Ciao!~大空の少年と憤怒の青年と黄のアルコバレーノの物語~ 作:cibetkato
昼休み。皆を屋上に呼んだツナは集まったメンバーを見渡す。
「・・・やっぱり何も感じない」
溜息交じりに言うツナに対して内心ギクリとしたのは、獄寺と山本と紋太、そして姫子だ。
「極限、謎だな!」
何も知らない了平が叫ぶのを聞きながら、ツナは困ったように眉根を寄せた。
「誰がこんなことしたんだろ・・・もしかして、俺、狙われてるのかな?」
「10代目安心してください!もしそうだとしても、俺達が絶対にお守りしますから!」
ツナを安心させるために獄寺が宣言すると、ツナはへにゃりと笑った。
「ありがと、隼人」
「俺も忘れんなよ、ツナ。しばらく部活休むのな。一緒に帰ろーぜ!」
「武、イイの?」
「おう!」
「・・・ありがと」
(かっわいいィ~ッ!!)
はにかむツナに獄寺と山本は内心で悶え、揃って二カッと笑った。
「うわ。すっごい良い笑顔~」
呆れたように言ったのは姫子だった。
自分達はツナを騙しているのだ。後でそのことを責められることは必至だというのに、獄寺と山本は公然とツナの傍にいられると半分喜んですらいる。
「・・・不純」
ぼそりと紋太が呟く。
「え?なに紋太?」
訊ねるツナに紋太は冷や汗をかく。
「いや、何でもないよ。僕も早くその術を解く方法を探すからね」
「うん。頼むね紋太」
ツナはそう言って微笑むと校門の方を眺め、そして微かに息を呑んだ。
(・・・XANXUS?)
ツナの視界に映ったのは、困ったような切ないような、そんな表情をうかべたXANXUSだった。
いつもならばこの距離からの視線ならば気付かないわけがないのに、XANXUSは気付いた様子も無く、次の瞬間には厳しい表情に戻って見を翻す。
たとえ第六感が閉じられていようと、XANXUSの様子がおかしいことくらいはわかった。そこからはじき出される結論。
「紋太、姫子・・・XANXUSが単独で動いてる。どういうこと?」
あくまでもXANXUSはツナの監視下に置かれているという扱いだ。XANXUSが単独で動くなどリボーンが許すはずがない。
「そ、それは」
「全部話すから、許して綱吉」
思わず焦る紋太の脇で、姫子があっさりと降参した。
「ちょッ!?姫子ッ!?」
「シシシ、綱吉を怒らせるくらいなら正直に話すしー」
「す、スミマセン!10代目!!俺もさっき聞いて知ってました!!」
「わり。俺もなのなー」
次々と白状する面々にツナは思わず呆け、それから苦笑をうかべた。
「しょうがないなぁ、もう。・・・全部話してくれるなら許してあげる」
そう言ったツナに、事情を知る者達はあっさりと全てを白状した。
「はぁぁああ・・・」
全てを聞いたツナは深い溜息をつく。
「面倒だとは思うけど、もうしばらく我慢しててくれないかい?」
紋太がおそるおそる言うと、ツナは困ったように眉根を寄せた。
「まぁ、第六感が働かなくても大丈夫には大丈夫だけど・・・でもなぁ」
「シシシ、取りあえずボスとスクアーロが動いてるし、あとついでにリボーンも。だから綱吉は守られてれば良いんじゃない?ちょっとは慣れた方がイイって」
「慣れるとはどういうことだ?」
了平が首を傾げて訊ねると姫子は肩を竦める。
「守られることに慣れろってコトだって。・・・綱吉はいつだって味方を守るために真っ先に危険に飛び込んでいくでしょ。ボンゴレ10代目になるならそういう危ないことは止めてもらわないとねー」
「でもさ、力がある者が闘うのは当然だと思うんだ」
「立場を考えてよね。確かにボス自ら出ていくっていうのは士気も上がるかもしれないけど、時と場合にもよるよ?」
紋太が反論を試みたツナに言い聞かせるように告げれば、獄寺や山本、了平までもがそれに賛同した。
「すみません10代目。この点では俺もマーモンに賛成です」
「俺もなのなー」
「極限、立場どうこうというのはわからんが、沢田ばかりが前に出るものでもないだろう!!」
「うわ・・・俺、味方皆無?」
困ったように笑い、ツナは素直に頷いた。
「わかったよ。ホント、皆過保護なんだから」
「沢田が強いっていうのは充分わかってるけど、ここは大人に任せるんだね」
「・・・ん。そーするよ、紋太」
応じたツナは、今回の件には一切関わらないことを決めた。
「シシシ、綱吉が気付いちゃったことは伏せとかないとねー、私達のためにも」
「そうだね。沢田にバレちゃったなんて言ったらボスに何されるかわからないしね」
「あ、そーか。うん。XANXUSには知らないフリしておくから安心してね、2人とも」
ツナがそう約束をしてくれたので、紋太も姫子もホッとしたように頷く。
「・・・ま、とりあえず解決したってコトでイイよな?」
山本が確認すれば、獄寺が頷く。
「そうだな。ただし10代目の第六感が使えねーってことは変わりねぇ。俺達でキッチリお守りしねーとな」
「そーだな!」
「おう!極限守ってやるからな!沢田!!」
「ありがと、隼人、武、了平さん」
嬉しそうに笑みツナはガッツポーズ決める。
「よし!じゃあお昼にしよっか!」
愁いの晴れた面々はいつも以上に空腹を覚えて食べ過ぎたために、午後の授業は散々な目に遭うことになった。
***
帰宅したツナがリビングに入ると、気だるげにしたXANXUSが庭を見つめていた。
「ただいまー、XANXUS~どうしたの?」
「―――ヒマだ」
「あー、あはは」
ボソリと返って来た言葉にツナは苦笑をうかべるしかできない。
「母さんとチビ達は?」
「買い物だ。毒サソリと黄のアルコバレーノが護衛についてる」
「そっか。じゃあ俺達だけなんだ」
「・・・今日は守護者共は帰ったのか」
「うん。家まで送ってくれたからあがっていけばって言ったんだけど、色々と用事があるみたいだったから」
「・・・そうか」
朝の態度との差がありすぎるXANXUSにツナは首を傾げた。
「元気ないね?なにかあった?」
「まぁ・・・あながち元気がないってのは間違いじゃないな」
XANXUSは呟き、それからツナをヒタと見つめた。
「・・・なぁ、ツナ」
「ん?なぁに?」
「小さい頃、兇手に襲われたって言ってたな?」
「うん。黒ずくめのおにーさん達にねー。いま思ってみればアレって兇手じゃなかった気がするんだよね」
ツナの言葉にXANXUSが眉根を寄せた。
「どういうことだ?」
「だっていくらボンゴレの超直感と炎と氷があったとして、大の大人に子供が勝てると思う?」
ツナ自身もリボーンと同じような疑問を感じていたのだろう。
「手加減されていたということか?」
XANXUSが訊ねれば、ツナは首を振る。
「ん~それとも違う。ホントに俺の耐えられるギリギリのところまで追いつめて、で、こっちが反撃したら逃げるっていうパターンが多かったかな」
「やはりそうか。・・・ツナが強くなるためにワザと襲ったっていうことも有り得るな」
「XANXUSはそう思うの?」
「そうだな。そう思いたいってところか?」
「思いたい・・・?」
鸚鵡返しに呟いたツナの視線が、XANXUSを捉える。
「XANXUSは、何か知ってたりするんだ?」
「まぁな。でも、まだ話す時じゃねぇ」
「それってXANXUSがリング争奪戦を思い立った理由でもある?」
「・・・ああ」
「わかった。じゃあ、訊かない」
ニコリと笑い、ツナはXANXUSに抱きついた。
「ッ、どうした?」
わずかに頬を紅潮させたXANXUSが問えば、ツナは苦笑いをうかべてその胸に頬擦りをする。
「ちょっとさ、第六感が鈍くなっちゃって。気配が全然感じ取れないからこうやって触感でXANXUSを感じようかなぁって」
「・・・ツナ、襲われたいのか?」
「それは、ちょっと心の準備が・・・」
パッと離れたツナを残念そうに見ながら、XANXUSは苦笑した。
「そうか。だが俺は他の連中より一歩リードしてるからな。じっくりと攻めさせてもらうぞ」
「あはは。余裕だねェXANXUS」
「まぁな。他の連中がヘタレすぎる」
肩を竦めるXANXUSにツナは苦笑をうかべた。
「ヘタレ、ねぇ」
「・・・なぁ、ツナ」
「ん~?」
「今、俺は隠し事をしてる」
「ッ・・・そう」
XANXUSが唐突にカミングアウトを始める。
思わず息を呑んだツナだったが、後ろめたさから視線を逸らしているXANXUSはそんなツナの様子に気付かずに続ける。
「何を隠してるかは今は言えねェ」
「・・・どうして?」
「お前の知らない所で片付けたいことだからだ。・・・知ればお前が傷つく」
「でも、俺はXANXUSが俺のために罪を被るのはもう嫌だよ?」
「罪じゃねェから安心しろ。9代目と家光からの指令みたいなもんだ」
そう言うXANXUSにツナはホッと息をつく。
「そっかぁ9代目と父さんが・・・なら、XANXUS1人が責められるってことは無いんだね?」
「ああ。しばらくは周りが騒がしいだろうが、守護者もベルもマーモンもいる。あいつらの傍を離れるなよ?」
「うん。わかった」
「・・・それと」
「ん?」
「・・・全部終わったらツナに報告する。だからあまり怒るな。ツナに怒られるのは、正直、堪える」
「ふふ、そう?」
「怖いとかそういうんじゃねェが・・・こう、この辺りがじくじくと痛む」
XANXUSはそう言って胃の辺りを手で押さえる。それを見たツナはクツリと笑った。
「わかったよ。・・・正直に話すなら怒らないよ」
概要はベルフェゴールとマーモンから聞いてはいるが、XANXUSしか知らないこともあるのだと2人は言っていた。
おそらく2人からツナに漏れることもあると考えて、詳しいことは教えなかったのだろう。超直感でなくてもその辺りのXANXUSの思考回路は読める。
「約束する」
大真面目にそう告げるXANXUSに、ツナは小指を突き出した。
「はい、指きり」
「・・・?」
首を傾げるXANXUSの小指に自分の小指を絡め、ブンブンと縦に振る。
「ゆーびきーりげーんまーん、うーそついたら、はりせんぼんのーます!ゆーびきった!」
「・・・物騒な歌だな」
「ぶは!」
指きりをした後ボソリと呟いたXANXUSの言葉がツボに入ったツナは、奈々達が買い物から帰って来るまで腹を抱えて笑い続けたのだった。