コウタとコンゴウを倒す回。
リンドウの部屋での談笑が終わった時、リンドウは思い出したかのようにユウに次の任務について話した。
次は同じ新人のコウタと一緒に行うらしい。
「おお?今回はユウと一緒か?」
「そうだよ。よろしく、コウタ」
「あっと……聞いたよ……同行してた人が亡くなったって……」
柄にもなく、コウタは苦い顔をしながらしゅんと沈んだ。
ユウも、エリックがアラガミに頭から食われる光景を思い出して落ち込む。
「……うん」
「うーん……ここで2人して暗くなっても……どうしようもないことだと思うんだ……うん……大丈夫だよ、自信持とうぜ!根拠なしに決めてるから!無敵っしょ!元気だしてこうぜ!!」
「……うん、ありがとう」
自分で振った話題がまずいと思ったのか、コウタは慌てて明るく振舞った。
その様子に、ユウはつい吹き出してしまった。
「とにかくお互い無事で何よりだね!命あってのこの商売だからねえ」
「ホント、全くだね」
「オレも何かあると、母さんも妹も路頭に迷っちゃうから気をつけないとなー」
「……そうだね」
コウタの言葉に、未だ未保護集落に留まっている義弟のことを思い出す。
義弟は、何故か外部居住区に来ることを拒否した。
逃げ出しといて今更そこにはいられないから、だそうだ。
自ら逃げ出したのだからそういうのも仕方が無いが、ユウはできたら近くに住んでいて欲しいと思う。
あとついでに、ユウが仕送りをすると言ったところ、これも拒否された。
曰く、自分のことは自分でする、気にするなだそうだ。
全く、可愛げのない義弟である。
「あ、そうだ。サクヤさんって知ってる……よね?」
「え?ああ、うん、あの綺麗な人だよね」
突然の質問に、ユウは思考を無理やり引き戻し、質問に応じる。
「もしかして仲いい?あの人ってなんかいいよね。美人だし、感じもいいし、強いしさ。戦うお姉さん、って感じでさ、たまんないよなー!?」
「あはは、そうだね」
コウタの煩悩に、ユウは声を上げて笑った。
そんなユウを見て、コウタがある提案をする。
「よおおし!なんか、テンション上がってきたああ!今回の任務、どっちが多く倒すか勝負しようぜ!」
「いいよ。ま、負ける気はしないけどね」
ユウは自信たっぷりに言った。
舐めている訳では無いが、今までのようにやれば大丈夫な気がするのである。
「言ったな!よーし、サクヤさんに、いいとこ見せてやるぜー!」
「……そこなんだ」
コウタの一言に、ユウは苦笑いを浮かべた。
ヘリに乗り込んで、現地の鎮魂の廃寺に着くまで、コウタに妹の話やら何やらいろいろ聞かされ、ユウはそれに笑顔で応じた。
素直に楽しかったのだ。
そうこうするうちに、ヘリは廃寺までやって来ており、指定された場所に着陸する。
ヘリの中と外気の温度差に驚きつつ、2人はヘリから降りた。
廃寺には雪が降っていた。
「うう、寒い……」
「……その格好じゃ流石に寒いよ」
ガタガタと震えているコウタに苦笑しながら、ユウは警戒態勢をとる。
どこに敵がいるのか分からないからだ。
震えながら、コウタもユウに習って警戒態勢をとった。
ゆっくり、なるべく足音を立てないように歩いていると、捕食しているアラガミを視界にとらえた。
それは、猿のような姿をしていた。
今回のターゲットのコンゴウである。
「……うん、あれはどう見ても猿だ」
ユウは、初めて見るコンゴウにそういう感想を抱き、小さく呟いた。
コウタもそう思ったようで、くくっと声を殺して笑った。
そして、寒さで悴んだ手をこすり合わせると、意を決して持っているモウスィブロウを構えて飛び出した。
バレットをコンゴウに当てながら、コウタが叫ぶ。
「ゴリラみたいな図体しやがって、黒焦げにしてやる!」
「成程、確かに猿っていうよりゴリラか」
コウタの言葉にウンウンと納得しながら、ユウも物陰から飛び出してコンゴウに切りかかる。
一撃目でコンゴウの尻尾を結合崩壊させ、そのまま飛び上がりながら捕食を行う。
着地と同時にバックステップで少し距離を置いて、神機を銃形態に切り替え、その銃口をコウタに向ける。
そのまま引き金を引き、コウタにアラガミバレットを受け渡してバースト状態にもっていく。
「コウタ!」
「!?何コレ!?」
「バーストモードだよ!使って!」
初めてのバーストモードに驚きながらも、コウタはニヤリと笑いながらバレットで弾幕を張る。
「おらおらおらぁ!!」
銃撃により、コンゴウがコウタに気を取られているスキに、ユウはエリア内をパルクールを駆使しながらコンゴウの後ろに回り込むと、ブレードを構える。
背中のパイプを破壊しようと思っての行動だ。
しかし。
「……コウタ、僕の事忘れてるかも」
そう、ユウが突撃するスキが無い程にコウタが撃ちまくっているのである。
初めてのバーストモードでテンションが上がり、撃っても回復し続けるOPによって普段なら有り得ないほどに打ち続けることが出来るため、張り切っているのだろう。
今突っ込んだら、いくら避けられるとしても流石に誤射の餌食になりかねない。
「うーん、バーストさせない方が良かったかなぁ。ま、ちょっと待とう」
少し反省しつつ、コウタの弾幕が収まるのを静かに待つ。
その数秒後、コウタのバーストが切れた瞬間、ユウは一気にコンゴウに近付くと、前宙をしながら捕食をする。
着地と同時に、振り向きながらコンゴウの腹を目掛けて思い切り振り抜いた。
「グギャアアアアッ!!」
腹を大きく切り裂かれ断末魔をあげながら、コンゴウはその場に崩れ落ちる。
すかさず、ユウは神機でコンゴウを捕食し、コアを抜き取った。
「ふぅ、終わりっと」
「すっげーなユウ!コンゴウを一撃かよ!」
「まぁね。コウタのアシストのお陰だよ」
駆け寄ってきたコウタと、ユウはハイタッチを交わした。
「勝負は僕の勝ちだね」
「ちぇー。次は負けねーからな!」
ユウの一言に、コウタは拗ねたようにプクッと頬を膨らませた。
それを見て、ユウはクスクスと笑う。
それにつられて、コウタも笑った。
2人でひとしきり笑った後、迎えに来たヘリに乗り込んだ。
ーーーー
任務が終わり、休憩ができるかと思っていたが、そうではなかったらしい。
すぐにサカキの講義が始まった。
座学が嫌いなコウタは、かなり嫌そうにしていたが、すっぽかす訳にもいか無いので、げんなりとしながらラボのソファに腰をかけた。
続いて、ユウも腰をかける。
「アーコロジーという言葉を知っているかい?」
2人が座った途端、サカキは即座に講義を開始した。
突然の質問に、ユウは少し戸惑いながらも、ノルンから得た知識を必死に思い出す。
「えっと……「それ単体で生産、消費活動が自己完結している建物」でしたっけ?」
「そう、実はアナグラを中心としたフェンリル支部は一種のアーコロジーだといえるんだ。これって、極端な話、ある支部を除いた全てのフェンリル組織が滅んでも、残った支部は単独で生産、消費活動を行い、今まで通りに生き残ることが可能ってことなんだよ」
ユウの答えに満足したのか、笑顔で1度頷くと、サカキはいつものようにつらつらと説明を開始した。
「アナグラは地下に向かって食料や神機、各種物資の生産を行うプラントがあり、外周部には、対アラガミ装甲壁や、キミたち優秀な神機使いをはじめとした、強固な防衛能力もある。それがフェンリル支部であり、人類を守るために最適化されたアーコロジーなんだよ」
パッとモニターが切り替わる。
映し出されたのはアナグラの地下プラントの映像だ。
「ただ、そこにも問題があって、それは収納可能な人口に限りがあることなんだ。君たちも知っているとおり、この極東支部の周囲には広大な外部居住区ご形成されている。しかし、彼らすべてを収容するだけの規模は、まだこの支部にはない。外周部に対アラガミ装甲壁を巡らすことが、今できる最大限の対処法なんだ」
「……それだけで足りるのかな。現に装甲は頻繁に突破されてるんじゃ……」
不意に、コウタが口を開いた。
寝ているとばかり思っていた人物の発言に、ユウは思わず目を見開いた。
この言葉に、サカキは即座に反応をする。
「だからそのためにゴッドイーターの防衛班も配備されている……いや、すまない。コウタ君のご家族は外部居住区にいるんだったね。軽率な物言いを許してくれ」
「いえ、俺はただ……」
サカキは失言に対してコウタに頭を下げた。
コウタが慌てて言い繕おうとするが、言葉が思いつかなかったのか言い淀む。
「本当はアナグラを地下に向けて拡大して内部居住区を増やす計画もあったんだけどね……」
「でも、その計画をより安全で完璧にしたのが『エイジス計画』なんだよね!」
言い訳のようにサカキが言う。
ユウは、コウタの言う『エイジス計画』というのは初耳だったが、もしそれが本当に実現できるなら凄いことなのだろう。
「そうだね。現状、極東支部の地下プラントの多くのリソースはエイジス建設に割り当てられているんだ。……その話はまた今度にしようか」
コウタを肯定したサカキの表情は、少しさみしそうだった。
それが何故かは分からないが、なにか理由があるのだろう。
クスリ、と笑うとサカキはそこで講義をお開きとした。
ーーーー
講義が終わり、2人でロビーへ戻る途中、コウタがユウに話しかけた。
「いや、すげぇ!俺とユウの見事な連携!息ピッタリだったよな?ってか最強コンビじゃね?こりゃあ、家帰ってノゾミに自慢できるぜ。地球の平和は俺が守る!ってさぁ!」
「えー、コウタ絶対僕のこと忘れてたでしょ?被弾するかと思ってひやひやしたんだよ?」
「えっ」
気が付かなかった、とばかりに目を丸くしてコウタは驚いた。
その様子を心の中でかなり笑いながら、ユウは笑顔でコウタの肩をぽん、と叩いた。
「大丈夫、次気をつけて!」
「お、おう」
爽やかな笑顔で言うと、コウタは何故かタジタジとした。
まあ、笑顔の中に次やったら分かってるよね?的な圧を込めたため、それを感じ取ったのだろう。
その反応にまた心の中で笑う。
そんな感じでしばらく話しながらロビーに戻ってくると、リンドウがソファの上でタバコを吸っていた。
2人が戻ってきたことに気がつくと、リンドウは立ち上がって2人の前まで歩み寄ってきた。
「おっ!お前等すごいじゃないか!コンゴウを倒せたんだって?」
「なんとか……コウタもいましたし。ね?」
「おう!」
コンゴウを倒せたこと、すごいと言われたことで少し余裕をかます2人を見て、リンドウは若いなと思いつつ苦笑する。
「いやあ、大したもんだぜ実際。そのうち内職の方も頼みたいぐらいだな……っと、それはさておき、だ。お前等があのアラガミを倒した寺の跡があっただろ?あの辺、俺が子供の頃住んでたとこなんだよ」
「え、そうなんですか?」
ユウとコウタが2人揃って首をかしげた。
リンドウは、うんうん、と一人頷きながら、少ししんみりとした声音で、少しずつ話を進める。
「俺とサクヤ、あと姉上……えっと……ツバキ教官だな。皆あの近くの出身なんだ……今や見る影もないけどな……いかんいかん、感傷的になってる場合じゃない。ま、とにかくよくやった、ということで……よし、備えを怠らずに待機しておけ。以上だ」
「了解です!」
ビシッ、とリンドウに向けて2人は敬礼をする。
それを見て、リンドウが少し驚いたかのように目を丸くした。
そして、3人で吹き出したのだった。
めっちゃ遅くなりましたすいません。
書いてはいたのですか中々進まず。
そしてリアルの要件が重なる、書こうとして寝落ちという何とも馬鹿な悪循環を繰り返しました。
その結果がこれだよ!
ほんとすみません。
非常にゆっくり更新ですが、見捨てないでいただけると有難いです。
そしてユウ君、君いつからSになったんだ。
そんな4話でした。
感想、お待ちしています。