最終チェックをして、ミスがないことを確認。
保存をして、バックアップを取る。
そして一息。ようやく作業が終わった。
時間を見れば、もう夜中。随分、長いこと作業をしていたのか。
いつもならもう寝ている時間だが、作業のし過ぎだからか眠気はない。頭は冴えている。
それよりも、腹が空いた。このこともあって、とりあえず布団に入ったところで寝付くのに時間はかかる。
何か食べるものでも見繕って……部屋の扉がノックされた。返事を返す。相手は確認するまでもなく簪しかない。
「うん……私、簪。悪いけど開けてもらえる……?」
声の主はやはり、簪だった。
席から立ち上がると、部屋の扉を開けた。
そこには簪がいた。手にはお盆を持っていて、更にその上にはおにぎりとだし巻き卵、お茶が乗っていた。
「お夜食持って来たんだけど邪魔だった……?」
なんと。いいタイミングだ。
丁度、何か食べ物をとリビングに行くか考えていた。
「そう……よかった」
簪に中へ入ってもらうと簪は部屋の真ん中にある机にお盆を下ろし、適当なところに座る。俺は簪の前へと座った。
先に寝てろと言ったし、いつも寝てる時間から大分経ってるからてっきりもう寝たものだと思っていた。
「寝たよ……三十分ぐらい。それからずっと目が冴えて寝付けなかったら、あなたに夜食でもって思って作ってた」
だから、妙に手が込んだ感じになってるのか。
丁度いい量で旨いからすきっ腹と疲れた身体には染みる。
幸せだ。
「ふふっ、何それ変なの……はい、お茶」
渡されたお茶を飲んで一息。
よほどお腹が空いていたのか全部綺麗になくなった。
ご馳走様でしたと手を合わせた。
「お粗末様です」
すきっ腹がいい感じに膨れて、身も心も満足感でいっぱいになる。
食べている間、簪はお茶を飲むだけで食べてなかった。
よかったんだろうか。
「大丈夫……お腹空いてないし、味見した時にちょっとつまんだから。それにあなたが美味しそうに食べてるの見てたら私までお腹いっぱいなった」
そうか。なら、よかった。
「あ……お茶、お代わりいる……?」
お茶を注いでもらいまた一息。
いい感じに疲れはなくなってきた。だからか、ぼーっとしてしまう。
腹も膨れたことだし、そろそろ寝て……。
「……な、何っ」
それはこちらの台詞だ。
さっきからこちらを何度も見てくる。
気づかれてないと思っていたみたいだが、簪は相変わらず分かりやす過ぎる。
手招きして膝元に呼ぶ。
「うんっ」
嬉しそうにしながら来ていつもの定位置。
同じ方向を向いて、簪は膝の上に座った。
やっぱり、いつものだったか。
「ってっ! これじゃない……!」
違うかったらしい。
いつもの如く何度も見てくるから、甘えたかったものだとばかり。
「それは……違わない、けど……私がしたかったのは逆なの」
言ってることの意味が分からず不思議がっていると簪は妙膝で立って向かい合ってきた。
そして、自分の方へとぎゅっと抱き寄せてきた。
顔が簪の胸に埋まる。突然のことに変な声が出てしまった。
「ふふ、凄い声」
仕方ないだろ。
急にどうしたんだ。
「頑張ったあなたをもっと労いたくなって。こうすれば少しは癒されるんじゃないかって思ったけど……嫌ならやめる」
嫌じゃないです。
と、俺は簪に言葉なく身を任せた。
すると、簪は頭を抱きしめたまま後頭部を撫で満足そうにしていた。
「よろしい」
まったく、分かってやってるだろ。
けれど、癒されてるのは事実だ。
簪があんなこと言ってこんなことして来るということは寂しい思いをさせてしまったんだろう。
今日はずっと作業をしていて、顔を合わせたのは昼と夜の飯時ぐらいだったからな。
「寂しい……そうかも……寂しかったのかも。こういうことは今まで何度もあったけどさっき起きて隣にあなたがいくて寂しかった。もうそんな歳じゃないのにね」
苦笑交じりに簪は言うがそんなことはないだろう。
歳をとっても寂しい時は寂しいものだ。
簪と俺は、それを恥ずかしさとかはあれど、決して言えない仲ではないはず。
「そうだね……あなたはどうだった……?」
どうとは聞くまでもない。
勿論、寂しかったが寂しいからこそ少しでも早く終わらそうと作業を頑張れた。
そして、今はこうして触れ合えるのだから寂しくなくなった。甘えられているしな
「ん……たくさん甘えて。私もたくさんあなたに甘えちゃうから……話したいこと、聞いてほしいこといっぱいある」
簪のその言葉に頷いた。
今日話せなかった分沢山話そう。たくさん話を聞こう。
「じゃあ、食器持って一緒に歯磨いたらベット行こう。あなた疲れているみたいだからそっちのほうが落ち着けるから」
眠気はないが疲労はある。
嬉しい気遣い。
ベットの中なら落ち着ける。夜は深いが夜は長い。
続きはベットの中で。
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