もし平凡な主人公が異世界へ転生したら   作:悠木仁

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最後の訓練

 

 

 

 

「んん?誰だかしらねぇがよくここが分かったな」

 

  騎士団団長、セブンスは俺の登場にまったく動揺していなかった。

 

(罠か?それとも…)

 

  様々な考えが頭をよぎるが、今はそんなことを考えている暇はない。すでに俺は戦場に立っているのだから。

 

「優秀な相棒が教えてくれたんだ」

 

 今回ばかりはフローネに感謝しなければいけない。彼女の助言が無ければ俺はここに辿り着くことすらできなかっただろう。

 

(でもどうして分かったんだ…?)

 

  そう思ったのも束の間、突然背後から・・・いや、周りから足音が聞こえてきた。

 

(囲まれたっ!?)

 

  20人はいるだろうか。学園を襲った奴らと同じ服を着ている。

 

「だったらお前が死ぬ時は…」

 

  セブンスが喋りながらこちらへ向かってくる。

 

「その相棒とやらを怨むことだなっ!!」

 

  瞬間、一斉に魔法が発動された。

 

(また爆発魔法か?!)

 

  轟音を撒き散らしながら炎弾が爆発する。

 

「みたか!俺たちが開発した新魔法、弾ける想い《ハート・クラッシュ》の威力を!!……ん?」

 

 燃え上がる火中から姿を現したのは、一匹の竜。

 

「赤の守護龍《ウェルシュ・ドラゴン》、その程度の火力じゃ俺には届かない」

  俺は赤の守護龍《ウェルシュ・ドラゴン》を盾にすることでなんとか爆発を逃れることができた。しかし状況が改善されたわけではない。

 

(せめて雑魚だけでも一撃で葬る必要があるな)

 

  俺は魔法陣を展開した。さっきよりも巨大な魔法陣で、超位魔法を発動するためのものだ。

 

「宙を舞う炎龍《フリューゲン・ドラッヘ》!」

 

  魔法が発動した瞬間、周りにあった炎を掻き集めて作られたのは巨大な炎竜。

  炎竜は手を、尾を、足を、体全体を使ってテロリストたちを薙ぎ払っていく。

  炎竜の猛攻が止んだ時、立っていたのはたった2人。セブンスと・・・おそらく『月夜の楽園』のボス、ギムレット・バーンズだろう。

 

「A…いやSだな。やっかいな奴が来たもんだ。だが、たった1人で俺たちに勝てるとでも思っているのか?」

 

 その時、セブンスの後ろに誰かが倒れているのが見えた。

 

(そ、ソニアさんっ!あんな近くにいたのか…俺の攻撃当たってないよな?)

 

「ん?あぁ、こいつが気になるのか。安心しろ、お前の攻撃は俺が防いでおいたからな。まだこいつに死なれるわけにはいかねぇ」

 

  ソニアさんがゆっくりと目を開き、俺を見る。あんなに弱っている彼女を見るのは初めてだ。

「神崎、逃げろ…。私は大丈夫だ…」

 

 声にならない声が彼女の唇から漏れた。いや、ぜんぜん大丈夫そうに見えないんですが・・・。

 

「おいおい、随分と弱ってんな。何度も言ってるだろう?お前に死なれちゃ困るんだ」

 

 そう言ってセブンスがソニアさんに回復魔法をかけ始めた。

 

(これならソニアさんが人質に取られる心配はない…はずだ)

 

  俺はこの僅かな時間に2人の打開策を考えた。しかし、いい考えが思い浮かばない。

 

(無理だ、どうやっても2人相手に勝てるとは思えない。なら俺が出来ることは一つしかない!)

 

 そして俺は最後の突攻を仕掛ける。狙いは・・・セブンスだ。

  しかし俺の行く手は突如現れたギムレットの手によって阻まれた。

  彼が両手に握っているのはダガーだ。ナイフよりも長く剣よりも短いダガーは、斬るよりも突くことに特化している。

 

(チャンスは一度きりだっ!!)

 

 俺は小さな魔法陣を展開し、矢形の炎弾を放つ。しかし炎弾はギムレットから大きく外れてしまう。

 

「どこを狙っている。魔法は強くても使用者はポンコツか」

 

 彼が俺を嘲笑ったが、俺が見ていたのはまったく別のところだった。

 

「うん?どこを見て……っ!?」

 

(やっと気づいたか…でももう遅い!)

 

  放たれた炎弾が向かっているのは彼の後ろにいるセブンス・・・ではなく、ソニアさんだ。

  具体的には、彼女を拘束しいる縄を。

 

「セブンス、回復魔法から拷問魔法に切り替えろ!」

 

  彼が叫んだ時には、すでに彼女の手首に巻きついていた縄は焼き切られていた。

 

「てめぇ、縄を…?!」

 

  ソニアさんはすばやく腰の剣を抜いて足の縄を斬り、後ろへ跳躍して彼の間合いから離れる。

 

「よくやった、神崎!」

 

「ちっ、大人しくしていればいいものを!」

 

  セブンスが間合いを詰めて彼女へ斬りかかった。ソニアさんはこれを同じく剣で受け止める。剣と剣がぶつかり合う、甲高(かんだか)い音が辺りに鳴り響いた。

  彼女は男勝りな腕力でこれを強引に打ち払う。

 

「神崎柊、これがお前の最後の訓練だ」

 

  彼女はニッコリと微笑んで俺に言った。

 

「ギムレット・バーンズを討ち取れ」

 

(無茶言うなぁ…)

 

  そんなことを思いながらも、俺は苦笑しながらその言葉に応えた。

 

「了解です、ソニアさん」

 

 

 






  この度は私の作品を読んでいただきありがとうございます。

  実は一身上の都合により12月3日までの2週間の間休載することになりました。

  かといってまったく何もしないというわけにはいかないので、毎日ショートストーリーを投稿しようと思っています。

 時間がないのでSSのようになってしまいますがご了承ください。また、本編にはまったく関係ありません。

 このお知らせとショートストーリーは12月4日の0時に削除させていただきます。

 
 もう一つ。今日中に1話〜18話の修正を行う予定です。具体的には一人称、二人称、三人称の見直しなどです。内容に大きな変更はない予定です。

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新作、「ゲームの彼女とリアルの彼女」が3話まで投稿されています。修羅場系青春ラブコメですが興味のある方はぜひ読んでみてください。
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