Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~ 作:cibetkato
約束の一週間が経った。邂逅の時が来る。
「ツナ君!」
「京子ちゃん?それに、ハルも・・・どうしたの?」
「ランボちゃん達を見なかったですか?公園で遊んでたんですが、目を離したすきにはぐれてしまって・・・」
「お家に帰ってたり、してない?」
矢継ぎ早に言う京子達に、ツナは心配無用と告げて、リボーンと共にランボ達を探し始める。
「やべぇな・・・ツナ、早くランボ達を探すぞ」
「・・・うん。ちょっと、マズイことになってるかも、ね」
超直感は急げと告げている。ただ、XANXUSがそこまで命じるかと問われれば、首を傾げる。
「でも、命まではとらないはずだよ。虐殺が目的じゃない、闘うつもりで来てるんだ」
「それは、お前限定だろ?」
リボーンの言葉に、ツナは首を振る。
「・・・だから、俺は宣言したんだよ。リング争奪戦を申し込むって」
「ああ、なるほどな。・・・リング争奪戦と言っておけば、守護者を勝手に抹殺は出来ねーわけか」
「そういうこと」
ニコ、と笑うとツナは己の直感に随って、走る速度をあげる。
「リボーン、俺の肩に乗って。・・・グローブ使った方が早い」
その言葉に頷き、リボーンはツナの肩に乗る。それと同時に超加速し、ランボ達のもとへと急ぐ。
「ぐぴゃぁああああ!!?」
「うわぁあッ!?」
「ううッ!」
曲がり角の先に、ランボ達の声が響く。
「見つけた!」
ツナは呟いて、その場に出る。
「ランボ!イーピン!フゥ太!!」
「ツナ兄ぃ!!」
ガバッとフゥ太が飛びついてくる。後ろにはランボがいて、イーピンは闘っていたのか、あちこちが傷だらけだった。
「イーピン・・・皆を守ってくれてたんだ・・・ありがと」
そう言えば、イーピンはニコリと笑って頷いた。
ホッとしたのも束の間、凄まじい雷撃が襲いかかる。バックステップで直撃を避け、ツナは上を見上げる。
「・・・レヴィ・ア・タン」
そこにいたのはヴァリアーの幹部であるレヴィだった。『レヴィ雷撃隊』の隊長であり、恐らくXANXUS側の雷の守護者だろうとツナはふむ。
「・・・女子供とて、容赦はせぬ」
ボソリ、と呟いてレヴィが電気傘を構える。
「レヴィの暴走か」
ツナは断じて、スゥ、と目を細めた。
「・・・部下の教育がなってないね」
フッ、とツナの姿が消え、次の瞬間、レヴィの腹部にツナの拳が入っていた。
「おふッ!?」
がくりと膝をつくレヴィ。
「10代目!下がってください!!」
聞き慣れた声にツナはレヴィから離れる。その直後、爆音が轟く。
「・・・10代目!ご無事ですか!?」
「ツナ!大丈夫か??」
「沢田!まにあったみたいだな!!」
「獄寺君、山本、了平さん!・・・俺は大丈夫だよ!」
ツナはニコリと笑む。そして、地面が焼け焦げている場所に視線を向け、レヴィの姿がないことを確認する。
そして、ゆっくりと顔を上へあげる。
「―ッ・・・ヴァリアー・・・」
そこにはヴァリアーの幹部が全員揃っていた。そう、XANXUSも。
ツナは視線が逸らせないまま、久々に見たXANXUSの紅い瞳に魅入る。
「・・・う゛お゛ぉい!期日だぁ!・・・リング争奪戦をおっぱじめようぜぇ!!」
スクアーロが義手についた火薬仕込みの剣を振り回す。
ガッ!
そのスクアーロの目の前に、つるはしが突き刺さる。
「!?」
ハッとして、全員の視線がつるはしの跳んできた方向へと向いた。
「・・・家光」
不機嫌そうに呟いたXANXUS。そして、スクアーロがギロリと睨む。
「今更、チェデフの出番でもねーだろうがよぉ!!門外顧問、沢田家光ッ!!」
「いいや、ここからは俺達チェデフが仕切らせて貰うぜ」
ニヤリと笑った家光に、XANXUSは不快そうに眉を顰め、それからふいに視線をツナに戻す。
「・・・門外顧問は沢田綱吉を次期ボンゴレに推薦した。その時点で中立ではない。・・・違うか?家光」
XANXUSの言葉に、家光がピクリと眉を跳ね上げさせる。
「チェデフはあくまでも有事の際以外では外部機関。お前達が“フェアにリング争奪戦を行う”ならば、中立の立場を貫くつもりだ」
「ほう・・・なら、自分の息子が殺されても“フェアに行った結果”なら受け入れるって言うんだな?」
直接的な表現に、獄寺達が殺気立つ。
「・・・そうだな。それがこの世界に生きる者の覚悟だ」
家光が頷く。マフィアの世界を知り尽くしているからこそ、頷くしかなかったのだ。それがわかっている獄寺はグッとつまり、そして、山本と了平はハッと息を呑んだ。
XANXUSがわずかに表情を動かす。それに気付いたのはスクアーロとツナ、そしてリボーン。
XANXUSが“憎悪”を露わにすること自体はおかしくはない。が、今の家光の言葉は“憎悪”ではなく“歓喜”を表しても良い内容だったはず。
そう思ったリボーンはXANXUSの心を読み、そして、息を呑んだ。
「・・・XANXUS・・・そこまで」
呟いた声はツナにも届き、ツナは苦笑をうかべた。それに気付いたリボーンは眉を顰める。
「・・・ツナ、お前・・・知ってたな?」
「ん。・・・スクアーロの心を読んだ時からね。それに・・・超直感が教えてくれたから」
コソコソとこちらには聞こえない声で会話を交わすツナとリボーンを視界に収め、XANXUSは昏い感情が湧きあがるのを感じた。
(黄のアルコバレーノ、リボーン・・・)
それが“嫉妬”だとわかっていたが、それでも、スクアーロが持ち帰って来た伝言を心の支えにして、その感情を抑え込む。
(まだだ・・・まだ、落ち着いて事を進めなければ。・・・タヌキ共のいいなりというのも気にくわないが・・・)
冷静に、狡猾に。それがこの計画を成功させる術。
「文句はないな?・・・ならば同じリングを持つ者同士で、正々堂々ガチンコバトルだ!」
家光が宣言する。と同時に、二つの気配が現れる。
「「お待ちください」」
現れたのは、顔の上部分を覆面で隠した同じような容姿をした女性2人。
「ここからは、我々チェルベッロ機関が仕切らせて頂きます」
「ここに、九代目の死炎印もあります。・・・異存はありませんね?」
「・・・待て、俺はお前達の組織のことは知らないぞ」
「我々は九代目直属の機関です。沢田家光氏、貴方の力の及ぶところではありません」
「・・・~ッ!」
淡々と答えられて家光はグッとつまり、それから沈黙した。
チェルベッロ達はXANXUSに視線を向け、XANXUSが何も言わないことを確認すると、無表情ながら満足そうに頷いた。
「ご納得頂きありがとうございます。・・・それでは、明日の夜並盛中にてリング争奪戦の第1戦目を行います。対戦カードはその際に発表致します」
チェルベッロ達がそう宣言するのと同時に、ヴァリアーの幹部達は光に包まれ、その場を去る。
その際にチラリとツナを見たXANXUSのもの言いたげな視線に、ツナはここに来て初めて読心術を使った。
(ずっと会いたかった、ツナ。・・・辛いことはすぐに終わる。だから我慢していてくれ)
その言葉だけを読みとり、ツナは瞼を伏せた。
***
「意外と大人しかったな。XANXUSの奴」
リボーンの言葉にツナはこくりと頷く。
「それよりも問題はあのチェルベッロ機関だ。・・・お前、何か読みとれたか?」
「いや、読みとれなかった・・・。なんか、幻術が掛かってて邪魔されてる感じだった」
「やはりな・・・これは奴らの有利に事が進められかねねーぞ」
厳しい表情をうかべるリボーンに、獄寺達が不安げに身じろいだ。
「・・・ちっと調べてみるか」
ボソリ、と家光が言うのを聞き咎め、ツナが目を眇めた。
「むやみやたらに蜂の巣をつつくようなことはしない方がイイよ。XANXUSが父さんに掴ませるようなヘマをすると思う?」
「・・・しかし」
「大丈夫だよ・・・XANXUSの目的はボンゴレを壊すことじゃないから」
ツナの確信に近い言葉に、家光は困ったように眉根を寄せ、それから、部下達を振り返った。
「・・・とりあえず本国のチェデフに連絡だ。ただし、あまり無茶はしないように、とな」
「Si(はい)!」
返事をした家光の部下達はその場から移動を開始する。
「獄寺、山本、了平、お前らは修行を続けろ。まだ、完璧じゃねー奴もいるだろ。ギリギリまでやれ。じゃねーと・・・死ぬぞ」
それは脅しではない。あちらはプロの暗殺者だ。しかも“ヴァリアークオリティー”なんて呼び方がつく程一流の。
「争奪戦となりゃ奴らも本気でくる。・・・覚悟してかかれよ」
リボーンの真剣な表情に、獄寺達も気を引き締める。
「お願い・・・勝たなくていいから、死なないで」
ツナの願いに、獄寺達はハッとする。
「沢田、任せとけ!俺は死なん!!」
「10代目がそう仰るのなら!」
「ツナ、心配すんなって。絶対俺らは死なねーからさ!」
それぞれに頼もしい発言をし、3人は修行へと戻っていく。
「俺も新しい技を完成させなきゃ。・・・零地点突破FirstEditionじゃない、俺だけの零地点突破を。・・・じゃないとXANXUSを満足なんてさせられないだろうしね」
ツナの呟きに家光は眉間にしわを寄せる。
「ツナ、お前何を知ってる?」
「ごめん。まだ言えないんだ。・・・さぁ、行こうリボーン」
ツナはランボとイーピンを抱え、フゥ太に視線をやり、リボーンを促す。
「・・・ああ。バジル、お前も付き合え」
リボーンに呼ばれ、バジルは戸惑ったように家光を見上げる。
「は、はい。・・・あの、親方様」
「わかった。・・・バジル、ツナを頼む」
「はい!お任せください!」
家光がそう言えば、バジルは力いっぱい頷いて、リボーン達の後に付いていった。
「一体、何が起こってる?・・・いや、考えるのは止そう。先入観があるから余計に混乱するんだ」
門外顧問としてこの戦いを見届ける義務があり、何が起ころうとそれを客観的に見る必要がある。
「ったく、面倒な役割だ」
そうぼやいた家光は、ゆっくりと家路についたのだった。