涙が止まらない。心の奥底にしまっておいた…どうしても捨てられなかった思い出たち。
『へへへ〜ずーっと一緒だよ翔♪』
『当たり前だばーか』
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『しょーちゃんの作るお菓子はいつも美味しいなぁー♪』
『そうか?へへ、ありがと…!』
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『いぬーいぬー!』
『そんなに犬っぽいか?俺(笑)』
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いつか、あんなこともあったなーって笑いながら思い出せると思っていた……
でも、ふとした拍子に思い出し、胸が引き裂けそうに疼く。
楽しいことより辛いことのほうが圧倒的に多かった人生。
でも
みんなこういう経験を積み重ねて成長していくものだと思っていた。
しかし目の前にいる閻魔は
俺のためにこんなにも涙を流しているーーー
違った。
「俺」だけだったんだーーー
もう…終わりにしよう
「終わりにしよう」
「「…え?」」
ふと零れた言葉に、2人の反応が重なる。
「……え?あ、いや、なんでもないです…さあ、地獄でもなんでも連れて行ってくれ。」
「翔さん…貴方は黒です。」
白黒つける能力。有罪無罪でいう黒は…つまり有罪判決。
「わかってますよそんなこたぁ」
「……判決を出します。」
もうどうにでもなれ。血の池にでも沈めてくれ。針山にでも連れて行ってくれーーー
映姫「貴方は……やり直すことができるなら…やり直したいですか?」
「……。」
もうあんな思いはしたくない
「いいんだ…もう。」
あんな辛く、あんな悲しい思いは…あんな…あんな!!
しかし閻魔さまが出した判決はーーー
「秋風翔。貴方を閻魔としての権限を持って輪廻の輪から追放いたします。」
「え、映姫さま!?」
輪廻追放。生と死の理から外れるということ
「あなたには少し、療養の時間が必要なようです。輪廻追放はそのための療養期間とでも思ってください。」
「…映姫…さん……。」
閻魔さまの寛大な措置に、思わず張り詰めていた糸が切れた
「…うっ…ううっ…。」
「泣きなさい。泣いて忘れろとは言いません。しかし気が済むまでは…」
さっ
「!」
「私の胸を貸してあげますから」
ぎゅっ
「……………映…………姫……さん。」
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俺は泣いた。冥界全土に聞こえてしまうのではないかと思うほどに声をあげ、
小さくも暖かく、優しい閻魔の胸の中で。
◇◆◇◆◇
「……気持ち悪りぃ」
横に目を向ければ緑髪の見た目22、3程度の女性、死せしものに判決を下すことを生業とする閻魔、四季映姫さんと
横に目を向ければ赤髪のこれまた女性。年は17、8歳の少女。死せしものを彼岸へ渡すことを生業とする死神、小野塚小町が転がっている。
『泣きなさい』
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俺は泣いた。映姫さんも俺に同調して泣いてくれた。
しかしあまりにも泣き続けていたから見兼ねた小町が
『こういう時は、パーっと呑んで、パーっと忘れましょ!!』
…ということで
「そうだ…3人で呑んでたんだった……」
とりあえず手頃なかけものをみつけたので2人にかける…そしてふと考える
「…未成年者飲酒禁止法」
小町はまだハタチを過ぎていないだろう…これはこれはひょっとすると……
「…むむむ」
なんて思ったが……
ーーー幻想郷。
忘れ去られた者が集まる世界。そして「非」常識な世界。
ここは俺が居た世界とは別の世界…
通常人は死んだら無である。
魂だの霊だの天国などは存在しない。
しかし我々人間のご先祖様たちはそれを信じ、崇め、敬い、また、恐れていた…
その心が余りにも大きく、それら(神、妖怪、霊、悪魔など)を具現化してしまった。しかし時代と共に世界は発展し、その全てが科学で証明されるようになりその心は失われつつ、人々もそのような信仰心が薄れていった。
それに伴って人外たちの力は次第に小規模化し、この地に集まった……
「ふぅ…まるでおとぎ話だな」
え?俺はまだ19歳?
否、1日呑んでいたのだから今日は23日。俺はギリギリセーフである。
と言うより
「二十歳の誕生日前日に死んじまったのか」
やっぱり遺憾である。
「何はともあれだ」
2人には感謝している。
「こんな俺のことを…」
「うぅ…『こんな』なんて……言っては…いけません……zZ」
寝言だろう……全く
でも…そうだな
「ポジティブにいくか!」
俺は輪廻転生の輪から追放された身。時間は永遠にあるのだから。
「そうです……ポジティブに……zZ」
……。
「映姫さん、起きてるだろ」
「ビクッ……お、起きてませんよーっと…zZ」
いやいや、狸寝入り決め込むなら反応しちゃだめだろうに。
「もう仕事の時間じゃないのか?」
「…え!?もうそんな時間!?…うぅ、気持ち悪い…」
慌てて飛び起きる映姫
「こらっー小町!早く起きなさい!!」
ベシベシ!!と閻魔の一撃。
「ふぎゃん!!」
映姫に文字通り“叩き”起こされる小町。
悔悟棒で部下を叩く閻魔が居るだろうか……ここにいる。
「なに呑気に座ってるんですか!翔さんも手伝ってください!」
「今日は休みの日じゃなかったの?」
「……。」
思考すること数秒、この世の全てがどうでもよくなったような顔をした映姫さんは、はそのまま布団に突っ伏した。
「なぁ、今日の予定は?」
「……とりあえず、酔いが覚めるまでは寝ます…」
そこまで飲めるわけではないが、そんな俺から見てもこの閻魔さまは非常に酒に弱い
「じゃあ俺はちょっと外に出てみるよ」
「そうですか…気をつけてくださいね…この世界には……昨夜お話しした通り…妖怪などがいますから…」
妖怪か……やはり1人では心もとない
「小町、いろいろと案内を頼めるかい?」
『!!…よっし♪これで仕事休める!』
とでも思ったのだろう。実に満面の笑み。
「おお〜、いいよ〜!」
「頼む!」
「あまり遠くには行かないでくださいね…」
その辺は大丈夫だろう。徒歩だし。
「うん、わかってます。とりあえず昼飯どきには戻るんで」
「行ってらっしゃい……」
さてさてーーー
「幻想郷……か。」
「翔ー、準備できたよー」
うぃ、と片手を上げ返事をする。
「よし」
二十歳になったばかりの青年はこうして
「行くか!」
幻想郷に立つのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
小猫side
「………っく!!」
「お、気が付いたみたいだね。寺子屋の前にキミが倒れていたんだ。具合はどうだ?」
確か私は…あの人を転生させて…
「あの人は!あの人はどこですか?」
「あの人?なんだ、連れもいたのか?でも、私が見たのはキミ一人だけだったよ?」
寺子屋…今で言う学び舎。学校か
「あなたは…誰ですか?」
「おいおい、そんなに警戒することはないさ。私は上白沢慧音。この寺子屋で学問を教えている。言わば先生だ。」
白沢…
「妖怪…ハクタクですか」
「察しがいいね、そう。私は上白沢…ワーハクタクだ。そういうキミも…ふむ、同種の匂いはするが…キミ、何か混じっているな?」
「私は元猫又です。」
「元?…まぁ深く詮索はしないでおくよ。で、身体の具合はどうかな?」
他人に深く興味を持たない感じの人…でも
「…調子はいいです」
慧音「それは良かった。外傷は全くなかったがかなり衰弱していたから、勝手ながら私の気を分け与えたんだ」
「…ありがとうございます」
慧音「困った時はお互い様。だろ?」
と微笑む上白沢慧音。
悪い人じゃなさそう
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私は話した。この身に起こった出来事を。
そしてこのワーハクタク…慧音先生と少しだけど行動を共にするのであった。
◇◆◇◆◇
「慧音先生、おはようございます。」
「おお小猫か、相変わらず早起きだなぁ」
私は今、上白沢慧音先生の家に居候させてもらっている。
「早朝トレーニングは毎日の日課です。」
「良い心掛けだ。継続は力なり、と言うしな。」
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昨日慧音先生の書いた書物を読ませてもらって一通りのことはわかった。
ここは幻想郷。忘れ去られた者たちが集まる世界。江戸時代辺りから派生した世界で、元は人間と妖怪が共に共存し合える『楽園』をコンセプトに創られたが、現在では妖怪の他にも、吸血鬼や妖精、魔法使い、悪魔、天使、堕天使、神までもが集まり、独自のバランスの上均衡が保たれている。過去に何度か反乱が起きた事があるが、いずれも博麗の巫女なる人物が鎮圧してきた。
『悪魔に天使堕天使、それに神…』
『ああそうだ。有名どころで言えばそうだな…紅魔館の小悪魔、天使は…ふむ。天の使い、という意味では天界の比那名居天子や永江衣玖、堕天使という種族はここには存在しないな。そして神なら守谷神社の二神、八坂神奈子と守谷諏訪子辺りだろう。』
聞いたことのない名前に私は少々困惑した。
『ルシファーやミカエル、アザゼルにオーディンは…』
『ん?あぁそれは人間の創造物にすぎないよ、実際には存在はしないだろう』
ーーー何かおかしい
幻想郷。ここはいったいーーー
第ニ話・完