もし平凡な主人公が異世界へ転生したら   作:悠木仁

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ウィッチとウィザード

  ソニアさんとパートナーを組んだ翌日の朝、俺は学園にある第一闘技場でソニアさんを待っていた。さっそく今日から訓練が始まるらしい。

 

「待たせたな、神崎」

 

 するとそこへソニアさんがやって来た。昨日とは違い、白色の制服を着ている。

「ソニアさ…先輩。その制服はいったい…?」

 

  この学園の制服は紺色だ。1年生から3年生まで制服の色とデザインは統一されているはすだが・・・。

 

「あぁこれか?まっ、上位の学生の特権ってやつだな。あと『先輩』は不要だ。戦場では歳も性別も関係ない、全員が平等に闘い、殺されるのだからな」

 

「わ、わかりました。ソニアさん」

 

  殺されるって・・・。

  なんて物騒な例えなんだ。

 

「よろしい。じゃあさっそく訓練を始めよう…と言いたいところだが、神崎は田舎育ちで魔法士に関してあまり知らないと聞いたが…本当なのか?」

 

「は、はい。お恥ずかしながら…。あまりというかまったく知らないといいますか…」

 

  2、3週間前にこの世界に来たばかりの俺が知っているはずがない。

 

「なに、何も恥ずかしがることなんてないさ。じゃあまずは魔法士について話そうか」

 

  魔法士。

  最も基本的なことかもしれないが、それでも俺はあまりよく知らない。

  てか、本来これはフローネの役目なんじゃないか?あいつ情報収集で忙しいとか言ってるくせにショッピングばかりしてるからな・・・。

 

「神崎、聞いているか?」

 

 俺が穀潰しのことを考えていると、ソニアさんが少し怒った声で言った。

 

「す、すみません!聞いていませんでした!」

 

 するとソニアさんは「やれやれ」とでも言うかのような表情で

 

「君は正直だな…。人の話はちゃんと聞くように。特に目上の人の話はな。」

 

 と言った。

 

「まぁいい。…魔法士には大きく分けて2種類いる。それが『ウィッチ』と『ウィザード』だ」

 

 ウィッチとウィザード。それくらいなら俺の世界でも聞いたことがある。

 

「それは性別によって区別されているってことですか?」

 

 ソニアさんは首を横に振った。

 

「確かにそんな意味も込められているが、そうではない。ウィッチは多くの系統の魔法が使える魔法士、ウィザードは1つの系統だけを使う魔法士だ」

 

「1つの系統だけ?」

 

 それじゃあ必然的にウィッチはウィザードより強いということになるんじゃないか?

 

「まぁ浅く広くか深く狭くってことだな。ウィッチの多くは魔法ではなく剣術や体術を主としている者が多い。1つの系統を極めているウィザードに対抗するためには、魔法以外の技術が必要だからな」

 

 なるほどそういうことか。

  ソニアさんの言い方からして深く広くというのは難しいのだろう。

 

「元々は中途半端な魔法をいくつも身につけるその姿を見た魔法士が罵倒の意味を込めて『ウィッチ』と名付けたらしいがな。まぁ遠い昔の話だ。今はそういった意味合いでは使われない」

 

  おぉ・・・。

  この世界でも女性に対する差別があったのか。

  なんというか、どんな世界でも人の考え方は同じなんだな。

 

「ウィザードは1つの魔法しか使えないんですか?それとも…」

 

「いや、なにも他の魔法が使えないってわけじゃない。転移魔法や回復魔法くらいなら誰でも使えるだろう。攻撃魔法は使い物にならんだろうがな」

 

  じゃあ転生魔法を使ったフローネがウィッチとは限らないってわけか・・・。

  まぁ本人に聞けばいいだけの話なんだが。

 

「神崎の魔法力はランクSだ。これに関しては私は何もできない。私の魔法力はランクAだからな」

 

  「戦闘での使い方くらいは教えてやれるが…」とソニアさんが続けて言った。

  そうか、俺は魔法力だけは優秀なんだったな。

 

「それじゃ俺はウィザードってことになるんですかね?」

 

 『炎系統で最上位の魔法』とフローネは言っていた。深く広くが難しいとなるとやはり俺にはウィザードが合っているだろう。

 

「あぁ、確かにそうなんだが…」

 

  ソニアさんが言葉を濁す。

 

「なにか問題が?」

 

「いや、問題はない。実はだな、私はお前にもっと先を目指してもらいたいんだ」

 

 もっと先?先とはいったい・・・?

 

「さっきも言ったように、お前の魔法はこれ以上強くはなれない。お前がさらに強くなるためにはもう1つ他の技術が必要だ」

 

「他の…技術…?」

 

「これは私がお前のパートナーを引き受けた理由でもある。お前には剣術を学んでもらう」

 

  け、剣術っ!?

  剣術を学ぶってことはつまり・・・人を斬るってことだよな・・・。

  いや、俺はなんとしても『主座決定戦』で勝たなければならないんだ。

(そんなことで怯えてはいけないっ!!)

 

「わかりました。ソニアさん、俺に剣術を教えてくださいっ!!」

 

 俺がそう言って頭を下げると、ソニアさんが微笑みながら言った。

 

「いいだろう。私がお前を立派な魔法士にしてやる!」

 

 

 

 

  この日から、俺はソニアさんの言い付けですべての選択授業で剣術を選んだ。

  ソニアさん曰く

 「ランクSのお前が魔法科の授業で学べることはない」だそうだ。

 

 通常、生徒の9割が魔法とそれ以外の技術の授業を7:3の割合で受けている。ウィッチでもウィザードでも、魔法が使えなければ戦うことさえできないからだ。

 

 しかし俺は魔法の授業を選択していない。

  つまり、俺は他の生徒より3倍以上の時間を剣術に費やすことになる。

 

 しかも講師は剣術の名家、スカーレット家のお嬢様だ。後から聞いた話だが、ソニアさんが留学していた聖都の騎士団とは王家直属の軍隊らしい。よく分からないがとにかく凄く強い人しか入隊できないとか。

 

 これなら・・・本当にこの世界の主人公を超えられるかもしれない。

 まだ誰なのかも分からないが・・・。

 

  とにかく、俺は俺にできることをやる。

まずは半年、ソニアさんの下で剣術を磨くんだ!

 

 俺はそう心に誓うのだった。

 

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