Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~ 作:cibetkato
修行場に着くと、ツナはすぐに“ツナ自身が開発した”零地点突破の調整を始める。
「・・・だいぶタイミングが合ってきたみて―だな」
「ええ、そのようですね」
リボーンとバジルはそんなツナの様子を見て満足気に頷き合う。これならば万が一今晩決着がつかない場合でも、XANXUSとひけを取らず闘うことができるだろうと安心する。
そして調整は夜まで続いた。最終戦とも言える雲のリング戦があるにもかかわらず、集中するあまり時間が経つのを忘れてしまったのだ。
「!」
フッと湧いたビジョンにツナは息を呑んだ。
「マズイ!・・・俺がいないのを確認したらXANXUSは計画を実行してしまう!!」
「超直感か・・・?」
リボーンの確認に頷くと同時に、ツナは超死ぬ気モードで炎を額に灯した。
「リボーン、バジル、俺は先に行く!」
「ああ。俺達もすぐに向かう」
「拙者達のことは構わず行ってください!沢田殿!」
「・・・すまない!」
ツナはそう言うなり炎の逆噴射で宙に舞い上がり、並盛中へと飛んで行った。
「間に合えッ!」
***
そして並盛中に着いたツナはその光景に一瞬絶句した。
が、いつまでもぼうっとしている暇はなかった。ゴーラ・モスカの攻撃の対象としてクロームや犬、千種が狙われたのだ。
「させない!!」
ツナが放出した炎で弾丸が融け、その場にボトボトと落ちる。
「っ・・・ボス!」
「ごめん、クローム。遅れた。・・・下がって」
「・・・あ、うん」
頷いて、クロームは犬と千種と共にフェンス際まで下がった。
それを確認し、ツナは改めてグラウンドを見回す。獄寺達は揃ってフェンス沿いにおり、雲雀がXANXUSと睨みあっていた。
「危惧していたことが現実になったか」
呟いたツナは祈るように目を閉じた。
そしてフッと目を開け、攻撃の手を緩めないゴーラ・モスカに焦点を合わせた。
「これは俺の罪でもある。XANXUSと約束してしまったから。だから、俺が“貴方”を止めます」
静かな、しかし、強い意志のこもった視線をゴーラ・モスカに向けたツナは、炎の逆噴射で一気にその距離を縮めた。
ゴッ
大きな衝撃音と共にゴーラ・モスカの腕が落ちる。
雲雀との戦いで失ったらしいもう一方と合わせて、両方の腕が無くなったゴーラ・モスカは更に暴走を続ける。
「・・・しぶとい」
エネルギー源を絶たねば半永久的に動き続けるゴーラ・モスカ。
ツナは覚悟を決め、右の拳に炎を込めた。
「・・・XANXUS、これでお前の計画通りだ」
ガッ
腹部の圧縮粒子砲を破壊し、ツナは手刀でゴーラ・モスカの装甲を引き裂いた。
「・・・すみません、9代目」
呟いた謝罪は誰にも聞かれることなく爆風にかき消される。
墜落したゴーラ・モスカの足元に立ち、ツナはその中身である9代目の衰弱した様子に息を呑んだ。
「っ・・・9代目!!」
慌てて駆け寄った家光がゴーラ・モスカの中から9代目の身体を出す。そして同じく駆け寄ったディーノがロマーリオを呼ぶ。
「ロマーリオ!9代目を診てくれ!」
「わかった、ボス!」
「「9代目っ!」」
更にリボーンとバジルも合流し、9代目の介抱に加わる。
慌ただしい大人達を見つめていたツナは、不意にXANXUSに視線を向けた。
「言うべき事を言え、XANXUS。俺はそれに応じる」
「・・・沢田綱吉はジジィを手にかけた」
「それは、貴様が!!」
「バジル!止せ」
XANXUSの言葉に弾かれるように顔をあげたバジルをリボーンが止める。チラリとその様子を確認してからXANXUSは再び口を開いた。
「沢田綱吉は容赦なくゴーラ・モスカごとジジィを攻撃した」
黙ってXANXUSの言葉を聞いていたツナだったが、か細い声がその言葉を遮った。
「ち、がう。悪いのは、私だ。すまない・・・こんなことになったのは、全て、私の弱さのせいだ」
「9代目!?」
「喋ってはいけません!」
家光達がギョッとして、9代目を止めようとする。
これだけのダメージを負いながらも9代目はツナのために言葉を紡ごうとしている。そのことに気付いたリボーンは9代目を止めようとする家光達を抑えた。
「君が戦いを楽しんでいるわけではないことを知っている・・・いつも眉間にしわを寄せ・・・祈るように、拳を振るう。
・・・君の本質は、戦いを憂う優しい大空だ。・・・だから、私は君を10代目に・・・選んだ。・・・君で、良かった」
「!」
目を見開いたツナに9代目は弱々しく微笑み、意識を失った。
「9代目!!」
家光やディーノ達が9代目を囲い、処置を続ける。
そんな中、ツナは呆然と9代目を見やりその手を取る。
「・・・すみません、9代目」
「9代目への仕打ち、その“実子”であるこの俺とボンゴレへの挑戦と受け取った。・・・お前がしたことの前ではリング争奪戦など無意味。俺はボスである我が父のため、そしてボンゴレの未来のために、沢田綱吉、お前を倒し仇を打つ」
「な!?・・・何言ってやがる!あいつが9代目を!!」
「これが目的だったのか!」
家光や獄寺達が叫ぶ中、ツナはXANXUSをじっと見つめる。
「憶測での発言は慎んでください」
「全ての発言は我々が公式に記録しています」
不意に、今まで黙っていたチェルベッロ機関の2人が口を開く。
「あいつら・・・!」
「やはりチェルベッロはXANXUS側についていたんだ!」
山本と獄寺が怒りの形相で叫ぶ。
「・・・好きにしやがれ」
「「!!」」
リボーンの怒りを含んだ言葉に、チェルベッロ達が怯む。
「9代目との誓いだ。テメェらが何を企もうと俺は手をださねェ・・・だがな、これだけは覚えておけ。ボンゴレの名をもてあそぶことは万死に値する。いずれ、地獄の炎に焼かれるよりも苦しい贖罪の時がやってくると知れ」
「「・・・っ」」
ゾクリと身を震わせたチェルベッロ達から視線を外し、リボーンはツナの方を向く。
「ツナ、もう大人しくXANXUSのやり方につきあわなくて良いんだろ?」
「ああ。本気で戦うよ、XANXUSを止めるために」
ツナの言葉にXANXUSはピクリと反応した。
「幼い子どもの我がままな約束を守ろうとしてくれたことには感謝してるよXANXUS。でも、俺はこんな風に約束が果たされても嬉しくも何ともない」
「・・・ツナ」
途方に暮れたようなそんな表情を一瞬うかべたXANXUSに、ツナは静かに告げた。
「XANXUS、俺との約束がお前をここまで突っ走らせてしまったのなら、その責任をとらなければならない。俺がお前を止めてやる」
「10代目の意志は俺達の意志。10代目だけに背負わせはしません!」
「そうだぜ!ツナ!」
獄寺や山本だけでなくクローム達も武器を手に殺気立つ。
「来るか!?ガキども!!」
「シシシ・・・」
レヴィやベルフェゴールが獄寺達に呼応するかのように武器を構える。
「反逆者どもを、根絶やせ」
低く呟いたXANXUSの言葉にヴァリアーの面々が殺気を膨らませたその時、チェルベッロの制止の声があがった。
「お待ちください。9代目の弔い合戦は」
「我々が取り仕切ります」
「なっ!?」
「我々にはボンゴレリングの行方を見届ける義務があります」
「何言ってやがる!XANXUSの犬が!!」
獄寺が叫び、チェルベッロを睨みつける。
「口を慎んでください。我々は9代目の勅命を受けています」
「我々の認証無くしてはリングの移動は認められません」
そう言ってチェルベッロが見せた死炎印が押された証書を憎々しげに見やり、バジルが呻くように言う。
「よくもぬけぬけと!その死炎印は9代目に無理やり押させたものだな!?」
「・・・先程も言いましたが憶測での発言は慎んでください」
「我々は勝利者が次期ボンゴレボスとなるこの戦いを」
「「大空のリング戦と位置づけます」」
チェルベッロの宣言にXANXUSは口の端を吊り上げた。
(ツナ、お前と次期ボンゴレボスの座を争い戦うこと、これこそが俺の望み。それがやっと叶う時が来た)
「すなわち、今まで行ってきたリング戦の7戦目ということになります」
「いかがでしょうか、XANXUS様」
「・・・悪くねェ」
「・・・ッ」
XANXUSが答え、ツナは拳を握りしめる。
「それでは明晩、並中に守護者全員でお集まりください」
「あーらら、ニセモノに執行猶予を与えちゃったよ」
「なに!?」
「落ち着け獄寺。こんなごちゃごちゃした状況の中では戦い辛れぇ・・こっちにとっちゃグッドニュースだぞ」
いきり立つ獄寺達を抑えリボーンが囁く。そんなツナサイドの様子には目もくれずXANXUSは機嫌よさげに笑みをうかべた。
「ツナ、明日決着をつける。全力でかかってこい」
ピンッ、と指で弾いた大空のハーフボンゴレリングがツナの手に収まったのを確認したXANXUSは、憤怒の炎が放つ眩い光と共に姿を消した。
「父さん、ディーノさん、9代目と怪我人をお願いします」
「ああ」
「わかったぜ、ツナ」
ツナの頼みに家光とディーノは頷き、処置を施した9代目と怪我人を順次運び出していく。
「ツナ、大丈夫か?」
「大丈夫だよ・・・リボーン、ゴメンな。最初からリボーンに相談してたら他にやりようがあったかもしれないのに、俺が躊躇ったせいでこんなことになって」
ツナの言葉に、リボーンは首を横に振る。
「ちげーぞ、ツナ」
「?」
「9代目はツナのせいじゃねェって言った。だからツナが責任を感じることなんてねぇんだ」
「でも」
「ツナのせいじゃねぇ」
言いきったリボーンの言葉に、ツナの表情が緩んだ。
「うん、ありがと・・・リボーン」
ふわり、と笑った表情を真正面から見たリボーンは一瞬目を奪われ言葉を失う。
「10代目!」
「ツナ!」
遠くからこちらの様子を窺っていた獄寺と山本、了平が駆け寄ってくる。
「・・・皆、無事?怪我ない?」
目元を緩めたツナに、3人は頷く。
「ハイ!これくらい大したことありません!!」
「俺も平気なのな!」
「おう!極限無事だぞ!」
「そっか、よかった」
ニッコリと笑うツナに、それぞれがボッと顔を赤らめる。
それをむっつりと見やってリボーンはツナの肩に跳び乗る。
「おい、帰るぞ、ツナ。・・・明日に向けて鋭気をやしなわねーとな」
ツナはリボーンが珍しく“嫉妬”を露わにしたことに目を瞠り、素直に頷いた。
「・・・うん。そうだね、リボーン」