リンドウ登場。
目が覚めた時、ユウは自室のベッドの上にいた。
サカキの言う通りだと、メディカルチェックは終わっているはずだ。
1つ欠伸をすると、ユウはロビーに戻る。
そこで、楠リッカと百田ゲンに会い、リッカから兵装の重要性と神機装備の重要性、ゲンからは近接武器、銃身、装甲について教えてもらった。
今まで、そのへんに転がっている鉄パイプなどで身を守ってきたユウからすると、全てが新鮮である。
その後、ミッションカウンターの前に立っていたツバキに訓練を受けた。
その際、終始ツバキが、何故こいつはロングを片手で……とか、……とかどんな骨格をしてるんだ、とか、何かをボソボソと言っていたが、細部の方があまり聞き取れなかった。
レイならバッチリ聞こえるのに、となんとなく思う。
「では、これから任務についてもらう。横にいる竹田ヒバリに話しかけ、ミッションを受注するように。その後、兵装を整えたらここで待機だ、いいな?」
「はい、わかりましたツバキ教官」
「よろしい、期待しているぞ」
ツバキはユウの肩をポンと叩くと、エレベーターに乗ってどこかへ行ってしまった。
ひとまず、ユウはヒバリに声をかける。
ヒバリは丁寧に任務受注の方法、兵装の整え方、出撃の仕方について教えてくれた。
教えてもらったとおりにミッションを受注し、ターミナルで兵装を整えると、ユウは指示された待機場所に腰をかけた。
ーーーー
しばらく待っていると、黒いロングコートを着た男性が、ターミナルのある上階から降りてきた。
その男性に、ヒバリが声をかける。
「あ、リンドウさん。支部長が見かけたら、顔を見せに来いと言っていましたよ?」
「オーケー、見かけなかったことにしといてくれ」
帰ってきた素っ気の無い返事に、ヒバリは苦笑を浮かべる。
男性は、ユウの前まで歩いてくると立ち止まった。
ユウは、そっと立ち上がった。
「よう、新入り。俺は「雨宮リンドウ」。形式上、お前の上官にあたる。……が、まあめんどくさい話は省略する。とりあえず、とっとと背中を預けられるぐらいに育ってくれ、な?」
「はい!僕は霧黒羽ユウです、よろしくお願いします、えと、リンドウさん?」
ユウは少し首をかしげながら言った。
なんと呼べばいいのかわからなかったからである。
リンドウは笑顔を見せたまま何も言わなかったので、今後もそう呼ぶことにした。
反応を見たところ、どうやらそこまで厳しい人では無いらしい。
ツバキに雰囲気が似ていることから、性格も似たようなものかと思ったが、そんなこと無く、ユウはホッとした。
(……ってか、この人前にあった気が……いつだっけ?)
「あ、もしかして新しい人?」
リンドウの側に、黒髪を短く切りそろえた女性がやってきた。
布を紐で吊り首後ろでくくり、腰よりの背中で止めたのトップス、腰に巻き付けたスカートは、右足を大きく露出させている。
いろいろに際どい服装だが、すごい美人である。
目の行き場に正直困る。
「あー、今厳しい規律を叩き込んでるんだからあっち行ってなさい、サクヤ君」
「了解です、上官殿」
リンドウがそういうと、サクヤは笑顔を浮かべながらユウにひらひらと手を振ると、どこかへ歩いていった。
そのサクヤを見送るリンドウの横顔が、いつか助けてくれたゴッドイーターと重なった。
「あーっ!!」
「うおっ、どうした新入り」
突然の大声に、リンドウは驚いてユウの顔を見た。
ユウはリンドウにわたわたしながら言いたいことを伝える。
「あの時のゴッドイーター、リンドウさんだ!ほら、覚えてませんか、8年前ここにかつぎ込んでくれたじゃないですか!」
「お、落ち着け……っと、8年前といやあ、あの兄弟か!よく生きてたなぁ!」
ユウの勢いにたじたじしながら、リンドウは8年前を思い出す。
ゴッドイーターになってまだ日が浅かったあの頃、助けた子供が確かにいた。
2人とも大怪我で、特に弟の方は酷く、助からないのではと思いながらアナグラにかつぎ込んだ。
しかし2人は、生き残った。
油断出来ない状態だったが、ホッとしたのを覚えている。
そのうちの1人が、今ここにいて、自分に笑顔を向けている。
「はい!あの時はホントに有難う御座いました!おかげで2人とも生きてこれましたよ」
「おー、弟も生き残ったか。あの怪我で生き残るとかすげぇな……。そうだお前、なんであの時逃げたんだ?結構な騒ぎになったんだぞ?」
「あ、はは……す、すいませんでした……」
リンドウが言い寄ると、ユウはリンドウから視線を外して謝る。
そう、ユウと弟のレイは助けてもらったのにも関わらず、支部から逃げ出したのだ。
逃げ出したいと言ったのはユウではなくレイだったのだが、弟の我侭をユウは聞き入れたのである。
リンドウはユウの顔からなんとなくだが何かを察したらしい。
ユウの肩をポンポンと叩いて笑顔を見せた。
「まあ、過ぎたことだ、気にしなくていいぞ。とまあ、そういうワケで……だ。さっそくお前には実戦にでてもらうが、今回の緒戦の任務は俺が同行する……っと、時間だ。そろそろ出発するぞ」
「はい!」
ーーーー
初任務の場所は、贖罪の街だった。
始めて来たこの場所の雰囲気を肌で感じ、ユウはゴクリと唾を飲む。
隣に立つリンドウが少し寂しそうに口を開いた。
「ここもずいぶん、荒れちまったな」
荒れる前の街がどんなものだったのか、ユウにはわからない。
しかし、この大きなビルの残骸を見れば、ここは人が集まり栄えていた事が予想できた。
アラガミが現れなければ、この場所は今でも人々で賑わっていたことだろう。
なんだか物寂しくなってしまった。
「おいユウ、実地演習を始めるぞ」
リンドウに声をかけられ、ユウはリンドウに向き直る。
「命令は3つ、死ぬな、死にそうになったら逃げろ、そんで隠れろ。運がよければ隙をついてぶっ殺せ。あ、これじゃ4つか?」
「そうですね」
数え間違いに、ユウは思わず吹き出し、リンドウもつられて笑う。
初陣だというのに、ユウは全く緊張しなかった。
「ま、とにかく生きのびろ。それさえ守れば、あとは万事どうにでもなる」
「はい!」
「さーて、おっ始めるか!今回の任務は、オウガテイルの討伐だ。ま、気楽に行こうや。落ち着いてりゃ、大した相手じゃない。まずは敵の動きをよく見ろ」
立っていた高台から飛び降り、移動しながらリンドウはユウに戦闘のノウハウを教える。
ユウはそれを聞きながら周囲を警戒した。
「あんま敵の正面に立ちすぎるなよ。頭からバクっといかれちまうからな」
「了解です。あ、いました」
物陰にサッと隠れ、ユウは神機を銃形態に変化させて構える。
それを見て、リンドウはやけに様になっているなと感じた。
そこで、一緒に突っ込む予定だったのを変更し、ユウ1人にやらしてみることにした。
「よし、お前好きにやってみろ。やばくなったら俺が助けに入ってやる」
「了解です」
そう言うと、リンドウは近くの高台に飛び上がり、そこに腰を下ろした。
ユウはそれを視界の端に捉えながら、1つ大きく深呼吸をし、引き金を引く。
「グギャアッ!?」
アサルトから打ち出されたバレットは、オウガテイルに見事命中した。
それを確認すると同時に、ユウは神機を剣形態に戻して物陰から飛び出す。
ユウを補足したオウガテイルは、ユウに向かって尾から針を飛ばした。
ユウはそれを跳躍して躱すと、神機を振り上げる。
自由落下の勢いを乗せながら、オウガテイルの脳天めがけて思い切り振り下ろした。
「うおおりゃあああっ!」
ぐじゃぁ、という音を立てながら、脳天を真っ二つに両断されたオウガテイルは、ゆっくりとその場に倒れた。
ユウは神機を捕食形態に変化させ、オウガテイルのコアを抜き取る。
「おおー、ハデにやったなぁ」
気がつくと、リンドウが高台からおりて隣にやって来ていた。
その顔には驚きが浮かんでいた。
「いい動きだったぞ、ユウ。初陣にしちゃ上出来だ」
「有難うございます」
ニコリ、とユウは嬉しそうに笑う。
その笑顔を見ながら、リンドウは内心さっきのユウの動きに動揺していた。
動きというよりも、破壊力というべきだろう。
リンドウ自体はやっているので違和感はないが、普通ならいくら小型のオウガテイルだからといって、脳天を真っ二つに両断するなどということはベテランのゴッドイーターでもあまりやらない。
それを初陣の新兵がやったのだ。
誰がこの場にいたとしても驚くだろう。
だが、ここは初陣なのに臆することなく討伐した新兵の果敢さを褒めるべきで、今後この戦い方が危険な時に注意すればいいだろう。
そこまで考えて、リンドウはあることを思い出した。
「ま、よく頑張りました。次も頼むぞ。ああ、そーだ、このあとサカキのおっさんがラボで講義をするって言ってたぞ。眠くなるだろうが寝るなよ」
「はい、了解です」
ーーーー
神機を保管庫に戻し、ユウがサカキのラボに入った時、既にコウタはやってきていた。
「来たね」
「遅くなりました」
すいません、と軽く頭を下げると、コウタの隣に腰を下ろす。
それを見届け、サカキは話を始めた。
「さて、いきなりなんだけど……キミはアラガミってどんな存在だと思う?」
「えっ?」
サカキの突然の問に、ユウとコウタは顔を見合わせた。
アラガミとはどんな存在か。
そんなこと真剣に考えたことなど、ユウとコウタには無かった。
「「人類の天敵」「絶対の捕食者」「世界を破壊するもの」。まぁ、こんなところかな?これらは、認識としては間違ってない。むしろ、目の前にある事象を素直に捉えられていると言えるだろうね。じゃあ、何故どうやってアラガミは発生したのか?って考えたことあるかい?」
「えっと……」
「キミたちも知っての通り、アラガミはある日突然現れて、爆発的に増殖した。そう、まるで進化の過程をすっ飛ばしたようにね」
ユウが答える前にサカキが回答を言ってしまう。
だったら聞くなよ、とユウは思った。
既にコウタは飽きてきたようで、グッと背伸びをしながら欠伸をした。
そして、ユウにこっそりと話しかける。
「ふぁぁぁぁぁ……なぁなぁ、この講義なんか意味あんのかね?アラガミの存在意義何かどうでもよくね?」
「あはは……あ」
「ん?」
コウタの言い分に、ユウは苦笑いで答えた。
講義があるということはそれなりに大事なことなのだろう。
最も、ユウも内心では意味無いんじゃないかなぁと思っているが。
ふと、ユウが視線を上げると、コウタのすぐ隣にサカキが立っている。
いつも通りの笑で、静かに立っているのだ。
なんだろう、なんていうか、怖い。
これがユウの感想だった。
「そうかね?」
「ひっ!?」
「アラガミには脳がない。心臓も脊髄も存在しない。私たち人間は頭や胸を吹き飛ばせば死んじゃうけど、アラガミはそんなことでは倒れない」
突然声をかけられ、コウタは飛び上がりそうになりながらサカキの方を向いた。
サカキは、コウタの頭と胸のあたりを微笑みを浮かべながら小突き、コウタから離れる。
「アラガミは、考え、捕食を行う一個の単細胞生物ーー「オラクル細胞」の集まり……そう、アラガミは群体であって、それ自体が数万、数十万の生物の集まりなのさ。そしてその強固でしなやかな細胞結合は、既存の兵器では、全く破壊できないんだ。じゃあキミたちは、アラガミとどう戦えばいいんだろうね?」
「えーと、それは……神機でとにかく斬ったり撃ったり……」
サカキの問に、わたわたとしながらコウタが答え、ユウはコクコクと頷き、肯定の意を示す。
それを見て、サカキは満足そうに1度だけ頷いた。
「そう、結論から言えば同じオラクル細胞が埋め込まれた生体武器「神機」を使って、アラガミのオラクル細胞結合を断ち切るしかない。だがそれによって霧散した細胞群もやがては再集合して、新たな個体を形成するだろう彼らの行動を司る司令細胞群……「コア」を摘出するのが最善だけど、これはなかなか困難な作業なんだ」
クク、とサカキが笑う。
何が面白いのかユウにはわからない。
サカキは笑顔のまま話を続ける。
「神機をもってしても、我々には決定打がない。いつのまにか人々は、この絶対の存在をここ極東地域に伝わる八百万の神に喩えて『アラガミ』と呼ぶようになったのさ」
そう言うと、サカキはふう、と息をついた。
そして、懐中時計を取り出して時間を確認すると、再び笑顔を見せた。
「さて、今日の講義はここまでとしよう。アラガミについては、ターミナルにあるノルンのデータベースを参照しておくこと。いいね?」
講義が終わり、2人はサカキのラボからさっさと退散した。
コウタはもう一度大きな欠伸をし、それを見てユウがクスクスと笑う。
2人で新人区画に戻って解散し、各々の部屋に戻った。
ユウは部屋に入って一息つくと、ターミナルを開きノルンのデータベースから今日の講義の内容を呼び出して復習を始める。
(今まで出来なかった分今やっとかないとね)
アナグラに来るまでの生活を思い出し、ユウはクス、と笑った。
第2話です。
まず最初に。
遅くなってすみませんでした<(_ _)>。
これからできる限りペースよく投稿していくつもりですので、どうか見捨てないで……。
というわけで今回は、ユウ君初の実戦回でした。
思わぬリンドウさんとの繋がり。
でも計算すると、リンドウさんがゴッドイーターになって割とすぐの出来事だったりするという。
リンドウさんすごい。
そして博士。
ユウとレイが脱走した原因なのですが、ユウは別に逃げるつもりはなかったという。
つまりはレイが悪い。
博士ごめん。
そして兄弟に共通する超人的能力。
ツバキさんが吃驚していました。
この戦い方はそのうちに書いていきますが、割と人間離れしてる。
そんな感じで続けますのでよろしくお願いします。
感想、お待ちしています。