Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~   作:cibetkato

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忠犬ができました

 翌日やって来た転校生は最初からツナを目の敵にしていた。

 

「大丈夫か~?」

 

「・・・う、うん」

 

 横を通る際に机を蹴飛ばされて転んだツナに、クラスメイトの1人が心配そうに訊ねて来る。

 

(んーと、獄寺隼人、ねぇ・・・俺、なんかしたっけ?)

 

 ちらりと後ろをそれとなく確認すれば、こちらをじろりと睨んでいる彼の姿があった。

 

(うっわ、感じワルー・・・)

 

 ツナは思わず眉を顰める。

 

(イタリアからって言ったなぁ・・・。さてはリボーンか?)

 

 また余計なことをと内心苦々しく思っていると、後ろからポン、と肩を叩かれた。

 

「おぅ、今日はよろしくな!ツナ」

 

 ニコニコと声をかけてきたのは山本武。

 

「ん?今日・・・?」

 

 獄寺の件ですっかりと今日の予定が頭から抜けていたツナは、キョトンとして首を傾げた。

 

「ははっ、決まってるじゃん。球技大会だよ。球技大会」

 

 言われて思い出したツナは苦笑いをうかべた。

 

「ああ、そうだった・・・補欠の補欠のそのまた補欠の俺まで回って来たんだっけ?」

 

「そうだぜ!最近のツナはすげーからな。期待してる!」

 

「頑張ってね、ツナ君!」

 

 山本や京子に口々に言われ、頼まれると断れない質のツナは困ったように笑いながら頷いた。

 

「う、うん。できる限り頑張るよ・・・」

 

 とは言ったものの本気を出してしまえば今までの苦労が水の泡である。

 

(まぁ、リボーンのせいで“ダメツナ”のイメージが崩れつつあるんだけど)

 

 廊下を歩きながらブツブツと呟く。

 

【・・・往生際が悪いな。いい加減諦めろ】

 

「!?・・・リボーンか?どこにいる・・・?」

 

 どこからか聞こえてきた声に、ツナはキョロキョロとあたりを見回す。

 

「ここだ」

 

 ガチャッと開いたのは非常ベルの下にあるホース置き場・・・だった場所。

 

 優雅にコーヒーを飲むリボーンに、ガクリとツナは肩を落とす。

 

「リボーン・・・何してんの?ってか、なんでそんなことになってんの?」

 

「ふ、ここは並盛中にある俺様の基地の1つだぞ」

 

「・・・本当にリボーンって最強のヒットマンなわけ?やることなすこと目茶苦茶なんだけど!」

 

「ツナに言われたくないんだぞ。・・・あんだけ虐げられておいて“ダメツナ”続けるって、どれだけめんどくさがりなんだ?というかマゾか?」

 

「何言ってんだよ。マゾなわけないだろ?・・・どっちかって言えばサドだぞ俺は」

 

 ツナが言い返せば、リボーンは胡乱気に眉根を寄せた。

 

「まぁ、良いけどな。・・・で、ツナ。どうするつもりだ?」

 

「ん?ああ、球技大会か・・・まともにやったらマズイよなぁ。でも本気でムカついてるかヤル気になってないと、死ぬ気弾で死ぬし」

 

 わざとダメダメを演じて負けるという選択肢はツナの中に無いらしいと悟って、リボーンはフッと笑う。

 

「まぁ、そういうことだな。諦めて“ダメツナ”のカヴァーなんて止めちまえ」

 

「えぇ~、めんどくさい・・・でも、負けるのはもっとめんどくさいな~」

 

「ツナはめんどくさがりなわりには負けず嫌いだな」

 

「まぁな。・・・“ダメツナ”続けてるのも、止めたらリボーンに負けを認めるみたいで嫌だからなんだよなぁ・・・」

 

「・・・前言撤回、ツナ自身がめんどくさい奴だ」

 

「なんだよ、それ。・・・まぁリボーンが来てから退屈してないけど」

 

 イタリアで“同志”ともいえるXANXUSに会ってからというもの、周りの人間との会話に物足りなさを感じていたのは事実。だから特定の友人を作らず、曖昧な態度を貫き通してきた。

 

 リボーンは良い意味でも悪い意味でもツナの生活を一変させた。だからかXANXUSへ向けるものと同じような“好意”をリボーンに向け始めていることに、自分でも気付いていた。

 

「まぁ、頑張れよ。ツナ」

 

「・・・絶対に面白がってるだろ、リボーン」

 

 ニヤニヤと笑うリボーンを恨めしげに見やり、ツナは深々と溜息をついた。

 

 

***

 

 

 結局、実力を出さないままで、ツナは皆の頑張りに奮起し、リボーンの死ぬ気弾によって強化されたジャンプ力を駆使し、チームを勝利へと導いた。

 

「スッゲーな、ツナ!マジ助かった!ありがとな!!」

 

「ううん!皆が頑張ったからだよ!」

 

 ニコニコと上機嫌に山本に言われ、満更でもないツナはつられるように笑みをうかべる。

 

 そんな中で獄寺だけはむっつりと睨んでいることに気付いていたツナは、獄寺が動きやすいように1人きりになる。

 

「・・・俺は、ぜってぇ認めねぇからな!!」

 

 案の定1人になった瞬間に獄寺に捕まり学校裏に引っ張って来られたツナは、獄寺に一方的に怒鳴られて困ったように首を傾げる。

 

「・・・えっと、俺、君に何かしたかなぁ?」

 

 ツナがどういう態度を取るべきか考えていると、目の前の木からリボーンがぬっと現れる。

 

「チャオっす、どうやらやっと顔合わせができそうだな」

 

「リボーン・・・また、そんな所に・・・」

 

 ツナが呆れたように呟くと、リボーンがニヤリと笑う。

 

「フフン、学校中に俺の基地が張り巡らされているんだぞ」

 

 自慢げに言うリボーンにツナは内心で苦笑いをうかべ、恐る恐ると獄寺に視線を向ける。

 

「リボーンさん。俺がこいつに勝てば、本当に俺をボンゴレ10代目にして頂けるんですね?」

 

 獄寺が己を睨みつけながら言った言葉に、ツナはギョッとしてリボーンを見つめる。

 

「そ、そんな話、聞いてないよ!?」

 

(そう言って呼んだんだ~?)

 

「ああ、言ってねーからな」

 

(まぁな。その方がおもしれーだろ?)

 

 互いに読心術が使えるために、表でも裏でも会話が成立してしまう。

 

 そうこうしている間に人間爆弾と呼ばれる獄寺のダイナマイト攻撃が炸裂し、ツナは必死になってそれを避ける。

 

「ひぃぃ!!!」

 

(っていうか、こんなの日本にがっつり持ち込めるってすごくない!?)

 

 内心でつっこむ余裕があるツナは、ギリギリのところで避けているように見せかけながら、ドンドンとダイナマイトを増やす獄寺に困ったように視線を向ける。

 

「くっ・・・こうなりゃ、三倍ボム!・・・っ、あ!!」

 

 自分のキャパシティを超えた量を操った結果、獄寺は手で持ち切れなかったダイナマイトを取り落とす。

 

 その一瞬で諦めの表情になった獄寺に、ツナはカチンときた。

 

「・・・そうやってすぐに諦めるのか?それでよくマフィアなんてやってられたな?」

 

 死を覚悟した獄寺がその冷たい声にハッと顔をあげる。

 

「お前、再教育ね?」

 

 壮絶な色気を放った笑みだった。・・・と、後に獄寺は語る。

 

 ツナが言葉を発した瞬間に、爆発するかと思われたダイナマイトが地面をなめるように広がった炎と共に凍った。

 

「っ・・・これは!?」

 

 今や殆ど知る者がいないはずの死ぬ気の零地点突破にリボーンも思わず目を丸くする。

 

「死ぬ気の炎を凍らせる氷・・・死ぬ気の零地点突破って言うんだってさ」

 

「そうか、これが初代があみだした奥義。・・・まったくどれ程の力を抱え込んでやがるんだか」

 

「さぁ?・・・自分でもわかんないし~」

 

 肩を竦めるツナの前にダッと獄寺が走り寄り、そのまま土下座した。

 

「おみそれしました!10代目!!!」

 

「・・・・・・・・・・は?」

 

(何!?この変わり身の早さ!?)

 

「10代目、渋いっス!エロカッコいいっス!!・・・俺、貴方に一生付いていきます!!」

 

「エ、エロカッコ?・・・え~と・・・あ~・・・じゃあ・・・これから、よろしく?」

 

「ハイ!!!」

 

 まさに尻尾があったらブンブンとめいっぱい振られているだろうその懐きっぷりに、ツナは少々引き気味にそう言う。

 

 そして助けを求めるようにリボーンの方に視線を向ければ、フルフルと肩を振るわせ、静かに大爆笑している彼の背中が見えた。

 

「・・・リボーン」

 

 がっくりと肩を落とす中、その場に明るい声が響いた。

 

「お~スゲ~・・・これ、手品かなんかか?」

 

「や、山本!?」

 

 獄寺はともかく山本は一般人。こんなことに巻き込むわけにはいかないと思い、なんとか誤魔化そうとするが、その氷が死ぬ気の炎でないと溶けないのは自身が一番良くわかっている。

 

「何だかわかんないけど、ホント、ツナってスゲーのな♪」

 

 ニカッと笑った山本に肩を組まれ、ツナは慣れないスキンシップにワタワタと慌てる。

 

「て、てめぇ!10代目に馴れ馴れしいんだよ!!」

 

 最早ツナの忠犬と化した獄寺が、そんな山本にギャアギャアと噛みつく。

 

「ははっ、なんか獄寺、雰囲気がいきなり変わってねぇ?特にツナに対する態度とか」

 

 鈍感そうに見えて実はわかっていて発言しているのではと思わせるような言葉だ。

 

「あ、あはは・・・」

 

 ツナは誤魔化すように笑い、死ぬ気の零地点突破で凍りついた地面を見つめる。

 

(・・・このままにしておいたら、雲雀さんに噛み殺されるよなぁ)

 

「えっと・・・山本、もう一度手品するけど仕掛けがバレるのは嫌だから、向こう向いててくれるかな?」

 

「おう、いいぞ!」

 

 ツナのお願いにあっさりと山本は頷いて、くるりと後ろを向く。

 

「・・・皆には、黙っててね」

 

 そう言ってツナは熱量を抑えた炎で地面を焦がさないように氷を溶かした。

 

「山本、もう良いよ」

 

「お~、氷が消えてる・・・スゲー手品だなぁ。・・・でも、皆に内緒なんだな?」

 

「うん」

 

 ツナが頷けば、山本はニカリとさわやかな笑みをうかべて頷いた。

 

「よし、わかった!・・・約束なのな!」

 

 小指を突き出した山本にツナは一瞬戸惑い、それから、その小指に自分の小指を絡めた。

 

「うん・・・約束」

 

 ニコリと笑ったツナに、山本の頬に朱がさす。

 

「ツナって、なんか・・・あ、いや、なんでもない!!じゃ、また後でな!」

 

 ツナに見惚れたことを誤魔化すようにそう言って山本はその場を去る。

 

 その背中を射殺さんがばかりに睨みつけていた獄寺は、おもむろにツナを振り返る。

 

「10代目・・・山本には注意です!」

 

(くそ!アイツ、10代目に馴れ馴れしく触れやがって!!)

 

 半分以上嫉妬で言っている獄寺に、ツナは苦笑をうかべて頷く。

 

「・・・まぁ、君の嫉妬は措いといて、山本は勘が良いみたいだから要注意だね」

 

「は、はい!」

 

(よ、読まれてる!?)

 

「うん、読まれてるから、気をつけようね?」

 

 ニコ、と笑ったツナに、顔を真っ赤にし、獄寺はガックンガックンと頷く。

 

「・・・タラシめ」

 

 そんなツナを見てリボーンがほんの少しイラついた様子で呟いた。

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