Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~   作:cibetkato

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リング争奪戦 14

 そして、雨の守護者戦がはじまる。

 

『型にはまった剣・流派。それらを超えられなければスクアーロには勝てない』

 

 昔からスクアーロを知るディーノの言葉に山本は悩みに悩んだ。だが、結局は父から継承された時雨蒼燕流を極めることを選んだ。

 

 それは、父の“時雨蒼燕流は最強無敵”との言葉があったからだ。

 

 雨戦は“アクアリオン”と名付けられたフィールドで行われる。貯水タンクからの放水により時間が経つにつれ水かさが増していくフィールドは、一定の量を超えると獰猛な生物が放たれるという。

 

「山本・・・気をつけて・・・」

 

「おう」

 

 声をかければいつもと変わらない笑みが返ってくる。そのことにホッとし、ツナはフッと上を見上げた。

 

 そこにはヴァリアーの面子が揃っていて、XANXUSも最初から来ていた。

 

「XANXUS・・・」

 

 その名を呟き、それから視線を逸らした。今はまだ慣れ合う時ではないからだ。

 

 そして、山本とスクアーロをその場に残し、他の面子はそれぞれの観覧場所へと向かった。

 

「・・・山本は、流派を超えるつもりはないんだな」

 

 忠告を無視された形のディーノは心配そうに呟く。

 

「・・・大丈夫ですよ、ディーノさん。山本は勝ちますから」

 

「超直感か?」

 

「さぁ?・・・ただ、ここは勝つ。それだけです」

 

 ツナの言葉にディーノは眼を細め、それからリボーンへと視線を向ける。

 

「・・・心配すんなディーノ。山本は生まれついてのヒットマンだ。ある意味一番マフィアらしいんだぞ」

 

「リボーン、そういうこと言わないの。山本は野球が好きな、ただの中学生だよ」

 

 ツナが言えば、リボーンはボルサリーノを引き下げて沈黙する。

 

 ディーノはその様子に首を傾げつつ、いよいよ始まる雨の守護者戦へと意識を向けた。

 

 流派を極めんとする山本の一撃一撃に、スクアーロの表情には愉悦の色がうかぶ。が、経験の差なのか、それとも山本の甘さなのか、決定的な一撃を放つことができず、次第に山本が圧され始めてくる。

 

 皆がハラハラとそれを見守る中、スクアーロの声が響く。

 

「う゛ぉ゛おい!・・・刀小僧、なかなかやるじゃねえか。・・・だが、バッドニュースだ」

 

「・・・?」

 

 胡乱気に視線を向けた山本に、スクアーロはニヤリと笑った。

 

「お前の技は、全て見切っている!・・・時雨蒼燕流は、以前俺が潰した流派だ!」

 

 全員が息を呑む中、ツナとリボーンだけが冷静にそれを見つめている。

 

「まだ、八の型を出してねぇな?秋雨、だったか?・・・さぁ、撃って来い!!」

 

「・・・秋、雨・・・?」

 

 山本は呟いて俯く。そして次に顔をあげた時、まるで憑き物でも落ちたような表情になっていた。

 

「・・・?」

 

 スクアーロが訝しむが、山本はふ、と息を吐き、それから時雨金時を構えた。

 

「時雨蒼燕流・・・攻式、八の型・・・」

 

 技の入りは秋雨のものと同じ。山本は走るスピードをあげ、相手の懐深くに飛び込む。

 

 スクアーロは、勝利を確信した笑みをうかべた。

 

「はっ、自分から死にに来るか!」

 

「・・・篠突く雨!!」

 

「・・・っ、何!?」

 

 山本の初撃、突き上げられた刀を避け切れず、撥ね上げられたスクアーロはバシャッ、と水の溜まった床に伏せった。

 

「・・・っ・・・お前、他の流派も使えるのか!?」

 

 よろりと立ち上がったスクアーロに、山本は肩を竦めた。

 

「ははっ、まさか。・・・これも時雨蒼燕流だぜ?・・・時雨蒼燕流攻式八の型“篠突く雨”は、俺の親父が作った技だ」

 

 時雨蒼燕流の継承法は特殊だった。一度きりの継承、そして枝分かれしていく奥義。だからこその自負。

 

「時雨蒼燕流は最強無敵。・・・そういうことだったのか」

 

 納得したディーノが呟き、そしてリボーンに視線を向ける。その口の端には笑みが浮かんでいて、この事を予期していたことがわかる。

 

 ならばツナもかと思って視線を向ければ、ツナは厳しい表情をうかべていた。

 

「・・・ツナ?」

 

「・・・え、あ、なんですか?ディーノさん」

 

 一瞬で表情を取り繕ったツナは、ニッコリと笑う。

 

「いや。なんでもねぇよ」

 

 ニカ、と笑いディーノはツナから視線を逸らす。先程のツナの表情の変化を見て、完全に拒絶されていると思ったからだった。

 

「へなちょこディーノ・・・この程度でビビってんじゃねぇ」

 

 リボーンからボソ、と耳元で言われ、ディーノは苦笑をうかべた。

 

「そう言われても・・・アイツ、ダメツナのカヴァーしなくなったら、急に視線が冷たくなってねぇ?」

 

「アレは冷たいんじゃねぇ・・・緊張してるんだ。XANXUSが暴走しないように牽制かけてるからな」

 

 リボーンの言葉に、ディーノはギョッとした。

 

「牽制って・・・」

 

「ツナが睨みを利かせてなきゃ、今頃は既に暴走してんだろ。・・・XANXUSの手には既に大空のリングがあるんだからな」

 

「・・・た、確かに」

 

 そんなリボーンとディーノのやり取りを後目に、ツナは雨戦に見入っていた。

 

 山本は八の型までの攻式を既に見せてしまった。一度見た技はスクアーロには通じない。となれば、自ずと方法は決まってくる。

 

「山本、大丈夫。・・・お前なら撃てるよ」

 

 誰にも聞かれないような小さな声で呟く。その想いが届いたのか、山本はまるで打席に立つバッターのような構えをとる。

 

「ハッ!野球でもするつもりか?!」

 

「・・・あいにく、これしかとりえが無いんでね」

 

 スクアーロもまた、剣帝を倒した時の技を撃つ為に剣を構え、そして山本に突っ込んでいく。

 

「・・・時雨蒼燕流・・・」

 

 ザァッと水を巻き上げて、身を伏せる。

 

 その巻き上げられた水の下をくぐり抜け、スクアーロが山本をめがけてターンしてくる。

 

「山本!!」

 

「ヤバい!!」

 

 仲間達が肝を冷やすが、それは杞憂に終わる。

 

 スクアーロが一撃をくらわす寸前、巻き上がった水に視界が奪われ、背後から山本が現れる。それに反応したスクアーロが後ろへと剣を突き出せば、その“うつし身”はバシャリと崩れる。

 

「何!?」

 

「攻式九の型・・・うつし雨!」

 

 山本はスクアーロの注意が自分から逸れた時点で既に攻撃に入っていたため、もろに攻撃がスクアーロの後頭部に入った。

 

「っ、がっ!!」

 

 倒れ伏したスクアーロを見て、山本ははぁ、と息を吐き、首からぶら下がった雨のハーフリングを取り己のリングと合わせる。

 

「・・・ツナ!」

 

 ビシッとカメラの前に突き出し、ニッと笑う。

 

「お疲れ様・・・山本」

 

 ホッと安堵の表情をうかべたのも束の間。一定量の水が溜まったために、戦闘フィールドに獰猛な生物・鮫が放たれた。

 

「っ!!」

 

 倒れ伏したままのスクアーロを抱え上げ、山本は鮫のうろつく場所から離れようとする。が、足場が先程の戦闘で脆くなっていて、山本とスクアーロは一階下のフロアに落ちる。

 

 既に水に浸食されているそのフロアには、最早安全な場所など無かった。

 

 鮫が山本達をターゲットに進んでくる。

 

「くそっ・・・」

 

 何とかできないかと辺りを見回していた山本に、意識を取り戻したスクアーロが呟く。

 

「俺を、降ろせ・・・」

 

「スクアーロ!・・・でも」

 

「テメェの心配でもしてろ・・・俺に、情けは無用だ」

 

「っ・・・だ、ダメだ!」

 

「フン・・・とんだ甘ちゃんだぜェ・・・こんな奴に、負けるとは、なァッ!!」

 

 ドン、と突き飛ばされた山本は強かにコンクリートの塊に背を打ち、ハッと顔をあげた瞬間、スクアーロが鮫に圧し潰されるように水の中に消えた。

 

 その時、わずかにスクアーロが笑っていたように見えて、山本は呆然とそれを見やっていた。

 

「っつ、くそ!!」

 

 ガン、と背を預けていたコンクリートの塊に拳を打ちつけ、悔しさに表情を歪める。

 

 それを見ていた獄寺達も、やるせない表情をうかべる。

 

「・・・ディーノさん」

 

「ああ。一応山本が負けた時の為と配置はしてある・・・が」

 

 ツナに呼ばれ、何を言わんとしているかに気付いたディーノが答えれば、ツナは目を細めた。

 

「なら、良いです。・・・スクアーロをお願いします」

 

「・・・ああ」

 

 なぜ、とは問わなかった。ツナがスクアーロを気にかけていたのは言葉の端々からわかっていたからだった。

 

 そのディーノの表情で察したのか、ツナは苦い笑みをうかべた。

 

「スクアーロはね、XANXUSの真実を知っている当事者を除いた唯一の存在だったんだ」

 

「・・・XANXUSの真実?」

 

「それは、ヒミツ」

 

 困ったように笑って、ツナはディーノに背を向けた。山本を迎えに行くためだ。

 

「リボーン」

 

「俺でも、読めねぇ。・・・守護者戦が始まってから、ツナは心を俺に読ませねぇんだ」

 

 リボーンが悔しげに言う。そんなことが可能なのかと目を丸くしたディーノだったが、ツナならできそうだと思ってしまう。

 

「XANXUSが余程大切らしい・・・あの無愛想な強面のどこが良いんだか」

 

 ボソ、と呟くリボーンに、更にディーノは目を丸くした。

 

 あの数多の愛人がおり、最強と謳われるヒットマンが、XANXUSに嫉妬しているのだ。きっと明日は雨か槍が降るなと思う。

 

 くせ者ばかりがツナを好く。人を惹きつける魅力がツナにはある。そう冷静に分析している己もツナに惹かれていると自覚して、ディーノは苦笑をうかべた。

 

「山本!」

 

「おう、ツナ」

 

 山本は強張った笑みをうかべる。

 

「・・・スクアーロは大丈夫だよ」

 

 小声でツナが言えば山本はハッとし、それから、ふ、と目を細めた。

 

「そっか・・・サンキューな」

 

「山本が背負うことはない・・・だから、そんな顔しないで」

 

 ツナは明るく笑う山本が好きだった。だからこそ誰かの命を奪い、その死を背負うようなことはしてほしくなかったのだ。

 

「ツナ・・・ああ。そうだな」

 

 二カッと笑った山本に、ツナもホッと笑みをうかべた。

 

「ふん、やるじゃねぇか山本」

 

 獄寺も山本が勝利を収めたことで安心したのか幾分か表情が柔らかい。そんな獄寺からの称賛ともとれる言葉に山本は目を細める。

 

「はは。・・・あ、そうだツナ。勝利のご褒美ってやつ、貰ってもいいか?」

 

「なっ!野球バカ、テメェッ!」

 

「ん?・・・いいけど、俺の叶えられること?」

 

 焦る獄寺を後目に、山本はツナに笑みを向けて頷いた。

 

「俺も獄寺みたいに名字じゃなくて名前で呼んでくれよ」

 

 山本の発言にキョトン、として、ツナは首を傾げた。

 

「・・・そんなことでいいの?」

 

「ああ」

 

(獄寺ばっかりイイ思いはさせらんねーのな♪)

 

 爽やかに笑った山本は内心でそんなことを考える。強く思わなければツナが心を読むことはしないとわかっていてのことだ。

 

「・・・山本のヤツ・・・意外にも腹黒だぞ」

 

 その心を読んでしまったリボーンは、末恐ろしいと呟いた。

 

「は、はは」

 

 苦笑をうかべるディーノの顔も強張っている。

 

 そんな中、自分への好意に疎いツナは首を傾げつつ、山本を名前で呼ぶ。

 

「・・・じゃあ、武?」

 

「おう!」

 

 とても嬉しそうに山本が返事をするので、ツナも笑みをうかべた。

 

「勝ってくれて、ありがとう」

 

「・・・おう!」

 

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