Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~ 作:cibetkato
雨のリング戦で勝利を収めた翌日。ツナはリボーンと共に中山外科病院に来ていた。
「・・・ランボ、まだ目を覚まさないね」
心配そうに見やって、ツナはランボの頭を撫でる。
「命に別状はない。心配しなくても時機に目を覚ますだろ」
リボーンはそう答えて、ツナを見る。
「それよりも、修行はどうする?・・・ほとんど形になってはいるが、まだ時間がかかりすぎるだろ?」
「うん。もうちょっとタイミングの取り方を身体に覚え込ませないとね」
「・・・それから、今日は霧のリング戦だ」
「うん」
「わかってるだろうが、霧の守護者は・・・」
「うん。大丈夫。・・・“彼女”は信用できる」
リボーンに頷いて見せたツナは椅子から立ち上がり、ランボの病室の向かい側へと向かう。
カラカラ、と軽い音を立ててドアをスライドさせ、中の様子を確認する。そこにはロマーリオだけでなく、何人かのディーノのファミリーの者達が詰めていた。
「・・・お邪魔するね?」
そう言って入って来たツナにギョッとする面々だが、事情をディーノから聞いていたロマーリオがそれを制する。
「ロマーリオさん、スクアーロの様子は?」
「・・・生死の境を彷徨ってる状態だ」
「そうですか。でも、このリング戦の間は意識を取り戻さない方がスクアーロのためなのかもしれないな」
ポツリ、と呟くツナに、ロマーリオは首を傾げる。
「ボンゴレ?」
「・・・いえ。こっちの話です」
苦笑をうかべ、ツナはロマーリオに向かって頭を下げた。
「スクアーロを頼みます。・・・それと、スクアーロが生きていることは伏せていてください」
「・・・ああ、わかったぜ」
了承の言葉を聞いて、ツナはホッと息をつき、スクアーロの病室を後にした。
***
病院を出てリボーンと共に修行場所に向かっていたツナは、道端にある店から聞き慣れた声が聞こえて、ピタリと立ち止まった。
「・・・城島犬、柿本千種」
名を口にすれば2人がこちらを振り返り、目を丸くした。
「ボンゴレ!」
「・・・アルコバレーノも一緒か」
以前程の敵意は感じないものの、元は敵同士。ぎくしゃくとした空気がその場に流れる。
「・・・もう1人はどうした?」
リボーンが訊ねると、千種が肩を竦めた。
「・・・雲雀恭弥に会いに行った」
「・・・大丈夫なのか?アイツは」
「大丈夫でしょ。・・・“彼女”と“六道骸”は全くの別人だもん」
己の言葉をさえぎりツナが言えば、それもそうかとリボーンは頷く。
「おい、ボンゴレ!・・・あの時の言葉、嘘だったら承知しねーぞ!」
犬が噛みつきそうな勢いで言えば、ツナは表情を引き締めた。あの時の言葉というのは、以前骸達と闘った時に彼等が復讐者(ヴィンディチェ)に連れて行かれる前にツナが言った言葉だ。
「・・・もちろん、嘘にするつもりはない」
「それなら、いいんら。・・・その為に、骸様はお前に手を貸すことに決めたんらからな!」
犬がどこかホッとしたように言うので、ツナは微笑をうかべる。
「大丈夫だよ。いつか、骸も・・・復讐者(ヴィンディチェ)の牢から出してみせるから」
「・・・本当か?」
千種がわずかに上擦った声でそう訊ねてくる。
「うん。頑張るよ。ボンゴレ10代目ファミリーの、絶対に欠けてはならない守護者として・・・呼び戻してみせる」
それはただの願望ではない。そのために動く決意だった。それを感じ取ったのか千種も犬も何も言わずに頷く。
黙ってその様子を見ていたリボーンは、フ、と口元に笑みをうかべる。
「霧のリング戦は今晩だ。・・・ギリギリにくんじゃんねぇぞ」
「へっ・・・約束なんかできねーよ!」
「・・・こちらの都合次第だ」
素直にうんとは言わないだろうとわかっていても、そう返答されると腹が立つらしい。リボーンがわずかに殺気を漏らす。
「リボーン、落ち着けって。・・・じゃあ、城島犬、柿本千種・・・待ってるから」
「・・・ああ」
「わかってるらよ・・・」
気不味そうに視線を逸らした2人に苦笑をうかべ、ツナはリボーンを促し、修行場へと向かった。
***
「おせーぞ、コラ!」
ゴチッ!
待ちかねたように、コロネロがリボーンに頭突きをくらわす。
「ちょっと寄る所があったんだぞ」
ゴチッ!
お返しとばかりにリボーンもコロネロに頭突きする。
「・・・うっわ、痛そ」
ツナが顔を顰める。
「・・・で、ツナの修行は終わってんのか、コラ!」
ゴチッ!
「一応は終わってるが、まだタイミングの取り方がまだなんだぞ。・・・まぁコイツは、ぶっつけ本番の方が超直感が冴えるからな、完成は急がなくても良い」
ゴチッ!
「・・・い、痛そうです」
修行場に先に着いていたバジルも、ゴチゴチと頭突きをし合うリボーンとコロネロに口元を引き攣らせる。
「ほら、いい加減にしないと・・・脳震盪を起こすぞ」
ガシ、と2人の頭を鷲掴みにして、ツナは溜息を落とす。
「「・・・チッ」」
同時に舌打ちした2人に、ツナは肩を竦めた。
「まったく、仲良いんだか、悪いんだか・・・」
「・・・で、俺を呼んだのは、どういうことだ、コラ!」
「オメェも気になってると思ってな」
「・・・あん?」
「向こうの霧の守護者のことだ」
リボーンが言えば、コロネロの表情が険しいものに変わった。
「・・・マーモンとか言ったか?」
「ああ。もしかすると、あいつは・・・」
「俺達と同じ、アルコバレーノだっていうのか?コラ!」
コロネロの言葉に、リボーンは視線を落とす。
「まぁな・・・」
「だが、不在の橙のアルコバレーノを含めて、全員の所在はわかってるはずだぞ、コラ!・・・って、まさか・・・アイツか!?」
「ああ。その可能性は捨て切れねェ」
「・・・あのさぁ、2人だけで納得しないでくれる?」
リボーンとコロネロの間に、ツナが割って入る。
「あ、ああ。ワリィ」
「・・・!」
リボーンが思わず謝罪を口にすると、コロネロが目を丸くし、ツナは肩を竦めた。
「別に怒ってないよ。・・・で?マーモンが藍のアルコバレーノっていうのは知ってるけど、どういう能力を持ってるの?」
「・・・お前、どこまであいつらの計画を・・・?」
リボーンがツナを見上げる。
「ん~、スクアーロが知ってるだけ・・・ってことはほとんどなのかな?アイツ、ヴァリアーの中でも特別XANXUSに近しかったみたいだし?」
「・・・ナルホド。じゃあ、そろそろ吐け」
カチャ、と銃をツナに向けたリボーン。それを見たバジルがギョッとする。
「リ、リボーンさん!?」
「・・・俺が、その程度の脅しで吐くとでも?」
クスリと笑ったツナに、リボーンの表情は崩れない。
「これは、脅しじゃねェ・・・命令だ」
「命令、ねぇ?その言い方はなんか腹立つけど・・・そろそろリボーンには話しておいた方が良いのかな」
ツナは肩を竦めて、溜息をついた。
「・・・で、これからどうなるんだ?」
「さぁ?いくつもの作戦があって状況に応じて変えてるみたいだし、細かいところはわからない。でも、最後の切り札はわかってる」
「最後の切り札?」
コロネロが首を傾げる。
「ゴーラ・モスカだよ。・・・アレには要注意だ」
ツナの言葉に、リボーンは目を細めた。
「アレが・・・お前がおとなしくXANXUSのやり方に付き合ってる理由か?」
「・・・」
途端にツナの表情が冷たいものへと変わる。その威圧感にバジルやコロネロはごくりと喉を鳴らす。
「・・・ツナ、アレは何だ?」
リボーンが訊ねる。
それに対して、ツナはフィと視線を下に落とした。
「アレはロボットだよ。軍が秘かに作っていたという、ね。・・・でも、あのゴーラ・モスカは特殊な細工がされている」
「特殊な細工って一体何なんだ、コラ!」
コロネロに視線を向けたツナは、その瞳に悲しげな色をにじませた。
「・・・死ぬ気の炎をエネルギー源としている」
「死ぬ気の炎だと?・・・じゃあXANXUSの死ぬ気の炎で動かしてるっていうのか、コラ!」
「そうだったら・・・良かったんだけど」
ツナの声のトーンが落ちる。XANXUSではない死ぬ気の炎の使い手、それは自ずと知れる。
「9代目、か。だからツナは、家光がイタリアに行くことを止めたのか」
「・・・」
リボーンの指摘に黙り込み、ツナは俯いた。
「・・・この戦いを止めるわけにはいかない。止めれば9代目の命はない。自分やヴァリアー隊員の思考が読まれること前提で、XANXUSは計画したんだ」
「ツナ・・・ずっと、そのことを1人で抱え込んでやがったのか」
きゅ、と口を結び黙り込んだツナを見上げ、リボーンは眉を顰めた。
「ごめん。・・・まだ、皆には黙っていて欲しい」
「・・・わかった」
渋々ながらも頷いたリボーンに、ツナはホッと胸を撫で下ろした。