もし平凡な主人公が異世界へ転生したら   作:悠木仁

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最高のパートナー

 

 

 

 

「よくやった、神崎」

 

 

 俺が振り返ると、そこにはボロボロになったソニアさんが立っていた。

 どうやらあちらの勝負もついたらしい。

 

 

「ありがとうございます。ソニアさんもお疲れ様です」

 

 

 王国騎士団の長を相手にしたのだ。

 いくら彼女でも相当苦戦しただろう。

 

 

「あぁ、さすがに強敵だった。危うく死にかけたよ。……ちょっと失礼するよ、神崎」

 

 

 そう言ってソニアさんが俺に抱きついてきた。

 というより、俺を抱きしめた。

 

 

「えっと、ソニアさん?」

 

 

「無事でよかった。本当に、本当によかった」

 

 

 彼女の声は震えていた。

 横目でチラリと見ると、彼女の目からは涙が溢れている。

 

 

(助けに来たつもりが、逆に心配させちゃったな)

 

 

 教え子が犯罪テロ組織のリーダーと一騎打ちをすることになったのだ。

 彼女も責任を感じているのだろう。

 

 

「俺はまだ負けません。先輩を超えるまでは」

 

 

「ふっ、お前も言うようになったな」

 

 

 それからフローネが呼んできた騎士団が到着するまでの間、俺たちはずっと抱き合っていた。

 まるで、お互いの呼吸を感じ合うかのように。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「はあぁ、ほんとに柊さんはいい加減というか無計画というか」

 

 

 事件の夜、俺はフローネの前でこじんまりと正座をしていた。

 

 

「私が場所を教えなかったらどうするつもりだったんですかぁ?!まったく柊さんは前々から―――」

 

 

 なんだかすごく怒っている。

 結果良ければ全て良しと思っていたが、彼女にとってはそうもいかないらしい。

 

 

(そういえばなんでフローネはソニアさんの居場所がわかったんだ?)

 

 

 学園側の人間や騎士団でさえ知らなかった情報をどうやって掴んだのだろう。

 妖精にしか使えない高位魔術でも使ったのだろうか?

 

 

「フローネはどうしてあの場所がわかったんだ?」

 

 

「……っ!?」

 

 

 俺がそう質問すると、フローネはいきなり言葉を詰まらせた。

 少し取り乱したようだったが、すぐにもとの表情を取り戻す。

 

 

「は、話をそらさないでください!私は今すっごく頭にきているんですから!!」

 

 

 残念ながら帰ってきたのはお叱りの言葉だった。

 

 あとどれくらい続くんだ、この説教。

 

 

(明日は朝早くから騎士団の取り調べがあるってのに……)

 

 

 それから実に二時間もの間拘束され続け、やっと終わったと安堵する俺に渡されたのは、今回のことに関する報告書だった。

 締め切りは明日と書かれている。

 

 

 今の時刻は深夜二時、迎えの騎士が来るのは五時ということになっている。

 つまり寝る時間は・・・ない。

 

 

「あのクソババアァァァァ!!」

 

 

 学園長のことをクソババア呼ばわりする上に、深夜に一人叫びまわる男がそこにはいた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 事件から一週間後、今日は三年生たちの卒業式だ。当然、その中にはソニアさんも含まれる。

 今回の卒業式や入学式のような行事は、祝宴場で開催されるらしい。

 武勲をあげた生徒もここで表彰されるのだとか。

 ステージ場には序列三位までの卒業生たちが立っている。

 卒業生代表として、それぞれのパートナーから花束を受け取ることになっている。

 そして当然、序列三位であるソニアさんのパートナーである俺もやらなければならない。

 

 

(き、緊張するな……)

 

 

 この世界に来てから必死に鍛錬を積んで強くはなったものの、こういうことにはまだ慣れていない。

 俺の前に立っている二人にはまったく動じた様子が見られない。

 ちなみに片方あの星宮大和である。

 もう一人は序列一位のフィオナ・メリュジーヌだ。

 

 

「よし、行け」

 

 

 スピーチを終えて戻ってきた学園長が俺たちにそう言った。

 俺は階段をのぼり、ステージ場へと上がる。

 緊張に耐えながら、ゆっくりとソニアさんの前に立つ。

 

 

「すまないな、神崎。こんなことになってしまって」

 

 

 申し訳なさそうに彼女が言った。

 どうやら俺の緊張を見抜いたらしい。

 

 

「い、いえ。これも一つの経験だと思えば……」

 

 

 俺が苦笑いをしながら答える。

 実際、これからの人生のためにもこういうことには慣れておかなければならない。

 

 

「そうか。短い間だったが、お前に剣を教えられてよかったよ。私はこれから騎士団に入るつもりだからな。弟子を持つのはこれが最初で最後かもしれん」

 

 

「と、ということは俺はソニアさんの一番弟子……?ぬおぉ!責任重大すぎる……」

 

 

 困惑する俺を見て、ソニアさんが微笑んだ。

 

 

「ありがとう、神崎。お前に出会えてよかった」

 

 

 何気ない一言だが、異世界から来た俺にとっては嬉しい言葉だった。

 これこそが、まさに運命というものなのではないだろうか。

 

 

「俺もです、ソニアさん」

 

 

 世界を跨いで出会った二人、最高のパートナー。

 大切なことをいくつも教えてくれた、俺の目標。

 恩師に向かって、俺は告げる。

 

 

「ご卒業おめでとうございます」

 

 

 

 

 

 

 






これにて魔法学園編の前半が終了です!




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