Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~ 作:cibetkato
「ベルフェゴール、マーモン・・・お前達はXANXUSの真意に気付いてない」
「何?」
「どーいうこと?」
訝しげにする2人の背後を顎で示す。
振り返った2人はギクリと身体を強張らせた。そこには身を起こし、憤怒の炎を掌に宿したXANXUSの姿があったからだ。
憤怒の炎のターゲットはツナではなく自分達だと気付き、尚更混乱する。
「え、ボス・・・どうして?」
思わずといった風に呟いたベルフェゴールを睨み、XANXUSは苦しそうにしながらも告げた。
「他の誰を殺しても俺の知ったことじゃねェ・・・だが、ツナには。ツナにだけはッ、手ェ、出すんじゃねェッ・・・カッ消すぞッ!」
凄まじい殺気をぶつけられて、ベルフェゴールが身体を硬直させる。
「XANXUS!」
ペチンッ
ツナが傍で己を呼ぶ声と右頬への軽い衝撃。XANXUSは一瞬何があったのかわからずに呆然とし、それから視線を上にあげた。
「ツ、ナ・・・?」
「自分の守護者に何言ってるのッ!?彼等はXANXUSを10代目にしようとしてるだけだ。XANXUSにそんなこと言う権利なんてないだろッ!!」
間近にあったツナの顔が悲しげな表情を作る。
「俺のことを想ってくれるのは嬉しいよ。でも俺以外のことは、自分ですらもどうでもいいように扱うのは、止めて欲しい・・・」
「ツナ、だが俺が死なないと・・・お前が苦労することになる」
「XANXUS、俺を侮らないで」
XANXUSの言葉をツナが強い口調で遮る。
「ちゃんと自分の力で認めさせてみせる。だから、XANXUSが死ぬ必要なんてない。・・・俺のために死ぬなんて、そんなのただXANXUSが現実から逃げるための口実じゃないか!」
「ッ・・・!」
痛い所を突かれたXANXUSは一瞬息を呑み、それからダラリと身体から力を抜いた。
「そう、だな。お前を言い訳に使って悪かった。俺はただ9代目と血が繋がっていなかったことで、ボンゴレに自分の居場所が無くなったと勝手に思い込み・・・自棄を起こしていたにすぎない」
「居場所はあるじゃない。スクアーロは8年も前からXANXUSが9代目と親子じゃないってわかっててXANXUSについて来た。
マーモンやベルフェゴールだってXANXUSのために闘おうとしてた。きっと今はここにいないレヴィやルッスーリアだって、同じことを思ってるはずだよ」
ツナの言葉に耳を貸していたXANXUSは穏やかに笑んだ。
「・・・ああ」
「ヴァリアーのボスはXANXUSだ。それは揺ぎ無い事実だよ。一緒にボンゴレを作っていこう?俺にはXANXUSが必要だよ。それとも、XANXUSに俺は必要ない?」
「そんなこと、無い!!」
即答したXANXUSにツナは一瞬キョトン、としてそれからふわりと笑った。
「うん。そっか、ありがと」
「お前、笑顔は昔とちっとも変らねェな」
「お前じゃない・・・ツナだもん」
ぷ、とふくれたツナに、XANXUSが噴き出した。
「ブハッ!・・・言ってることも5歳の時から変わってねェぞ・・・クク」
肩を震わせて笑うXANXUSは、まるで憑き物が落ちたかのようにスッキリとした表情をうかべていた。
「・・・XANXUS様」
そこにチェルベッロ達が寄ってくる。
「満足か?お前達の予言通りだ。・・・俺には次期ボンゴレの継承権はねェ。次期ボンゴレはツナだ」
XANXUSは振り返り、そう言った。予言とはどういうことだ、とその場の全員がチェルベッロの次の発言を待つ。
「お言葉ですがこれは我々の望みでも予言でもありません。全ては決まっていたこと。貴方は役割を終えました・・・お疲れ様でした」
「・・・フン・・・タヌキが」
最後まで彼女達の立ち位置がわからなかったが、今はそれを詰問するような場面ではなかった。
「それではリング争奪戦を終了し、全ての結果を発表します。・・・XANXUS様自身が継承権が無かったことを認められましたので、XANXUS様を失格とし、大空戦の勝者は沢田綱吉氏とします」
チェルベッロ達の言葉に、ツナの守護者として闘った面々が歓喜の表情をうかべた。
「よって、ボンゴレの次期後継者となるのは沢田綱吉氏とその守護者6名です」
決着がついたその場には、先程までの殺伐とした空気が嘘のようにほのぼのとした空気が流れていた。
***
「つまり~・・・最初っから、こうするって計画してたってわけか~」
ベルフェゴールががっくりと肩を落とす。
「幻滅したか?」
XANXUSが淡々と訊ねれば、ベルフェゴールは首を振る。
「いーや!王子はボスについてくって決めたから、ボスが決めたことに従う。シシシ・・・」
「そういうことだね。僕らはボスが9代目の息子だからついてきたんじゃないよ、ボスがボスだからついてきたんだ」
ベルフェゴールとマーモンの言葉に、XANXUSは肩を竦めた。
「もの好きな連中だ・・・」
「・・・皆、テメェに心底惚れ込んでるってことだぜェ」
スクアーロが口の端をあげる。
「ふふ、XANXUSは幸せ者だね。こんなにも慕ってくれる人達がいるんだから」
ニコニコと笑うツナが言えば、ベルフェゴールやマーモンが微妙な表情をうかべた。一体この子どものどこに惹かれてXANXUSがあんな暴走をしたのか、まだわからないのだ。
「・・・お前だって、随分と好かれている」
XANXUSの視線がツナの守護者となった面々をなぞるように動き、ツナに向けられる。
「そうだね。皆、俺の大切な友達で仲間なんだ」
ニッコリと笑ったツナの答えに、友情以上の感情を自覚していた獄寺と山本の2名がガクっと肩を落とす。
どうやらツナ自身は好意は感じていても友情だと判断しているらしいと悟り、安心したXANXUSはニヤリと笑った。
「・・・おい、XANXUS」
不意にリボーンが不機嫌にその名を呼ぶ。
「・・・黄のアルコバレーノ・・・か」
そちらを見たXANXUSは次に言われるだろうセリフを予想して、一瞬で渋面に変わる。
「この後の処分については、覚悟しておけよ」
「・・・ああ、わかっている」
予想通りの言葉にXANXUSは溜め息交じりに頷いた。
「ちょっと、リボーン!」
「けじめはつけさせなきゃなんねーだろうが。わかってるだろ、ツナ」
非難の声をあげたツナに、リボーンはぴしゃりと言った。
「そりゃ、そうかもしれないけど・・・何も今言わなくたって」
「ツナ・・・いい。わかってたことだ。それに俺が9代目の実の息子じゃねぇこともちゃんと公表しておくべきだ。ツナという正式な後継者も決まったことだしな」
「・・・XANXUS・・・でも」
「ツナ」
「う~・・・わかった」
尚も納得できない様子を見せていたツナを、XANXUSが窘めるとツナは渋々頷いた。
「・・・ツナぁ、おとーさんも情状酌量の余地はある、と幹部達には進言しておくから。な?」
次いで家光もツナの頭を撫でながら言えば、ツナはパァッと表情を明るくした。
「ホント!?ありがと!父さん、大好き!!」
「おとーさんもツナが大好きだぞーッ!」
ぎゅうぎゅうとツナを抱きしめながら、家光は頬擦りをする。
「・・・大概、家光もツナには甘めェな・・・ったく」
その様子を見ていたリボーンが不機嫌に呟く。
「おい、黄のアルコバレーノ」
「なんだ、XANXUS」
「本当のツナを見出してやったのは、テメェだな?」
「まぁ、そういうとこだ」
「感謝する。アイツは周りと違う自分を早くから自覚していた。だからこそ本来の自分を隠していた。それはツナ自身にとっては苦しいことだったろうからな」
「・・・ああ」
XANXUSの言葉にリボーンは頷き、家光に力いっぱい抱きしめられて苦しそうにしているツナを見つめる。
「もうアイツは本来の自分を隠そうとはしねぇだろ。だから、安心して罰を受けてこい。そして戻ってきたら存分にアイツを甘やかしてやれ。
アイツを甘やかすことができんのはお前だけだからな」
「テメェじゃ、無理か?」
「まぁ・・・このナリじゃな」
「それもそうか・・・テメェがアルコバレーノで良かったと始めて思ったぜ」
ニヤリと笑ったXANXUSに、自分の想いを見透かされたことに気付いたリボーンは憮然とした表情をうかべて視線を逸らした。
「・・・呪いが解けたら見てろよ。脇から掻っ攫ってやる」
「させねェよ・・・どカス」
そして、夜が明ける前にXANXUSを含めたヴァリアーの面々はチェデフによりイタリア本国へと連行された。
連行される前、XANXUSとツナは新たな約束をした。
「今度は取り違えないでよ、XANXUS」
「ああ、わかってる」
小指を絡ませて交わした約束は、また互いの心の支えとなる。
***
その夜、XANXUSと絡めあった小指を見つめて、ベッドの上に寝転がっていたツナは相好を崩した。
「へへへ~・・・」
そこにリボーンが飛び蹴りを放つ。ギリギリのところで避けたツナは枕を抱きしめて、非難の視線を向けた。
「何すんだよ!リボーン!」
「締りのねェツラしてんじゃねェ!!・・・お前は正式にボンゴレの次期ボスになったんだぞ!これからはもっと大変になるんだからなッ!」
「わかってるってば。・・・もうちょっとくらい浸らせてよ~」
拗ねるツナがXANXUSへの特別な想いを自覚していないと確認したリボーンは深い溜息をついた。
「自分じゃ気付いてねェだろうがハードな闘い方をしたんだ、相当疲れてるはずだぞ・・・とっとと休め。明日はパーティーをするんだってママン達が張り切ってたからな」
「も~わかったよ・・・オヤスミ、リボーン」
「ああ」
ツナが寝入ったのを確認したリボーンはそっとその枕元に立ち、頬を優しく撫でた。
「よく頑張ったな。ツナ・・・ツナは俺の自慢の生徒だぞ」
こうして様々なことがあったリング争奪戦も終了し、長かったツナ達の1週間は終わりを告げたのだった。