Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~ 作:cibetkato
そして、その時はやってきた。
「ぐあ!!!」
日曜日、いつものメンバーで街へと繰り出し、ひとしきり遊んで、一息入れていたツナ達のテーブルに飛ばされてきたのは、青い炎を額に宿した、同じ年頃の少年だった。
「・・・だ、大丈夫?」
顔を覗き込むツナに、少年はハッと目を見開いた。
「は、はい・・・って、あぁッ!・・・お、おぬしは!」
「・・・お、おぬしって・・・」
「う゛お゛ぉい!!・・・外野がぞろぞろと、集まって来てるじゃねぇかぁ!!!」
ツナがつっこみを入れようとしたその時、頭上からバカでかい声が降ってくる。
「え?・・・えぇ!?」
(アレって確か・・・ヴァリアーの隊服・・・だよね?)
目を丸くするツナの元に、獄寺や山本が寄ってくる。
「ツナ!」
「大丈夫ですか!!10代目!!」
「獄寺君、山本・・・う、うん」
頷くツナに、獄寺も山本もホッとしたような表情をうかべる。だが、ツナはそれどころではなかった。
とうとう、来るべき時が来たのかと拳を固めた。そして、視線を走らせリボーンがいないことに気付く。
(リボーンは、京子ちゃん達を避難させたのか・・・)
「う゛お゛ぉい!!・・・そいつらも関係があるっていうのかぁ!?」
「くっ・・・せっかく会えたというのに申し訳ありません、沢田殿。拙者はバジルと申します。どうやら、つけられてしまったようで・・・」
そう呟いた少年・バジルの方を見て、ツナはああ、と思った。そして彼の心の中を読む。
「・・・あ、あの、なんで俺の名前・・・?」
(なるほど、ハーフボンゴレリング、ね。父さんも本腰上げてきたか。・・・で、9代目、というか、XANXUSも動き出したってことだ)
「いい加減、吐いちまえよ!」
バジルと銀髪の男がぶつかりあい、彼が男に弾き飛ばされ、ガラスのショーウィンドウに突っ込む。
「ああッ!君!!」
ツナが思わずそれを目で追い、それから銀髪の男を見上げ、ビシリ、と固まった。
自分でも気付かなかったが、ヴァリアーの隊服を見たせいで結構動揺していたらしく、男の深層心理を思わず読んでしまったのだ。
彼から読んだ情報は、夢で見た内容と被っていた。
そして、その理由までもを彼は知っていた。
(XANXUS!・・・そういう、ことだったの?・・・だから、あんなこと、したの!?)
知りたかったことの全てを彼は知っていた。それだけ彼はXANXUSに近い存在だったのだろう。そのことにツナは“嫉妬”した。
(ズルイ・・・この人は、俺の知らないXANXUSを知ってる。・・・ズルイ、ズルイ!!)
自分の思考に沈んでいたツナだったが、次の瞬間、ハッとして顔をあげた。
いつの間にか山本や獄寺が倒され、自分の目の前にその男がいたからだった。
「っ!?」
ギョッとするツナを庇うようにしてバジルが立ちはだかる。
「は!・・・俺に勝つつもりでいるのかぁ!そりゃ、無理だぜぇ!!」
ニヤリと笑う男に、ツナは思わず同意した。
(彼には無理だ。・・・この人には敵わない・・・)
ツナが立ち上がろうとしたその瞬間、バジルが男に倒されてしまう。
「・・・限界か」
呟きが聞こえて、ツナはスッとそちらに視線を向ける。
そして、思わずこんな状況であるのに呆れてしまった。なぜなら、リボーンは植木のコスプレをしていたからだった。
「・・・着替える暇があったら、さっさと来たらいいのに」
「そう言ってくれるな。俺だって事情があるんだぞ」
「・・・ハイハイ。9代目との約束ね」
「わかってんなら、言うな。・・・で、どうする?何なら、死ぬ気弾でもぶち込んでやるが。・・・ちなみに、小言弾はお前の体力じゃ、まだリスクが大きいからダメだぞ。」
「・・・わかってる。死ぬ気弾もイラナイよ。武器はあるし。リミッターを外さないで勝てる相手じゃないだろうけど・・・追い返すくらいはできると思うし」
「ふ、そうか」
ニヤリと笑ったリボーンに背を向け、バジルに止めを刺そうとしていた男の腕を、出せる限りの力で止めた。
死ぬ気弾や小言弾無しでも、いくらかこのグローブを使いこなせるように、秘かに練習していたかいがあったというものだ、とツナは思う。
「このグローブのエンブレムは!・・・そうか、お前がジャッポーネの・・・!」
噂だけは耳にしていたらしい男がそう呟き、ニヤリと笑った。
「そうか・・・そういうことか。こいつと接触をするために日本にきやがったのか!」
(XANXUSからは何も聞いてないのか・・・まあ、でも良いか。これ以上は隠すつもりもないし。きっと、この人からXANXUSに報告が行くだろうしね)
ギリギリと男の腕を掴みあげるツナの額に、オレンジ色の炎が灯る。
(ツナの奴・・・自力で死ぬ気に!?・・・そこまで成長してやがったか)
リボーンは目を見開いて、ツナを見つめた。
「・・・く・・・何だ、この力は・・・!」
腕を徐々にひねり上げると男が呻く。こんな細身のツナにこんな力があるとは思ってもみなかったのだろう。
「・・・ここは引け。こんなんで次期ボスを決めてもつまらないだろ?“あの人”もそれを望んでないはず」
超死ぬ気モードと似たような状態なので、言葉づかいもその時のように冷たい、というか、感情を抑え込んだようなものになる。
「っ!・・・テメェ・・・何を知ってやがるッ!!!」
無理矢理にツナの手を腕から外し、左腕にはめ込んだ剣でツナを吹き飛ばした。
ダンッ!!と近くの壁に叩きつけられるツナ。
「さ、沢田殿!!・・・こ、これを持って・・・逃げて下さい!!」
いつの間にか復活していたバジルが走り寄って、何かを押しつける。それがハーフボンゴレリングだとわかったツナは、その箱を受け取り、キョトリ、とした。
(あ、れ?・・・これ、なんの力も感じない・・・?・・・これ、囮?)
「う゛お゛ぉい!・・・テメェ、このまま、逃がすと思ってんのかぁ!!?」
男に視線を戻したツナは、その箱をギュッと抱きしめる。
「・・・スペルビ・スクアーロ・・・子ども相手にムキになって・・・相変わらずみたいだな」
男の背後からかけられた言葉に、全員が声の方を見る。そこにいたのは、キャバッローネファミリーの10代目ボスであり、ツナの兄弟子であるディーノが、部下と共に立っていた。
それを目にしたスクアーロと呼ばれた銀髪の男が表情を硬くする。
「・・・テメェは!」
(ちぃっ、跳ね馬ディーノか・・・奴が相手となると少し厄介だぜェ!)
しばし睨みあった2人だったが、不意にスクアーロが動く。
「ふ、同盟ファミリーとドンパチやったと知られたら、上がうるさいんでな・・・なんて、言うと思ったか!!」
ガッと腕を掴まれ、ツナはスクアーロに引き寄せられる。
「っ痛・・・」
思いの外強い力に、腕が悲鳴を上げる。
「う゛お゛ぉい!・・・答えろ、テメェ、何を知ってやがる!!」
詰問するスクアーロがツナに近すぎて、手出しができないディーノとバジル。
「くそ!ツナを放せ!!!」
ディーノが叫ぶ脇で、バジルも武器を構えている。
「・・・何を?・・・全部だよ・・・スペルビ・スクアーロ。お前の知ってること、全部を知ってる」
ポツン、とツナが呟き、スクアーロが眉根を寄せ、一瞬周りがシン、とする。
「・・・なに?」
「・・・XANXUSは元気みたいだね。“寒い所にいたから”風邪でもひいてるんじゃないかと思ったんだけどね」
「っ!?」
ギョッとしたスクアーロに、ツナはクツリと笑った。
「ねぇ、XANXUSに伝えてよ。・・・1週間後、ちゃんと“準備を整えて”並盛においでって。それまでに“完璧に仕上げて”こちらも待ってるからって」
「・・・テメェ・・・なぜ、うちのボスのことを・・・」
「XANXUSから聞いてない?・・・なら、帰って聞くと良いよ。ほら、これもあげる」
グ、とバジルから貰った箱をスクアーロに渡す。
「さ、沢田殿!!!」
慌てるバジルに、ツナは肩を竦めた。
「どうせ、偽物だから。イラナイ。・・・いい?必ず、本人に、貴方から伝えて、スクアーロ。沢田綱吉は、正式に、ボンゴレ次期ボス・・・10代目候補として、独立暗殺部隊ヴァリアーボスにして、9代目の息子であるXANXUSに互いのハーフボンゴレリングをかけたリング争奪戦を申し込むってね」
(XANXUSに・・・ケンカを売るか。いい度胸してやがる。それにこの殺気・・・アイツに匹敵する!)
「・・・ふん、まぁ、良いだろう。伝えるぜェ!」
「じゃあ、ここは引いて。・・・さすがにお前でも、3対1はきついだろ?」
クス、と笑うツナの笑顔が妖艶で、スクアーロはギクリ、とする。
(何だこいつ!・・・いきなり、豹変しやがった!?)
「じゃあ、この場はお前に免じてここで引いてやる・・・1週間後、ボスが決定すればリングをかけて闘うことになる・・・首を洗って待っていやがれ!!」
そういい残して、スクアーロは去っていく。
「・・・ツナ・・・?」
ディーノが困惑した様子で、こちらを見つめてくるので、ツナは苦笑をうかべた。
「・・・ごめんね、ディーノさん。後でちゃんと話すから。・・・それよりも、どこかに移動しよう。みんなの手当てをしなくちゃ」
「あ、ああ。それなら、うちの息のかかった病院があるからそこに・・・」
そう言ったディーノに先導されて、ツナ達は病院へと向かった。