千冬さんが崇められる系なら、簪は親しまれる系だと思う。
後ハロウィンなので一緒に。
「それではお呼びしましょう! 本日のメインゲスト! 日本の国家代表IS選手、更識簪選手の登場です!」
簪が呼ばれた。
出番がやって来た。
「じゃあ、行ってくる……っ」
舞台袖から一人出ていく簪をマネージャーとして見送る。
「どうも……日本代表の更識簪です。本日はよろしくお願いします」
司会の人の声と共に舞台袖から簪が姿を出す。
姿を見るなり、巻き上がる拍手と黄色い声。
今日はやけに黄色い声が多い。
『魔女っ子コスプレ可愛い~!』
『素敵~!』
「観客の皆さんの反応分かります! 更識選手のハロウィンコスプレ本当に可愛いですね!」
「ありがとうございます……照れちゃいますね。本日はこんな素敵な衣装にコスプレさせてもらえて嬉しいです」
「今回のイベント盛り上がること間違いなしですね! では、改めて今回の説明を」
司会の人が仕切り直し、イベントは進んでいく。
日本代表、その広告塔として簪がハロウィンイベントにゲスト出演するのが本日の仕事。
しかも、黒の魔女っ子コスプレを着ての出演で反響は凄まじい。コスプレ姿が受けたというのもあるだろうが、簪の人気も当然ある。
「皆さん、まだまだ更識選手に質問したいことあるとは思いますが本日のメインイベントがやってまいりました! お菓子交換の時間です!」
予め抽選で選ばれた人からの質問に答えるコーナーが終了して、メインイベントが始まる。
お菓子交換の時間。とは言っても、本当に交換し合うわけじゃなくイベント側が用意したハロウィンにちなんだお菓子を簪が渡すというもの。
「トリック・オア・トリート。今日は来ていたき嬉しいです」
「わぁ~どうしよう! 更識選手からの手渡しだ! 食べるの勿体な~い!」
「ふふっ……次の方、どうぞトリック・オア・トリート。今日は来ていただけてありがとうございます」
「私こそ、抽選してくださってありがとうございます! あの……ちなみに悪戯してくれないんですか?」
「い、悪戯……えっと、これからも元気に過ごさないと枕元に立ちますよ?」
「ぷっははっ、枕元って……でも、更識選手になら立たれてもいいかも」
「天然だ」
「可愛い」
「あれ……? あ……つ、次の方っ」
簪の天然発言で会場は盛り上がる。
見慣れた光景。簪のファンはイベントがある度にこれを楽しんでいる節がある。
簪本人はこういう仕事にまだまだ全然慣れないとのことだが、無茶ぶりにも何だかんだ対応できるようになったし、フリーズしていた頃が懐かしい。
・
・
・
「ふぅ~……」
風呂から上がり、髪を乾かし終えた簪がソファーに腰かけ一息つく。
身体の疲れは幾分か楽になったみたいだが、まだまだお疲れのようだ。
「身体はお風呂入って楽になったけど……気疲れがね。ああいうイベントはいつになっても慣れない」
人前だから、気を張るだろうしそれはそうか。
それでも、イベントは大成功。
簪の天然発言といい大反響の手ごたえがあった。また、こういうイベントに呼ばれるだろう。
「天然発言……あれでも結構頑張ったつもりなのに……次あるならもっと頑張ろう……うんっ」
慣れないだけで嫌がってない。
むしろ、やる気は充分。
そんな今日一日頑張った簪をしっかり労わなければ。
用意したのが、お茶と。
「ケーキだ」
ハロウィンにちなんでカボチャのケーキ。
あいにく手作りではないが、この時の為に結構いいモノを用意しておいた。
トリックオアトリート。ハッピーハロウィンといったところだ。
「ハロウィン……ハッ、そうだ……!」
何か思いついた顔をしている。
どうかしたのか。
「ちょっと、ね……すぐ戻るっ」
止める間もなく簪はリビングから姿を消した。
自分の部屋に行ったんだろうが、何しに……。
とりあえずケーキ達にはキープフードネットにかけておく。少し待つとリビングの扉が開いた。
「じゃ、じゃ~ん……! トリックオアトリート……! お、お菓子くれなきゃイタズラしちゃうよ……っ!」
との言葉を言う簪の姿は変わって、魔女の衣装。
それはイベント会場で見たものだった。いなくなったと思ったら、着替えてきてたのか。
そう言えば、衣装貰ったんだったな。
「凄く似合ってるから記念にどうぞって」
黒の鍔が広い三角帽子、カボチャがモチーフとなった黒いローブのついたワンピース。
イベントで見た時は周りにたくさんの人がいて、じっくり見ることはなかったが改めて今じっくり見ると、本当に凄く似合っている。
ただ衣装を着ただけでこの映え様。流石だ。というか、驚いた。
「ふふん……私の勝ち、イタズラ成功だね。やった……!」
可愛いポーズのオマケ付き。したり顔で微笑む簪が愛おしくなった。
何故か勝ち誇っているけどもまさかこの衣装をまた着てくるとは思ってなかったから、これは一本取られた。
これはおもてなしに腕を振るわないといけないな。
「ケーキ用意してくれたのに……そのままにしちゃったね。ごめんなさい」
気にすることはない。
簪のその姿はケーキ以上の価値がある。
お茶も淹れ直したし、今から食べればいい事だ。
「そうだね……じゃあ、座って……いただきます。……ん~、美味しい」
隣に座って頬を綻ばす簪を見て心がほっこりする。
いいものが見れたことだし、何かお礼をしないと。
そうだ。あることを思いつき、簪に仕掛けた。
「わっ、ビックリした……お礼? と言う名の仕返しでしょ……負けず嫌いなんだから、もう……あ~ん」
呆れたように笑いながらも口を開け、差し出した一口分のケーキを食べてくれた。
何と言われようともビックリさせられたのだから、イタズラ成功だ。
「負けず嫌い…… でも、自分で食べるよりも美味しいというか、幸せだね。ありがとう」
ああ、まったくだ。
「今日のイベントは大成功でイタズラも成功、美味しいケーキ一緒に食べられて幸せだし……正しくハッピーハロウィンだね……!」
…
活動報告に記事書いたので一目通していただければと思っています