Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~ 作:cibetkato
“揺りかご”の事件から8年後。ツナは中学1年生になっていた。
もちろん、XANXUSのことは気になっていて家光に訊いていたのだが、明らかに事情を伏せられていてXANXUSのことを知ることは出来ず、ツナは未だ“揺りかご”の事件を知らずに過ごしていた。
そして今日も今日とてダメツナを演じながら一日を過ごし、のんびりと帰宅する。
「あら、ツっ君、お帰りなさい。・・・今日ねぇ、家庭教師の先生に来ていただいたのよ~」
学校から帰ってくるとニコニコと笑った奈々が出迎え、突然そんなことを言ってくれる。
「・・・え?家庭教師?」
それほど教育熱心な方ではないはずの奈々が、家庭教師などと言いだしたものだから、ツナは首を傾げた。
「お部屋にあがって頂いたから。ちゃんとご挨拶するのよー?」
「ええ!勝手に入れたの!?・・・もうっ、家庭教師なんて、いらないのに!」
ブツブツと文句を言いながらも部屋に向かうツナ。そして扉の前に立ち、その家庭教師が只者ではないことに気付く。
(・・・この感じ・・・人を殺したことのある人間の気配だ)
ほんの少し警戒をして、ツナは部屋のドアを開けた。
「・・・チャオっす。今日からお前の家庭教師になったリボーンだ。よろしくな」
ひょい、と手を挙げたのはどこからどう見てもスーツをビシッと着こなした赤ん坊だった。
「・・・またまた~、冗談きついよ?」
一瞬固まり、突っ込みを忘れていたことに気付いて、慌てて口にする。
「冗談じゃねーぞ」
そう言ってくるリボーンに、ツナは心底不思議そうに首を傾げた。
「・・・赤ん坊に何が教えられるんだよ?」
「お前を立派なマフィアのボスにすることが、俺に与えられた仕事だぞ」
「ま、マフィアぁあ!?・・・な、なんなの!?それ!!おかしいから!!!」
(あー、チェデフかなぁ?それとも9代目?あ、でも9代目のとこには息子のXANXUSいるはずだし・・・)
口先と表情では慌てていても、内面は凪いだように状況を把握する。
今まで自分からバラしたことはあっても見破られたことはなかったため、カヴァーには絶対的な自信を持っていたツナは、一瞬、リボーンから意識が逸らして思考した。
「・・・お前、なかなか面白い精神構造してるな。実際、特に慌ててもねークセに表面上だけ自然とカヴァーできんのか」
「っ!?」
ギョッとしたツナはマジマジとリボーンを見つめ、フッと力を抜いた。
「なぁんだ。リボーンも読心術使えるんだ。・・・じゃあ、一々カヴァーしなくても良いか。自分の部屋の中でまでやるのはめんどくさいんだよねぇ、本来の自分に一番遠い人格をカヴァーしてるから。あ、あとそれからお前じゃなくてツナって呼んで」
お得意の超直感である。読心術と超直感があれば大抵のことは何なく乗り切れるのだが、今回ばかりは相手が悪かったらしいとさっさと諦めた。
「・・・家光の話とは随分違うな」
「ふぅん、やっぱり父さんの差し金?」
「いや、依頼はボンゴレ9代目だ」
「・・・どうして?9代目には息子がいただろ?」
ツナの問いに、リボーンは眉を顰めた。
「お前、9代目の息子と面識あったのか?さっきも心の中でだが、名前を出してたな?」
「ツナだってば。・・・ま、小さい頃、一回ね」
「9代目の息子は表舞台から姿を消したぞ。詳しい話はよく知らねぇ」
本当にリボーンは知らないらしくそう言ってくるので、ツナは諦めて溜息をつく。
「やっぱ、父さんに訊くしかないのかぁ。いつも誤魔化して、まともに答えてくれないんだよなぁ」
「なんで、そんなにそいつを気にすんだ?」
「だって“同志”だから」
あっさりと答えたツナに、リボーンは首を傾げた。
「“同志”?」
「うん。XANXUSは、リボーンを除けば、唯一、俺の真実を知る1人だから」
そう答えたツナの表情は柔らかく、XANXUSをとても好いていたことがわかる。
「・・・じゃあ、俺が調べてやる」
「へ?」
「お前、本当は家庭教師なんて必要ねーだろ?勉強の方も、マフィアのボスとしても」
リボーンに言われ、ツナはニヤリと笑った。
「だって、ダメダメなら10代目候補から外れるかなぁって。でもやっぱ来ちゃうんだ?・・・さすが血筋を大切にするだけあるね。・・・あーあ、こんなことなら悪目立ちするほどダメなヤツをカヴァーすんじゃなかった」
「今からでも遅くねぇ。さっさとその訳わからんカヴァーは止めちまえ」
リボーンはそう言うが、今まで築き上げてきたものをあっさり捨てるのも勿体ない、なんて思ってしまったツナは、首を横に振った。
「いや、いきなり優秀になったって周りの反応がめんどくさいだけだし、中学にいる間は続けるよ」
「・・・お前・・・相当のめんどくさがりだな・・・」
呆れたように言ったリボーンに、ツナはニッと笑ってみせた。
「へへ~。・・・でも、俺やればできる子だよ?まぁ、一応ボンゴレのことで教えて欲しいこともあるし、これからよろしくな、先生?」
その笑顔に一瞬ドキリとさせられて、リボーンは感情を隠すように俯く。
「リボーン?」
「・・・ああ、よろしくな・・・ツナ」
「やっと名前で呼んだな。今度から名前で呼ばなかったら返事しないから。そこのとこよろしく~」
そんなこんなで、ここにある意味最強な師弟関係が築かれたのだった。
***
まずリボーンはツナの観察を始めることにした。
ツナのカヴァーである“ダメツナ”は、リボーンの思っていた以上のものだった。勉強もスポーツもダメ、クラスメイト達には馬鹿にされ、パシリに使われ、不良には絡まれる。
「・・・ツナ、こっちのカヴァーの方が疲れないか?」
中庭にいたツナを捉まえ、リボーンは呆れたように訊ねる。
「ん~?・・・そうだなぁ、今となっては意味のないカヴァーだし疲れるかも。でも、意外と愉しいんだよ。皆本当の俺を知らない。それって結構愉快じゃない?」
「・・・性格捻くれてんな」
「あっはっは。何とでも言え」
笑いながらもツナは押しつけられたゴミをせっせと焼却炉にくべている。
「・・・律儀だな。燃しちまえば良いのに」
「あ、そっか。・・・って、ダメだよ。地面が焦げちゃうよ」
「・・・地面が焦げるくらいなら、どうってことねーだろ?」
リボーンが首を傾げると、ツナは溜息をついて首を振る。
「はぁ・・・そうは思わない人がいるってこと。この並中にはね、並盛をこよなく愛している人達がいるんだ。だから並中を傷つけたり壊したりしたらその人に咬み殺されちゃうんだよ」
「そいつはそんなに強ぇーのか?」
「そりゃもう!ここら一体の支配者だし?」
リボーンが興味を示すので、ツナは自分が知る限りの情報を教える。
「面白い。ツナの守護者に丁度イイかもしんねーな」
「えぇ~・・・あの人、群れるの嫌いだよ?ってか、あの人の手綱握らなきゃいけないなんてめんどくさ~い」
どうやらその人物をお気に召したらしいリボーンに、ツナは困ったように眉根を寄せた。
「そんなめんどくせぇ奴なのか?じゃあ、一度会ってみねーとな」
「絶対面白がってるだろ、リボーン」
「そうでもないぞ?・・・強ぇ奴が守護者になってくれねーと、いざって時に困るのはツナだぞ?」
「10代目を決める時のこと?でもあれって、結局は候補同士の戦いで決着付くんだろ?」
「・・・まぁな。チェデフ次第だが」
「10代目かぁ。ボンゴレだもんなぁ・・・あんなデカイ組織の10代目ってめんどくさそう」
「・・・ものぐさめ。ちったぁヤル気出せ。死ぬ気弾ぶち込むぞ」
リボーンが銃を構えるので、ツナは慌ててゴミ箱を持ち上げて走り出す。
「こんなとこでやめてよッ!リボーン!アレ、恥ずかしいんだって~~~ッ!!!」
先程クラスメイト達の前で撃たれて、ツナは非常に恥ずかしい思いをした。だってパンツ一丁。そんなんしなくても出来ると叫びそうになった。
「ふふん、そのカヴァーを止めるまで俺はやり続けるぞ」
「なんなんだよ、それ!!リボーンのバカァァァァァっっ!」
愉しそうにツナを追いかけて来るリボーンに、ツナは心の中でありったけの悪態をつきながら校舎への近道を走る。
先の角を曲がり、リボーンを引き離そうとした瞬間、ドン、と目の前に現れたものにぶつかった。
「っ!・・・ご、ごめんなさいっ!!」
慌てて“ダメツナ”に切り替えて、ぺこぺこと謝る。
「・・・君、確か・・・」
「ひぃィいいいい!!!?・・・雲雀さんんんんんっ!?」
(今一番会いたくなかったのに~っ!!)
目の前にいたのは、先程の話題に上った並盛の支配者兼、風紀委員長の雲雀恭弥だった。
「ほう、お前が雲雀恭弥か」
ツナに追いついたリボーンが、雲雀を見上げる。
「・・・君、只者じゃないね」
リボーンの持つ雰囲気に気付いたのか、雲雀が目を細める。
「只者じゃねーのはお前もだろ?雲雀恭弥。・・・うん、気に入った。お前をツナのファミリー候補にしてやる」
「何言ってんのリボーン!!・・・す、すみません、雲雀さん!!し、失礼しましたぁ~!!」
ガシッとリボーンを抱えると、ツナはダッシュでその場から逃げだした。
「何すんだツナ。もうちょっと探らせろ」
「馬鹿言うなよ・・・あんなめんどうな人と関わり合いたくない」
呆れたように言うツナに、リボーンは首を傾げる。
「ツナはアイツが嫌いか?」
「別に。嫌いじゃない・・・むしろ、場合によっては面白いなぁって思うけどね。でも、あの人は自由が好きなんだよ。ファミリーなんて、そんな型にはめてしまったら、あの人らしさが消えてしまう」
「・・・ナルホドな。ツナは自由な雲雀が好きなのか」
「ま、そういうこと。・・・あんまり余計なことするなよ?いずれファミリーは集まるべき時に集まってくるから」
“ブラッド・オブ・ボンゴレ”がそう告げている。リボーンが来てから良く超直感が働くようになった。
間もなくその“時”なのかもしれない。そう思いながらツナは空を見上げる。
「・・・大空かぁ」
「超直感ってのはすげーな。9代目のも神の采配と言われるくれーだしな」
「ん~・・・そうなのかな?よくわかんないや。・・・でも普通じゃないんだなっていうのは思うな」
クス、と笑うツナは子どもらしくなく、妖艶さも持っていて、リボーンは思わず見惚れた。
「ん?どうした?リボーン」
「・・・いや・・・ツナ、時々色っぽいな」
「はぁ?・・・何言っちゃってんの?」
思わずリボーンの心の中まで読んで本心から言っていることに気付くと、ツナは訝しげに首を傾げた。
「自覚ねーか。・・・時々ドキッとする表情をするんだぞ」
「ふぅん・・・良くわかんない」
キョトン、とした表情は年相応で、ツナ自身がわかっていてやっているわけではないことを示している。
「・・・こりゃあ・・・守護者になった奴らは相当苦労すんな」
そう呟いて、リボーンはツナを見る。
「自覚ねーならしょうがねーな。・・・まぁ、そこら辺は守護者の仕事だ」
「???」
「よし、守護者が決まるまでは、ツナは俺が守ってやるぞ。安心しろ」
「・・・何言ってるか、良くわかんないけど・・・まぁ、よろしく」
無自覚のツナは全くわかっていない様子でそう言って、リボーンを抱き上げる。
「さ、帰ろうリボーン。・・・なんかどっと疲れたよ」
「死ぬ気弾の威力はさすがのツナでもきつかったか」
「当たり前だろ?死ぬ気で動くんだぞ。・・・あ~、身体だるい~」
ブツブツと呟くツナを見つめ、リボーンはフ、と笑みをうかべた。
(まだまだこれからが本番だぞ。ツナの本来の力はまだ目覚めてねぇ。死ぬ気弾ですらツナの全てを引き出すのに至ってねーのは驚きだが・・・)
めんどうだと言いながらもツナはボンゴレのことを知りたがっている。恐らくは9代目の息子との間に何かがあって知りたがっているのに違いない。
そう思い、リボーンは本格的に“XANXUS”のことを調べ始めることにしたのだった。