ある日の朝、俺はとある世界の王都にある学園の廊下を歩いていた。洋風に創られたこの学園は、まるでヨーロッパにある城のようだ。当然それは廊下も例外ではない。天井からは小さなシャンデリアがいくつもぶら下がっており、壁は真っ白で、大理石のようなものでできている。
いつもならまだ学園の寮にいる時間帯だが、俺は学園長に呼ばれているのだった。
学園長には転入初日に1度会っただけだが、20代〜30代の綺麗な女性だった。曰く、この学園は実力主義で、若かろうが女だろうが実力が認められれば誰でも出世できるらしい。
学園長のいる部屋に着いた俺がドアをノックすると、中から「どうぞ」という声が聞こえた。
ドアを開けると部屋の中には座っている学園長と、机を挟んでその前には知らない女性が立っていた。
「失礼します。学園長、何か用ですか?」
「あぁ、実は君に大事な話があるんだ」
「こっちへ来なさい」と学園長が言ったので、俺は謎の女性の隣に並ぶ。
「君は『パートナー』のことは既に聞いているのかな?」
パートナー。
この学園に転入して2週間ほどしか経っていないが、それでも何度も耳にした言葉だ。
たしか2年生と3年生から、それぞれ成績優秀者上位9名がパートナーとして1年間活動を共にするという制度だ。
エリートには良い師をつける。まさに実力主義のこの学園らしい制度である。
ちなみに俺は2年生だ。この世界の『学校』とはプロの魔法士になるための通過点のようなもので、本来なら年齢に関わらず3年間の教育を受けなければならないらしいが、特例として俺は2年生からのスタートということになった。
どうやら俺の魔法が国のお偉いさんに認められたらしい。以前、学園長が「あいつらは少しでも早く優秀な魔法士を集めたいのさ。最近は凶悪なテロ組織が増えてきたからな」と言っていた。
「はい、一応聞いたことがあります」
俺がそう言うと、学園長はニヤリと笑って、
「それなら話は早い。こいつが今から神崎の『パートナー』だ」
――――――え?
えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?
「ぱ、パートナー!?どうして俺が?俺の序列は67位ですが…」
「君は特例だよ。魔法力だけとはいえ、ランクSに『パートナー』をつけないほど私は馬鹿じゃない」
「と、いうわけだ」
それまで無言だった女性が口を開いた。
「ソニア・スカーレットだ。これからよろしく頼む」
「は、はい!神崎柊です。宜しくお願いします!!」
握手を交わした後、彼女は用があると言って部屋から出ていった。
「その様子だと彼女のことを知らないようだね」
不意に学園長がそんなことを言った。
「彼女、ソニアさんは有名なんですか?」
「ソニアというよりはスカーレット家が、と言うべきだろうね。剣術の名家なんだよ。もちろん彼女も剣士達の間では有名だがね。実力では3年生の中でも1、2を争うほどだ」
「そんな凄い人がどうして俺のパートナーに?パートナーを組むのは4月ですよね?」
今は11月、半年以上もパートナーを組まない理由なんてないはずだ。
「彼女はつい最近まで聖都の騎士団で訓練を受けていたんだよ。いわゆる留学ってやつさ」
「なるほど、でも俺にソニアさんのパートナーが務まりますかね…」
俺の取り柄は魔法力だけだ。授業でも剣術の訓練は何度か受けているが、正直まったくついていけない。
「それは大丈夫じゃないか?」
学園長がそんなことを言った。
大丈夫?一体何が大丈夫なんだ?
「なにせお前のパートナーになりたいと言い出したのは彼女自身だからな」
ソニアさんが、自分から・・・?
「彼女には何人かのパートナー候補を紹介したのだが…その中から君が選ばれたんだよ」
学園長は続けて「元々は君は序列10位の者と組ませるつもりだったんだ」と言った。
するとそこで授業の始まりを知らせる鐘の音が鳴った。
「え?もうこんな時間!?」
「ほらほら、急げよ少年。遅刻は厳禁だぞ?」
あんたが呼び出したんだろうがっ!と思いながらも、俺は急いで教室へ向かうのだった。