Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~ 作:cibetkato
翌日の朝、ツナは修行場に行く前にランボの様子を見に病院へとやって来ていた。
「・・・あ、ボス」
ちょうど病院から出てきたクロームと鉢合わせ、ツナは目を見開いた。
あの後、起きる様子が見えなかったクロームを病院に運び込んだのだが、思ったよりもダメージは少なかったらしい。
「クローム?・・・もういいの?」
「うん。平気」
「そっか、よかった。・・・あ、骸にもありがとうって伝えて。どうせ礼なんていらないって言うんだろうけど」
「・・・骸様は、今、別の方へ意識を向けてる」
「別の方?」
「・・・それ以上は私にもわからない」
困ったような表情をうかべるクロームに、ツナは苦笑した。
「じゃあ、しょうがないね。・・・骸の行動を縛るつもりなんて毛頭ないから、それはそれでいいや」
ボンゴレに膝を折った経緯をふまえれば不利益を起こすような真似はしないだろう。だから敢えて自由にさせているのだ。
「わかった・・・ボス、今晩の雲戦は嫌な予感がする。気をつけて」
クロームが忠告を口にすれば、ツナは頷く。
「うん、わかってる。・・・XANXUSが仕掛けるとしたら今日しかないからね。・・・でも、計画の全てが終わるまで止めるなと言われてるから」
「ボスは、全部わかってる?」
「全部じゃないよ。・・・でも8割は知ってるかな」
「骸様も?」
「知ってる風な口振りだったね。俺よりも詳しく知ってるんじゃないかな。・・・クロームは聞かされてないの?」
ツナが問えばクロームはコクリと頷いた。
「ならいい。・・・そのまま、知らないでいてくれるとありがたい」
「XANXUSのため?」
「いや・・・俺のため、かな。今なら、まだXANXUSは引き返せる。だから・・・」
「ボスはXANXUSが大事?」
「皆には内緒だよ?クローム。・・・まぁ、骸にはしっかりバレてるみたいだけど」
「ふふ・・・うん」
肩を竦めるツナに、クロームは目を細めて笑った。
敵同士であった2人がこうして内情を共有してしまうのは何の因果なのか。
それがあったからこそこうして自分がここにいられるとわかっているクロームは、多くは語らず沈黙を貫き通す決意をしていた。
そしてクロームと別れたツナは、ランボの病室に真っ直ぐに向かって行く。
「遅かったな、ツナ」
「リボーン。それに、イーピンもいたんだね」
出迎えた2人を見てツナは目を細めた。
「ランボは、まだ目を覚まさない?」
「ああ。・・・無茶な戦いだったからな」
ボルサリーノのつばを引き下げそう言ったリボーンは、ツナから視線を逸らしたまま訊ねる。
「次は、ゴーラ・モスカか。中には9代目がいるんだろ?・・・どうすんだ?」
「雲雀さんに力加減して、なんて言えないよね。・・・まぁ、雲雀さんの標的はゴーラ・モスカからXANXUSに移ってるみたいだけど」
「今回の戦いを仕掛けた張本人ってことは、ディーノが教えたみたいだしな」
「ディーノさんも余計なことを・・・まぁ、雲雀さんがXANXUSにケンカをふっかけたところで、XANXUSは相手にはしないだろうね」
「・・・なんでだ?」
そこで初めて、リボーンが視線をツナに向けた。
「XANXUSの計画は他の守護者のことなんて考えてないからだよ。自分の守護者も含めて、ね」
ツナの言葉で、改めてXANXUSの異常性を認識したリボーンは顔を顰めた。
「なぜだ?なぜ奴はそこまでツナに固執する?」
「・・・XANXUSは・・・いや、ここでは止そう」
イーピンに視線を向けツナは苦笑した。
例え相手が家光だろうと、奈々だろうと、口を割らない自信はあったのに、リボーンに対してだけはどうしても口を開いてしまう。
ツナにとってXANXUSと同じくらいにリボーンも大事な存在になっていることは間違いなかった。
それでも、リボーンとXANXUS。どちらがより助けを求めているかといえば、間違いなくXANXUSだとツナは答えるだろう。
何よりもXANXUSは意味ある死を求めている。それではダメだと伝えなければならない。
「XANXUSにちゃんと教えてやらないと。・・・XANXUSは1人じゃない。少なくともヴァリアーの面子はXANXUSを本気で10代目に据えようとしてる」
ランボをイーピンに任せてリボーンと共に休憩所にやって来たツナは、ポツポツと話し始める。
「ツナ、雲戦でゴーラ・モスカが負けた場合、XANXUSはどんな手に出てくる?」
「・・・おそらく、ゴーラ・モスカを暴走させる。」
ツナは視線を落とす。
「・・・で、それを止めるためにはゴーラ・モスカを破壊しなけれなんねェんだな?」
「うん。生半可な攻撃じゃゴーラ・モスカは止まらない」
「・・・じゃあ、中にいる9代目は」
「おそらく、無事では済まない。・・・そして、XANXUSには父親の仇討ちという大義名分ができる」
「・・・なんてこった。だが8年前のこともそうだが、なぜXANXUSは9代目をそこまで憎む?」
リボーンの問いにツナは一瞬ためらうが、覚悟を決めた様子で真実を告げた。
「それは・・・XANXUSが、9代目の本当の子どもじゃないからだよ」
「っ!?」
リボーンは今までにない程に驚いた。
XANXUSが9代目の実子ではないということは様々な意味で事情が変わってくる。
「・・・黙っててごめん、リボーン」
「いや・・・ツナがなかなか言い出せなかった理由はわかる・・・それをどこで知ったんだ?」
「スクアーロも知ってたんだ。8年前にXANXUSと9代目の会話を聞いていたらしい。それを記憶として読んじゃって」
「それでもあいつはXANXUSについてきたのか」
それだけのカリスマ性を持ちながらも、決してボンゴレ10代目になることができない男のことを想う。
ボンゴレの血統は絶対だ。生身で炎を出すくらいだから調べてみれば歴代ボスの傍流くらいには血縁関係があるかもしれないが、ツナのように直系の血筋でなければリングは決して認めない。
「たとえボンゴレリングを手にしても・・・拒絶されるのがオチだぞ?」
「わかってる。たぶん、XANXUSもわかってると思う。それよりも問題は・・・」
「問題は?」
リボーンが促すと、ツナは眉間のしわを深めた。
「XANXUSの傍にいる・・・チェルベッロ機関」
「・・・門外顧問以外に外部組織があるとは思えねぇな」
「9代目直轄でないことは確かだよ」
「・・・だろうな」
「もしかしたら・・・XANXUSを焚き付けたのは彼女たちかもしれない」
「それは・・・!」
動揺を見せたリボーンにツナは困ったように肩を竦めた。
「これは俺の勘。・・・超直感なのかただの勘なのか、よくわからないけどね」
「チェルベッロ機関か・・・何とかして調べられねェのか?」
「無理だと思う。・・・骸が調べようとして弾かれてたし」
それは初耳だった。
リボーンは一瞬目を丸くし、それから深い溜息をついた。
「骸の方もいろいろ調べ回ってるみてぇだな。・・・XANXUSの計画も良く知っているような口ぶりだった」
「うん。なんだかんだ言っても骸は俺に協力してくれる気があるらしいね。あんなにマフィアが嫌いなのに」
「ツナはマフィアらしくねーからな」
「ふふ、まぁね。・・・さてと修行に行きますか。このままあっさり終わることは絶対ないだろうから」
「・・・だな」
そうして、2人は連れ立って修行場へと向かった。