「いい天気だンなー」
とある学校の休み時間。
今日は天気がいい。こんな日はやはりツーリングに限るーーーと、衝動に駆られた青年は早々にコンビニ弁当をかき込み教員達の目を盗み校舎を抜け出す。
数十分後。
お気に入りの楽曲を口遊みながら、我が愛馬であるドラッグスターを風の向くまま気の向くままに転がしていた。俺の名前は秋風翔。しがない普通の専門学生。
……何、学校怠けてツーリングなんて普通の専門学生には見えない?気の所為である。
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「随分遠くまできたな」
気付けばそこは見知らぬ山道。既に他県の標識が出ている。
この山下りたら迂回して戻るか。そうだ帰りに知らないラーメン屋でもあったら寄ってみようーーーなどと考えながらカーブを曲がり……
「えっ?」
〝大抵はヒヤリとする程度で終わるが、時には大きな事故に巻き込まれることもある〟とは言ったものである。
「…う、うぅ。」
在り来たりな展開(?)ではあるが、どうやらカーブを曲がりきれなかった対向車線のトラックに正面からぶつけられたようだ。誠に遺憾である。
「……。」
遠退く意識、歪む視界、血液、その中で僅かに見えるモノ。
「oh…」
トラックの下敷きになる様な形で巻き込まれた我が愛馬…名前もまだ付けてやってないというのに。
志半ば19年の短い人生であったーーー
◇◆◇◆◇
どれ位時間が経ったか判らない。だが少しずつ取り戻してゆく意識の中、俺は夢を見ていた。何もない薄暗い空間、そこに居るのは俺とーーーあともう一人。姿は判らないが確かにもう一人存在する。
『僕が……を守……だっ…君は……』
『あり……う。俺……身…ね』
俺は姿が見えないもう一人と話をしている。しかしその会話はchaffで電波障害を起こしている無線機の様にノイズが激しく正確に聞き取れない。
『…の……感情…も…いっぱ…僕…けじゃ』
『…ういいんだ…本当…あり…とう…』
「……なさい」
(ん?)
「起きなさい」
二人の声に混じり、女性の声がする。現実味のある声。
「起きなさい」
恐らくこの声は現実のものだろう。しかし身体が気怠く起きる気になれない。もう少し寝ていたい
「起きて!うぅ〜お願いですから起きてください〜」
泣き出す声。俺の所為なのか?取り敢えず起きなければーーー
全身に力を込め辛うじて目を開く。視界に映るのは一人の女性。
「起きたよだから泣かないで」
「うぅ〜…はっ!!な、泣いてなどありません!!」
いやいや。思いっきり泣いてるし。……ってあれ?俺は確かトラックに跳ねられて…ん?んん??
「なぁお姉さん、此処は一体どこだい?」
「コホン。此処は冥界です。」
…は?冥界?冥界ってあの、三途の川の向こう側のこと?
「…俺は死んだのか?」
「ええ死にました。そして今から貴方を裁かせていただきます。」
一体全体どうなってるんだ…とここで一つの仮定が浮かぶ。俺は死んだ、冥界、裁く…
「…ひょっとして君、閻魔さま…とか?」
「その通り。私は四季映姫、ヤマザナドゥです。」
一瞬夢かと思った。…あぁいや、死後の世界云々ではなくだな、
「お、おぅ……」
「…な、なんですそのもの言いたげな目は‼︎」
自分の中に存在するイメージが崩壊し始めていた。ヤマザナドゥ、簡単に言うと閻魔大王…女性?
「っはぁ〜〜。」
「なんでため息をつくのですか!」
いや、だってさぁ
「閻魔だよ?閻魔大王!!なんで女性なのさ!!」
「閻魔が女性ではいけませんか!!偏見です!!」
偏見?常識である。閻魔大王は閻魔大王であるから閻魔大王であって、閻魔大王でない閻魔大王なんて閻魔大王ではないのだ!!
「君閻魔じゃないでしょ!俺のことからかってるんでしょ!そうでしょ!」
「か、からかってなんかいません!!私は閻魔です!!」
ふぅ。と一呼吸置き。
「そんなわけない…閻魔さまが!!」
「えっ、ちょ、なに!?」
思いの丈を言の葉に乗せ吐き出す。
「閻魔さまが、女性なわけなあぁぁぃぃいい!!!!!」
「そそそそそんな大きな声を出さないでください!まるで私が貴方を虐めてるみたいではないですか!!小町に見られでもしたら…」
「映姫さまー、有給くださー……なにやってんすか?」
一人の女性が部屋に入ってきた。その正体は手に持つ大鎌から容易に想像できる。
死神ーーー。
「こっ、小町‼︎」
「やい小町!!」
「!?は、はい!!」
審議を確かめなければならない。
「俺は秋風翔。死んだらしい。いや、今は生きてるとか死んでるとかどうだっていい!!」
「あ、あぁ、よろしく翔。それでどうしたってんだいそんな大きな声を上げて…もしかして映姫さまに虐められて……」
「虐めてなどいません!!」
この小町と呼ばれた女性、俺がこの閻魔さま(仮)に虐めを受けていると思ってるらしい。
「よろしく小町。この映姫って人、閻魔さまなのか!?女性で!!女性で閻魔大王はアリなのか!?」
…はぁ。とため息を吐く閻魔さま(仮)とぷっと思わず吹き出す小町。
「小町!!なにがおかしいのです!?」
「すいませんwついwwぷっ!!」
で、結局のところーーー
「映姫さまは正真正銘閻魔さまだよー初見はみんな困惑するけど、あたしが保証するさー」
「そう…なのか?…嘘じゃないんですね?」
「う、嘘なんかついてどうなるというのですか!!」
しつこく疑われ怒鳴り散らす閻魔さま(仮)
「本当…なんですね?…貴女が…閻魔大王さまなんですね?」
「…やれやれ」
どうやら本当らしい。…どう見ても20そこそこの女性である。閻魔大王なんて大役をこなせるようには見えない…てか、映姫さまは酷くご立腹のようである。致し方ない…ここは素直に謝ろう。
「…度重なるご無礼をどうかお許しください」
「…わかればいいのです。まったく」
さーせん
映姫「それでは、只今より秋風翔さんの裁判を執り行います。」
裁判だって。本当に閻魔さまみたい←
「…お願いします。」
「それでは始めます。秋風翔さん、1994年11月23日生まれ戌年射手座享年19歳と11ヶ月……etc」
◇◆◇◆◇
「ふぅーん。」
「おぉ、八雲の旦那じゃないか。どうしたんだい?こんなところに来るなんて」
裁判が始まって早1時間。有給のお願いをしにきてうっかり忘れていた死神の元に現れたのはスキマを操る大妖怪。八雲紫である。
「ちょっと…ね。」
「映姫さまに用かい?生憎ちょうど裁判の真っ只中でねぇー」
お気になさらず。と、扇子を扇ぎ妖艶な笑みを浮かべるーーー何を企んでいるのやら。
それにしても…
「映姫さまの裁判はいつも長いなぁ…」
上司の愚痴を零す小町である。映華さまなら数分で終わるのに…
◇◆◇◆◇
裁判が始まって4時間。ようやく終わりがみえてきた。
「……と言う感じですね。未成年での喫煙は如何なものかとは思いますが…まぁそのことは多めにみてあげます。」
「いいんですか?そんな贔屓をして。」
映姫さまも映姫さまだけど、あの人間もそうとう…アレだよなぁ…真面目に叱られていて…あー退屈だぁ。っと呟く小町。
「贔屓ではありません。これは同情です。」
「……。」
閻魔さまが俺に同情…ね。まぁ心当たりがない…訳でもない。
「私は能力持ちです。」
「それは察しがつく。閻魔、審判、ジャッジ。おそらく貴女が持つ能力は真偽を判定する能力ですね?」
こう見えて俺は現実を素直に受け入れるタイプの人間だ。今の状況は〝夢〟の一文字で方をつけるのは些か早計である。
このリアリティは紛れも無く現実。
即ち、これは夢オチなどというお粗末なものではないと断言できる。現実に閻魔や死神が存在するのなら人間では到底理解しようのない〝力〟を持っているのは、至極当然のことだ。
「人間にしては察しがいいですね…」
「まあね。よくそういう系の世界に独りでのめり込んでいた時期がありましたから。」
まぁ俗に言う黒歴史というやつである。
「で、それだけで俺に同情してくれたんだ映姫さまは!なんて心の優しい女性なんだ!」
うるうる
「…能力。私にはもう一つの能力があります。」
「「もう一つの能力?」」
俺と小町の声が被る。っておい、あんたは上司の力を知らんかったんかい。
「同調する程度の能力。」
「同調…?」
白黒付ける程度の能力ーーーこれは主観ではなく、物事を客観的に捉えて判決を出す能力だろう。ということは同調する程度の能力は…
「自分自身の捉え方で判決を出す能力…?ってことですかい?映姫さま。」
「その通りです小町。」
一個人の感情を優先した判決…ってことね。
嗚呼…だからーーー
「ふぇっ……っ……ぐずん…」
「え、映姫さま!?」
泣いているんだ。
「え、映姫さま!?」
「こんな…こんなことって…ぐずんっ…あんまりです……」
「 ……。」
頭を垂らす俺に小町は言及する。
「なぁ、お前さん一体どんな人生を送ってきたんだい?」
「………。」
正直、話したくはなかった。
「映姫さまが大泣きするとこなんてみたことないぞ!?」
「ま、まぁまぁ…。」
まるで底のない穴を永遠と落ちていくような不安。
「そんなに大変な事があったのかい?」
「……ま、まあな……でも、そ、それなり、それなりには楽しい人生だったよ………」
その言葉とは裏腹に、自然と涙が滲み出てくる感覚……
嗚呼、そうかーーーーやっぱりーーーー。
辛かったんだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
小猫side
私は塔城小猫。リアス部長…リアス・グレモリーのルーク。だった。でも眷属の中では一番弱い。だから力をつけるためにみんなのもとを離れ一人修行の旅をしている。
「もう2年ですね。イッセー先輩…みんな元気にしてるかな」
旅を始めて早2年。前よりは数段力がついた自覚もある。
「でも、まだまだです。」
自分に喝を入れ次の目的地に向かう最中。
「なに!?」
猛スピードで走るトラックとすれ違った。そしてーーー
「!?」
この感覚…人間ではない。しかも…かなり強い。
急いでトラックを追いかける。が、いかんせんスピードが速すぎる。200キロはゆうに出ている。さすがの私も追いつけず途中で諦め…
「今度はなんですか!?」
恐らくは今のトラック。ここから数キロ戻ったとこのカーブの辺りからだ。
「…行ってみよう。」
もしかしたらそこには私よりも強い相手がいるかもしれない。それにこのどす黒い力のオーラは…
・
・
・
「…なにこれ」
眼前に広がるのは大破し炎上するトラックと巻き込まれたバイク。そしてーーー
「!!」
身体が真っ二つに分かれたバイクの持ち主であろう青年が倒れていた。
そして先ほどまでの〝邪気〟がトラックの運転手ごと跡形もなく消えている。
「しっかりしてください!なにがあったんですか?」
「 」
青年に声をかけるがーーー
息をしていない。恐らく即死。
「酷い…ですね」
さすがに同情が隠せない。
「私に…助けられるでしょうか」
ふと先輩の言葉が脳裏に浮かぶ。
『諦めたら何もかも全てを終わっちまうんだよ!!』
「…終わらせない。」
私は転生の身ではあるけど位は上級悪魔。今はただのハグレ悪魔だけど。でももしかしたら…青年の切断された部分どうしを合わせ…
「諦めちゃダメです。…その命、私、塔城小猫のため、使いなさい。」
少しの迷いはあったけど…いや、迷ってる暇はない。最後まで諦めません。
「我、塔城眷属の……ふぅ。…塔城眷属のキングなり。汝を我が僕とし迎えん。青年に見合うイーヴィル・ピースを代償とし、彼を転生悪魔とし、再び生を授けたまえ。」
転生陣を発動し契約を唱える。
「うそ…」
転生陣が導いたピースは…
「…キング以外の駒全部…」
あり得ない。ただの人間のはずなのに全てのピースを消費するなんて…聞いた事がない。
リアス部長がイッセー先輩を転生した時でもポーン8つだった…この人はイッセー先輩以上の力を持っている…?
いや、力なんて今は関係ない。
ーー助けなきゃーー
「見殺しなんてできません。いいでしょう。ポーン8、ルーク2、ナイト2、ビショップ2、クィーン1を消費します。」
その瞬間、辺りが光に包まれ私は気を失った。その中で、青年の身体が一つに繋がる始終が見えたような気がしたーーーーー
第〇一話・完