「これは決着をつけるためのデュエル・・・引き分けなど、ありませんわ!」
遊勝塾に一人の女性の声が響く。
『いや!だが、実際デュエルは引き分けだったわけで・・・!』
予想外の展開に修造塾長が戸惑いの声を上げる。このまま話が進めば互いに一勝をあげた遊矢と光津真澄とでデュエルすることになりそうだが、筋の通らない話に俺もそろそろ黙っていられない。先手を打たせてもらおう。
「・・・そんなに四戦目がしたいなら、俺が相手になろう。」
「!」
「未来!?」
「未来殿・・・」
遊勝塾の面々だけでなく、LDSの四人も目を見開いた。
「裏切り者め・・・」
「・・・」
理事長の小さなつぶやきが聞こえた。「裏切り者」か・・・だが、こちらも引くわけにはいかない。帽子をかぶりなおし、気合を入れる。
「・・・いいわ、私がやる。」
一歩前に出てきたのは先ほど【ジェムナイト】デッキで柚子を圧倒した光津真澄だ。
「ユースの優勝者とデュエルできるなんて貴重な経験だわ。しかも状況が状況、本気でお相手してもらえるでしょう?
「勿論だ」
「――待て」
「!?」
踵を返し、デュエル場に向かおうとした時、俺たちから死角になっていた曲がり角から一人の長身の少年が現れた。フードを目深にかぶり、顔は見えない。だが間違いない!こいつは――
「決着は私がつけよう」
「零児・・・!」
「(レイジ・・・?あの少年、どこかで・・・)」
男がフードを外す。白髪に眼鏡。LDS現社長・赤馬零児その人だった。
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デュエル場に赤馬零児と十六夜未来の二人が出揃った頃、観戦デッキでは・・・
「・・・しかし、思わぬ幸運だぜ・・・こんなところであの赤馬零児と十六夜未来のデュエルが間近で見られるなんてよ・・・!」
「ああ。LDSの黄金世代の二人だ・・・変な顔してどうした、真澄。そんなに十六夜未来とのデュエルを社長に取られたのが悔しいか?それとも戦わずにすんでホッとしているのかい?」
「うっさい。まあ、榊遊矢に負けたあんたよりは見られるデュエルができる自信はあったかしらね?」
「がっ!」
「(・・・十六夜未来と会話しちゃった・・・!)」
刀堂刃は眼下で向かい合う決闘者のツーショットに興奮を露わにしている。志島北斗はそれに賛同しながら隣の光津真澄に嫌味を言うが、真澄に手痛い反撃を受け、沈黙してしまった。
一方、こちらは遊勝塾側。
「・・・」
未来をじっと見つめていたアユが、その表情の変化に気づいた。
「未来兄ちゃん、笑ってる・・・?」
「・・・へぇー。未来を戦う前からあんなカオさせるなんてねぇ」
見たことの無い未来の表情に、素良はこれから始まるデュエルへの期待感が高まっていた。
そんな中、遊勝塾のエース・榊遊矢は浮かない顔をしている。
「(未来に、戦わせてよかったのか?自分の母校を敵に回すようなことさせて・・・いや、それ以前に父さんの塾は、父さんのデュエルは俺の手で守らなきゃいけないのに・・・)」
「遊矢!」
「!」
不意に声が響いた。顔を上げると、デュエル場から未来が真っ直ぐに遊矢を見上げてきている。
「すまない遊矢。貴重なデュエルの機会を奪ってしまって。・・・本当はお前がデュエルしたかったんだろう」
「未来、俺・・・」
「だが心配するな。お前達の・・・いや、俺達の塾を、俺にも守らせてほしい!だから笑え。笑顔で応援してくれ、遊矢!」
――そうだ!未来だって遊勝塾の・・・俺達の仲間じゃないか!
「・・・フレー!フレー!ミ!ラ!イ!」
「遊矢!?」
遊矢が立ち上がり、大声でエールを送る。その表情はもちろん満面の笑顔だ。すぐ隣にいた柚子は面食らってツッコミのタイミングを逃してしまったが。
「なあ未来!ただデュエルするだけじゃつまらないだろ?遊勝塾の先生として見せてくれよ!最高のエンタメデュエルをさ!」
「ふっ、こんな時に無茶を言うな!(・・・だがそれに答えてこそのエンターテイナー、か)」
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さて、零児と最後にデュエルをしたのは二年前だったな。久し振りの真剣勝負に自然と口角が吊り上っているのが自分でも分かる。・・・引き攣り気味じゃないといいが。
「待たせてすまない、零児。・・・フィールドはランダムでいいか」
「ああ」
「塾長、頼む」
『おう!(・・・さっきの未来の反応といい、あの少年はやはり赤馬零児!未来と同等、いやそれ以上の実力者だ・・・!ならば卑怯と言われようがここは塾のため!)アクションフィールド、ON!フィールド魔法、《ジャスティス・ワールド》!!』
足元が光に覆われ、地面がせり上がってゆき、フィールドが形成される。まず目に入るのは二本の巨大の柱。その奥には小高い丘に沿って建物が並び、その頂点には巨大な神殿が鎮座している。フィールド自体が高所設定なのか、妙に日差しが眩しく感じられる。「ライトロード」達の故郷、ジャスティス・ワールドがそこに広がっていた。
「・・・塾長?」
"ランダム"と言ったはずだが?・・・と続けようとした時、
「構わん。これもアウェーの洗礼だと思っておこう」
丘の頂点、神殿の正面に立つ零児が俺の言葉を遮った。・・・ならば本来
「《ジャスティス・ワールド》は未来殿が使い慣れる「ライトロード」モンスターのホームグラウンドだ・・・!塾長!漢気溢れる援護射撃だッ!」
そう言うのは遊矢の親友・
「(俺にできるのはここまでだ・・・後は頼むぞ、未来!)」
「(・・・ここまでしてもらって、生徒の前で無様なデュエルをすることはできないな!)」
――Duel Mode on, stand by――
「・・・先攻も俺でいいか?」
「できるならばジャンケンで決めよう。いつもそうだった様にな」
「ふっ、仕方ないな」
言いながらディスクを操作し"パー"のコマンドをタップする。零児は"チョキ"。・・・やはり先攻が欲しかったようだ。・・・そういえば零児、「アレ」をやってくれるのか?と一瞬考えたが、観客席から声が聞こえる。どうやら柚子や遊矢たちが音頭を取ってくれるらしい。
「戦いの殿堂に集いし決闘者達が!」
「モンスターと共に地をけり宙を舞い!」
「フィールド内を駆けめぐるゥ!」
「みよ!これぞデュエルの最強進化系ー!」
「アクション――!!」
「「デュエル!」」
Mirai LP4000 VS Reiji LP4000
「では私のターン。私は手札から永続魔法《地獄門の契約書》を発動する。このカードが表側表示で存在する限り、自分のスタンバイフェイズに1000ポイントのダメージを受ける」
いきなり来たか・・・
「さらに、1ターンに一1度、デッキから「DD」モンスター1体を手札に加えることができる。私は
《DDリリス》を手札に加える」
《地獄門の契約書》効果に観客席から驚きと困惑の声が上がる。ほとんどが1000ポイントという大きいダメージに対するものだが・・・アユは違った。
「未来兄ちゃんが言ってた・・・"ライフよりアドバンテージ"のカード・・・!このままじゃ毎ターン手札を増やされちゃう!」
「ほう。あの年齢でアドバンテージを見るとは・・・君の指導か」
「ああ。(アユ、ちゃんと気付いてくれて先生は嬉しいぞ)」
「続けようか。2枚目の永続魔法、《魔神王の契約書》を発動。このカードは自分のスタンバイフェイズに自分自身が1000のダメージを受ける。そして1ターンに1度、悪魔族の融合モンスターによって決められた融合素材をフィールドか手札から墓地に送り、その融合モンスター1体をを融合召喚できる」
「へぇ、じゃあ毎ターン融合召喚ができるんだ・・・!」
融合に理解の深い素良が真っ先に興味を示す。やはり、こと融合のこととなると目の色が変わるな。そういえば「デストーイ」モンスターは悪魔族だったか。しかし融合魔法とは・・・零児の奴いつの間に融合を使うようになったんだ?
「手札より《DDリリス》と《DDケルベロス》を融合!――牙剥く地獄の番犬よ、闇より誘う妖婦よ、冥府に渦巻く光の中で今、ひとつとなりて新たな王を生み出さん!――
融 合 召 喚 ! 生誕せよ! 《DDD烈火王テムジン》!」
炎のオーラを纏った戦士風のモンスターが融合の渦の中から現れ、零児の傍に降り立った。攻撃力は2000。さして高い数値とはいえないが、零児は通常召喚権を残している・・・ということは。
「これで終わりではないんだろう?」
「当然だ、君相手にこの程度では心許ない。チューナーモンスター《DDナイト・ハウリング》を通常召喚!」
チューナー?・・・まさか。
「《DDナイト・ハウリング》の効果発動!召喚成功時、墓地の「DD」モンスター1体を攻・守を0にして特殊召喚する。蘇れ、《DDリリス》!私はレベル4の《DDリリス》にレベル3の《DDナイト・ハウリング》をチューニング!――闇を切り裂く咆哮よ、疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!――シ ン ク ロ 召 喚 ! 生誕せよ!レベル7、《DDD疾風王アレクサンダー》!」
風の中から続いて現れたのはまたもや戦士風のモンスター。片刃の剣を振りかざし、マントに身を包んだ騎士然とした佇まいでテムジンとは反対側についた。
「まだ終わりではない。この瞬間《DDD烈火王テムジン》の効果発動!自分フィールドにこのカード以外の「DD」モンスターが特殊召喚された場合、墓地の「DD」モンスター1体を特殊召喚する。《DDケルベロス》を特殊召喚!」
「!まだ何かする気か!?」
「さらに《DDD疾風王アレクサンダー》の効果発動!このモンスターもまた、自分フィールドにこのカード以外の「DD」モンスターが特殊召喚された場合、墓地の「DD」モンスター1体を特殊召喚する効果を持っている。再び蘇れ、《DDリリス》!特殊召喚成功時、《DDリリス》の効果を発動!墓地の「DD」モンスターを手札に加える。《DDナイト・ハウリング》を手札に!・・・私はレベル4の《DDリリス》と《DDケルベロス》で、オーバーレイ!2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築――この世の全てを統べる為、今、世界の頂きに降臨せよ!――エ ク シ ー ズ 召 喚 ! 生誕せよ!ランク4!《DDD怒涛王シーザー》!」
《DDリリス》と《DDケルベロス》は紫色に輝く光となり、銀河のように渦巻く穴に吸い込まれていく。一瞬のまばゆい光の後、青の鎧を纏った3人目の王、《DDD怒涛王シーザー》が現れ、テムジン,アレクサンダーと共に零児を守るかの様に陣を組んだ。
「シンクロやエクシーズまでも・・・」
「なんて奴だ・・・!」
「《闇の誘惑》を発動。デッキから2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体を除外する。《DDナイト・ハウリング》を除外・・・カードを2枚セットし、ターンエンドだ」
フィールドには歴史上の偉人の名を持つ3人の王。手札は0だが、新たに伏せられた2枚のカードがモンスター達と共にプレッシャーをかけてくる。俺は結局引き攣ってしまった笑みをそれでも顔に貼り付けて崩すべき牙城を睨んだ。
零児 LP4000 hand:0
フィールド:3 ☆6《DDD烈火王テムジン》ATK/2000
☆7《DDD疾風王アレクサンダー》ATK/2500
★4《DDD怒涛王シーザー》ATK/2400
魔法・罠:4 《地獄門の契約書》,《魔神王の契約書》
伏せカード2枚
「・・・少しは驚いてもらえたかな?」
「ああ、俺も負けてられないぜ」
「(ふっ、これだけしてもただ闘争心を煽る程度か。やはり大した決闘者だ、十六夜未来)」
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「俺のターン!」
意気込んだのはいいが、この手札から零児に追いつくには多少運に頼ることになるだろう。デッキのカードを信じてデッキから1枚だけカードを引き抜いた。
「ドロー!・・・手札から《レベル・ウォリアー》を特殊召喚!このモンスターは本来レベル3だが、相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、レベル4モンスターとして手札から特殊召喚できる!続いて手札から魔法カード、《おろかな埋葬》を発動!デッキからモンスターを1体、墓地に送る・・・《ライトロード・ビースト ウォルフ》を墓地へ。この瞬間《ライトロード・ビースト ウォルフ》の効果発動!デッキから直接墓地に送られたとき、墓地から特殊召喚される!」
「召喚権を使わずにモンスターをそろえてきたか・・・」
「・・・レベル4の《レベル・ウォリアー》と《ライトロード・ビースト ウォルフ》で、オーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築――集いし信仰が、翼に宿りて天に舞う!光差す道となれ!――エ ク シ ー ズ 召 喚 ! 降臨せよ!ランク4、《ライトロード・セイント ミネルバ》!」
光が止むと、白いフクロウを傍に従えた一人の少女がジャスティス・ワールドに降り立った。が、彼女は神殿前に零児のモンスター達を見つけると途端に肩をいからせ頬を膨らませてしまう。自分達の故郷の象徴を占領されて思うところあるのは分かるが、折角の登場が台無しだ。
「・・・ミネルバ、効果発動!オーバーレイユニット(《レベル・ウォリアー》)を1つ使い、デッキの上から3枚のカードを墓地へ送る!この時、墓地に送られたカードの中に「ライトロード」カードがあれば、その数だけ俺はデッキからドローする!」
「ほう、墓地肥やしと手札の増強を一度に・・・」
ここが正念場だ・・・頼む、来てくれと念じながら、俺はカードをめくった。
《ライトロード・マジシャン ライラ》
《オネスト》
《ジェット・シンクロン》
「!俺は一枚ドロー!」
「無難に引いてきたか・・・」
無難?それは違う。無駄な落ちなど一枚も無いほどの完璧な引きだ!
「墓地の光属性モンスター《オネスト》を除外することで、手札からこのモンスターを特殊召喚することができる!来い、《暗黒竜 コラプサーペント》!さらに墓地の《ジェット・シンクロン》の効果発動!1ターンに1度、手札を1枚捨てることで墓地のこのカードを特殊召喚する!ただし、この効果で特殊召喚したこのカードがフィールドを離れる場合、ゲームから除外される。・・・俺は、レベル4の《暗黒竜 コラプサーペント》に、レベル1の《ジェット・シンクロン》をチューニング! シ ン ク ロ 召 喚 ! 来い!レベル5、《TG ハイパー・ライブラリアン》!」
《ジェット・シンクロン》が一枚のリングに変わり、コラプサーペントがそのリングをくぐってゆく。次の瞬間リングの中を緑色に輝く光が駆け抜け、白装束に身を包んだ司書、《TG ハイパー・ライブラリアン》が現れた。
「俺は《暗黒竜 コラプサーペント》の効果発動!このカードがフィールドから墓地に送られた場合、デッキから《輝白竜 ワイバースター》を手札に加えることができる!・・・続けていくぞ!チューナーモンスター《デブリ・ドラゴン》を召喚!このモンスターが召喚された時、墓地の攻撃力500以下のモンスターを効果を無効にして攻撃表示で特殊召喚する!蘇れ、《レベル・ウォリアー》!そして、レベル3・光属性の《レベル・ウォリアー》に、レベル4の《デブリ・ドラゴン》をチューニング!――集いし涙が、救いの戦士を呼び起こす!光差す道となれ!―― シ ン ク ロ 召 喚 ! 降臨せよ!レベル7、《ライトロード・アーク ミカエル》!」
調和の光が天を貫く。金色の鎧に身を包む戦士、《ライトロード・アーク ミカエル》が空から姿を現した。
「未来の連続シンクロだ!」
「シビレるぅー!」
「ハイパー・ライブラリアンがフィールドに存在し、シンクロ召喚が行われた時、俺はカードを1枚ドローする!・・・そして魔法カード《ミラクルシンクロフュージョン》を、発動!」
「何!」
このカードは元々俺のデッキには入っていなかったが、素良に「融合が見たい」とせがまれ、俺が使えそうなカードを何とか探し出してデッキに組み込んだものだ。まさかこんなに早く出番が来るとはな。
「このカードは、"
「・・・未来のフィールドにも融合,
「すごい・・・!」
「ほう・・・」
両陣営に融合,S,Xモンスターが並び立つ光景に観客達も見入っている。サプライズになったなら何よりだと内心胸をなでおろす。
「《覇魔導士アーカナイト・マジシャン》が融合召喚に成功した時、自らに魔力カウンターを2つ乗せる。アーカナイトの攻撃力はこのカードに乗っている魔力カウンター1つにつき1000ポイントアップする!」
《覇魔導士アーカナイト・マジシャン》ATK/1400→3400
「《ライトロード・アーク ミカエル》の効果、発動!ライフを1000支払い、フィールド上のカード1枚を除外する!俺が選択するのは、疾風王アレクサンダー!」
「く・・・」
ミカエルが剣を天に掲げるとそこから強い光が発せられた。光がおさまりフィールドを確認できるようになると、アレクサンダーだけが忽然とその姿を消していた。
未来 LP4000→3000
戦闘準備が整い、俺は零児の居る神殿にたどり着くべく走り出した。
「バトル!ミカエルで《DDD烈火王テムジン》を攻撃!」
「ダメージステップに、リバースカードオープン!永続罠《戦乙女の契約書》!このカードが存在する限り、相手ターン中私の悪魔族モンスターは攻撃力が1000ポイントアップする」
《DDD烈火王テムジン》ATK/2000→3000
《DDD怒涛王シーザー》ATK/2400→3400
相手ターン中限定とはいえ厄介なコンバットトリックだ・・・だがこのフィールドでは戦い慣れている。俺は加速して視界に捉えていた
「アクションマジック発動!《ソーラー・リチャージ》!自分フィールドのモンスター1体の攻撃力を1000ポイントアップさせる!《ライトロード・アーク ミカエル》を選択!」
《ライトロード・アーク ミカエル》ATK/2600→3600
「"サンライト・ブレイド"!」
「!私は怒涛王シーザーの効果を発動!」
ミカエルが放った剣圧がテムジンを両断し、爆発を起こした。爆風は戦闘ダメージとして零児に襲い掛かり、無傷のライフから600ポイントを削った。
零児 LP4000→3400
「(1000ポイントのパンプアップはきついな)・・・俺はこれでバトルフェイズを終了する」
「・・・《DDD怒涛王シーザー》のエクシーズ効果により、このターンのバトルフェイズ終了時に同ターン中に破壊された私のモンスターを可能な限り特殊召喚し、次のスタンバイフェイズにこの効果で特殊召喚したモンスター1体につき1000のダメージを受ける」
「!?また厄介な・・・!」
爆風が晴れると、確かに先ほど撃破されたはずの《DDD烈火王テムジン》が復活していた。
「・・・ならば!俺は覇魔導士アーカナイトの効果発動!1ターンに1度、自分フィールドの魔力カウンターを1つ取り除くことで、フィールドのカード1枚を選択して破壊する!《DDD烈火王テムジン》を選択!」
「リバースカード、オープン!罠カード《
「くっ・・・」
《覇魔導士アーカナイト・マジシャン》ATK/3400→2400
零児 LP3600→6600
「さらに、破壊された《DDD烈火王テムジン》の効果発動!破壊された場合、自分の墓地の「契約書」カード1枚を選択して手札に加える。《地獄門の契約書》を手札に!」
「・・・! ミカエルの強制効果でデッキトップ3枚を墓地に送る。・・・俺はこれでターン終了」
神殿前最後の階段に差し掛かったところでちょうど俺のプレイが終了した。息を整えるために、暫し立ち止まる。
未来 LP3000 hand:3
フィールド:3 ★4《ライトロード・セイント ミネルバ》ATK/2000
☆7《ライトロード・アーク ミカエル》ATK/2600
☆10《覇魔導士アーカナイト・マジシャン》ATK/2400
「さすがだ、零児。これだけやってもひっくり返せないか」
「君こそ見事だった。カテゴリにとらわれずにあらゆるカードを駆使することで私に対抗してくるとは・・・クールに見せてすぐ熱くなるのも変わらずか」
「・・・うるさいな。」
「だが・・・未来、今度は真似できるかな?・・・榊遊矢!」
「え!?」
零児が遊矢に向かって声を発した。突然話しかけられ、遊矢は困惑気味だ。
「
「・・・?」
「私のターン・・・ドロー!」
_______________________________________________________________________
あいつ・・・未来が"レイジ"って呼んでる奴、何を言ってるんだ・・・?だってペンデュラムは・・・
「私は再び《地獄門の契約書》を発動。効果により手札に加えるのは・・・Pモンスター、《DD魔導賢者ケプラー》!」
「なんだって!?」
「私は、スケール1の《DD魔導賢者ガリレイ》とスケール10の《DD魔導賢者ケプラー》で、あペンデュラムスケールをセッティング!」
フィールドの両端に青い柱が現れ、その中空で2体の形容し難いモンスターが停止する。柱に浮かんだ数字は"1"と"10"。俺にとって見慣れたはずの光景・・・でも上空にペンデュラムのモニュメントは現れず、2本の柱は俺の傍に立ってはいない・・・
「――我が魂を揺らす大いなる力よ!この身に宿りて、闇を引き裂く新たな光となれ!――
ペ ン デ ュ ラ ム 召 喚 !!出現せよ、私のモンスター達よ!・・・全ての王をも統べる3体の超越神、《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》!!」
攻撃力3000の巨大なモンスターが3体、未来を取り囲むように現れた。あれは間違いなくP召喚・・・なんで!?どうしてあいつが・・・!
「ゆけッ、バトルだ!ヘル・アーマゲドンで《ライトロード・アーク ミカエル》を攻撃!」
マズい、あんなふうに囲まれてたら未来がAカードを取りにいけない!
未来 LP3000→2600
「ぐっ・・・!」
「っ、未来!」
ヘル・アーマゲドンが放った無数の光線に《ライトロード・アーク ミカエル》は貫かれ、爆散した。・・・このままヘル・アーマゲドンのあと2回の攻撃と怒涛王シーザーのダイレクトアタックを受けたら!
「続け!2体のヘル・アーマゲドンで、《覇魔導士アーカナイト・マジシャン》と《ライトロード・セイント ミネルバ》を攻撃!」
「・・・!」
未来 LP2600→2000→1000
「・・・最後に破壊されたミネルバの効果、発動!戦闘、または相手の効果で破壊された場合、デッキの上からカードを3枚墓地に送る!そしてその中の「ライトロード」カードの数だけフィールドのカードを破壊できる!」
「いいぞ未来!これならシーザーの効果発動や攻撃の前に破壊できる!」
「ほう、まだそんな効果を残していたか・・・」
「カードを3枚、墓地へ!」
《スキル・プリズナー》
《ネクロ・ガードナー》
《光の援軍》
「く・・・!」
そんな・・・!でも、《ネクロ・ガードナー》が墓地に行ったてことは!
「ふ、運が良いのか悪いのか・・・《DDD怒涛王シーザー》で、ダイレクトアタック!」
「墓地の《ネクロ・ガードナー》の効果発動!墓地から自身を除外し、相手の攻撃を1度だけ無効にする!」
攻撃を終えた悪魔の王たちは未来の周りを離れて主の元へ戻っていった。なんとか、凌いだ・・・ほかの塾生の皆みんなと一緒になってほっ、とため息をついた。でも落ち着いたことで今度は俺の中に疑問が湧き上がってくる。
「(何者なんだ、アイツ!どこでペンデュラムを・・・!?)」
俺は思わず手のひらをガラス窓に「ばん!」と叩き付けた。
「なあアンタ・・・!誰なんだ・・・?どうして・・・!」
「落ち着け遊矢。デュエルはまだ、続いているんだ・・・」
「!未来・・・」
「・・・バトルフェイズを終了し、私はこれでターンエンド」
零児 LP6600 hand:0
フィールド:4 ★4《DDD怒涛王シーザー》ATK/2400
☆8《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》ATK3000
☆8《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》ATK3000
☆8《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》ATK3000
魔法・罠:1 《地獄門の契約書》
ペンデュラム:2 ◇1《DD魔導賢者ガリレイ》
◇10《DD魔導賢者ケプラー》
未来は相手フィールドから一瞬たりとも目を離さない。眼に確かな闘志が宿したまま神殿への階段を一段、また一段と上り始めた。・・・決闘の邪魔は誰にも許されない。俺にはこのデュエルを最後まで見届けることしかできない・・・!
_______________________________________________________________________
「・・・来たか、未来」
「ああ」
やっと神殿までたどり着いたぞ。・・・最後に歩きになったのは別に疲れたからじゃあない。この方が映えると思ったんだ。さて、零児の場には大型モンスターが4体、内3体がPモンスターということは倒しても倒しても倒しても毎ターン沸いてくるという点が厄介この上無い。ならば、このターンで決めるしかない!
「俺のターン、ドロー!・・・魔法カード《ソーラー・エクスチェンジ》を発動!手札の「ライトロード」モンスター1体を捨て、カードを2枚ドローし、デッキの上からカードを2枚墓地へ送る!手札より《ライトロード・アサシン ライデン》を捨て、2枚をドロー!」
・・・来たか!
「デッキの上からカードを2枚、墓地へ!・・・これで墓地の「ライトロード」モンスターは4種となった!手札より出でよ、俺のモンスター達!嘆きの果てに現る、3体の絶対神!《
「ペンデュラム無しで大量召喚を・・・!」
・・・これがやりたかった!これでフィールドには攻撃力3000のモンスターが3体ずつ(シーザーもいるけど)。この状況と、階段の途中で拾ったAカードのコンボで勝負をつける!
「アクションマジック、《死線》を発動!このターンの戦闘ダメージを封じる代わりに、自分フィールドの最も攻撃力の低いモンスターが、それ以下の攻撃力を持つ相手モンスターと戦闘する場合、ダメージ計算を行わずに破壊し、その攻撃力分の効果ダメージを与える!」
「!なるほど・・・」
「俺のフィールドの《裁きの龍》は3体とも最も攻撃力の低いモンスターだ!よってこの効果はこの3体全てに適用される!バトルだ!行け、1体目の《裁きの龍》で、《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》を攻撃!"裁きのエレメント・イレイザー"!」
ジャッジメント・ドラグーンの吐き出した光の奔流がヘル・アーマゲドンを丸ごと包み、フィールドから消し去った。
零児 LP6600→3600
「く・・・ほう、Pモンスターは破壊されるとエクストラデッキへ送られるのか」
「(知らなかったのか)次だ!2体目の《裁きの龍》で・・・」
「ヘル・アーマゲドンの効果、発動!」
「何っ!?」
「自分のモンスターが戦闘・効果で破壊された場合、ターン終了までこのカードの攻撃力にそのモンスターの元々の攻撃力を加える!破壊されたヘル・アーマゲドンの攻撃力は3000・・・よって残った2体の攻撃力は・・・!」
《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》ATK/3000→6000
《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》ATK/3000→6000
6000・・・!
「・・・まだだ!2体目の《裁きの龍》で、《DDD怒涛王シーザー》を攻撃!」
零児 LP3600→1200
「《DDD怒涛王シーザー》がフィールドから墓地に送られた場合、デッキから「契約書」カードを1枚手札に加えることができる。《魔神王の契約書》を手札に」
く、サルベージ効果を持っていたのか!攻撃は迂闊だったか・・・?
「・・・バトルフェイズを終了して、俺はレベル8の《裁きの龍》2体をオーバーレイ!」
「!?これは・・・!」
「2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築・・・エ ク シ ー ズ 召 喚 !出でよ、ランク8!《森羅の守神 アルセイ》!このモンスターは、カード名を1つ宣言することで効果を発動できる!、デッキの一番上のカードをめくり、めくったカードが宣言したカードなら手札に加え、違えば墓地に送る。俺は《オネスト》を宣言して、効果発動!・・・めくったカードは《ライトロード・ハンター ライコウ》。このカードを墓地へ送る」
「違ったかぁ・・・!」
「《オネスト》があれば次のターン持ちこたえられたのに!」
「いや、こっちが本命だ!この瞬間、《森羅の守神 アルセイ》のオーバーレイ・ユニット1つを取り除き、第二の効果を発動!カード効果によって自分のデッキからカードが墓地へ送られた場合、フィールドのカード1枚を選択して持ち主のデッキの一番上または一番下に戻す!この効果により、《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》をデッキの一番下へ!」
効果の宣言を受け、零児は《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》のカードをデッキの一番下に差し込んだ。インチキじみたサーチ効果を持つ《地獄門の契約書》でまた手札に戻ってくるかもしれないとはいえ、このプレイングは確実に無駄にはならないはずだ。
「墓地の闇属性モンスター《暗黒竜 コラプサーペント》を除外することで、手札から《輝白竜 ワイバースター》を特殊召喚。俺はこれで、ターンエンド・・・」
未来 LP4000 hand:0
フィールド:3 ☆8《裁きの龍》ATK/3000
★8《森羅の守神 アルセイ》DEF/3200
☆4《輝白竜 ワイバースター》DEF/1800
魔法・罠:0
デュエルディスクのターン表示が零児に切り替わる。が、なかなか零児のターンが始まらない。どうしたものかと注目すると奴は、笑っていた。
「なぜ、今まで気付かなかった・・・!ペンデュラムも完成系ではない事に!」
「何の話だ」
「君にも見えたのではないか?ペンデュラムの新たな進化の可能性が・・・私が今からそれを実証して見せよう!私の、タ――」
「・・・なんですって?」
「マルコ先生が!?」
「「?」」
「零児さん!」
突如、デュエルに水が差された。赤馬理事長に耳打ちしているのは、LDSの中島さんだ。いつの間にそこにいたのだろう・・・?
「どうした、中島・・・」
『――!』
「・・・」
通信が終わるや否や、零児は俺を通り過ぎ、神殿の階段を駆け下りていく。
「零児!何があっ――」
「この勝負、預ける」
「・・・っ!」
声をかけるが振り返りもしない。独りフィールドに取り残された俺はひどく滑稽だった・・・
―修造のン熱血指導デュエルにて―
修造「・・・よくやった遊矢・・・お前に伝えるべきことは、全て伝えた・・・ガクッ」
遊矢「塾長ーーー!」
かくして遊矢は修造塾長とのデュエルの中で新たな扉を最初に開いたパイオニアとしての責任に目覚めたのだった!第二講完!
柚子「勝手に終わりにするなぁ!」
未来「東方は、赤く燃えている・・・」
素良「?夕日は西日だよ?」
未来「遊矢が元気を取り戻してくれて良かった・・・さすがは塾長。俺もまだまだ未熟だな」
素良「(逃げたな)」
_______________________________________________________________________
オリジナルアクションカードについて
《ソーラー・リチャージ》
魔法|アクション
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで1000アップする。
参考:《ハイダイブ》,《エクストリーム・ソード》
いつもの
《死線》
魔法|アクション
このカードを発動するターン、戦闘によって発生する互いのプレイヤーへのダメー
ジは0になる。
①:自分フィールド上で攻撃力が一番低いモンスターがその攻撃力以下の攻撃力を持
つモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊し、
その攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
参考:《エクスプロード・ウィング・ドラゴン》
カード名変えたい・・・
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