もし平凡な主人公が異世界へ転生したら   作:悠木仁

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【番外編】13日の金曜日

 

 

「お兄ちゃんお兄ちゃん!」

 

 俺がリビングのソファーに座りながらテレビを観ていると、奏が俺を呼びながら階段を降りてきた。

 

「ん?なんだ?」

 

  俺は今録画していたアニメを観ているんだ。平日は忙しいから時間がある週末に観なければならない。よって、奏に構ってる暇などないのだ。

  俺がそんなことを考えていると、とつぜん部屋のドアが勢いよく開けられた。

 

「お兄ちゃん!」

 

「なんだようるさいな!今いいとこなんだよ!」

 

 奏はチラッとテレビを見たあと、

 

「そんなことはどうでもいいんだよ!」

 

  と言った。

 

  よくねぇよ、何を言うんだこいつは。休日くらいゆっくり休ませてくれよ。

 

「お兄ちゃん、今日がなんの日か知らないの?」

 

 今日?家族の誕生日ではないよな・・・。記念日でもなければ宗教のイベントもないはずだ。

  あ、もしかして・・・。

 

「まさか11/13(いい父さん)の日か?父の日は6月だぞ?」

 

「ぜんっぜん違うよ…。そんなことで私がいちいち騒ぐと思うの?」

 

  悪かった、悪かったからそんなに憐れむような目を向けないでくれ。たしかに今のはくだらなかったな。

 

「じゃあなんの日なんだよ…」

 

  観念した俺がそう言うと、奏はなぜか勝ち誇ったような顔をして、

 

「今日はね〜…13日の金曜日なんだよ!」

 

・・・・ん?

 

「いやいや妹よ。俺は今日が何日なのかではなく何の日なのかを聞いたのだよ」

 

「だから13日の金曜日だよ〜。もしかしてお兄ちゃん知らないの?」

 

 なんだそりゃ、何を言ってるのかさっぱりわからん。

 

「もぉ〜しょうがないなぁ。いい?13日の金曜日っていうのは1年に一度は必ず訪れる日で、不吉な日と言われてるんだよ」

 

「へぇ、奏は物知りだな」

 

 そんな日が存在していたとは知らなかった。

まぁ、どうせ迷信だろうけどな。

 

「それで、なんでお前はそんなにはしゃいでるんだ?」

 

「だって不吉な日だよ?こんな日は怪談とか肝試しとかやりたくならない?」

 

 いや気持ちは分からんでもないが・・・。

  なんで貴重な休日にそんな面倒くさいことをしなきゃいけないんだ。

 

「やろうよぉ!ねーねー!」

 

「うるさいなぁ。今忙しいんだよ」

 

 それに今は11月、そういうのは夏だけで十分だ。俺、怖いの苦手だし・・・。

 

「………」

 

  無視する俺にさすがの奏も頭にきたのか、無言でテレビに近づいていき・・・

 

「えいっ!」

 

  と言いながらコンセントのプラグを抜いた。

 

「おぃぃぃぃぃい!何してんだよ奏!電源付けたままプラグを抜くのは危ないんだぞ!」

 

「はーい、今度から気をつけまーす」

 

  素直だな。まぁ仕方ない・・・。最近忙しくて奏とも遊んでやれないし、たまには家族サービスも必要か。

 

「分かったよ、1回だけだぞ?ただし肝試しはだめだ」

 冬場の夜は暗くて危ないからな。かわいい妹に外を歩かせるわけにはいかない。

 

「わーい!お兄ちゃんだ〜いすき!それじゃ、夜になったら呼びに来るからね〜」

 

 そう言って奏は自分の部屋に戻っていった。

やれやれ、調子のいいやつだ。

 

「さて、それまで一眠りするか…」

 

 奏のことだからテンションが上がりすぎて朝まで怪談パーティーにならないとも限らないしな。

 

 

 

―――「お兄ちゃん!おっきろー!」

 

  うーん・・・もう朝、いや夜になったのか。

 

「おはよう奏。それじゃさっそく始めようか…って、夕食がまだだったな」

 

「だいじょーぶ!カツサンド作っておいたから、怪談しながらでも食べられるよ!」

 

  おぉ、さすがは奏だ。てかどんだけ楽しみにしてたんだよ。張り切りすぎだろ。

 

「だってお兄ちゃんとゆっくりお話するの久しぶりなんだもん。高校に入学してからずっと忙しそうだったから…」

 

「奏…」

 

  まさか奏がそんなことを思っていたなんて・・・。悪いことをしてしまったな。

 

「よし、奏!今日は遊びまくるぞ!朝まで徹夜で怪談パーティーだ!」

 

「おぉ!お兄ちゃんテンションアゲアゲだねぇ!」

 

  おっと、テンションが上がってしまったのはどうやら俺の方らしい。

 雰囲気を出すために俺は部屋の電気を消した。カーテンを閉めると、真っ暗で何も見えなくなってしまった。

 

「これぞ怪談って感じだな」

 

「まだ何も話してないけどね〜。あ、お兄ちゃん。飲み物持ってくるの忘れちゃったから電気つけてくれる?」

 

  奏の言う通りに俺が電気のスイッチを押すが、明かりがつく気配はない。

 

「ん?ブレーカーが落ちたのか?」

 

 俺がそう言った途端、突然テレビがついた。が、薄暗い光以外はなにも映っていない。

 

「テレビはつくからブレーカーは大丈夫みたいだよ?」

 

「じゃあなんで電気がつかないんだ…?」

 

  俺と奏が原因を考えてから1分ほどたったところで、何事もなかったかのように突然明かりが部屋を灯した。

 

「なんだったんだ…?」

 

 俺がそう言うと奏はニヤニヤしながら、

 

「おばけの仕業だったりして〜」

 

  と言った。

 

「なーに言ってんだ。おばけなんているわけ…」

 

  次の瞬間、俺は言葉を失った。ある光景を見た俺は一瞬で状況を整理し、考えを張り巡らせたが、俺の考えが及ぶ範囲でこの『物語』が良い結末を迎えられるとは到底思えなかったのだ。

そう、その光景とは・・・。

 

「おい、奏。テレビのコンセント、プラグが抜けたままなんだが…」

 

「えっ?」

 

 これにはさすがの奏も驚いたようだ。口をポカンと開けてコンセントを見つめている。

 

「で、でもさっきお兄ちゃんがテレビつけた…よね?」

 

「ん?つけたのは奏だろ?」

 

「えっ」「えっ」

 

 俺と奏は同時に声を上げ、そして同時に顔色を青白く変えた。

 

「お、お兄ちゃん…」

 

 奏が俺の服の裾をつまみながら小さい声で囁いた。

 

「今夜は、一緒に寝てくれる…?」

 

 

 

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