Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~ 作:cibetkato
― 3日後
9代目専用ジェット機“フェニーチェ”で降り立った日本の地。XANXUSはその緩みきった空気を感じて、肩を竦めた。
「・・・は。随分と平和な空気だな」
確かにセキュリティーは厳しいようだが、空港に行きかう人々の表情はこれからの旅に対しての期待からか、非常に明るいものが多い。
「・・・う゛お゛ぉい!イタリアと比べんなぁ!こっちは治安がいいんだぜぇ!!」
「これから、私達が治安を悪くするんだけどねぇ~?ふふっ」
「・・・こんな中でも、あんな能力を開花させられんのか。さすがはブラッド・オブ・ボンゴレ」
ボソ、とXANXUSが呟いた言葉に、傍にいたスクアーロがぴくりと反応する。
「・・・ボス?」
そして、XANXUSの様子がおかしいことに気付いたマーモンが伺うような視線を向ける。
「・・・行くぞ」
颯爽と先を行くXANXUSに、ヴァリアー幹部達は慌ててその後を追う。
期日まではあと3日。準備は整った。後は向こうの準備が整うのを待つだけ。
「・・・ツナ・・・もうすぐだ」
XANXUSは1人呟く。このためだけに決して許されないだろう罪を犯すのだ。
***
ゾクッ、と背筋に悪寒が走る。
「・・・この感じ・・・」
呟いたツナは、晴れ渡った大空を見上げる。
「・・・来たんだ。XANXUSが」
ツナと闘うために。
「おい、ツナ」
「ん?なーに、リボーン」
「余裕だな?・・・全然焦ってるように見えねェぞ」
「うん。だって皆修行が進んでるみたいだし。・・・まぁ、多少のイレギュラーがあっても俺が対応すればいいでしょ」
「・・・XANXUSとの約束は戦うことだけか?」
「そうだよ。・・・俺、その時5歳だよ?さすがにそんな複雑な思考回路してなかったって」
苦笑をうかべるツナに、リボーンはふ、と表情を翳らせる。
「XANXUSは何を企んでやがる?・・・スクアーロから何かを読みとったんだろ?」
「・・・う~ん・・・読みとったは良いけど、多分、もう1つか2つは仕掛け増えてそうなんだよね~・・・俺、煽っちゃったし」
「ツナは、何がしてェんだ?・・・XANXUSと逢いてェだけか?」
「わかってるだろ、リボーン。・・・俺の目的はボンゴレの、いや、マフィアのあり方を変えることだって」
骸達に向かって放ったセリフが、そのようなものだったことを思い出して、リボーンは眉を顰めた。
「・・・本気か?」
「本気だよ。そのためにはボンゴレの10代目ボスになることが一番手っ取り早い。・・・イタリアンマフィアというものの中ではボンゴレは最高峰だからね。・・・まぁ最高峰でなくても、俺がのしあげるけど」
そう言って、ツナはクツリと笑う。
「・・・ダークヒーローにでもなるつもりか?」
「・・・ああ。いいね、それ。・・・でも、それってXANXUSの方が似合いそう」
「・・・ありゃ、完全悪役面だろうが」
「・・・ぶっ!・・・あははははは!それXANXUSに言ったら、どカスがーッ!!って銃乱射されるよ?」
「アイツの武器は銃なのか?」
「ん?・・・スクアーロの記憶によると銃だね」
「・・・適当だな」
「適当でいいんだよ。全部わかっちゃうんじゃつまんないでしょ」
「・・・楽しむなよ、ツナ。・・・命懸けで遊ぶ奴がどこにいる」
「・・・え~・・・ケチ」
ぷ、と膨れるツナを見て、リボーンはドキリとする。いつもは“綺麗”な表情を見せるツナが、子どもらしく“可愛らしい”表情をうかべるのは珍しい。
「・・・ケチじゃねぇ。・・・仲間を危険にさらす気か?」
「まさか。・・・危険になったら何を措いても仲間を守るよ」
スゥ、と目を細めたツナの周りの空気が、一瞬で冷たいものに変わる。
「XANXUSがそこまでやろうとしたら、それは約束とは違う行為だ。俺は“遊ぶ”と言ったんだ。それ以上の行為をするようなら・・・本気で潰すよ。たとえ、XANXUSでもね」
ツナは不安が的中しないように、と祈った。XANXUSの立てたおぞましい計画。それは、自分のせいでもあるのだとわかっていたから。
そこまでしても、XANXUSは約束を守ろうとしてくれた。だから、それだけで十分なのに、と思う。だが、もしその計画を最後まで実行しようとするならば、ツナは私情を押し殺し、XANXUSを止める覚悟だった。
「ツナ・・・」
「大丈夫だよ、リボーン。・・・XANXUSとはいずれ戦わなきゃいけなかったんだ。そうでなかったら、他のファミリーも納得しないだろ。平和なジャッポーネのガキが次期ボンゴレだなんてさ」
XANXUSは最も次期ボンゴレに相応しい男だった。・・・“あの事実”さえなければ。
スクアーロが“あの事実”を知っていることは、XANXUSも知らないのだろう。黙して語らずを貫いたスクアーロに感謝する。本当ならば見限ってもおかしくはないだろうに。それだけ互いに惹かれるものがあったのか。
「あ、ちょっとイラッとした」
「どうした、ツナ?」
「んー?・・・なんかスクアーロにイラッとした。よし、出会い頭に燃してやろう」
「・・・止めとけ。なんでそういう結論に至るんだ」
呆れた様子のリボーンに、ツナはまたムッとしたように頬をふくらませ、それからフイッとリボーンから顔を背けた。
「いいんだよ。だってスクアーロだもん」
「・・・なんだ、その扱い」
「だって、XANXUSがそういう扱いしてるもん」
「・・・いや、ツナはXANXUSじゃねぇだろうが」
スクアーロにとっては理不尽極まりないもの言いに、リボーンはガックリと肩を落とし、ツッコミを入れたのだった。