Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~   作:cibetkato

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リング争奪戦 17

「・・・女はどうした」

 

「クフフ・・・彼女なら少し休んでいます。随分と好き勝手にほざいてくれたようですが・・・最初から全力で行かせてもらいますよ」

 

 そういうや否や、マーモンと骸の幻術合戦が始まった。

 

 激しい幻覚の応酬に、頭痛を訴える守護者達を心配そうに見やり、ツナは骸へと視線を向けた。

 

(短い時間しかこちらにいられない。それゆえにクロームで相手の力を測り、全力で当たらなければ勝てないとふんだ・・・?)

 

 ツナの読みに返答があった。

 

(そう。僕がこちらにいられる時間は限られています。ただし、全力でなければ勝てないわけではありませんよ。時間の短縮、ただそれだけの理由です)

 

「ふふ・・・負けず嫌い」

 

 呟いた言葉に反応したリボーンが視線を向けてくる。

 

「ツナ?」

 

「ああ、いや。骸が負けず嫌いな発言してるから。ふふ・・・あいつにもそういう面があるんだなぁって」

 

 至極愉快そうに笑うツナに、リボーンは納得がいく。

 

「・・・ああ、骸との精神感応か」

 

「そーいうこと。・・・戦闘中にこっちに意識を向けるなんて、ヨユー見せつけてくれるよな」

 

 そんなツナの言葉が聞こえたのかXANXUSの眉間のしわが深くなり、殺気が膨れ上がる。

 

「ぼ・・・ボス」

 

 レヴィがオロオロするのを視界に入れ、XANXUSは自分の無意識の行動に気付いて、更に機嫌を降下させた。

 

 ツナとの精神感応。それはXANXUSが望んでも得られぬもの。ただ一方的にツナに自分の思考を垂れ流すしかない。

 

 ツナの心が知りたい。そう思っているXANXUSにとって、マーモンと闘っている男とツナとの繋がりは嫉妬心を煽られるものだ。

 

「・・・お前のせいでボスの機嫌が最悪だ」

 

 徐々に圧されつつあったマーモンが骸を睨む。

 

「おや、心外ですね。・・・僕はボンゴレと慣れ合うつもりなど一切ありません。ああ、でも、利害は一致しているので協力は惜しみませんよ。それすらも許せないというのは矛盾じゃありませんか?」

 

 クフフ、と笑う骸にマーモンは冷や汗をかく。

 

(この男、ボスの殺気を感じてもこの態度・・・!)

 

「さぁ、廻れ・・・」

 

 余裕の笑みをうかべる骸にすっかりと呑まれてしまったマーモンは、完全に脳の支配権を骸に奪われてしまった。

 

「クフフ・・・これで最後です」

 

 骸の身体が影のようになり、マーモンの口の中に飛び込む。幻覚であっても気持ちのいいものではない。

 

 逃れようと暴れるマーモンを植物の弦が抑え込んでいる。誰の目にも勝敗は明らかだった。

 

「止めろ!・・・これ以上は・・・もう!!」

 

 パァン!と破裂するマーモンの身体を見て、ヴァリアー側も獄寺達も同様に表情を強張らせた。

 

「霧のリング・・・これでいいですか?」

 

 チェルベッロに向かい骸は完成させたリングを見せる。それに対して、チェルベッロは勝利を告げた。

 

「・・・骸」

 

 勝利を告げられて立ちあがった彼にツナが声をかければ、骸は口元に笑みをうかべた。

 

「殺してはいませんよ。さすがはアルコバレーノといったところですか。最後に逃げるだけの余力は残していたようです」

 

 その言葉にXANXUSはゴーラ・モスカを振り返る。

 

「戦線離脱とみなす・・・処分は任せた」

 

「・・・シュー・・・」

 

 了承の証なのか、目の部分が赤く光る。

 

 そんなXANXUSを見て、骸はフ、と笑みをうかべた。

 

「XANXUS、貴方のおぞましい計画はこの僕ですら畏怖の念をいだく」

 

「・・・」

 

 無言で己を睨むXANXUSに骸は肩を竦めた。

 

「まぁ、貴方の計画がどうなろうと僕の知ったことではありません。・・・ただし、僕達の大空が貴方の計画の排除を決めたなら、僕は全力で貴方の計画を潰しますよ」

 

 “僕達の大空”――その言葉に獄寺達は目を見開いた。一体どうやったら、この誰にも膝をつくことのない男からそんなセリフを引き出せるのか。

 

 一斉にツナに視線を向ければ、ツナはクツリと笑った。

 

「・・・骸、XANXUSを煽っても無駄だよ」

 

「おや、煽ったつもりはないんですがね?」

 

 肩を竦めた骸は颯爽とツナ達に近寄り、警戒心を露わにする獄寺達を満足げに見やる。

 

「そう、それくらい警戒しておいた方が良い。僕が彼の守護者を受けたのは利害の一致から。・・・それがわずかでもずれたなら、僕は再び彼に牙をむく」

 

(嘘つき。犬や千種のためにボンゴレに膝を折ったくせに)

 

「・・・骸、隼人達にまでケンカをふっかけないでよ」

 

「クフフ・・・ああ、そろそろ時間だ。少し、力を使いすぎたようです。・・・彼女を、頼みます」

 

 パタリ、と倒れ込んだ骸の身体が、一瞬のうちにクロームの身体に戻る。

 

 傍に寄ったツナはクロームの内臓が戻っていることと呼吸が整っていることを確認すると、目を細めた。

 

「・・・柿ピー、行くびょん」

 

「・・・ああ」

 

「ちょ、ちょっと待てよ!・・・こいつはテメェらの仲間だろうが!」

 

 獄寺が慌てて止めるが、犬の言葉は素気無い。

 

「こいつは骸さんじゃない。だからちやほやするつもりはないびょん」

 

「・・・ボンゴレ、任せたから」

 

「おい!」

 

 千種の言葉に苦笑をうかべて頷き、ツナは尚も犬と千種にくってかかろうとしていた獄寺を諌める。

 

「隼人、いいんだ。彼女は俺達と彼等の中間、橋渡しみたいな立場なんだ」

 

「・・・じゅ、10代目がそう仰るのであれば・・・」

 

 渋々引き下がった獄寺に笑みを向け、それから、犬と千種に向き直った。

 

「こっちの人間も距離を測り損ねてるんだ・・・気にしないで行って」

 

「わかった。じゃーな、ボンゴレ。・・・ほら、柿ピー!」

 

「ああ。・・・ボンゴレ、お前は・・・いや、何でもない」

 

 千種が何か言いたげにしたが、他の面子の視線を嫌ってか口をつぐむと、皆に背を向けて犬と共に体育館を出て行った。

 

 その場に沈黙が落ちる。

 

 未だにその場にいるXANXUS率いるヴァリアーが気になって、帰るに帰れないのだ。

 

「・・・おい、XANXUS」

 

 そんな空気をぶち壊すように、リボーンの声が響く。

 

「次、そちらが負ければ俺達の勝ちだ。・・・大人しく負けを認め、ボンゴレ10代目の座を諦めるんだな?」

 

「・・・ああ。良いぜ」

 

 ニヤリ、と笑ったXANXUSに、リボーンは眉根を寄せる。

 

(勝つ自信があるのか?それとも、ツナが言っていた計画の発動があるのか?)

 

 黙り込んだリボーンを見やってから、XANXUSはツナに視線を向けた。

 

「ツナ・・・途中で止めることは、たとえお前でも許さない」

 

(お前をボンゴレの大空にしたい。その想いだけは真実だ)

 

「・・・止めやしないよ。・・・さぁ、皆、帰ろう」

 

 XANXUSの真っ直ぐな視線を受けたツナはそう答えて、獄寺達を促した。

 

 ツナ達が出て行くのを見送ったXANXUSは、静かに目を伏せて心の中で呟いた。

 

(ツナをボンゴレ10代目にするためなら・・・俺は、悪役になりきってやる)

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