Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~   作:cibetkato

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リング争奪戦 16

「ズビッ!」

 

 霧のリング戦を前に、今まで一度も姿を現さず、正体すらも掴めない沢田綱吉側の霧の守護者に、マーモンは焦りを覚えていた。

 

 得意の“粘写”ですらも、意味をなさないものと化している。

 

「ムム・・・この僕が惑わされるなんて」

 

「マーモン、どーした?」

 

「・・・ベルか。何でもないよ」

 

「何でもないって顔じゃないな、シシッ」

 

 ベルフェゴールの言葉に、マーモンはひっそりと溜息をつく。

 

「・・・今日の霧のリング戦、楽しみぃ」

 

 ニヤリと笑うベルをチラリと見て、マーモンは不機嫌さを隠さずに言う。

 

「・・・見に来るなら、観戦料とるよ」

 

「・・・シシシ、ケチ」

 

「そう。ご存知の通り僕はケチでね。・・・口座に振り込んどいてよね。じゃないと見せないよ」

 

 ヒラヒラと手を振りながらベルフェゴールが去るのを確認して、マーモンは再びトイレットペーパーを鼻にあてた。

 

「ズビッ!」

 

 

 ***

 

 

 そして、夜。

 

 守護者のほとんどが揃うなか、なかなか姿を現さない霧の守護者に獄寺達がイラだち始めたその時、ツナが体育館の出入口に視線を向けた。

 

 現れたのは、柿本千種と城島犬。

 

 改めて黒曜中の2人が姿を現したことで“彼”が守護者なのだと思い知らされる、獄寺達。

 

「・・・10代目、本当に良いんですか?」

 

「大丈夫・・・心配しなくても良いよ」

 

 ニコリと笑うツナに、獄寺は渋々口を閉じる。

 

「武も、そんなに警戒しないで」

 

 口には出していなかったが、彼等を警戒して時雨金時に手をかけていた山本にも落ち着くように言葉をかける。

 

「!・・・あ、ああ。・・・ツナが、そう言うなら」

 

 無意識の反応だったのか自分の行動に一瞬目を瞠り、それから身体の緊張を解く。

 

「・・・山本も一端の剣士だな」

 

 ポツリ、とリボーンが呟く。

 

 それをチラリと見てから、ツナは犬と千種に視線を向けて問う。

 

「・・・“彼女”は?」

 

「ここに」

 

 答える声は感情の起伏に乏しいもの。だが、操られているのではなく自身の意思を感じられるようなもの。

 

「はじめまして、ボス。・・・我が名はクローム。クローム髑髏」

 

「うん。はじめまして、クローム。・・・今日はよろしくね」

 

「・・・ハイ、ボス」

 

 ほんの僅かに動いた表情に、ツナはニコリと笑った。

 

「・・・相手は手強いよ、気をつけて」

 

 コクリと頷くクローム。そのクロームが一歩踏み出そうとしたその時、獄寺が声をあげた。

 

「10代目!?霧の守護者は・・・こいつなんですか!?」

 

「ん?・・・ああ、“わかる”でしょ?隼人」

 

「もしかして・・・“契約”を?」

 

 獄寺が眉を顰めるのに、ツナはクツクツと笑った。

 

「そんな単純な関係じゃないけどね。・・・クロームと“彼”は」

 

「危険は、ないんスね?」

 

 ツナを案じての獄寺の言葉に、ツナはハッキリと頷いてみせた。

 

「大丈夫」

 

「なら、いいんス」

 

 おとなしく引き下がった獄寺に笑みをうかべ、ツナはクロームの肩をポン、と叩いた。

 

「行っておいで。・・・遠慮する必要ないからね」

 

「ハイ」

 

 頷いたクロームは間合いを計るように進み、相手と向かい合って立った。

 

「ふ~ん、君が、沢田綱吉の霧の守護者?」

 

「あの方の望みのため・・・そして、ボスのため。・・・クローム髑髏、参る!」

 

 トン、と三叉槍の柄を体育館の床に打ち付けた途端、あちこちから火柱が上がる。

 

「ムギャッ!」

 

 真下から上がった火柱にマーモンがのみこまれる。が、次の瞬間、ふよふよと浮いたマーモンがあちこちに現れる。

 

「この程度で・・・僕に勝てるなんて、思わないでよね!!」

 

「キャッ!」

 

 マーモンのフードの中から植物の蔓が伸びてきてクロームを拘束する。そして、そのまま持ち上げられたクロームは苦しそうに表情を歪める。

 

「っく・・・うっ」

 

 その様子を見ていた獄寺達が息を呑む。

 

「・・・どこ、見ているの?・・・私は、こっち」

 

「!?」

 

 背後から聞こえたクロームの声に振り返り、マーモンは鼻を鳴らした。

 

「フン・・・少しは出来るようだね。でも・・・これで、終わりだよ!!」

 

 そう言ったマーモンはマントをめくり、ジャラジャラと鎖を落とす。

 

「?」

 

 クロームは眉を顰めてそれを見つめていたが、不意にハッとしてマーモンから距離を取った。

 

 鎖が全て落ち切ったのと同時に、マーモンの胸元に藍色のおしゃぶりが眩く輝いた。

 

「出たな。やはり藍のアルコバレーノ・バイパーか」

 

「・・・これからが本番だぞ。コラ!」

 

 マフィア界最強の赤ん坊であるアルコバレーノの仲間だと確認した、リボーンとコロネロの表情は厳しい。

 

「僕の力はあの程度じゃない。・・・それはお前達もわかっているだろ、リボーン、コロネロ」

 

 視線を向けられた2人は、厳しい表情を崩さぬまま問いかける。

 

「・・・今までおしゃぶりが光らなかったのは、その鎖のせいか?」

 

 リボーンが問いかければ、マーモンは鼻を鳴らす。

 

「お前達と違って、僕は呪いを解く努力を怠らなかったからね」

 

 その言葉にリボーンとコロネロは沈黙する。

 

「呪い、か」

 

 ツナの呟きが、体育館に響く。

 

 ピクリ、とXANXUSが反応したのを見て、マーモンはツナに視線を向けた。

 

「沢田綱吉・・・お前とボスがどういった経緯で知り合って、互いにどんな想いを抱いているのか僕はよく知らない。でもね、だからといってここで手を抜いたりはしないよ。わかっているだろうけど、ヴァリアーは結果がすべてだ」

 

「うちの霧を甘く見ない方が良い。・・・クローム」

 

「はい、ボス」

 

「・・・全力を出してかまわない」

 

「・・・はい」

 

 頷いたクロームは三叉槍の柄を床に叩き付ける。その瞬間、ぐにゃりと体育館の中が歪む。

 

 落ちるような感覚に襲われて獄寺達はしゃがみ込んだり鉄柵に掴まったりしているが、その中で、ツナはその場に真っ直ぐに立ち冷静にクローム達を見つめる。

 

「・・・ふぅん・・・でも、これならどうだい?」

 

 ゴッ!

 

 凄まじい圧力がクロームを襲い、クロームの幻術が解かれる。

 

「っ!?」

 

 目を丸くするクロームに、マーモンはくつくつと笑う。

 

「ねぇ、知ってるよね。幻術を破られるってことは」

 

 マーモンの言葉に、クロームの表情が歪む。

 

「沢田!・・・あの女子は大丈夫なのか?!」

 

 年下の少女であるからか心配そうに訊ねる了平に、ツナはコクリと頷いた。

 

「・・・命の危険、という意味では心配いりません」

 

「そう、なのか?」

 

 首を傾げる了平にツナは苦笑をうかべた。

 

「・・・むしろ、少しクロームの意識レベルを下げないと“彼”が出てこられない」

 

「10代目、“彼”ってのは・・・」

 

 会話に混じって来た獄寺に、ツナは頷く。

 

「そうだよ。隼人の考えてる通りだ。・・・クロームの術師としての能力は高い。でもアルコバレーノには劣る」

 

「じゃあ、なんで最初からあいつが出てこねーんだ?」

 

 山本の何気ない問いに、犬と千種が殺気立った。

 

「あいつの役目は、骸さんが戦う時のために相手の情報を集めることだびょん!」

 

「クロームはそれを承知で戦ってる。・・・こちらのやり方に文句を言われる筋合いはない」

 

「・・・あ、いや、文句っつーか・・」

 

 困ったような山本の所作に、ツナは犬と千種の前に立つ。

 

「武は文句を言ったわけじゃない。ただ不思議に思っただけだ。・・・そんなに目くじらを立てるなよ」

 

「・・・けっ」

 

「・・・フン」

 

「テメーら!・・・10代目になんて態度を!」

 

「隼人!」

 

 視線を逸らした2人に今度は獄寺がいきり立つが、ツナに止められしゅんとする。

 

「・・・おい、やべーぞ!コラ!」

 

 コロネロの声に、ツナ達はハッとしてバトルフィールドを見る。

 

 そこには倒れたクロームと、粉々に砕かれた三叉槍があった。見る間に腹部が陥没し、クロームが荒い息をつく。

 

「・・・へぇ・・・幻術で補ってたわけか」

 

 マーモンが無感動にそう言えば、クロームを見つめる犬と千種の目に心配そうな色がうかぶ。

 

 次の瞬間、クロームから煙が吹き出してクロームの身を包む。

 

「死を覚悟した女術師によくあるパターンだ。・・・自分の醜い死体を隠そうとする」

 

 余裕の態度でそう解釈を述べていたマーモンが、ピクリ、と反応する。

 

 クロームが倒れていただろう場所から、彼女よりもずっと強い力を持つ者の気配がしたからだ。

 

「・・・クフフ」

 

 その特徴的な笑い方、そして、声。

 

 ボンゴレ守護者側からしてみれば、味方であって味方ではない者。その男が姿を現す。

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