Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~   作:cibetkato

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リング争奪戦 5

 並盛中は今日も平和だった。校門前で風紀委員が睨みを利かせ、生徒達もそんな風紀委員に怯えつつもいつもの光景だと安心している節がある。

 

「いつも通りって、イイコトだよねぇ」

 

「ん?なんか言ったか?ツナ」

 

 ポツリと呟けば、耳聡く山本がこちらを振り返った。だからツナはニッコリと笑って首を振る。

 

「ううん、なんにも。・・・俺、ちょっと雲雀さんに用事があるから、応接室行くね?」

 

「10代目、じゃあ、俺も・・・」

 

 獄寺がそう言うが「雲雀は群れを嫌うから」とツナは丁重に断り、単身応接室へと向かう。

 

 軽くノックをすれば、中から単調な返事が返ってくる。

 

「誰?」

 

「沢田です」

 

「・・・入りな」

 

 一瞬の間の後、許可が下りる。

 

「・・・失礼しまーす」

 

「1人?」

 

「当然でしょう?雲雀さんの前でわざわざ群れるとでも?」

 

「・・・ふぅん。草食動物らしからぬ発言だね。もしかして、猫被ってたりしてた?」

 

 目を細める雲雀に、ツナはクス、と笑った。

 

「ええ。まぁ・・・ちょっと事情がありまして。でも、そんなこと言ってる場合じゃなくなってきたので」

 

「それって、これに関係すること?」

 

 す、と雲雀が掌を差し出してくる。案の定、そこにはハーフボンゴレリングが載せてあって、ツナは溜息をついた。

 

「それは、どうやって?」

 

「・・・この机の上に置いてあったよ」

 

「父さん・・・なんつーアバウトな」

 

「何、これ、君の父親の仕業?」

 

「あ~、まあ、そんなところです。・・・ちょっと、見せて下さいね?」

 

 ツナは雲雀の許可を得て、そのリングのマークを確認する。

 

「・・・雲、か。・・・う~ん、確かに雲雀さんの役割だよな、これ」

 

「何の話?」

 

 訊ねて来る雲雀に、ツナはハーフボンゴレリングの由来を話して聞かせる。

 

「・・・そして、雲は“何者にもとらわれず我が道をいく浮雲”何ものにもとらわれることなく、独自の立場からファミリーを守護する孤高の浮雲となること。というのが役割なんですよ」

 

「ふぅん・・・つまり、君達と群れなくても良いけど、その守護者とやらにはなれってことかい?」

 

 今までの説明を一言にまとめて下さった並盛の秩序様に、ツナは苦笑をうかべた。

 

「嫌ならいいですよ。他の人探しますから」

 

「何言ってるの?さっき君が言ったんじゃない。これは確かに僕の役割だって」

 

「あれ?・・・覚えてたんですか。独り言のつもりだったんですけど」

 

 そうツナが言えば、雲雀は肩を竦めた。

 

「強い相手と戦えるんでしょ?なら、やるよ。・・・弱い相手ばかりを噛み殺していてもつまらないからね」

 

 そう言う雲雀の目がギラリと光る。どうやら、骸に負けたことをまだ引きずっているらしい。

 

「じゃあ、イイ家庭教師知ってますから、紹介してあげましょうか。・・・結構強いですよ。肩慣らしに丁度良い程度には」

 

「・・・面白そうだね」

 

 ニヤリと笑う雲雀に、ツナもニヤリと笑って答えた。

 

「思う存分に、やっていいですから。専門家の闘い方を覚えて下さいね?」

 

「その戦いは近いの?」

 

「約一週間後ってところですね」

 

「わかったよ。それで専門家との戦いをマスターすれば良いんだね?」

 

「はい。期待してますから」

 

「生意気・・・でも、イイよ。楽しそうだからね」

 

 クツリ、と笑う雲雀の表情は、餌を目の前にした肉食獣そのものだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 応接室を出ると、ツナは教室に向かって歩き始める。今日は早くに到着したためにいつもより時間に余裕がある。

 

「ツナ君っ、おはよう!」

 

 明るい声が背後から聞こえ、ツナはゆっくりと振り返り、笑みをうかべ手を振る京子と、花、そして、了平を視界に捉え、ニッコリと笑った。

 

「京子ちゃん、黒川も、おはよう!・・・お兄さんもおはようございます」

 

「おはよ、沢田」

 

「おう!・・・沢田、今日も極限に良い天気だな!!!」

 

「・・・そうですね」

 

 空を見上げて雲ひとつない快晴に目を細め、ツナは了平に向き直る。

 

「まるで、お兄さんみたいですね」

 

 クス、と笑うツナに、了平は一瞬目を瞠る。それ程にいつもと違って見えたのだ。

 

「・・・沢田?」

 

「お兄さん、今日変なものが届いていませんでしたか?」

 

「ん?もしかして、これのことか?」

 

 了平が首を傾げ、スッと掌を差し出す。そこには晴のハーフボンゴレリングが載っていた。

 

「・・・ああ、やっぱり、お兄さんにそのリングがいってましたか」

 

「・・・ツナ君?」

 

 話についていけないでいた京子が堪らず声をかけると、ツナはニッコリと笑った。

 

「ごめん、京子ちゃん。ちょっと、お兄さんを借りるね?」

 

「え・・・あ、つ、ツナ君!?」

 

 ガシッと了平の腕を掴みそのまま走り去ってしまうツナを、京子と花は呆然と見送った。

 

 そして、了平を引っ張ったまま非常階段にやって来たツナは、そこで息を整える。

 

「一体どうしたというのだ、沢田」

 

「・・・そのリングについて、説明しておかなければならないので」

 

 そう、真剣な表情になったツナに、了平はきょとりとする。

 

「・・・このリングについてだと?」

 

「はい。・・・危険なことに巻き込んでしまうかもしれません。・・・それでも、そのリングの持ち主は貴方しか考えられない」

 

 ツナの言葉に、了平の表情が真剣なものに変わる。

 

「・・・聞こう」

 

 コクリと頷き、ツナは了平が理解しやすいように、事の次第を詳細に説明する。

 

「・・・では、これはその沢田が跡を継ぐ、ボンゴレというマフィアのモノなんだな?」

 

「はい。・・・その10代目候補が、今、俺ともう1人存在していて、推薦する人間・・・門外顧問と9代目が、それぞれ違う方へこのハーフボンゴレリングを渡したために、リング争奪戦をすることになったんです」

 

「ももんが・・・かもん?」

 

「・・・門外顧問です、お兄さん」

 

「むぅ・・・極限に理解不能だが、これだけはわかるぞ!・・・要するに俺達はこの戦いに勝って、このリングを守り、相手のリングを取り上げれば良いんだな!?」

 

「・・・極限に短縮した説明をありがとうございます。・・・今は、それだけ理解して頂ければ充分です」

 

 タイプは違いこそすれ、先輩である2人はよく似ていると内心で呟き、ツナは苦笑をうかべる。

 

「・・・お兄さんにも家庭教師が付くはずです。・・・プロとアマチュアの違いは雲泥の差。それも向こうは殺しのプロです。・・・だから」

 

「おう!極限に修行するぞ!!」

 

 ガッツポーズを決めた了平にツナは目を細めた。

 

「よろしくお願いします・・・了平さん」

 

「!・・・初めて俺のこと名前で呼んだなぁ・・・沢田」

 

「・・・リングをお任せするんです。さすがに“お兄さん”じゃ恰好がつかないでしょう?」

 

「うむ!・・・こちらこそ、よろしく頼むぞ!沢田!」

 

「はい!」

 

「・・・で、このリングだがそれぞれ種類が違うのか?・・・お前がつけているのとは別物のようだが」

 

 了平がリングを見つめ訊ねてくるので、ツナはこくりと頷く。

 

「そのハーフボンゴレリングは晴の守護者のリングです。・・・晴は“明るく大空を照らす日輪”ファミリーを襲う逆境を自らの肉体で砕き、明るく照らす日輪となること。・・・それが役割です」

 

「・・・ああ、それで今日の天気を俺みたいだ、と言ったのか」

 

 納得のいったらしい了平に、ツナは微笑みをうかべる。

 

「了平さんの明るさは皆を太陽のように照らしてくれる。・・・だから、晴の守護者には貴方が相応しいと思うんです」

 

「・・・そのかけられた期待に、是非とも応えないといかんな」

 

 うんうん、と頷いている了平に、ツナは目を細めて微笑んだ。

 

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