「学校?」
「はい、この辺りに有名な学校があるらしいんですよぉ」
なんで異世界に来てまで学校に行かなきゃいけないんだ・・・。
「どうやらこの世界の戦闘では魔法を主とするみたいなんですぅ」
ま、魔法だって!?
やっと異世界らしくなってきたじゃないか!
「まぁ魔法は異世界モノの定番だしな」
「異世界モノってなんですか…」
「急なメタ発言はやめてくださいよぉ」と言いながら、フローネは鞄の中から1枚の紙を取り出す。
「なんだそれ?」
俺がそう尋ねるとフローネは自信に満ちた顔で、
「これは…入学試験の受験票ですぅ!」
と言った。
いやいやいや、なにが「受験票ですぅ!」だよ!
「ふふーん、驚きましたぁ?私、こう見えて準備がいいんですよぉ」
「ちょっと待て、なんで俺が学校に通うことになってるんだ?」
「え?学校、行かないんですかぁ?」
「行くわけないだろ!なんで異世界に来てまで学校に通わなきゃいけないんだよ!」
学校なんて冗談じゃない。
せっかく魔法の世界に来れたんだ。
もっと他にやるべきことがはずだ!
「じゃあ柊さんはどうやってこの世界の『主人公』に勝つつもりなんですかぁ?」
・・・・・え?
「魔法の存在する世界の『主人公』ですよぉ?かなり戦闘馴れしているはずですぅ」
「そんな人を相手に、学校にも行かないでどうやって勝つつもりですかぁ?」というフローネの言葉を聞いた俺は、やっと自分のするべきことを思い出した。
「そうか、俺は『主座争奪戦』で勝つためにここへ来たんだった…」
「わ、忘れてたんですかぁ!?信じられません…」
いや、忘れてたというか・・・浮かれていたというか・・・。
「ん?ということは…その学校では魔法が習えるってことなのか?」
なるほど、フローネの言いたいことがやっと分かった。最初からそう言ってくれればいいのに・・・。
「相変わらず鈍感な方ですねぇ…」
「う、うるさいな…でも俺に魔法なんか使えるのか?」
何も特徴がない『世界』から来た平凡な俺に、はたして魔法が使えるのだろうか。
「あ、すっかり言うのを忘れていましたぁ。異世界へ転生した場合、その『世界』に合った『スキル』が身につきますぅ」
『スキル』?
あぁ、確か異能力のことだったな。
「てことは今の俺には魔法が使えるってことか?」
「えぇ、どんな『スキル』が身につくかは転生してからのお楽しみですが…」
つい昨日までただの高校生だった俺が魔法を・・・!
神様、ありがとうございます!
「なんかこの人ニヤニヤしてて気持ち悪いですぅ…」
う、うるさいな・・・。
別にいいだろ!
「妖精にはこの感動は分からないだろうな!」
フローネは「はぁ…」とため息を吐くと、説明を続けた。
「とにかくぅ、柊さんには明日試験を受けてもらいますぅ。その試験の結果で、合否、合格の場合は階級も決まるらしいですぅ」
「明日?ずいぶんと早いな」
「10月ですからねぇ。こちらも柊さんの世界と同じで、正式な入学式は4月らしいですよぉ?」
それじゃあ俺は転校生ということになるのか。それなら早くても遅くても関係ないのか。
「学園のそばにある宿をとってありますぅ。ひとまず今日はそこに泊りましょう」
そして俺とフローネは宿へと向かうのだった。
「起きてください、柊さん試験に遅刻しちゃいますよぉ?」
「う、ううん…」
フローネに身体を揺すられて半ば強引に起こされた俺は、壁にかかっている時計を見る。
07:00、ちょうど俺がいつも起きるくらいの時間だ。
「はやく顔を洗ってください。そろそろ出ないと間に合いませんよぉ?」
「あぁ、わかったよ」
いつも思うのだが、どうしてみんなギリギリに起こすのだろうか。
遅刻しそうならもっとはやく起こしてくれればいいのに。
「それが他人に起こしてもらう人の言うことですかぁ?そもそも、声をかけても一向に起きようとしなかったのは柊さんですよぉ?」
だ、そうだ。
これからは気をつけよう。
多少のアクシデントがあったものの、なんとか試験時間に間に合った。
校門の前で待っていたのは、黒いスーツを着た男だった。
「神崎さんとフローネさんですね?お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
俺たちは試験官の後について行く。
俺は小声でフローネに
「お前も試験を受けるのか?」
と言った。
「いえ、私は受ける必要もないですからぁ。あ、私は柊さんの家族のようなものだと言ってありますぅ」
「ふーん」
「着きましたよ」
試験官がそう言った。
―――入学試験。
最初の関門が、柊の前に立ちはだかる。