Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~ 作:cibetkato
キン!
憤怒の炎が氷結し、その場に落ちる。
「・・・俺に、炎は効かない」
「っ・・・最初から」
感情を抑え込んだような抑揚のないツナの声に、XANXUSが息を呑む。
「・・・アレは!!」
初めてツナの力を見た家光は目を丸くした。
「死ぬ気の零地点突破First Edition・・・ツナの十八番だぞ」
「初代ボンゴレがあみだしたという技か。ボンゴレの象徴とも言える“炎”の対極の力。ツナがここまで・・・」
「・・・まぁ、ツナの真骨頂はこれからだがな」
リボーンはニヤリと笑ってXANXUSとツナの闘いを見つめる。互角に渡り合う2人だが確実にツナの方が炎の力は上回っている。
XANXUSは奥の手とばかりにその武器を取り出した。
「・・・フン・・・施しだ」
XANXUSは二丁拳銃を構え、その中に炎を充填すると、嵐と雷のフィールドに立つポールめがけて炎を放った。
派手な音を立てて倒れたポールはそれぞれの守護者の元にリングを運んだ。
「・・・シシシ・・・助かったぁ」
「ありがたき・・・幸せ・・・」
ベルフェゴールとレヴィが毒によるマヒ状態から解放される。
その様子を見たツナはそれぞれの守護者達の様子を空からぐるりと見回し、チラリと見えた“それ”に心中で安堵する。
「・・・お前は良いのか?」
そう訊ねるXANXUSにツナはクスリと笑った。
「いずれ、リングは持つべき主の元へと返る」
その言葉の意味を捉え損ねたXANXUSが一瞬動きを止める。その隙にツナはXANXUSの懐に飛び込んだ。
「・・・ッ!?」
ギリギリでかわしたXANXUSは、ツナの手首を掴み銃を向ける。が、ツナは炎で加速し、それを避ける。
互いに手加減なしの状態で戦っているため周りへの被害が甚大だ。審判であるチェルベッロも2人の動きについていけず、モニターを確認しながら炎を避けている始末だ。
「ツナのヤツ・・・眉間のしわがドンドン深くなってやがる」
リボーンが不機嫌そうに呟く。
それは覚悟の末の闘いとはいえ、ツナ自身が望んで闘っているわけではない証だ。
「・・・沢田殿」
心配そうにモニターを見つめるバジル。その時モニターの映像が切り替わった。
「・・・あ!」
自由になったベルフェゴールが外へと出た瞬間、持っていた嵐のリングが弾き飛ばされるところが映る。
「フ。・・・やっぱり一番最初にアイツが動き出したみてーだな」
ツナも気付いていたからこそ、わざわざ守護者のリングの行方に気を向けなかったのだろう。
***
「・・・お前は・・・」
「ふぅん・・・よく、かわしたね。君、天才なんだって?」
ニヤリと笑った雲雀に、ベルフェゴールは顔をひきつらせた。
モニターのある屋上に立っていたツナはフッと視線をグラウンドの方へ落とし、口の端をつり上げた。それを見たXANXUSもハッとしてそちらを向けば、一触即発状態の雲雀とベルフェゴールがいた。
XANXUSとツナの闘いによる流れ弾(炎?)が当たったわけでもないのに、倒れる雲のフィールドのポール。それから推測できるのは雲雀自身がそのポールを倒したということだ。
「有り得ない・・・デスヒーターを受けながらもなお、動けるなんて」
チェルベッロが呻くように言えば、リボーンがニヤリと笑う。
「雲雀は束縛されることを嫌う。奴の意地が毒を上回ったみてーだな。・・・だからこそあいつは雲の守護者に選ばれたんだぞ。何物にも捉われることなく独自の立場からファミリーを守る、孤高の浮雲にな」
絶句してしまったチェルベッロ達に、リボーンはしてやったりといった笑みをうかべた。
ツナは最初から雲雀のこういった部分が気に入っていると言っていた。
自由に大空に浮かぶ雲。その雲は次第に勢力を増し嵐を呼ぶ。
「雲雀はリングに選ばれた本物の雲の守護者だ。守護者達になぞられた天候はその使命や特徴だけでなく、お互いの関係性も示してるんだ」
リボーンの言っている意味がわからなかったらしいバジルやシャマルが首を傾げる中、家光はそのことに思い至った。
「そうか・・・雲は時に他の天候のきっかけとなり、嵐を巻き起こすことがある」
家光の答えにリボーンは満足げに笑みをうかべて頷いた。
「そう。さっき雲雀が弾いた嵐のリングはちゃんとその主の元へと返っていった」
「ああッ!・・・親方様!!雷のフィールドが!」
バジルの叫びに家光は弾かれるようにモニターに視線をやった。
意識のないランボに対して電気傘を向けるレヴィ。まさに絶体絶命。
「マズイ!・・・このままじゃ!」
シャマルが叫んだその直後、レヴィが電気傘を構え、ランボに襲いかかった。
その時、レヴィの目の前で爆発が起こる。咄嗟に避けたレヴィの目の前に立っていたのは。
「・・・隼人!」
「そうか!雲雀殿が弾いた嵐のリングで獄寺殿が解毒できたのか・・・!」
安堵するバジルやシャマル。コロネロも隣でホッと息をついているのを確認したリボーンはモニターへと意識を戻した。
「・・・邪魔立てするならば、容赦はせぬぞ!」
レヴィの言葉を聞いているのかいないのか、獄寺は丁度斜め隣の屋上にいるツナを見つめ、拳を握りしめた。
「聞いているのか!?嵐の爆弾男!!」
「10代目が闘ってんだ。・・・大空戦で余計な雑音はたてさせねェ」
レヴィに視線を戻した獄寺がそう宣言すれば、それを聞いていたXANXUSが鼻を鳴らした。
「フン・・・鬱陶しいカス共が。だが、まあいい。これで守護者共は勝手にリングの奪い合いをやる。もう煩わされることはねぇ」
先程、体育館にいる霧の守護者を気にしてか、己の攻撃を避けるのではなく受け止めたツナを見て、XANXUSは一時ツナとの戦闘に専念することを中止し、彼の意識が他に向かないように守護者を自由にしたのだ。
「それが狙いで嵐と雷の守護者を・・・」
「フン、雲の奴は予想外だったがな」
ツナが確認すれば肯定する言葉がXANXUSから返ってきた。
「ならいい。・・・俺との闘いに集中しろ。それが望みだったんだろ?」
「そうだ。俺の望みは全力のお前と闘うことッ!」
二丁拳銃から凄まじい勢いで繰り出される炎の弾丸。
ツナはグラウンドの上空へと飛び、それらを避ける。
「全力で闘え!ツナ!!」
XANXUSの悲痛な叫びと共に、炎の弾丸が塊となってツナを襲った。
「!」
「あぁッ!・・・沢田殿ッ!!」
「直撃だ・・・ッ!」
「・・・ツナッ!」
バジルが叫び、シャマルが呻く。そして家光は思わず目を閉じ、顔を逸らした。
「今の一撃、かなりヤバいぜ・・・」
画面を見つめながら言うコロネロに、リボーンは答える。
「直撃を凌いだだけでも、ラッキーだな」
「凌いだ!?」
バジルが目を見開きもう一度モニターを見つめる。地面に激突した際の土煙により様子が窺えないが、だんだんとその土煙が晴れてくる。
激突の衝撃により陥没したそこにいたのは、ベストが燃え尽きてワイシャツ姿になっていたツナだった。
膝をつき荒く息はしているものの、先程大量の炎の弾丸を浴びたとは思えない程軽傷だ。
「レオンが服に追加したオマケのおかげで助かったな・・・ツナのベストだけ10倍の厚さにしてくれたんだぞ」
リボーンの言葉にホッとした面々だったが、コロネロが眉を顰める。
「だが、今のでベストは吹っ飛んじまったぞ。しかもXANXUSはまだ余裕だぜ、コラ!」
「ツナの奴まだ迷ってやがるのか・・・さっさとやっちまった方がXANXUSの為にもなるだろうに」
リボーンが不機嫌に呟くと、他の面々の視線が一斉にリボーンに向けられる。
「・・・迷う?」
バジルが問う。リボーンはボルサリーノを引き下げボソリと言う。
「ツナの力は見ただろ?・・・本来なら死ぬ気の零地点突破FirstEditionで全て片付くんだ・・・8年前の“ゆりかご”の時のように」
「なんで・・・テメェがそんなこと、知ってやがる」
「「「「!!?」」」」
ここ数日で聞き慣れた声が聞こえ、全員がギョッとして後ろを振り向く。
そこにいたのは、全身包帯だらけの車椅子に座った、銀髪の男。
「・・・す、スクアーロ!?」
「・・・し、死んだのではなかったのか」
目を丸くするシャマルやバジルに、リボーンが肩を竦めた。
「ああ、そうか・・・ツナとディーノ達キャバッローネの面子しか知らねぇことだったな・・・あの時アクアリオンで鮫に喰われかけたスクアーロを、山本の為に配置されていたディーノの部下が助けたんだ」
「山本も知ってたぜ。ツナに聞いたって言って様子を見に来たことがあった」
ディーノが答えれば、家光が眉間にしわを寄せる。
「・・・今まで黙っていた理由は?」
「生存が知られればヴァリアー側が始末しに来る可能性があったからだ。・・・ツナも言っていたが、XANXUSについて一番良く知ってるのはスクアーロだから、色々と証言して貰おうと思ってな」
「・・・」
ディーノの視線を受け流し、スクアーロはモニターに視線を向ける。
「・・・XANXUSの怒りの炎だ」
ポツリと呟く。
XANXUSがどれだけツナを恋焦がれるように求めていたのか、一番傍にいたスクアーロが良く知っている。
ツナのことに関してだけは癇癪を抑えこんで、辛抱強くこちらの報告を待っていたことを思い出す。
「怒りこそがXANXUSの力の源・・・あのガキを追い詰めているのか?それともあのガキが手を抜いてやがるのか・・・?」
誰かに問うているわけではないとその場の全員が気づいた。スクアーロはツナとXANXUSの闘いに見入っていた。
凄まじい炎の応酬。そしてツナはわずかな間に修行であみ出した構えを見せた。
「・・・?」
訝しげに眉を顰めたのは、XANXUS。
ノッキングするような炎、それ自体は死ぬ気の零地点突破の前触れなのだが、先程ツナが零地点突破を使った時はそんなタイミングを合わせるようなことはしなかったはずだった。
戦っている最中とは思えない程静かな気。何かの前触れなのか、その無防備な姿にXANXUSは炎の弾丸を叩きこむことを一瞬躊躇した。
その気配を感じたのか、ツナの視線が真っ直ぐにXANXUSに向けられた。
(来い!XANXUS!!)
XANXUSの脳の中に直接聞こえたその声は紛れもなくツナの声だった。
自分に読心術は使えない。ボンゴレ特有の超直感もない。なのにツナの声が聞こえた。自分の妄想かと一瞬訝るが、ツナの真っ直ぐな視線がそれを否定していた。
(誘ってやがる・・・)
口の端をつり上げたXANXUSは二丁拳銃の照準をツナに合わせた。
「しっかり狙えよ・・・XANXUS」
呟いたツナの言葉にモニターを見ていた観覧席の面々がハッとする。
「ブラッド・オブ・ボンゴレ・・・ツナの奴、超直感で技のタイミングの取り方を掴んだみてーだな」
ニヤリと笑ったリボーンに、今まで黙って観戦していた犬と千種が反応した。
「・・・超直感・・・例のアレか」
「俺達は、ボンゴレを信じて良いんらな!?」
犬が問う。
「当然だ。ツナはお前達との約束を忘れちゃいねぇ。・・・だから信じろ」
頷いたリボーンがモニターに視線を戻せば、その場の全員がモニターを食い入るように見つめた。