魔導師が勇者召喚に巻き込まれたそうです。 作:無双レイヴェルト
「そうだったのか・・・・・こちらの勝手な都合なのは重々承知だこの世界の為に力を貸してくれないか」
「わたくしからもお願いしますわ」
そう言って王様と姫様が僕達に向けて頭を下げる。
え!?急展開過ぎない?それを頼むのってもうちょっと話してからだよね普通・・・・。
「わっ!お、王様頭を上げてください!ぼく達に出来る事なら何でもしますから!」
ね?とこちらに顔を向けてくる皇くん改め勇者(笑)。
ぼく達ってことはまだ巻き込む気なのか彼は?
はぁ?橘さんの話聞いてなかったの?僕達は巻き込まれただけだし勇者は君だよ?
勝手にやればいいじゃないか!
彼の見勝手な言動に内心で怒りながらも、僕はポーカーフェイスを保つ。
「ふざけないで、なんで私がそんな事手伝わないといけないの!」
「夏目!この人達困ってるんだよ!?」
「だから何、私に何の関係があるの!!
首を突っ込むのは貴方の勝手だけど私をこれ以上巻き込まないで!!」
まったくその通りだ。もし虹次がこの場にいたら『ふざけてんじゃねぇぞ、リア充野郎。俺の事は俺で決める!てめぇの考えを俺らに押し付けるな!!』って言ってそうだな。
彼女達の言い争いを聞き流してそんなことを考えていた。
「夏目!」
「エドラス王。魔王退治はこの馬鹿にやらせて、私と彼を元の世界に帰して」
勇者(笑)を完全無視して話を進める橘さん。僕の事もちゃんと考えてくれるなんて優しいなぁ
「「・・・・・」」
あれ?なんで王様達黙ってるんだろ?
「・・・済まない」
「あ?てめぇまさか」
えーまさかの・・・
「・・・・・・異界から召喚する術はあっても戻す術はないんだよ」
そう言う王様からは本当に申し訳ないという想いを感じ取れた。
そっかー、地球に戻れないのか……
家族や友達に二度と会えなくなったのは残念だけど、それ以外は心残りがないし別にいいや~。
「・・・・・」ジャキッ
そんなことを考えていた僕はその時何が起きたのが全くわからなかった。
目線を前に向けるとポケットに隠してたナイフを取り出し、王様の胸ぐらを掴んで玉座の背もたれに押し付け、
王様の首元にナイフを突きつける橘さんがいた。
その行動の意図に気付いた僕は彼女を援護する為に姫様の後ろに回り込んだ。
「ごめんなさい、姫様」
「・・・・・え?」
「「「「っな!?貴様!」」」」
「動かないでください」チャキッ
「ヒッ!?」
剣を抜こうとした騎士達の動きを止める為に僕は姫様の首元に隠し持っていたペーパーナイフを突き付けた。
「っな!?夏目!?君も!何をしてるんだ!」
◇◇◇◇
夏目Side
「・・・・ふざけるな」
「・・・・・っ!」
今の私はどんな顔をしてるんだろ?私の顔を見た王様が辛そうに口元を歪めている。
「・・・帰して」
「・・・・・」
「私を家に帰してよ」
「・・・済まない」
「謝ってほしいわけじゃない、私を家に帰してって言ってるの!」
「すまない・・・」
「謝んないでよ!謝るくらいなら私をいつも暖かく迎えてくれるお父さんとお母さんの居る家に、帰してって言ってるのよ!!」
「・・・できないんだよ、すまない」
「なんで?私はただ、っっ」
王様の姿がぼやけて見える、ほっぺに何かが流れる感触がする
私は泣いてるの?なにが、何がいけなかったの?
・・・・・私はただあの女たらしのバカの近くに居ただけなのに。
ガシッ
「・・・え?」
いきなり視界が真っ黒になった。
これは、誰かが私の頭を包み込んでるの?後ろの頭に鼓動が聞こえる
後ろから目の部分だけ抱きかかえられてるんだ
「ごめん、僕がもっと早く君を助けられたらこんな事にならなかったのに」
枢木くん?私、いま枢木くんに抱き付かれているんだ。なんでだろう心がポカポカしてとても温かい。
「王様、橘さんも言いましたけど僕達は勇者じゃありません。だから勇者を辞退させて貰います。
そして僕達はこのままお城を出ます。貴方達の勝手な都合でこれ以上僕達が振り回されんのはもう嫌です」
「・・・わかった、この件は私達に非がある。
何は要る物はあるかい?」
「・・・・・剣に生活費、あと安心して衣食住が出来る家が欲しいです。
それ以上は何もいりません。あとは自分達でやります」
枢木くんに抱き付かれてるせいで目の前が全く見えないけど、彼とエドラス王との真剣なやり取りが聞こえる。
「わかった、用意させよう」
「王様!?」
「聞いていたな?彼が言った物をすぐに用意しなさい」
「しかし!」
「これ以上私やエドラス王室に恥をかかせるな!」
「はっはい!」
エドラス王にそういわれた騎士の人が慌てて謁見の間から出ていく。
「・・・・・」ポンポン
私の頭を抱きしめてる枢木くんの腕を軽く叩きもう大丈夫だと伝える。
「本当に大丈夫?」
「・・・」コクッ
私が頷くと、手を離してくれる枢木くん。振り返ると彼の顔は林檎みたいに真っ赤だった。
なんでだろう?と首を傾げる。
「・・・?」
「え~っと、橘さんが泣いてたから思わずやったんだけど思い出してみると恥ずかしくて・・・・////」
まぁ、確かに泣いている子を抱きしめるとか何処のラブコメ漫画?って思うくらいキザな事だったけど、おかげで落ち着けたしいいんじゃないかな?
「・・・・・ありがとう」ニコッ
「も~恥ずかしい////もう二度とやらない!」
「・・・クスクス」
「まぁ~////」
「「・・・・・」」
そういえば王女さまが居たっけ。
ずっと見てただろう王女さま、顔がとても真っ赤だ。
まさかの純粋さん?
「恥ずかしすぎるよ~////」
まぁ多分カップルでも恥ずかしいと思うよ?あの光景をずっと見られてるのは
ガチャッ
「王様、持ってきました」
「あっ、そこに置いてください」キリッ
「ブフッ」
あまりの変わり身の速さに思わず吹き出しちゃった。
あらあら、今のでまた顔が真っ赤になっちゃったね。
「?」
枢木くんが要求した物を持ってきた騎士の人は状況が全然わかってない。
それ以外の騎士の人やエドラス王は必死に笑いこらえてた。
あ、劉雅は状況が理解できないのか固まってる。
って違うなアレは魔法?黒いモヤモヤした煙が劉雅を包んで動きを止めてる。
煙の出処は・・・まさかのエドラス王だった。
「じゃあ行こうか、橘さん////」
「そうね、枢木くん」ペコ
「お待ち下さい、わたくしが城門まで御二人を案内しますわ」
「ありがとうございます、姫様」
私達が謁見の間を出る結局最後まで劉雅の拘束は解かれなかった。
何か言いたげだったけど、気にしない。
コツコツコツコツ
「「「・・・・・・・・・・」」」
案内役を買って出た王女さまの後ろを歩いて約20分。
城内からやっと門らしき場所に出た。
そう言えば枢木くんはこれからどうするつもりなんだろ?
何も考えないで出て行くわけじゃないよね?
そんなことを思いながら前を歩く彼に視線を向ける。
「え?これからの事?」
「・・・・・」コクッ
私の視線に気付いて首だけこっちに向ける枢木君
「ここまで虹次が以前言ってたテンプレ通りなんだよね。街にギルドがある筈だからそこに行くつもり」
『ギルド』、ゲームみたいにモンスターを倒したり自然物を採取したりしてお金をもらうところだ。
でも、此処は異世界であり現実だ。危なくないかな?
「それに王様のあの反応だと本当に帰る方法はないんだと思う。
だったら早くこの世界の生活に慣れなきゃいけない」
そっか、枢木くんはもうこれからの事を考えてるんだ。
なら私もそろそろ切り替えなきゃね。
あのバカの面倒事で学んだ[どうしようもない時はどうしようもないんだからさっさと切り替えよう]
いつもみたいに実行しなきゃね。
「さぁ行こう、橘さん」
「うん」コクッ
「・・・・・出発しようとしてるところ悪いんですが・・・御二人方、わたくしが所属しているギルド【白の騎士団】に入りませんか?」
準備万端さぁ行こうって時に王女さまが声をかけてきた。【白の騎士団】?
「今回の貴方方を召還した件、王だけの判断ではないんです。それゆえ儀式を行ったわたくしにも責任がありますわ。
それに【白の騎士団】は国が運営しているトップギルドですわ。騎士団に入れば衣食住は保証出来ますし、謁見の間での貴方方の動きならやっていけるでしょうし・・・どうでしょうか?」
へぇ、責任感の強い人だなぁ王女さまは。
「 有り難い申し出だけどやめておくよ、姫様。もう覚悟は決めてるし自分のことは基本自分でしたいしね」
「そうですか・・・・・わかりましたわ、わたくしも無理にとは言いません。でも何か困った事があったら相談してくださいね、わたくしは王族なので基本エドラス城に居ます。用がある時は城門にいる兵士にお名前を言ってください。迎えに行きますわ」
少し残念そうな顔をしながらも、騎士の人は相談に乗ってくれるとまで言ってくれた。
「ありがとうございます、姫様」
「いえ、別に構いませんわ。・・・・・・最後に御二人に頼みたいことがあるのですがよろしいですか?///」
王女様は頬を赤らめ身体をモジモジさせながらちょっと遠慮気味に聞いてきた。
「何でしょうか、姫様?」
「え~っと・・・・わ、わたくしとお友達になってくれませんか!?」
「「・・・・・・へ?」」
王女さまの突然のお友達になろう宣言に唖然とする私達。
「わたくし実は御友達がいないぼっちなんです」
「ちょっと待って、王女さまって王族よね?王族ならパーティーとかで貴族の子供と仲良くなって友達になれるじゃないの?」
「わたくし、幼い頃人前に出れない程のとても人見知りだったんです。そのせいで10歳までパーティーに一切出られなかったんです。そして意を決してパーティーに出たところ、同年代の貴族の子供たちの所に行くともう足を踏み込めない程のグループが出来ていました」
衝撃的な告白を聞いた私は王女さま・・・・いや、セレスティアに近付いて抱き付いた。
「友達になろう、セレスティア」
「やっと名前で呼んでくれましたね、ナツメさん。でも、わたくしどうすれば御友達になれるのかわからないんです」
「そんなの簡単だよ、友達になれるの凄く簡単だよ、それに君たちは友達だよ」
横から声が聞こえてきたからそこに視線を向けると私達のことを優しく見守っている枢木くんがいた。
「名前を呼ぶんだ。初めはそれだけで良いんだよ、君や貴方とかそう言うのじゃなくて、相手の目を見てハッキリ相手の名前を呼ぶんだ」
「セレスティア、悠斗くん」
「ナツメさん、ユウトさん」
「夏目ちゃん、セレスティア」
そして、私たちは手を握りながらお互いの名前を呼び合って・・・本当の友達となった・・・。