Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~ 作:cibetkato
「・・・いつも、こうか?」
XANXUSが獄寺と山本に視線を向ける。
この2人もツナに対してXANXUSと同じ想いを抱く者であるから、このアルコバレーノの牽制を受けていると思ったのだ。
「・・・まぁ、いつもだな」
「ハハッ、小僧は容赦ねーのな」
予想通り獄寺はげんなりとして、山本は困ったように笑いながら答える。
「・・・ナルホドな」
肩を竦めたXANXUSは羽飾りにじゃれつくランボの首根っこを掴まえ、ポン、とソファーに落とす。
「もう終わりだ。・・・後はあの黒いのに遊んでもらえ」
黒いの、とXANXUSが指したのはマーモン。そちらを見たランボは目をキラキラさせた。
「浮いてるー!ランボさんも、空飛びたいんだもんねーッ!!」
「ぼ、ボス!!」
ピョンピョンと飛び跳ねて自分のマントに掴まろうとするランボに焦り、マーモンはXANXUSに抗議の視線を送る。
「なんだ?マーモン?」
(まさか、嫌だとは言わねェだろうなァ?あ゛あ゛!?)
ジロリと睨まれたマーモンは、その殺気混じりの視線に嫌と言えずブンブンと首を振った。
「・・・遊んでやれば、良いんだろう?」
そう言うなりマーモンはランボの手を取って、フヨリと浮かび上がった。
「うわっほ~い!!ツナ~、見て見てぇ~!ランボさん、飛んでるんだもんね~!」
「フフ・・・良かったな、ランボ」
そう言ったツナは、マーモンに満面の笑みを向けた。
「ありがとう、マーモン」
その笑みを見た瞬間、マーモンはボッと顔を真っ赤に染める。
(な、なんだ!?こ、この感じ!!)
訳のわからない感情にマーモンの脳内は大混乱を起こしていた。
「・・・オチたな・・・」
ボソ、と呟いたのはリボーン。
「は?何?」
ツナが思わず肩に乗るリボーンの方を向けば、機嫌の悪そうなその表情に首を傾げた。
「オメェは知らなくて良いんだよ」
ペチン、と軽く頬を叩かれ、ツナは眉を顰めた。
「なんだそれ。ったく・・・わけわかんない」
「ツッ君~、ちょっと手伝って~!」
キッチンの方から奈々に呼ばれる。
「はーい。・・・ほら、リボーン降りろ」
「・・・ああ」
奈々の手伝いともなれば邪魔をするわけにもいかず、リボーンは渋々ツナの肩から降りる。
そしてツナがキッチンに行ってしまうと、XANXUSはじろりとリボーンを睨んだ。
「おい、アルコバレーノ・・・随分と心が狭いな?」
「フン、思いの外、家光の奴がツナに甘かったからな・・・もう少し総本部で拘束されてると思ったんだが」
「ハッ、家光は奈々だけじゃなくツナも溺愛してるからな」
鼻で笑うXANXUSに、リボーンは眉間にしわを寄せる。
「家光の奴、自分が門外顧問だっつーこと忘れてんじゃねぇだろうな」
「忘れてはいねぇだろうよ。公私の使い分けはきちんとしてる。ただ、今回に限っては私情を優先したんだろ」
「今回に限って・・・?」
「ああ。リング争奪戦の時、ツナが死ぬかもしれねェと思いながらも門外顧問として最後まで手は出さなかった。その反動だろ」
「そうか、そういうことか。これは家光の罪滅ぼし、ってヤツなのかもしれねェな」
ポツリと呟いたリボーン。それに対してXANXUSは肩を竦める。
「罪滅ぼし、な。それにしたって俺とツナとの“約束”を知っていたクセに気づかねェとはな。クソジジィも家光も抜けてやがる」
「“ゆりかご”の事件を起こした時点でツナとの“約束”なんざ反故になったと思って当然だろうが」
今日のXANXUSは随分とよくしゃべるな、と思ったリボーンはこっそりベルフェゴールとマーモンの様子を窺い、そして苦笑いをうかべた。
2人はまるで化け物でも見るような目でXANXUSを見つめていたからだ。
そのリボーンの視線を追い、同じようにベルフェゴールとマーモンの様子を目に入れたXANXUSは途端に不機嫌になった。
「・・・なんだ、その目は」
「なっ・・・なんでもないよ!ボス!!」
「そ、そうだぜ、ボス」
XANXUSは大きな溜息をついた。
「どうせ、らしくねェとか思ってやがるだろ。ハッ、勝手に思ってやがれ」
自覚はあるらしいXANXUSの発言に、リボーンや獄寺、山本が思わず笑う。
「しかし、テメェはどっちが素なんだ?」
獄寺が問えばXANXUSは眉を顰める。
「これが素だ。リング争奪戦の時よりも安定して見えるなら、ツナの前で嘘をつく必要が無くなったから気持ちが落ち着いてるだけだ」
「ナルホドな~ツナやツナのお袋さんの前じゃ、気持ちが落ち着くってわけか。それってちょっとわかるのな♪」
「・・・まぁ、そうだな」
ヘラリと笑った山本が納得したように言うと、獄寺も同意する。
「飲み物持って来たよ、皆で飲も」
そんな会話の隙間を縫うようにキッチンから顔を出したツナがそう言ってお盆に載せた飲み物を運んでくる。
「手伝います!10代目」
獄寺がすぐさまその傍に寄り、ツナの持つお盆から飲み物をテーブルに移す。
「ありがと、隼人」
獄寺に向けてニコリと笑うツナにわずかにムッとした山本がポン、とその肩を叩く。
「俺も手伝うぜ、他になんか運ぶもんある?」
「あ、じゃあ、武はキッチンにあるおやつ運んでくれる?」
「おう、任せとけって」
ツナに笑みを向けられた山本は満足げにニカリと笑い、キッチンへと入っていく。
「おい、アルコバレーノ・・・アレは、日常の光景か?」
「まぁな。・・・アレだけ好意を示されていて、ツナの奴全く気づかねェんだからな。・・・ったく、少しは超直感で気づいてくれりゃ、こっちだって苦労はしねェんだ」
XANXUSの問いに答えるはずが、思わず愚痴になってしまうリボーンである。
なんとなくその苦労を理解してしまったXANXUSは、一筋縄ではいかないだろうツナの攻略に対して大きな溜息をついたのだった。
***
その夜。XANXUSは沢田家の縁側に座り、ぼーっと月を眺めていた。
「・・・XANXUS、何してんの?」
部屋の中でランボやイーピン達と遊んでいたハズのツナがXANXUSの傍にやってきた。
「月を見ていた。・・・ガキ共はどうした?」
「もう、おねむの時間だってさ。・・・母さんが部屋に連れてったよ」
「そうか」
沈黙が下りる。
不意にXANXUSの隣に座ったツナが、トン、と肩に頭を乗せて来る。
「・・・ツナ?」
「あのさ、リング争奪戦の時は・・・ちゃんと話せないまま別れちゃって」
「ああ」
「・・・XANXUS、本当は俺、すっごく嬉しかった」
何が、とは訊かなかった。ツナの答えはわかりきっていたからだ。
「そうか。・・・命を賭けたかいがあった」
「でも、もう2度とあんなことしないでね?」
「ああ。・・・あんなことをしなくてもお前の傍にいられるようになったからな」
名実ともにツナは10代目候補となった。ならば、XANXUSは許される限りツナの傍にあろうと決めていた。
「XANXUSって、なんかキザだよね。聞いてるこっちが照れるようなこと真顔で言うし」
「キザだって思うならそれはツナ限定だ。・・・お前以外にこんなことを言うつもりはねェ」
グイ、とツナの肩を引き寄せこめかみにキスを落とす。
目を真ん丸くして、ツナはXANXUSを見つめる。
「ざ・・・ざん、ざす?」
「・・・ツナ、今日は俺はどこで寝りゃ良い?別にお前の部屋でもイイが」
「っ!?・・・か、母さんに聞いてくるからっ!!」
ワザと逃げる口実を与えて、顔を真っ赤にしながら家の中に戻ってしまうツナを見送る。
「まず、こっちを意識させなきゃ始まらねェ。鈍感なツナにはこれくらいしないと・・・な」
ニヤリと笑ったXANXUSの視線の先には、不機嫌な表情をうかべたツナの家庭教師、黄のアルコバレーノ・リボーン。
「XANXUS、オメェ・・・」
「抜け駆けするな、なんてぬかすなよ。テメェの方がツナの傍に長くいたんだからな」
幾度となく修羅場を乗り越えてきたリボーンとツナの師弟の絆はとても強い。ライバルと同じことをするのは不可能だ。
だが、幸運なことにツナとXANXUSには別の繋がりがある。
「どれだけ傍にいたかなんて無意味だろ。・・・オメェは9年前からツナの心の大半を占めてたんだからな」
「フン、当然だ。俺はツナが“初めて素の表情を見せた相手”なんだぜ?」
そう。それこそがXANXUSがリボーンとはりあうための武器となる肩書だ。
「まさか、オメェがこんなにも早く手ェ出すとはな・・・まだ初日だぞ」
「・・・いつまでこっちにいられるかわからねぇからな。俺を次期10代目の傍に置くのは危険だと言う奴も穏健派には多くいる」
ス、と視線を逸らしたXANXUSの表情は曇っている。
「家光と9代目・・・なによりツナがそんな奴らの言うことを聞くわきゃねーだろ。第一、ツナのためにやったんだって言ったんだろうが」
「・・・ゆりかごの件もあるからな。危険視する奴は絶えねぇよ」
自業自得だな、と自嘲するXANXUSに、リボーンは何も言えず視線を落として、ボルサリーノのつばを引いた。