簪とのありふれた日常とその周辺   作:シート

11 / 127
簪と見守ることにした一夏と本音の様子

「寒っ。なぁ、まだ行かねぇのかよ」

 

 隣で一夏が寒さを紛らわすかのように両手をこすってる。

 確かに寒い。吐く息も白くなり、朝から冬の寒さが増しているの感じる。

 

 あれから三人……主に簪と本音の二人だが、デートプランをしっかり練って準備万端。

 そして今日は例のダブルデート当日。今朝から俺と一夏は、学園へと向かうモノレールがあるレゾナンス前の駅で待ち合わせの為に待っている。

 

「待ち合わせ? 他に誰か来るのか?」

 

 まあ、な……っと俺は適当にはぐらかして一夏に返答する。

 

 待ち合わせの相手は言わずもがな、簪と本音の二人だ。その理由もまた言わずもがな。

 正直、一夏には今日がダブルデートだということは勿論。行き先や簪と本音が一緒だということは教えてない。

 教えてもよかったのだが、簪と本音の二人に止められた。前もって今日のこと一夏を教えれば、ポロっとあの五人や周りに言いかねない。そうなれば、後の祭り。

 実際、今日は俺と二人で遊びに行くという体で寮を出てきたのだが、このことを一夏は食事の席か何かで言ったらしく。

 

『そういえば一夏から聞いたんだけど、今度の休日二人で出かけるんだってね』

 

 と、デュノアに何となしにだが聞かれた。

 まあ、俺と一夏が二人で遊びにいくなんてことは珍しいことじゃないので聞かれただけでそれ以上大した詮索なんてされなかったが、もしダブルデートだと一夏に教えてどうなったかと思うと想像するのも恐ろしい。

 待ち合わせ場所も悩んだ。始め、IS学園から外部に続くモノレールの駅がすぐに集まれてそこにしようとしたが学園生徒しか基本使わない為、行きに見つかって騒ぎにでもなったら面倒なのでわざわざ一旦レゾナンス前の駅でこうして待ち合わせしている。

 幸いなことに朝が早く休日だからか学生らしき年齢層の人影はすくない。いても他所の学校らしき人影で、後は老若男女ばかりだ。

 

 時間を確認する。俺達がここについてのは待ち合わせ時間の十五分前。そして今は待ち合わせ時間の五分前。そろそろ来る頃だろう。

 

「ごめ~ん~」

 

「お待たせ」

 

 来たようだ。

 

「ごめんなさい、待たせちゃった?」

 

 俺達の姿が見えて急いだのか息がほんの少し上がっている簪にまだ待ち合わせの時間になってなないことを教えると「よかった」と微笑んだ。

 

「そうだ……今日のどう……かな?」

 

 恥じらいながら簪は今日の服装を聞いてくる。

 簪の今日の服装は白のレーススカートに優しいグレーのハイネックローゲージニット。

 といったお嬢様コーデのようだ。今日もまた一番と可愛い。

 そんなありきりだが思った通りの「可愛くて似合っている」なんて感想を簪に伝えると。

 

「ふふっ、ありがとう」

 

 嬉しそうに笑みを浮かべてくれた。

 

「本音も凄いんだよ。ほら、織斑見惚れてる」

 

 そういえば簪達が来るまで寒い寒いと言っていた一夏がやけに静かだ。一夏達を見てると、簪が言ったとおりの光景が広がっていた。

 

「……」

 

「……」

 

 本音を見て見惚れている一夏とじっと見られて恥ずかししそうに顔を真っ赤にして固まってる本音。

 今日の本音の服装は、頭には白の耳付きニット帽上は白のロングセーター で下はショートデニムを履いて、セーターが長めのせいかショートデニムが隠れてすごいミニスカっぽい。全体的に普段の本音の雰囲気そのままだぼだぼというかゆったりとした感じだが、本音は普段だぼたぼの制服か気ぐるみっぽい服を来ているせいか、同じゆったり系でも雰囲気は随分と違ってみえる。普段よりも服装に気合が入っているのがすぐに分かった。

 本音にはデートに付き合ってもらっているが、あの満更でもなさそうな発言といい、今日の服装といい、デートに凄い気合入ってるのがわかる。

 

 というか、一夏見過ぎ。

 流石の一夏でもいつもとは違う本音の姿に思わず見惚れてしまっていることは分かるが言葉を失ったままそうじっと見つめたままだと本音がかわいそうなぐらい顔が真っ赤なままだ。

 

「織斑見過ぎ。今日の本音に何か言うことはないの?」

 

「え、えっと……!」

 

「お、おりむー……ど、どうかなっ?」

 

 流石の一夏でも何について言うかぐらいは分かっているみたいだ。その証拠に慌てた様子で一生懸命言葉を捜している様子。そして、長いようで短い思案が明け。

 

「……い、いいんじゃないか」

 

 今にも消えそうな小さな声で一夏はそう恥ずかしそうに言ったが、本音にはちゃんと聞こえたようで物凄く嬉しそうにしながら。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「お、おうっ……」

 

 嬉しさとその反動なのか二人ともおもしろいぐらい赤い。

 というか、もう二人は二人だけの世界に入っているな、これは。俺と簪が見ていることに気づいていない。 

 

「二人とも初々しいね」

 

 ああ、そうだな。二人を見てると初々しくて甘酸っぱい。このまま二人を見ていたい気もするが、まだ今日は始まってすらいない。スタート地点で二人にもう満足されては困る。楽しいのはいまから。

だから、そろそろ行こうかと皆に伝える。

 

「……っ!」

 

「ひゃっ!」

 

 俺の言葉で二人とも我に返ったのか、ばっと二人は距離をとるように離れる。つくづく面白い反応をしてくれる。

 

「い、行くってどこにさ! というか、俺達二人で遊ぶんじゃなかったのかよ」

 

 騙して悪いが、あれは嘘だ。 

 ここでようやく一夏に元々二人を呼んで四人で出かける予定だったことを告げる。

 

「まったく! 何で内緒にするんだよ!」

 

「ごめんね、おりむー」

 

「ああ、いや! のほほんさん達が嫌ってわけじゃないからな! うん!」

 

「えへへ~よかったぁ~」

 

 騒がしい一夏の相手はやっぱり本音に任せる判断は間違ってないようだ。さっそく上手く丸め込まれている。

 行き先とその場所の理由は一夏にはまだ黙っていた方がいいか。ついてからのお楽しみだ。

 

「そろそろ行こう」

 

 簪の言葉の後、俺達は目的の場所へと向かった。

 

 

 

 

「さくらパーク……ここって遊園地か?」

 

 頷いて答える。

 

 レゾナンス前の駅から出発して電車で揺られること約三十分。やってきたのはさくらパークと呼ばれるIS学園のある島とレゾナンスがある街からほんの少し離れた隣街の遊園地。

 ISが急激に普及したことに伴って日本各地では街開発や環境整備が盛んとなり、この遊園地はその一つ。出来てまだ2.3年しか経ってない様で、遊園地ということと休日ということもあって人の数は多い。

 デートと言えば、遊園地ということで決まったこの場所。飲食店やアトラクションが多く、自然と一体になっているらしく景色がまたいいとの評判。カップル向けの一面もあってカップルに人気なデートスポットらしい。実際、カップルらしきグループはちらほらいる。

 IS学園の近く、それこそレゾナンスでもデートスポットとしては申し分ないのだが学園に近い分容易に目撃されかねない。だが、ここでならIS学園からは離れているし存分にデートを満喫することができるはずだ。

 

「でも、なんでまた……遊園地なんかに」

 

「何でって……ダブルデート……デートの為に来たんじゃない」

 

「はぁ!?」

 

 簪の冷静な言葉に反応する様式美を感じさせる一夏の驚いた声。

 ここまでずっと黙っていたから、当然のリアクションだ。

 理由を知りたそうにしている一夏に漸くことの全貌を明かした。

 

「急すぎるだろ……」

 

「考えが甘い、織斑。貴方が恋愛やそういう意味で女子に興味持ったことは聞いてる。今回はそれをより感覚として明確にさせるものなの」

 

「恋愛に興味があるのはそうだけど……というか、更識さんが知ってるって……お前教えたのかよ」

 

 許せ、一夏。

 

 男としては同性なら兎も角、女子に恋愛に興味があるとか女子に興味があるとか知られたくないのだろう。多分。昔ながらの男の考えがある一夏なら尚更。

 しかし、相談され何かしら力になりたいと協力してあげたいと思っても男の俺にでは限度というものがあり、出来ないことも当然ある。だが、対象である女子なら男では思いつかないことを思いつくだろうし、何より女子にしか出来ないことがある。

 デートがまさにその一つだ。特殊じゃないかぎりデートの相手は女子しかできない。女子にしか出来ないからこそ、今こうしてデートが出来つつある。

 

「余計なお節介なのは私も彼も承知。だけど、こうでもしないと織斑は興味あるまま気づくことなく終わってしまいそうだからデートするの。だから尚更……貴方にはこのデートで恋愛がどういうものなのか好きな人がいるってことを少しでも理解して、好きな人とデートするっていうことがどういう感じなのか分かってもらわないと困る。その為に本音に協力してもらっているんだから」

 

「協力って……そんな」

 

「何、うちの本音じゃ不満?」

 

「そ、そうじゃないけど……」

 

 凄むのは流石にやめような、簪

 まあ、簪がそんな態度するのは仕方ないか。本音、一夏とデートするの満更でもない様子だからな……現に今もそわそわしている。だから、余計にこのデートで本音が一夏のことを……なんて思うといらぬお節介でも焼かずにはいられない大切な幼馴染、親友を思っての思いからなんだろう。

 

「なら……いい。私と彼と一緒のダブルデートだけど……織斑、これは二人のデートでもあるんだからそこはちゃんと意識して」

 

「い、意識……」

 

「うぅ~……」

 

 簪の気に押されてゴクリと生唾を飲み込む一夏と意識の意味をちゃんと理解して本音は恥ずかしそうに俯く。

 

 意識はしてもらわないと困るのは事実。

 今日はデート……異性の友達と遊びに来ているのとはわけが違う。意識しないまま一日過ごされたら意味がない。一夏と本音はまだ両思いでもないし……ましてや付き合ってすらいないが、それでもデートだということを、例え仮のものだとしても好きな人がいて恋愛して好きな人とデートをしているということを意識するのとしないのではまったく違う。

 その辺はちゃんと一夏に意識させてからデートに望んでもらわないと……それことをちゃんと一夏に言い聞かせる。

 

 何となくでもいい意識してくれ、一夏。

 

「お、おう! 何となく分かったぞ!」

 

 不安だ。

 だが、俺達から前もって言うと言わないのもまた違う。言ったんだ、大丈夫だと信じよう。

 幸いさっきから意識しまくっている本音がいることだし、それっぽい感じにはなるだろう。

 

「よし……じゃあ、そろそろ中に入ろう」

 

 そうだな、時間は限られているんだ……時間が潰れていくのは惜しい。

 前フリはしっかりとした。あとは二人の問題。実際、やってみないと分からないことだらけだ、こればかりは。

 俺は簪の手をとり、普段の様に指を絡めるように繋ぐ。

 

「あ……そうだ」

 

 そこで俺と簪の声が重なる。大事なことを忘れていた。

 

「本音と織斑もこんな風に手繋いで」

 

「うぇぇっ!?」

 

 俺と簪が繋いでいる手と手を二人に真似するように見せて、驚く二人。

 

「更識さん、それは恥ずかしいんだけど!」

 

「女たらしが何今更、恥ずかしがってるの。いつも女の子と簡単に手を繋いでるじゃない」

 

「いや! それとこれとは違うって!」

 

「まあ、それはどうでもいい。今日は恋人同士のデートっていう体なんだから手を繋ぐのは当たり前」

 

「かんちゃん、わ、私も! 流石に……」

 

「本音? 早くして」

 

「はいぃ……」

 

 可愛らしくも怖い笑みを本音に向ける簪は二人に有無も言わさない。仕掛け人とは言え、他人事だから余計に楽しいんだろう。

 思い出せば、手を繋ぐのにやたら時間かかった簪が懐かしい……。

 

「のほほんさん……」

 

「う、うん。おりむー、どうぞ」

 

 差し出されて本音を手を一夏は戸惑いながらも取り、繋いで指を絡ませていく。

 

「これは物凄く恥ずかしい……!」

 

「えへへ~! そだねーでも、おりむーの手大きくて暖かい。私は繋げて嬉しい~」

 

 本音の純粋な感想に一夏は赤く染まった頬を残るもう片方の手で気恥ずかしそうにかいていた。

 

 

 

 

「うわ~」

 

 さくらパークの中に入るなり、簪は無邪気な声をあげる。

 いくつになっては遊園地は楽しいみたいで、幼い子供の様にはしゃいでいる。

 そんな様子を見ているとまだ入ったばかりだがこっちまで楽しくなってくる。

 

 一方、一夏と本音はと言うと。

 

「……」

 

「……」

 

 二人揃って恥ずかしそうに顔を赤くして、俯いている。

 律儀に手こそは繋いだままだが、歩き方といい二人の間の雰囲気といいどこかぎもちない。

 まあ、理由は目に見えているだけに見ている分には初々しい二人の姿がおもしろい。

 しかし、簪にはほんの少しかわいそうになったのか心配そうに声をかける。

 

「二人とも……しっかり」

 

「だ、大丈夫だよ! お嬢様! そ、そうだ! ど、どれから遊ぼう?」

 

「あっ、ああ! えっと……そ、そうだな、う~ん。あっ……あれなんてどうだ? 少し並んでるけどまだそんなに人は多くないし、遊園地の定番だろ。後々になって凄い並んでから乗ることになるよりかはマシじゃないか?」

 

 顔は赤いが緊張を隠すように一夏と本音は会話する。

 そして一夏が指さしたものはというとそれはジェットコースター。ループ状のレールの上を乗り物が高速で走りぬけている。結構な高さとコースの長さがあり、途中一回転している。ががが、とコースターは駆け抜ける轟音。そして、乗客たちの楽しそうな声。迫力ありそうで楽しめそう。

 確かに定番でまだ人は少なめだ。今ならほんの少し待てばすぐ乗れるだろう。乗れるなら乗りたいが、初っ端からアレか……。

 

「……っ。わ、私はいい」

 

 物凄い勢いで簪は首を横に振る。

 そういえば、絶叫系苦手だったな。普段からISであのジェットコースター以上の高いところから急降下の訓練をしているが、あれとこれじゃあ別物だからな。ジェットコースターの急降下する時にふわっとした感覚が嫌なんだと昔聞いた憶えがある。

 まあ……簪が嫌なら俺もいいかな。また別の機会で乗ればいいもの。二人には悪いが……何だったら二人で乗ればいい。ダブルデートはそういう風に別々に別れることが出来るし、ジェットコースターなら早速恋人同士っぽいことできるだろうそう提案したが。

 

「うーん、私もいきなりジェットコースターはちょっとぉ……ね。ごめんね、おりむー」

 

「そっかー……仕方ないな」

 

 がくっとなる一夏。よほど乗りたかったんだな。確かに急降下気持ちで乗りたい気持ちになってくる。

 でも、女子二人が嫌がってるのに無理強いしないのはいいことだ。相手が楽しんでくれるものに乗るのが一番だからな。

 そんながくっとなっている一夏の姿を見て本音が優しく励ます。 

 

「じゃあ、おりむーまた後で、乗ろう。ね?」

 

「ああ!」

 

 一瞬で元気になる一夏。単純な奴。

 しかし、ジェットコースター以外ってなると他に何から乗ろうか。

 あたりを見渡していると。

 

「かんちゃん! かんちゃん! あれあれ!」

 

 本音が見つけたのは。

 

「ああ……メリーゴーランド。アレならよさそう」

 

 簪も存在にきづいて言葉をこぼす。

 まあ、アレならゆったりしてるし最初に乗るアトラクションとしては最適。

 ゆったりという一面だけの話だが。

 

「いこいこ!」

 

「うん!」

 

 乗り気な本音と簪。それぞれの相手に手を引かれて、俺と一夏はメリーゴーランドの前に連れて行かれる。

 到着して、そのあまりにもファンシーな佇まいに思わず一夏は固まってしまった。

 まあ、そうなるわな。目の前にするとファンシーな感じが凄い。

 

「……これに乗るのか? いや、流石にこれは」

 

「え~! おりむー、すごく楽しそーだよ! ほら、童話に出てくるお姫様みたいな気分になれそう」

 

 実際、そういうコンセプトなのは明白だ。

 幸いこのさくらパーク自体、カップル向けの一面があるから乗っている夢を持った幼い年頃の女の子中に若いカップルはいることにはいる。しかしいざ、自分があの中に入って乗ると思うと恥ずかしさを感じる。

 

 簪も乗りたい? そう聞けば。

 

「……うん、一緒に乗りたいな。嫌?」

 

  分かった、一緒に乗るか。判断は一瞬。返答に迷いはない。

  俺が恥ずかしがっているのを簪に悟られて遠慮気味に聞かれれば、断れない。断るという選択肢は最初かに存在しないのだ。

 

「即決かよ! すげぇな!」

 

 これも可愛い彼女のお願いだ。俺の少しばかり羞恥心なんて捨てる。

 俺が簪と一緒に乗ることを決めれば必然的に。

 

「ねぇ~おりむーも一緒に乗ろう?」

 

「ぐっ……わ、分かったっ」

 

「やったぁ~!」

 

 笑顔ではしゃぐ本音。

 そんな本音の笑顔を見たら流石の一夏でも乗ることへの抵抗は薄れていっているみたいだ。

 自分が即決したことで一夏の逃げ道をなくしてしまったが、それはそれでよかったかもしれない。

 ここはIS学園から遠く離れた遊園地。こんな時ぐらい体裁はもちろん知り合いの目も気にすることがない分、気が楽なのも確か。

 

「じゃあ、早速行こう!」

 

「……うん!」

 

 また手を引かれ、列へと並んだ。

 

「……メリーゴーランドなんてすごい久しぶりだけど楽しいね」

 

 そうだな。とすぐ目の前にいる簪に答える。

 

 ファンシーな音楽と共にメリーゴーランドはゆったりと回っていく。

 気恥ずかしさこそはまだほんの少しあるものの、目の前にいる簪が楽しそうなので俺も楽しい。

 このメリーゴーランドは並びはしたがほとんど待つことなく、あれよという間に自分達の番。まあ、近いのに乗って一人一頭ずつ馬だかに乗るだろうと思っていたら、係員の人に「カップルですか?」と聞かれれば、カップル用の大きめの白い馬一頭に二人でまたがることになった。もちろん、一夏と本音も二人で一頭の馬に乗っている。

 

 「ふふっ」

 

 幸せそうに笑う簪は俺の腕の中にすっぽりと納まるような形で白馬にまたがっている。いや、むしろ簪はポールこそは握っているが、俺に体を預けている。

 簪の甘い匂いが鼻を掠め、密着しているせいか伝わってくる簪の柔らかさで内心ドキドキだ。俺でこんなだから、前の白馬に乗っている一夏と本音は見てて面白い。

 

「のほほんさん、大丈夫か? 辛くないか?」

 

「う、うんっ! だ、だだっ、大丈夫だよー! おりむー、やっぱり優しいねー」

 

「お、男として当たり前だ! うん!」

 

 一夏は普段からオルコット達とあんな距離近くて平然としているのに、今目の前にいる一夏はおもしろいぐらいぎこちない。本音も普段では見られないほど動揺してぎこちないがやっぱり満更でもなさそう。

 一夏のこの様子はデートということを意識していることが現れ始めた証拠なのかもしれない。そうだったらいいのにな。

 

「本音、凄い真っ赤。おもしろい」

 

 確かに。でも、簪も最初のころはよくあのぐらい真っ赤なことが多かったな。いや、あれ以上だったかも

 なんて軽くからかってみれば。

 

「……もうっ、ばかぁっ」

 

 頬を赤く染めそっぽを向いて俯いてしまったが、声は幸せそのもので俺もまた幸せな気持ちになっていくのを感じた。

 

 

 

 

 始めにメリーゴーランドを乗ったのは正解だったみたいだ。あれを皮切りにある程度アトラクションで四人揃って遊んだが、一夏と本音はすっかりこの状況になれたみたいで最初ほどの露骨なぎこちなさはなくなっていた。

 

「そろそろかもしれないね」

 

 頃合か。

 

「織斑、本音。今から別行動しよう」

 

「かんちゃん!?」

 

 簪の言葉に本音が驚く。

 今の今まで四人で遊びまわっていたが、一旦カップルずつで別れてみることにした。四人でも充分楽しいけど、そろそろ一夏と本音を二人っきりにしてみてもいいかもしれない。四人のままだと平衡を保ち続けるが、二人っきりになれば今とは別の反応が二人に起きるだろう。それを期待したい。

 

「ふ、二人だなんて無理だよぉ~」

 

「そ、そうだ! もうちょっと二人いてくれよ」

 

「いつまでも四人だと変化なさそうだし。私も彼と二人っきりになりたいから、ごめんね」

 

 こうでも言わないとダメだろう。

 

「まあ……何かあれば、私か彼の携帯に電話して。それじゃあ、二人とも……ごゆっくり」

 

 そういうことで……っと二人を置いていくようで悪いが足早に二人の前を去る。

 そして二人が見えなくなったところで一旦立ち止まる。

 

「……どうしようっか?」

 

 別れたが正直、今からどこに行くかは決めてない。

 むしろ、今さっき残してきた二人のことがやっぱり気になる。

 

「別れたばかりで……あれなんだけど」

 

 簪の言いたいことは何となく分かる。俺も同じ気持ちだ。

 離れた場所で少しだけ一夏と本音の様子を見守るか。

 

「そうだね、もう少しだけ見守ろう」

 

 簪と俺は二人っきりにした本音と一夏を離れたところでほんの少し見守ることにした。

 




ついに始まったダブルデート。
一夏と本音の初々しさや簪とあなたの甘い感じを楽しんでいただけたのなら幸いです。


で、今回も簪の彼氏君は例の如く、オリ主――「あなた」です。
決して一夏ではありません。
無論、主人公は簪が好きなこれを読んでいるあなたかもしれません。

それでは~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。