まれ賛同の拍手を送る。
その一方でこの熱狂に冷ややかな目をしたものも少数ながら存在した。
?(……はたして日本が本当にこの要求を呑むだろうか……)
彼の心の内の不安を他所に対馬進攻作戦の歯車は音を立てて回り始めたのであった……
続く
政治のドロドロ感を出したいけどなかなか上手くいかない…