Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~   作:cibetkato

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リング争奪戦 15

 雨のリング戦で勝利を収めた翌日。ツナはリボーンと共に中山外科病院に来ていた。

 

「・・・ランボ、まだ目を覚まさないね」

 

 心配そうに見やって、ツナはランボの頭を撫でる。

 

「命に別状はない。心配しなくても時機に目を覚ますだろ」

 

 リボーンはそう答えて、ツナを見る。

 

「それよりも、修行はどうする?・・・ほとんど形になってはいるが、まだ時間がかかりすぎるだろ?」

 

「うん。もうちょっとタイミングの取り方を身体に覚え込ませないとね」

 

「・・・それから、今日は霧のリング戦だ」

 

「うん」

 

「わかってるだろうが、霧の守護者は・・・」

 

「うん。大丈夫。・・・“彼女”は信用できる」

 

 リボーンに頷いて見せたツナは椅子から立ち上がり、ランボの病室の向かい側へと向かう。

 

 カラカラ、と軽い音を立ててドアをスライドさせ、中の様子を確認する。そこにはロマーリオだけでなく、何人かのディーノのファミリーの者達が詰めていた。

 

「・・・お邪魔するね?」

 

 そう言って入って来たツナにギョッとする面々だが、事情をディーノから聞いていたロマーリオがそれを制する。

 

「ロマーリオさん、スクアーロの様子は?」

 

「・・・生死の境を彷徨ってる状態だ」

 

「そうですか。でも、このリング戦の間は意識を取り戻さない方がスクアーロのためなのかもしれないな」

 

 ポツリ、と呟くツナに、ロマーリオは首を傾げる。

 

「ボンゴレ?」

 

「・・・いえ。こっちの話です」

 

 苦笑をうかべ、ツナはロマーリオに向かって頭を下げた。

 

「スクアーロを頼みます。・・・それと、スクアーロが生きていることは伏せていてください」

 

「・・・ああ、わかったぜ」

 

 了承の言葉を聞いて、ツナはホッと息をつき、スクアーロの病室を後にした。

 

 

 ***

 

 

 病院を出てリボーンと共に修行場所に向かっていたツナは、道端にある店から聞き慣れた声が聞こえて、ピタリと立ち止まった。

 

「・・・城島犬、柿本千種」

 

 名を口にすれば2人がこちらを振り返り、目を丸くした。

 

「ボンゴレ!」

 

「・・・アルコバレーノも一緒か」

 

 以前程の敵意は感じないものの、元は敵同士。ぎくしゃくとした空気がその場に流れる。

 

「・・・もう1人はどうした?」

 

 リボーンが訊ねると、千種が肩を竦めた。

 

「・・・雲雀恭弥に会いに行った」

 

「・・・大丈夫なのか?アイツは」

 

「大丈夫でしょ。・・・“彼女”と“六道骸”は全くの別人だもん」

 

 己の言葉をさえぎりツナが言えば、それもそうかとリボーンは頷く。

 

「おい、ボンゴレ!・・・あの時の言葉、嘘だったら承知しねーぞ!」

 

 犬が噛みつきそうな勢いで言えば、ツナは表情を引き締めた。あの時の言葉というのは、以前骸達と闘った時に彼等が復讐者(ヴィンディチェ)に連れて行かれる前にツナが言った言葉だ。

 

「・・・もちろん、嘘にするつもりはない」

 

「それなら、いいんら。・・・その為に、骸様はお前に手を貸すことに決めたんらからな!」

 

 犬がどこかホッとしたように言うので、ツナは微笑をうかべる。

 

「大丈夫だよ。いつか、骸も・・・復讐者(ヴィンディチェ)の牢から出してみせるから」

 

「・・・本当か?」

 

 千種がわずかに上擦った声でそう訊ねてくる。

 

「うん。頑張るよ。ボンゴレ10代目ファミリーの、絶対に欠けてはならない守護者として・・・呼び戻してみせる」

 

 それはただの願望ではない。そのために動く決意だった。それを感じ取ったのか千種も犬も何も言わずに頷く。

 

 黙ってその様子を見ていたリボーンは、フ、と口元に笑みをうかべる。

 

「霧のリング戦は今晩だ。・・・ギリギリにくんじゃんねぇぞ」

 

「へっ・・・約束なんかできねーよ!」

 

「・・・こちらの都合次第だ」

 

 素直にうんとは言わないだろうとわかっていても、そう返答されると腹が立つらしい。リボーンがわずかに殺気を漏らす。

 

「リボーン、落ち着けって。・・・じゃあ、城島犬、柿本千種・・・待ってるから」

 

「・・・ああ」

 

「わかってるらよ・・・」

 

 気不味そうに視線を逸らした2人に苦笑をうかべ、ツナはリボーンを促し、修行場へと向かった。

 

 

 ***

 

 

「おせーぞ、コラ!」

 

 ゴチッ!

 

 待ちかねたように、コロネロがリボーンに頭突きをくらわす。

 

「ちょっと寄る所があったんだぞ」

 

 ゴチッ!

 

 お返しとばかりにリボーンもコロネロに頭突きする。

 

「・・・うっわ、痛そ」

 

 ツナが顔を顰める。

 

「・・・で、ツナの修行は終わってんのか、コラ!」

 

 ゴチッ!

 

「一応は終わってるが、まだタイミングの取り方がまだなんだぞ。・・・まぁコイツは、ぶっつけ本番の方が超直感が冴えるからな、完成は急がなくても良い」

 

 ゴチッ!

 

「・・・い、痛そうです」

 

 修行場に先に着いていたバジルも、ゴチゴチと頭突きをし合うリボーンとコロネロに口元を引き攣らせる。

 

「ほら、いい加減にしないと・・・脳震盪を起こすぞ」

 

 ガシ、と2人の頭を鷲掴みにして、ツナは溜息を落とす。

 

「「・・・チッ」」

 

 同時に舌打ちした2人に、ツナは肩を竦めた。

 

「まったく、仲良いんだか、悪いんだか・・・」

 

「・・・で、俺を呼んだのは、どういうことだ、コラ!」

 

「オメェも気になってると思ってな」

 

「・・・あん?」

 

「向こうの霧の守護者のことだ」

 

 リボーンが言えば、コロネロの表情が険しいものに変わった。

 

「・・・マーモンとか言ったか?」

 

「ああ。もしかすると、あいつは・・・」

 

「俺達と同じ、アルコバレーノだっていうのか?コラ!」

 

 コロネロの言葉に、リボーンは視線を落とす。

 

「まぁな・・・」

 

「だが、不在の橙のアルコバレーノを含めて、全員の所在はわかってるはずだぞ、コラ!・・・って、まさか・・・アイツか!?」

 

「ああ。その可能性は捨て切れねェ」

 

「・・・あのさぁ、2人だけで納得しないでくれる?」

 

 リボーンとコロネロの間に、ツナが割って入る。

 

「あ、ああ。ワリィ」

 

「・・・!」

 

 リボーンが思わず謝罪を口にすると、コロネロが目を丸くし、ツナは肩を竦めた。

 

「別に怒ってないよ。・・・で?マーモンが藍のアルコバレーノっていうのは知ってるけど、どういう能力を持ってるの?」

 

「・・・お前、どこまであいつらの計画を・・・?」

 

 リボーンがツナを見上げる。

 

「ん~、スクアーロが知ってるだけ・・・ってことはほとんどなのかな?アイツ、ヴァリアーの中でも特別XANXUSに近しかったみたいだし?」

 

「・・・ナルホド。じゃあ、そろそろ吐け」

 

 カチャ、と銃をツナに向けたリボーン。それを見たバジルがギョッとする。

 

「リ、リボーンさん!?」

 

「・・・俺が、その程度の脅しで吐くとでも?」

 

 クスリと笑ったツナに、リボーンの表情は崩れない。

 

「これは、脅しじゃねェ・・・命令だ」

 

「命令、ねぇ?その言い方はなんか腹立つけど・・・そろそろリボーンには話しておいた方が良いのかな」

 

 ツナは肩を竦めて、溜息をついた。

 

「・・・で、これからどうなるんだ?」

 

「さぁ?いくつもの作戦があって状況に応じて変えてるみたいだし、細かいところはわからない。でも、最後の切り札はわかってる」

 

「最後の切り札?」

 

 コロネロが首を傾げる。

 

「ゴーラ・モスカだよ。・・・アレには要注意だ」

 

 ツナの言葉に、リボーンは目を細めた。

 

「アレが・・・お前がおとなしくXANXUSのやり方に付き合ってる理由か?」

 

「・・・」

 

 途端にツナの表情が冷たいものへと変わる。その威圧感にバジルやコロネロはごくりと喉を鳴らす。

 

「・・・ツナ、アレは何だ?」

 

 リボーンが訊ねる。

 

 それに対して、ツナはフィと視線を下に落とした。

 

「アレはロボットだよ。軍が秘かに作っていたという、ね。・・・でも、あのゴーラ・モスカは特殊な細工がされている」

 

「特殊な細工って一体何なんだ、コラ!」

 

 コロネロに視線を向けたツナは、その瞳に悲しげな色をにじませた。

 

「・・・死ぬ気の炎をエネルギー源としている」

 

「死ぬ気の炎だと?・・・じゃあXANXUSの死ぬ気の炎で動かしてるっていうのか、コラ!」

 

「そうだったら・・・良かったんだけど」

 

 ツナの声のトーンが落ちる。XANXUSではない死ぬ気の炎の使い手、それは自ずと知れる。

 

「9代目、か。だからツナは、家光がイタリアに行くことを止めたのか」

 

「・・・」

 

 リボーンの指摘に黙り込み、ツナは俯いた。

 

「・・・この戦いを止めるわけにはいかない。止めれば9代目の命はない。自分やヴァリアー隊員の思考が読まれること前提で、XANXUSは計画したんだ」

 

「ツナ・・・ずっと、そのことを1人で抱え込んでやがったのか」

 

 きゅ、と口を結び黙り込んだツナを見上げ、リボーンは眉を顰めた。

 

「ごめん。・・・まだ、皆には黙っていて欲しい」

 

「・・・わかった」

 

 渋々ながらも頷いたリボーンに、ツナはホッと胸を撫で下ろした。

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