俺こと神崎柊がソニア・スカーレットとパートナーを組んで3ヶ月が経ち、降り積もっていた雪が跡形もなく溶けきった頃、学園中から大きな爆発音が鳴り響いた。そう、学園のあちこちで何度も何度も大爆発が起こったのである。
「なんだ?!」
硬い壁で覆われている第一闘技場にいた俺にも聞こえるほどの爆発音である。幸いここでは爆発が起きていない。異変を感じ取った俺が闘技場の外へ出ると、武装した男達が魔法を駆使して暴れ回っていた。
「お前ら、何をやっているんだ!」
俺がそう叫ぶと男達が一斉に俺の方を見た。
「チッ。もう駆けつけてきやがったのか。予定より早いな」
「落ち着け、あいてはただの学生だ」
「油断するなよ?ガキとはいえ魔法士の卵だからな」
「油断もなにも、全員でかかれば問題ねぇだろっ!!」
最後に言った男が魔法陣を展開すると、後に続いて他の男達も攻撃を仕掛けてきた。
(まずいっ!!)
俺が身の危険を感じた時には既に魔法が発動しており、炎弾の大群が俺に襲いかかった。
俺はすかさず腰の剣を抜き、迎撃態勢に入る。
しかし、最初に直撃しそうになった炎弾を斬った直後に炎弾は爆発し、他の炎弾も誘爆してしまった。
(さっきの爆発はこれか!!)
大爆発が起こり、辺りに砂埃が舞う。
「威力が強すぎたんだ、視界が隠れちまった!援軍が来たらどうするんだ」
「その時はあいつを人質にとればいいだけだ。死んではいないだろう、探して連れてこい」
「その必要はないよ」
防御魔法で爆発を回避した俺は視界が晴れる前に男達の後ろへすばやく回り込んでいた。
砂埃のせいでよく見えないが、男達が驚愕していることがよくわかる。魔法士の基本中の基本、目ではなく気配で相手の動きを感じ取るというものだ。言葉にするのは難しいが、慣れてくると意外と簡単にできるようになる。
「こんの…ガキがぁぁあ!」
男の拳をかわし、魔法を発動させる。
「燃え尽きろ、地獄の業火《ゲヘナ・フレイム》!」
直後、逃がさんとするように灼熱の炎が男達を囲み、上から覆い被さるように炎が襲いかかった。
「神崎、後ろだ!」
すると突然、どこからか俺の名前を呼ぶ声がした。声の通りに後ろを向くと、いつの間に現れたのだろうか、奴らの仲間であろう男が佇んでいた。俺は剣を抜き男に斬りかかったが・・・直後、俺の手が硬直してしまった。
「死ね、クソガキ!」
その隙に男が俺に向かって斧を振り下ろした。よく見ると斧には魔法がかかっている、おそらく威力上昇系の魔法だろう。
(あれに当たったら痛いじゃすまないぞ!?)
頭では理解しているのに手が動こうとしない。
俺の手がこの男を斬ることを拒否しているのだ。俺は死を覚悟したが、実際に俺が斬られることはなかった。
「何をしているんだお前はっ!!」
振り下ろされた斧を剣で受け止めたのは、俺の師でありパートナーでもあるソニアさんだった。ソニアさんは斧をはじき返し、魔法を発動する。
「白騎士の一撃を思い知れ、白の閃光《ヴァイス・ブリッツェン》!」
白光を纏った剣が光速で放たれ、男の体を貫いた。
「がはっ…!」
男はその場に膝をつき、吐血しながらそのまま意識を失って倒れてしまった。
「ソニアさん、ありがとうございました!」
俺がソニアさんにお礼を言うと、ソニアさんは無言で頷いてから突然俺の剣を取り上げた。
「そ、ソニアさん?」
「学園に侵入者だ。最近噂になっていたテロ組織が学園に目をつけたらしい。序列上位の生徒はすぐにテロリスト達の対処にあたるように。もちろん序列15位のお前も当てはまる」
て、テロリスト!?たしかに以前から話は聞いていたがよりによってこの学園が目をつけられるなんて・・・。いやそれよりも、どうしてソニアさんは剣を取り上げたんだ?
「また、お前は今日1日剣の使用を禁止する。お前なら魔法だけでも十分戦えるだろう。私も一緒に行動するしな」
「ま、待ってください!どうしてそんな…」
「自分でも分かっているだろう?今のお前に剣士を名乗る資格はない」
そう言ったソニアさんの顔は今までに見たことがないほど怒っているようだった。
(そうだ、今の俺に剣士を名乗る資格はない…『他人を斬ることを恐れた』俺には…)
俺はソニアさんに戦い方や剣術を教わってきた。しかし、人を殺す力があるのと人を殺せるのとでは話が違う。半年前まで平凡な高校生だった俺には、まだ人を斬ることに抵抗があるのだ。
「わかりました。すみません…」
「わかればいい、これは私のミスでもある。だが、人を斬る理由だけは考えておけ。私からのアドバイスはそれだけだ」
人を斬る理由。
一見単純に思えるその問題だが、俺には答えることができなかった。