Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~   作:cibetkato

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 ※Attention!!

 XANXUSさんは、ちっちゃいツナ様にあっさりとたぶらかされます。←









 注意はしましたよ?

 よろしいですね?

 では、お読みください。

 ↓ ↓ ↓


はじまり
ちびツナ、XANXUSに懐く


 

 その日は、ボンゴレの創立を祝うパーティーが行われていた。

 

 ボンゴレ9代目の息子という立場からおべっかを使う大人達の相手に疲れたXANXUSは、パーティー会場を見渡せる二階のソファーに座っていた。

 

「Ciao!・・・俺はツナだよ」

 

「・・・あ?」

 いつの間にか、ニコニコと笑う子どもが目の前にいた。年の頃は3つくらいだろうか?

 

 自分の顔はあまり子ども受けはしないだろうことは知っている。ついでに言うと口も悪い。

 

 だから、あまり自分の周りには人が集まらない。いや、集まってくるにはくるが、大概がボンゴレの名にたかる者か、こんな自分でも仕えたいという変わり者ばかりだ。

 

 まぁ、マフィアにまともな者がいるのかと聞かれれば首を傾げざるを得ないが。

 

 というわけで、こんな天使のような笑みをうかべるおっとりした子どもが近付いてきて、正直どのように扱ったらいいのかよくわからなかった。

 

「・・・お兄ちゃんは?」

 

 名を訊ねられているのだろう。そう気付いて自分でも驚くほど素直に名を教えた。小さな子どもにもわかるようにペーパータオルに綴りまで書いて。

 

「・・・XANXUS」

 

「XANXUS?・・・ふぅん、まるで10代目になるぞ~っていう名前だね」

 

 ニコニコと子どもに言われて、XANXUSはギョッとした。確かにここはボンゴレが主催するパーティーの会場だ。

 

 だが、こんな小さな子どもがその辺りの事情を理解して参加しているとは思えない。

 

「・・・お前、何者だ?」

 

「お前じゃないよ。ツナだよ」

 

 どうやらツナと呼ばれることにこだわっているらしい。ぷ、とむくれる顔がまた可愛らしい。

 

 自分にそんな感情があるとは思いもしなかったXANXUSは、マジマジとその子どもを見つめ嘆息した。

 

「・・・ツナ」

 

「なーに?」

 

「・・・ツナは誰と来た?」

 

 とりあえず保護者を探さねばなるまい。そう思って訊ねると、ツナは会場の前の方を指差した。

 

「お父さんとお母さん。・・・ほら、あのお爺ちゃんと話してるよ」

 

 指差された方を見てXANXUSは固まった。ツナが指差した人物は己の父であるボンゴレ9代目。その目の前にいる若い夫婦と見られる男女は・・・。

 

「門外顧問の夫妻、か?」

 

 父の友人であると紹介された門外顧問、沢田家光。ボンゴレ初代の血筋を組むという日本人。

 

「・・・そうか、お前も10代目候補か」

 

 他の10代目候補達には負ける気がしていなかった。自分は9代目の実子であり死炎も比べるまでもない。

 

 だがこの子どもはどうなのだろう。長じて己を脅かす存在になりはしないだろうか。まがりなりにも門外顧問の息子であり、ボンゴレ初代の血をひいているのだから。

 

「知らない。お父さん何も言わないもん。言ってもわからないって思ってるんだよ」

 

「・・・なら、どこで・・・ボンゴレのことを知った?」

 

「今日ね、いろんな人が俺をちらちら見ながら言ってた。良いことも、悪いことも」

 

 良いこと、悪いこと、と言葉を濁したがなんとなく察する。XANXUSは思いの外この子どもが状況を理解していることに気付いて、きつい視線を向ける。

 

「お前・・・」

 

「お前じゃなくて、ツナだってば」

 

 怯えることなく自分を見つめ返した子どもに、XANXUSは思わず口元を緩めた。

 

「・・・俺を怖がらねぇとは、面白いやつだな」

 

「俺、面白いことなんて何も言ってないよ。・・・ねぇXANXUS、1つ訊いていい?」

 

「・・・言ってみろ」

 

「XANXUSは人を殺したことがあるの?」

 

 一瞬、息を詰めた。

 

 あまりにもあっさりと、嫌悪を表すこともなく、淡々と訊ねられたからだ。

 

「・・・俺は、マフィアのドンの息子だ。・・・それなりに修羅場はくぐってきてる」

 

 なぜか、直接的な言葉をこのふわふわとした子どもにぶつけることがためらわれて、XANXUSはそうやって言葉を濁した。

 

「ふぅん。殺したこと、あるんだ。・・・俺はね、炎でね、腕が炭になっちゃったりね、氷でね、足かちんこちんにしちゃったりね。あと・・・」

 

「おい、ちょっと待て」

 

 XANXUSは慌てて子どものお喋りを止めた。

 

「なーに?XANXUS」

 

「炎はわかるが・・・お前、“零地点突破”が出来るのか?」

 

「だから、ツナだってば。・・・あぁ、あれ“零地点突破”っていうの?」

 

 無自覚でやっているらしい。どうやらこと細かく聞く必要がありそうだとXANXUSはツナを抱え上げ、別室へと連れて行くことにする。

 

「XANXUS、どこ行くの~?」

 

「・・・静かなトコだ」

 

 短く答え、XANXUSはパーティー会場から程良く離れた一室に入り込む。そしてツナをソファーに降ろし、詰問の態勢に入った。

 

「ツナ、お前・・・」

 

「ああ、XANXUSの聞きたいことはわかってるよ。俺、読心術使えるから」

 

「!?」

 

 今までのふわふわとした雰囲気が拭い去られて冷たい雰囲気をまとった子どもに、XANXUSはギョッとする。

 

「お前、猫被ってやがったのか!」

 

「お前じゃなくてツナだって言ってるじゃない。それに嘘はついてないよ。言わなかっただけ」

 

 騙された、と感じたXANXUSの感情を読んだのか、ツナは困ったように首を傾げた。

 

「・・・ああ、成程な。猫を被ってた理由はわかる。面倒事に巻き込まれるからだろう?」

 

「それでも、狙われる。・・・酷いんだよ、こんな“いたいけ”な子どもに、おっかない顔して拳銃を突きつけるんだから」

 

「誰が“いたいけ”なんだよ?誰が。・・・どうせその調子で先読みして、返り討ちにしてんだろうが」

 

 呆れたように言えば、ツナはニコニコと笑う。

 

「XANXUS、開き直った~?いいね、素直な感情。・・・ねぇ、俺のこと、嫌いになった?」

 

 ツナはそう問うて、上目遣いで小首を傾げる。

 

「・・・訊かないで、読めばイイだろ」

 

 小悪魔というのはこういうのを言うのか、と思うくらいにあざとい笑顔だ。

 

「直接言って欲しいなぁ」

 

「・・・この、クソ餓鬼!カッ消すぞ!!」

 

「きゃぁ!XANXUSこわーい!!」

 

 言う程怖がってはいないだろうことはわかる。ツナがニコニコと笑みをうかべているから。

 

「・・・じゃねぇ」

 

「ふぇ?・・・何?」

 

 ぼそり、と言ったXANXUSの言葉が聞こえなかったらしく、ツナはキョトンとした顔でXANXUSを見上げた。

 

「だから・・・嫌いじゃねぇって、言ってんだ」

 

 いや、むしろ好敵手として認めてしまっている。こいつとなら10代目の座を巡って争って、たとえ負けたとしても悔いがない気がする。そうまで思ってしまった。

 

「ふぁ・・・あ、ありがと」

 

 そんなXANXUSの率直な思いを訊かされたツナは、ポン、と真っ赤に顔を染めた。超直感を持ち幾分かスレた性格をしていても、子どもは子ども。自分への好意に素直に反応してしまったのだ。

 

 そんなツナを見て、XANXUSも思わず頬が熱くなる。

 

(なんなんだ!?この可愛い生き物は!!)

 

「あのね・・・XANXUS・・・俺もXANXUSのこと嫌いじゃないよ!だって、かっこいいんだもん!」

 

「~~~ッ」

 

 かっこいいなんて言われたことなどないし、この子どもの性質では確実にお世辞など言わないだろうから本気だ。

 

 そう気付いたらXANXUSはますます顔が熱くなって、絶対に耳まで真っ赤になっているはずだ、と思う。

 

「顔、真っ赤っかだぁ」

 

「ッ・・・戻るぞ!」

 

「え~、もう?猫を被んのめんどくさい~。せっかく“同志”を見つけたと思ったのに~」

 

 どうやらツナはパーティーに退屈していたらしく、同じように周りに壁を作っていたXANXUSを“同志”と認識して声をかけて来たようだ。

 

「そう言ってもな、お前の親父が心配するだろ。・・・というか、親の前でも猫を被ってやがるな?」

 

「えへへ~、だって、面白いんだもん」

 

「ったく、そんな可愛らしい笑顔しても、もう騙されねぇぞ」

 

「ちぇ~」

 

 軽口をたたき合いながらパーティー会場に戻ると、案の定、心配した様子の門外顧問夫妻とボンゴレ9代目に出くわす。

 

「XANXUS・・・綱吉君と一緒だったのか」

 

「・・・綱吉っていうのか」

 

 “ツナ”呼びにこだわっていたが本名は随分とごつい名前だ。とXANXUSが思うとツナはぷくっと膨れた。

 

「ツナだもん」

 

 既に猫を被っているらしいツナに、XANXUSは呆れたような視線を向ける。

 

「面倒を見てくれていたのか?すまないな、XANXUS。・・・まぁ、5歳児の言うことだ。あまり気にするな」

 

「5歳?・・・てっきり、まだ3歳くらいかと・・・」

 

 本音を漏らせば、家光がクツクツと笑った。

 

「ツナは母親似でな。しかも西洋人に比べて東洋人は童顔だからな。年齢より若く見られるのは仕方がない。・・・でも、この時期の子どもに3歳とか5歳とかそんなに差はねぇと思うがなぁ」

 

「いや、さすがに身長とか差はあるだろ・・・確かに“可愛い”が」

 

 思わず言えば家光は爆笑した。XANXUSの父であるボンゴレ9代目も珍しいものを見たと言わんばかりの表情だ。

 

「・・・チッ、お前のせいだぞ、ツナ」

 

「ん~?・・・XANXUSー、抱っこ~」

 

 ツナに八つ当たろうとしたら、腕を伸ばされた。

 

「はぁ?誰が・・・」

 

「さっきみたいに、抱っこして?」

 

 ツナの目がニタリと笑っている。これ以上拒めば何を言い出すかわからない。第一、XANXUSとツナ、発言の信憑性については、嘘をつくはずのない幼いツナに軍配が上がる。

 

(幼いってことまで武器にしやがって!)

 

「・・・ほら」

 

 脇に手を入れて軽々と抱き上げる。嬉しそうに顔を綻ばせるところを見てしまうと、確かに可愛いと思う。

 

「XANXUS、大好き~」

 

 そう言って頬ずりされる。満更でもないXANXUSは大人しくされるがままになっていて、ますます普段のXANXUSを良く知る9代目と家光が奇異なものを見る視線を送ってくる。

 

「XANXUS、随分とツナに懐かれたな」

 

「どうやって仲良くなったんだい?」

 

 家光と9代目に問われ、XANXUSは返答に窮した。ツナが猫を被っていることをバラすのはタブーだとわかっていたからだ。

 

 この2人ならあっけらかんと、そうか、なんて納得しそうだったが。

 

「XANXUS?」

 

「いや・・・なぜか声を掛けられて、名前を教えたら懐かれた」

 

 不審そうな9代目に慌てて返答したら、いろいろ言えないことが多いことに気付いて、重要な部分をはしょったら、酷く簡潔な答えになってしまった。

 

「そうか・・・何か惹かれるものがあったのかもしれないねぇ」

 

9代目の発言は“ブラッド・オブ・ボンゴレ”のことを指しているのだろう。そう思ってXANXUSは素直に頷いた。

 

「さて、ツナも見つかったことですし。9代目、俺達はそろそろお暇しますよ」

 

「何だい、家光。もう少しゆっくりしていけばいいのに」

 

「いえ、これでも忙しい身でしてね。・・・ツナも幼稚園がありますから」

 

「・・・ふむ。長くはイタリアには留まれないとは訊いていたが、まぁ、そう言うことならしょうがないね」

 

 大人達の発言にほんの少し表情を曇らせたツナは、ギュ、とXANXUSの服を握りしめる。

 

「ツナ?」

 

「・・・ヤダ」

 

 XANXUSが不審に思って名を呼べば、ツナがポツリと呟く。きっと猫を被っているぶん滅多に我が儘など言わないのだろう。ツナの母親である奈々がその呟きを耳で拾い、驚いた様子でツナ達に視線を送った。

 

「あらあら、ツっ君。よっぽどこのお兄ちゃんが気に入っちゃったのねぇ」

 

 困ったように笑いながら、XANXUSにしがみつくツナの頭を撫でる。

 

 その慈しみにあふれた視線はXANXUSの全く知らないもので、母親とは本来こういうものなのか?と首を傾げた。

 

「まだ、XANXUSと遊ぶ!」

 

 どうでもこのまま帰る気はなさそうなツナに、大人達は心底困ってしまっている。

 

「ツナ、我が儘言うな。また、イタリアに来ればいい。・・・俺が日本に行っても良い。会おうと思えばいつでも会える」

 

 見兼ねたXANXUSが、説得をする。

 

 どうせ嫌でも会う時が来る。10代目候補同士、いつか本気で戦う時が来る。もちろんその前に遊んでやっても良いと思う。それくらいにはこの子どもをXANXUSは気に入っていたのだ。

 

「ホント?また、遊んでくれる?」

 

 じっとXANXUSを見上げた目は確かに潤んでいて。XANXUSは苦笑をうかべた。

 

(心が読めるならわかるだろ、嘘じゃねぇよ)

 

「・・・ああ」

 

 ハッキリと頷いたXANXUSに、ツナは渋々といった様子で頷いた。

 

「・・・わかった。帰る。・・・Ciao、XANXUS」

 

 最後はXANXUSに聞こえるか聞こえないかくらいの小声で呟き、ツナは大人しく奈々に手をひかれ、何度も振り返りながら、パーティー会場を後にした。

 

「可愛い子だろう?」

 

 9代目が言う。可愛いは認めるがそれ以上に恐ろしいと感じる。5歳でアレ。あっさり受け入れてしまった自分も自分だが、大人達に気付かせないアレがスゴイ。

 

 また代名詞で呼べば、ツナだもんと膨れるだろうか。

 

 意外とあの仕草が好きだったことに気付いて、XANXUSは苦虫を噛み潰したような表情になった。

 

「だが、10代目の座は渡さねぇ・・・次代は俺だ」

 

 負けても良いなんて思ってしまっていたが9代目にはそう言って強がって見せ、XANXUSは退屈なパーティーをサボるためその場を後にしたのだった。

 

 

***

 

 

――1年後

 

 

 XANXUSは残酷な真実を知ってしまった。

 

 そして、後に“揺りかご”と呼ばれる、史上最大のクーデターを起こした。

 

「XANXUS・・・どうして」

 

「どうしてじゃねぇ!テメェは俺をただ憐れんだだけだった!・・・そんなものはいらねぇ!!」

 

 9代目の悲哀に染まった視線がXANXUSを更にイラつかせた。同情なんていらなかった。欲しいのはボンゴレ10代目候補の名。

 

 違う。名目だ。

 

 XANXUSはもう一度ツナに会い、本気で拳を交わらせることを楽しみにしていたのだ。なのにその権利すらないとは。

 

(そんなのは嫌だ)

 

 子どものように駄々をこねた。その規模は史上最大と言われるようなものだったが。

 

(ツナ、俺はお前と・・・!)

 

「・・・XANXUS・・・子の不始末は親の責任だ。・・・許しておくれ」

 

「心にもないことを言うな!憐れみなど、俺に向けるな!」

 

 全てを拒絶したXANXUSの心からの叫びに耳を塞ぎ、9代目は死ぬ気の炎が宿った杖の先端をXANXUSに向けた。

 

「“死ぬ気の零地点突破”・・・Buona notte(オヤスミ)・・・Un bambino adorato(愛しい子)」

 

 ボンゴレ初代の伝説の奥義。その氷により、この後8年間XANXUSは深い眠りにつくことになる。

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