Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~   作:cibetkato

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リング争奪戦 9

 その夜。ツナは皆が寝静まったのを確認して家を出た。

 

「リボーンはさすがに気付いたかな?」

 

 家から出る気配があればリボーンもさすがに気付くだろうと思いつつも、まず追ってくることはないだろうとふむ。

 

 そうでなければ困るという意味ではあるが。

 

「さぁ・・・どうしようかな」

 

 呟く声は夜の闇に呑まれる。

 

 おそらくXANXUSは、今夜並盛町に入ってくるはずだ。そう思ったら落ち着かなかったのだ。

 

「公園で頭でも冷やそう・・・」

 

 ツナはトボトボと近所の公園に向かう。8年ぶりに会うXANXUSはどういう表情をしてくれるのだろうと思う。

 

「・・・皆の手前、怒りの表情でもうかべるのかな?」

 

 10代目の座を争うのだ。確実に友好的なものではないだろうとはわかっている。それに、ツナが読心術を使えることはXANXUSも知っているから、会話は出来ないにしてもXANXUSが心の中で思うだけでこちらにその意志は伝わる。

 

「それでも。やっぱり堪えるよなぁ・・・きっと」

 

 外灯の明かりだけが頼りの真っ暗な公園でブランコに座り、はぁ、と溜息をつく。

 

「せっかく会えるのに話もできないのかぁ・・・つまんないの」

 

 ブランコを揺らすと、キィ、という金属の擦れる音が辺りに響く。

 

「9代目、ゴーラ・モスカ、藍のアルコバレーノ・・・さて、他に何を仕込んできたのかな。なるべく読まないようにしなきゃ。あくまでも公平に戦わないと・・・ッ!・・・誰!?」

 

 突如現れた気配にツナは警戒を強めてブランコから飛び降り、辺りに視線を配る。

 

(ヴァリアーの先遣隊、とかかな?)

 

 焦りはない。ただここで自分の力の片鱗を見せるのは避けたかった。

 

「・・・う゛お゛ぉい・・・こんな処で会うとは、奇遇だなぁ」

 

「・・・あ、カス鮫だ」

 

「う゛お゛ぉいッ!!その呼び方は止せぇ!!」

 

 1度しか会っていないのに記憶を読んでしまったせいか、どうにも昔からの知り合いのように思えてならない。ついでに言うと、XANXUSとの繋がりという点では自分よりも深いところにいる相手なので面白くない。

 

「イイじゃんスクアーロなんだし。XANXUSもそう呼んでるみたいだし」

 

「・・・てめぇ、本当に読心術が使えるんだなぁあ?」

 

「うん。XANXUSも言ってたでしょ?」

 

「・・・ああ。それに、超直感も初代にひけをとらねぇとも言ってたぞぉお」

 

「ふぅん・・・それは、9代目から聞いたのかな?リボーンが報告してたみたいだし」

 

 クス、と笑うツナに緊張が見られないのを、スクアーロは不思議に思う。

 

「ここで俺がてめぇを害そうとしたらどうするつもりだぁ?」

 

「そしたらスクアーロは明日の朝日は見られないよ?XANXUSがそれを許さないから」

 

 あっさりと答えるツナに、スクアーロは目を丸くした。

 

「XANXUSとてめぇの関係は・・・何なんだぁ?」

 

「う~ん、同志?・・・だったはずなんだけど。いつの間にか変わっちゃった。・・・それよりも、ねぇ、スクアーロ。お前はXANXUSの出生のヒミツを知ってしまったんだろ?」

 

「!?」

 

「きっとこれを逃したら言えないだろうから言っておくね。・・・XANXUSを見捨てないでくれて、XANXUSのヒミツを漏らさないでいてくれて、ありがとう」

 

 ふ、と笑みをうかべたツナにスクアーロは一瞬見惚れた。それ程に綺麗な笑みだったからだ。

 

(なるほどな・・・あのXANXUSがこだわるわけだ)

 

 思わず納得してツナの目を見つめる。

 

「俺はXANXUSの強い意志に惹かれた。だから、アイツの野望を叶えてやろうと思った。それだけだぜぇ」

 

「スクアーロ・・・俺はXANXUSを止める。どんな理由があっても、これ以上の罪をXANXUSに犯させるわけにはいかない。・・・復讐者に目を付けられないうちに、俺がXANXUSを潰す」

 

「復讐者、か」

 

 マフィア界の法の番人。その鉄壁の牢獄から脱走することは容易いことではない。目を付けられるのは勘弁願いたいところだ。

 

「スクアーロには止められないだろ?・・・だから俺が止めるよ」

 

「5歳の時に一度会った程度でそんな風に思えるもんなのかぁ?」

 

「・・・XANXUSが、話したの?」

 

 目を瞠るツナにスクアーロは首を横に振る。

 

「いや・・・面識があるってことと、5歳で何かを約束したってのは言ってたがなぁ」

 

「・・・ふぅん・・・あ、そういえば今更だけど、ここに何しに来たんだ?」

 

「・・・本当に今さらだなぁ」

 

 呆れたように言うスクアーロだが、正直に答える。

 

「敵情視察だぁ・・・てめぇの守護者の情報はほとんど入ってきてねぇからな。自分で調べるほかねぇだろぉ」

 

「・・・まさか、正直に答えてくれると思わなかった」

 

 ツナがそう言えば、スクアーロは肩を竦める。

 

「てめぇが読心術使えるからなぁ、隠そうとしても無駄だって、ボスに言われてんだよぉ!」

 

「そっか。XANXUSが・・・なるほどね」

 

 ツナが納得するのを見てスクアーロはむっつりと黙りこみ、ありったけの罵詈雑言を思い浮かべる。

 

「・・・ん?どうしたの?いきなり黙って」

 

「・・・てめぇ、いつも心を読んでるわけじゃねぇのか?」

 

「当たり前でしょ?そんなことしてたら人格疑われる」

 

 あっさり答えられ、スクアーロは肩を落とす。

 

「まぁいい。・・・てめぇの戦う理由が知れただけでも大きな収穫だ」

 

「帰るの?」

 

「・・・ボスが怒りだす前にな」

 

「じゃあ、XANXUSに伝えてよ。・・・やっと会えるね、直接会うの楽しみにしてるって」

 

 先にツナに会ったことに対して怒りに触れるのではないかと思ったが、スクアーロは頷いた。

 

「わかったぁ・・・伝えておく」

 

「よろしくね・・・カス鮫」

 

「う゛お゛ぉい・・・その呼び方は止せと言ったはずだぜぇ!!!」

 

 御後がよろしい様で、とでも言い出しそうなオチをつけて、ツナは叫ぶスクアーロに背を向けた。

 

 

 

 ***

 

 

 

― ヴァリアーのアジト

 

 

 ツナと別れた後、すぐにアジトに戻ったスクアーロは、XANXUS達が待つだろうラウンジに向かった。

 

「帰ったぜぇ」

 

「あら、お帰りなさぁい、スクアーロ」

 

 くねっと身体をしならせて振り返ったおねぇ言葉の男、ルッスーリア。彼(彼女?)に出迎えられたスクアーロは部屋を見回す。

 

「う゛お゛ぉい、ボスはどこにいやがる」

 

「ボス?・・・自分の部屋じゃないかしらぁ」

 

「・・・部屋か」

 

 一瞬、伝言は明日伝えようかと思うスクアーロだったが、1対1の方が良いとふみ、XANXUSの部屋へと向かう。

 

 XANXUSの部屋の前まで来ると、スクアーロはドアの前で声を抑え告げる。

 

「・・・沢田綱吉からの伝言を預かって来たぜぇ」

 

 すると、一瞬部屋から殺気が漏れ出してくるが、すぐにその殺気が抑えられ、XANXUSの声が聞こえる。

 

「・・・入れ」

 

 部屋に入ると晩酌をしているXANXUSがいて、スクアーロはその紅い瞳を見つめる。

 

「・・・アイツは、なんて言ってきた?」

 

 XANXUSがスクアーロを促す。スクアーロは肩を竦め、ふ、と溜息をつく。

 

「“やっと会えるね、直接会うの楽しみにしてる”だそうだぜぇ」

 

「他に・・・話をしやがったのか?」

 

「・・・いや」

 

 スクアーロが一瞬詰まるのを見て、XANXUSの機嫌が急降下する。

 

「・・・カスが、俺に嘘をつこうってのか。あ゛ぁ?」

 

 XANXUSの手に憤怒の炎が宿る。スクアーロはギクリ、と表情を強張らせた。

 

「は、話はしたぜぇ。・・・ボスのことを止めるって言ってやがった。復讐者に目を付けられる前に、な」

 

「止める?・・・そうか・・・ツナは」

 

 ふ、と思案気な表情になったXANXUSに、スクアーロは眉根を寄せた。

 

「・・・おい、ボス?」

 

「なんでもねぇ。・・・カス鮫、あいつらとの対面の時は素知らぬフリをしろよ」

 

「・・・あ、ああ」

 

 頷くスクアーロを追い払い、XANXUSは椅子の背もたれに深く寄りかかる。

 

「ツナ・・・俺の計画していることをほぼ知りながらも俺のことを想ってくれるのか」

 

 ゆるりと口の端をあげ、目を細める。

 

 狂気に似た愛情は相手を幸せには出来ないと知りつつも、XANXUSは己の欲望に忠実に従った。

 

「・・・“奴ら”の予言通り、俺はアイツがボンゴレ10代目になるための礎となる」

 

 XANXUSが死ぬ気の零地点突破の氷から解放された時“奴ら”は1つの予言を告げた。それに同意したXANXUSは、その予言の為に己の身を捧げることを決めたのだ。

 

「ツナをボンゴレ10代目に。・・・誰にも文句は言わせねぇ。ツナは当代最強のボンゴレになる」

 

 その引き立て役となるのならば、いくらでも道化を演じよう。・・・全ては、ツナの為に。

 

「・・・ツナ」

 

 愛しげに名を呟き、XANXUSは瞼を閉じた。

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