ソニアさんとパートナーを組んでから3週間が経ち、12月に入った。この世界でもこの時期は雪が降るらしく、気温も日本より少し低いように感じる。しかし、激しい訓練中はむしろその寒さが心地よく感じられ、まさに修行中の俺としてはうってつけの時期とも言えるだろう。
「ただいまー」
そんな俺が1日の訓練を終えて学寮の自室に戻ると、いつも通りフローネが床でゴロゴロしながら本を読んでいた。
いや、いつもより酷いかもしれない。妖精でも寒さはどうしようもないのだろうか、フローネは毛布を身体に巻きつけ、火がついている小さめの暖炉の前で幸せそうな顔をしていた。
「おかえりなさーい」
フローネが俺に見向きもせずそう言った。
まぁ、これもいつも通りなんだが・・・。
「お前、着々とニートに近づいてるよな」
自分の役目である情報収集もロクにせず、かといって学園に通うわけでもない。人の金で好きな服や本を買い、飯食って寝るだけというまさに穀潰しの鏡である。
そもそも無一文の俺たちがどうしてこの学園に入ることができたのかといえば・・・。
そう、借金である。言い換えれば奨学金だ。
1つでもランクA以上の項目があれば国が学費と生活費を全額負担してくれるらしい。
もちろん、卒業後は国の軍隊に所属するという条件付きだが。
「ニートとは失礼ですねぇ…。私だって柊さんのいないところで頑張ってるんですよぉ?」
「いや、とてもそうは思えないんだが…」
フローネが頑張ってるところなんて見たことも聞いたことも無い。それどころか自分からそんなことを言ったことさえなかった。
するとフローネは「しょうがないですねぇ」と小声で呟きながら立ち上がった。
「んなっ…!?!?」
身体に巻き付けていた毛布が床に落ち、フローネの肌が露わになった。フローネが着ていたのは下着だった。いや、下着を着ているのは当たり前なんだ。問題なのは下着以外の服を着ていないことにある。
「お、おまっ!なんで下着だけなんだよ?!」
俺が動揺しながらそう言うと、フローネはニヤリと悪い顔を浮かべながら、
「あれぇ?柊さんもしかして私の可憐な下着姿に興奮しちゃいましたぁ?」
と言った。
「いや興奮って…お前俺に見られてなんとも思わないのか?」
「柊さんが奥手で不器用でヘタレなのはこの1ヶ月でよ〜〜く分かりましたからぁ。これくらいどうってことないですよぉ」
へ、ヘタレだと!?
なんてヒドいことを言うんだコイツは!
「だって1ヶ月も可愛い女の子と同棲しててまったく手を出してこないなんて…もしかしてホm」
「違うから!他人の誤解を招くようなこと言わないでくれるか!?」
「メンドくさいですねぇ」と言いながらフローネはタンスから取り出した服を着始めた。てか、毛布巻くほど寒いなら服着ろよ・・・。
「この解放感と毛布の毛が全身を撫で回すような感覚がいいんじゃないですかぁ」
「誰も聞いてないから。さっさと服を着ろ」
この後毛布について語り始めたフローネを説得するのに10分もかかってしまった。
「それで?お前の頑張りの成果とやらはどうなったんだ?」
「しょうがありませんねぇ。そこまで聞きたいとおっしゃるなら教えてあげましょう」
自信満々なフローネが鞄の中から取り出したのは1枚の写真と誰かの成績表だった。
いったいどこからこんな物を・・・と思いながらも俺は写真を手に取る。
「あれ?こいつどこかで…」
写真に写っていたのは1人の男子生徒。顔立ちが整っており、どちらかといえばイケメンに分類されるだろう。
「その人の名前は星宮大和。2年生の第2位です。そして…」
フローネは顔を上げ、俺の目をジッと見ながら
「この世界の『主人公』です」
と言った。