もし平凡な主人公が異世界へ転生したら   作:悠木仁

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ライバル

「この世界の、主人公…」

 

  星宮大和《ほしみややまと》。

 噂はよく聞くし、訓練場でもたまに見かける。

  たしかパートナーは3年生の序列1位だったはずだ。3年生の首席は2年生の首席をパートナーに選ぶという暗黙の了解を無視した、この学園の長い歴史の中でも異例の組み合わせと言われている。

「でもなんで星宮が『主人公』だって分かったんだ?」

 

「それは簡単ですよぉ。授業中に部屋に忍び込んで転生石を探してきたんですぅ」

 

「お前俺の知らないところで何してんの!?」

 

  他人の部屋に忍び込んでんじゃねぇよ・・・。

  同室の俺も怒られるじゃねぇか。てか、バレたら退学だろ。相手は序列2位だぞ。

 

「大丈夫ですよぉ。何も盗ったりしてませんし」

 

「あ、そう。で、転生石はあったのか?」

 

「あったからこんな話をしてるんじゃないですかぁ。相変わらず察しの悪い人ですねぇ」

 

  前から思ってたんだがどうしてこいつはこんなに俺に対して毒舌なのだろうか。

 

「そう思うのでしたら私に毒舌を使わせないような立派な人間になってみてはどうですぅ?」

 

  うるせぇよ、人の心読んでんじゃねぇよ。

エスパーかお前は。

 

「妖精ですよぉ?」

 

  エスパーじゃねぇか。

 

「はぁ、もういいよ。んで、この成績表はどこで手に入れたんだ?」

 

「それは学園長に頼んだら普通に貰えましたよぉ?」

 

  他人の成績表渡してんじゃねぇよ!!

  あの学園長って実力があるからあの地位にいるんだよな・・・。

  言動からしてとてもそうは思えないんだが。

 

「とにかくこの成績表が問題なんですよぉ。見てくださいよこれ、柊さんと全然違いますよぉ?」

 

  そりゃ序列2位だしな。67位の俺よりも上なのは当然だ。

  俺は成績表を手にとって長々と書かれている評価文の下にあるランクだけを見た。

 

「なになに?魔法力A、戦闘技術A、戦闘能力S……は?」

 

 全部A以上、 戦闘能力にいたってはSだと!?

  たしか平均がCでAは超一流レベル、Sは世界中で数人しかいない『逸材』だと聞いたことがある。

俺も魔法力はSだがそれ以外はC以下だ。

魔法試験の成績だから今はかなり上がったと思うが・・・それでもAはないだろう。

 

「このままでは勝ち目はありませんねぇ。幸いあちらは私たちが『主人公』であることは気づいてないようですし、今は訓練に集中しましょう」

 

「そうだな。ちょっと卑怯な気もするけど…世界の命運がかかってるし、そんなことも言ってられないか」

 

 星宮を倒す算段は後に立てることにして、俺たちはそれぞれのベッドで眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

  翌日の朝、俺はいつものようにソニアさんに稽古をつけてもらっていた。

 

「でやぁっ!!」

 

  俺とソニアさんの木刀が鈍い音を立てながらぶつかり合う。両手で刀を持つ俺に対して、ソニアさんは片手で持っている。俺が上段から斬りかかっても、ソニアさんは難なく弾き返してくる。全身の体重をかけた一撃が弾かれてバランスを崩した俺に、ソニアさんはそのまま突き刺すそうに刀を前へ出す。いつもならこれで終わり、俺の負けだ。しかし今日は自然と身体が動いた。刀が胸元に当たるギリギリで右へ避け、ソニアさんの後ろを取る・・・が、ソニアさんは右足を踏み込んで体の動きを止め、後ろを振り返る勢いで俺に斬りかかった。

 

「私の勝ちだな」

 

  当たる直前で刀を止め、ソニアさんがそう言った。私の勝ちといっても、俺が勝てたことなんて1度もないが・・・。

 

「だが一瞬とはいえ私の後ろをとった。これは大きな進歩だ、何かあったのか?」

 

「何か…とは?」

 

「昨日までとは明らかに雰囲気が違う。さっきのお前はまさしく剣士の目をしていた」

 

  剣士の目か。自分ではそんな自覚はなかったが・・・。ソニアさんがそう言うなら、それはきっと昨日のあれが想像以上に俺の心に響いたのだろう。

 

「倒さなきゃいけない人がいるんです。そのために俺は強くならなければならない」

 

「なるほどな。相手が誰だか知らないが、ライバルを持つのは良いことだ。強さにライバルは不可欠だからな」

 

 ライバル、か。星宮にとっては俺なんか眼中にもないのだろう。

まぁ喋ったこともないんだからあたり前なんだが。

 

「よし、残りの5ヶ月間今まで以上に厳しく指導してやる。覚悟しろよ神崎?」

 

「望むところです、ソニアさん」

 

 

 

―――星宮を倒すため、俺の世界を救うため、俺はもっと強くなる。

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