Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~ 作:cibetkato
「おーッす、ツナ・・・と、獄寺」
「おはよー、武」
「・・・おぅ」
とろけるような笑顔をうかべてツナが返答し、獄寺はいつも通りの不機嫌な表情で片手を上げる。
が、そこはかとなく気不味い雰囲気を醸し出している2人に、山本は首を傾げた。
「どうしたんだ?2人とも」
「・・・あー、多分、XANXUSのせい?」
ツナが視線を向ければ、苦笑いを返す獄寺。
「さすがに朝っぱらから口説いてるとは思わなかったんで・・・」
「・・・うあー、獄寺そんな場面目撃したのかよ」
(ある意味気の毒だ)
「まぁな・・・」
(つーか、アレは既にイチャついてるのレベルだった・・・)
「っていうか、XANXUSってそんなキャラだったのな」
山本の言葉に獄寺は口元を引き攣らせた。
「いや・・・ありゃ別人だとしか思えねェ・・・10代目もそう思われたんじゃないですか?」
「うん。正直驚いてる・・・9年前とかリング戦の時のXANXUSからは想像できない」
「そんななのかー?・・・俺も見てみたいのなー」
(つか、思いッきし邪魔してェ)
「止めとけ、山本」
「えー、なんでだよ、獄寺」
「イイから止めとけって言ってんだよ!この野球馬鹿!!」
ギロリと睨んでくる獄寺の目がわずかに潤んでいるように見えて、なんとなく察した山本は素直に頷いた。
「・・・わかった」
(獄寺の奴、相当ショック受けてるのなー・・・)
なんとなく無言のまま学校に向かうと、校門前で笹川兄妹にばったり行き会った。
「おー、沢田!山本に獄寺も。極限に良い天気だな!!」
「おはよう、ツナ君!獄寺君、山本君も、おはよう!」
「あ、了平さん、京子ちゃんもおはよう!」
ニコリと笑うツナに、了平も京子も笑顔を返す。
「そういえば、昨日ツナ君を迎えに来てた人って、ツナ君のお兄さん?」
京子のセリフに獄寺と山本は何とも言えない表情になり、了平も軽く眉を顰めた。
「京子・・・ヤツは」
「お兄さんっていうか親戚なんだ。・・・イタリアから遊びに来たんだよ」
了平の言葉を遮って説明するツナに、京子は納得したように頷いた。
「そうなんだー。・・・でもお父さんもイタリアでお仕事してて、親戚もイタリアに住んでるなんて、スゴイね!」
「んー、父方の親戚はほとんどイタリア人だからねー」
あはは。と笑うツナに京子は目を丸くした。
「え?じゃあ、ツナ君もイタリアの人なの?」
「あ、いやいや。俺の場合は何代か前のお爺さんがイタリア人なだけ」
「へー、沢田って外国の血が流れてたのね」
突如第三者の声が背後から聞こえ、ツナはギョッとして振り返った。
「あ、花。おはよー」
「く、黒川かぁ・・・びっくりした~」
(え、全然、気配に気付かなかったけど!!)
「こんなに近くに来ても気付かないなんて、あんたよっぽど鈍感なのねェ」
明らかにツナが黒川に気付いていなかったという表情をしたため、守護者の面々の表情が困惑に変わる。
「10代目?」
獄寺が気遣わしげな視線を向けるとツナは一瞬困ったように眉を顰め、次の瞬間ハッとして当たりを見まわした。
「・・・嘘」
ツナが愕然と呟く。
「どうしたんだよ、ツナ?」
様子のおかしいツナに山本もさすがに心配そうな表情になる。
「いや。・・・校舎に入ろう、遅刻になっちゃう。・・・あ、後で話があるので、了平さんも昼休みに屋上に来てください」
「おう、わかった」
頷く了平に笑みを向けるが、その笑みもすぐに曇る。
(・・・超直感どころか気配の察知までできなくなってる。・・・どうして!?)
目の前にいる守護者や京子達の気配さえも感じなくなっている自分に気付き、ツナは自身の変化に酷く戸惑っていた。
***
その様子を屋上から見ていた影が2つ。独立暗殺部隊ヴァリアーの幹部ベルフェゴール改め姫子と、同じくマーモン改め紋太である。
「・・・いーの?これで」
「しょうがないよ。だって、本人に気付かれないようにしなきゃいけないんだから」
「甘やかし過ぎじゃね?きっと綱吉は喜ばねーよ?」
呆れたように言う姫子に紋太は渋い表情をうかべた。
「9代目と門外顧問からの命令に逆らえるわけないだろう?全面的に従うという約束で僕達ヴァリアー幹部は事実上お咎め無しになったんだから」
「それはわかってるけどさ。こんな風に事実を隠すなんて、9代目も門外顧問も綱吉のコト信じてないってことじゃねーの?」
「僕にあたらないでよ、ベル。ボスだって黙って従ってるんだ、部下の僕らが従わないでどうするのさ」
「ボスもなー、こんなこと命じられて反対すると思ったんだけど」
「うん。それは僕も思ったよ。もっと強く拒絶すると思った」
この作戦は次期10代目であるツナに秘密で行われる。それはツナをあまりにも蔑ろにする行為だった。
「・・・また憎まれ役を買って出たなんて、そんなこと綱吉に知られたら平手打ち1発じゃ済まないんじゃねーの?」
「うん。沢田は怒らせると怖いタイプだからね・・・バレないように細心の注意を払わないと」
「シシシ・・・ま、俺らの任務は綱吉の護衛だし?作戦の方はボスとスクアーロ達が担当だから。いざとなったら言い逃れできるし。いっか」
いくらヴァリアーの同僚であろうとも所詮は他人。心配する必要すら感じていない“ベルフェゴール”らしい言葉に“マーモン”は思わず苦笑をうかべた。
「ベル、優先順位変わってない?」
「シシシ・・・気のせいだよ」
「さて、教室に戻ろうか。読心術も封じたし、しばらくは沢田に勘付かれることは無いと思うけど」
「シシ、気をつけるに越したことはないっていうんだろ?」
姫子が言うと、紋太は溜息混じりに頷いた。
「そういうこと。状況判断能力はかなり高いと思うし、第六感を封じてもどこまで隠し通せるか」
「その方がボス達の為にもなると思うけど。全部終わった後に説明したら五体満足じゃいられないかもよ~?シシシ」
「それは怖いね。でも当面は敵からの敵意や殺意どころか味方の気配すら感じ取れないんだから、今まで以上にみっちり張り付かないとね」
「・・・りょーかい」
頷きあった紋太と姫子はツナの警護を開始すべく、教室へと向かった。