Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~ 作:cibetkato
そして、あっという間にXANXUSがやって来る日が来た。
その日のツナはとてつもなく機嫌が良かった。完全にうかれまくっているツナとそれを見るたびに不機嫌になっていくリボーンの対極的な様子が獄寺達にとっての地獄の始まりを告げていた。
「ふんふ~ん♪」
鼻歌交じりで通学路を歩くツナとほんのわずかに距離を取り獄寺は山本にコソコソと話しかける。
「おい、山本。10代目がご機嫌なのは良いがとうとう奴が来るぞ、テメェはどうするつもりだ?」
「どうするって言ってもなぁ・・・正直、どうしようもねぇんだろ?」
「じゃなかったら、テメェなんかに相談しねぇよ」
「ははッ、だよな~。・・・で、実際アイツが来たらどうなるんだ?」
山本が首を傾げて訊ねると、獄寺は呆れたような視線を向けた。
「どうなるもこうなるも、10代目が完全に奴にかかりきりになるってこったろうが」
「それは・・・つまらねーな」
山本が嫌そうに顔をしかめる。ツナに特別な好意を寄せている獄寺と山本にしてみればXANXUSは邪魔者なのだ。
「しかし、邪魔をすれば10代目のお怒りを買うことになりかねねーし」
獄寺の呟きに山本は確かにな、と頷く。
「ツナはXANXUSが気に入ってんだろ?だったら俺らもアイツと険悪になるんじゃなくて、仲良くしてりゃ良いんじゃね?」
「それもそうか。その方が10代目もお喜びになる」
「ああ・・・ツナは優しいからな」
獄寺と山本は視線を合わせ、それから同時に深い溜息をついて肩を落とした。
「「はぁああ・・・」」
***
並盛中は今日も変わらず風紀委員が取り締まりを行っている。いつもその先頭に立つのは副委員長の草壁なのだが、今日に限っては雲雀もその場に立っていた。
「あれ、雲雀さん?おはようございます!」
首を傾げながらツナが挨拶をすると雲雀はわずかに表情を緩めた。
「今日は早いね」
「今日は良いことがある日なんで」
ニッコリと返事をするツナに雲雀は訝しげに眉をひそめる。
「良いこと?」
「XANXUSが来るんです」
その名を聞いた途端、雲雀の機嫌が急降下した。
「あいつが来るの?・・・確か処分を受けるんじゃなかった?」
「はい。次期10代目による観察処分ってことにしてもらったんです」
答えるツナに雲雀は嘆息した。
「それって無罪放免と同意義だと思うんだけど・・・?」
「そんなことないですよ?ちゃんと再教育は施すつもりですから」
「ふぅん・・・まぁこの並盛で騒ぎを起こさないでね。守護者になるとは言ったけど深く関わるつもりはないよ」
「はぁい。気をつけます」
素直にツナが返事をしたことで機嫌を直した雲雀は顎で校舎を示した。
「もう行きなよ・・・僕が群れるのを嫌いなのは知ってるだろ?」
「わかりました。・・・あ、雲雀さん」
歩き出したツナがピタリと止まって振り返る。
「何?」
「戦闘訓練とかあったら、参加してくれますか?」
「・・・考えておくよ」
「わかりました。気が向いたら参加してくださいね!連絡はしますから」
「わかったよ」
頷いた雲雀に満足げな笑みを見せてツナは獄寺達と共に教室へと向かった。
***
HRが始まると共に担任が男女の転入生を連れて来る。
「イタリアから来ました、針山紋太です。よろしく」
「針山姫子で~す。姫って呼んでね♪」
双子だという彼等はあまり似ておらず、不思議そうに眺めていたツナは不意に気付いた。
「あ・・・」
思わず声を出してしまったツナに担任の視線が向く。
「どうした、沢田」
「あ・・・いえ。その2人俺の知り合いなんで、つい」
「知り合い?・・・お前イタリアに知り合いなんていたのか」
首を傾げる担任にツナは曖昧な笑みをうかべた。
「父がイタリアで働いてるんで」
そう言われてしまえば納得せざるを得ない担任は、ツナに2人の世話係を命じた。
HRが終わり転入生の席へと向かったツナに、獄寺や山本も寄ってくる。
「10代目、もしかしてこいつら、ボンゴレ関係者ですか?」
声のトーンを落として獄寺がそう訊ねると、ツナは肩を竦める。
「まぁ、関係者って言ったら関係者なんだけど・・・まさかこうやってくるとはねぇ」
「フン・・・僕の幻術を見破るとはさすがだね」
紋太がそう言うと、獄寺が目を瞠った。
「幻術?・・・って、まさか!?」
「シシシ・・・そのまさかだってーの」
「お前・・・その笑い方」
姫子の特徴的な笑い方に山本も目を丸くする。
「嘘だろ・・・お前ら学生やる気か?」
獄寺が愕然としながら問えば、紋太がムッとしながら答えた。
「オメーら再教育だぞ、って、リボーンが言ったんだよ」
「り・・・リボーンさんが」
「まぁ、やりそうなことだよね。俺もなるべくフォローするけど、隼人と武もこの2人のフォローよろしくね」
「は、はい」
「わかったぜ、ツナ」
ツナは獄寺と山本が了承するのを確認して、視線を紋太と姫子に戻す。
「良く化けてるけど、潜入とかは得意なの?」
「まぁ、そういう任務もあるね」
「シシシ・・・ヘマはしないって。お前に迷惑かけるなってボスに言われてるからさ」
「なら良いけど・・・他の面子はどこにいるの?」
「たぶんヴァリアーの日本支部として買い取った処だと思うけど。リング戦の時もそこに滞在したからね」
「へぇ・・・なるほどね。本隊を全部こっちに持って来たの?」
「いや、幹部だけだよ。・・・隊員は門外顧問預かりってことになってるから」
素直に答える紋太に一種の不気味さを感じた獄寺が警戒心を露わにする。それに気付いた姫子がクツリと笑った。
「シシシ・・・一応、幹部は次期10代目預かりだから大人しくしてるって。そんなに警戒すんなし」
「もし、少しでもおかしな行動をしたら・・・」
「隼人、大丈夫だよ」
獄寺の言葉を止めたのはツナだった。穏やかな笑みをうかべたままのその言葉に獄寺は視線を落とし、渋々頷いた。
「・・・10代目が、そう仰るなら」