目が覚めた。
まだ残っている眠気に煩わしさを感じながら、枕元に置いたスマホで時間を確認する。
液晶ディスプレイ表示されていた時間は、朝の六時二十分。目覚ましをセットしていた時間より十分早い。何だか損した気分。
寝ていたい気持ちはあるけど、寝なおしても十分も寝れない。さっさと起きてしまおう。どうせ、隣で今も寝てるあの子を起すのに苦労するし。
そう思い私は、隣のベットで寝ているルームメイトをそのままにして、部屋の洗面所へと向かい身支度を始める。
それをしながら、恋人である彼に『おはよう』のラインを送る。すぐには既読はつかない。まあ、いつものこと。時間的にきっと朝のトレーニングしてるはずだから、気にせず身支度を進める。
「あ……」
顔を洗い終え、髪を梳かしていると、遠くで目覚ましが鳴ったのが聞こえた。
そしてすぐさま鳴り止んだ。止まったってことは一応起きはしんたんだろうけど、あの子のことだから二度寝しているはず。今日もか……何だか気が重い。
髪を梳かしおえると私はベットへ戻り、案の定二度寝しているルームメイトの姿を見て、溜息をこぼす。
「はぁ……本音、起きて。起きなさい」
「んんっ~! 後五分~」
返事があって安心したのもつかの間、本音は布団を深く被る。
目覚めてるんだから、無駄なことせずさっさと起きてほしい。めんどくさい。
「何馬鹿なこと言ってるの。早く、起きて。朝ごはん食べれないからっ」
「う~! かんちゃん酷い~」
朝から何言ってるの? 本当馬鹿じゃないの?
何度声をかけても起きようとしない本音から最後布団を巻き上げ、無理やりにでも起して、洗面所のほうへ追いやる。
ここまでが毎朝の流れ。毎度のことながら疲れる。自分から起きてくれることはあるけど、極稀。毎回こうだと慣れすら感じてしまう。嫌だなぁ。
というか、主人の私が従者である本音起しているんだろう。本音、職務怠慢。
自己責任ってことでほっといたら本当はいいのかもしれない。だけど、そんなことしたらこの子、本当に気がすむまで寝続ける。
そうしたら遅刻は間逃れなくて、ルームメイトである私は助けなかったとかで連帯責任とらされてしまう。寮生活とはそういうもの。過去の一度だけそれがあったのはここだけの話。
でも、これで本音は起きてくれたから安心。いや、今日も用心に用心を重ねておこう。
「本音……顔洗いながら、寝ないでね」
「寝ないよ~。かんちゃ~ん、朝から辛辣すぎだよ~」
だったら、毎日自分からちゃんと起きて。
何だか朝から疲れた。時間は六時五十分頃。そろそろ朝ごはんを食べに食堂行かないと。
すると、ラインの通知が来た。そこには彼から。
《ごめん、ランニングしてた。おはよう》
というメッセージが来た。思った通り。
スタンプも何もないたった一言の質素なものだけど、それだけで嬉しい。今日も一日頑張ろうって気持ちになる。
疲れてなんていられない。私もしゃんとしてないと。
「本音……行くよ」
「あ~! 待って~。待って~」
朝の身支度を終え、部屋を出る。
食堂に行くと、多くの寮生が朝食を食べていた。
本音と一緒に食堂のカウンターで朝食を受け取ると、座れそうな適当な席を探しあたりを見渡す。
すると、先に朝食を食べていた彼と織斑を見つけた。運よく同じテーブルの席は空いていたのでそこに向かう。
「おはよう」
「おっはよ~。おりむー、彼氏君」
「……ああ、おはよう。のほほんさん、更識さん」
織斑に続いて、彼も挨拶を返してくれる。
多分、ランニングの汗を流すためにシャワー浴びたのだろう彼はスッキリした様子だが、対象的に織斑は欠伸ばっかりしていてとっても眠たそう。
「おりむーとっても眠たそうだね」
「ああ、ちょっとな」
織斑が言葉を濁す。織斑にはしては珍しい様子。怪しい。隠し事でもしているのだろうか。
私どころか、本音まで疑っていると彼が教えてくれた。
彼曰く、織斑は最近夜遅くまで勉強していて寝不足とのこと。
「ちょっ、おいっ。言うなよ」
慌てた様子で織斑が少し声をあげる。
「なるほど~それでおりむー寝そうなんだね~。おりむーが頑張ってるのは知ってるけど、無理しちゃっダメだよ~?」
「……くっ、はい……」
本音にたしなめられる織斑。
ぐうの音も出ないようで大人しく本音の言葉に頷く。だけど、本音に知られたのが嫌だったみたいで、織斑は彼を睨むが、彼はさらりとその視線を流す。
織斑が最近勉強に力を入れているのは勉強に付き合っている本音からよく聞かされて知っているけど、寝不足になるまでやるなんてらしいといえばらしい。でも、本末転倒。
言われたくないのなら、寝不足にならないようにしなくちゃいけない。寝不足だとしても、ちゃんとしてないと。
そういえば、彼は昔から夜遅くまで勉強をしてたりするみたいだけど、今の織斑みたいに外で眠そうにしている姿はあまり見たことがない。オマケに毎朝早くからランニングとかトレーニングしているみたいだから、無理してないか心配。
「ご馳走様」
手を合わせて私は、そんなことを言う。
朝ごはんを食べ終えると私達は一旦部屋に戻った。
時間は七時三十分頃。この時間から部活に入っている人達は朝錬に励むみたいだけど、私は帰宅部。だからといって、暇なわけじゃない。洗濯物の整理をしたり、部屋を掃除をしたりとやることは朝から沢山。
本音は、生徒会の用事があるから先に出た。いつものことながら申し訳なさそうにしていたけど、本音がいてもかえって邪魔になるだけ。私一人の方が進みがいい。
それを終わらせると、時刻は八時頃。部屋を出る前に最後にもう一度鏡の前で身だしなみを簡単に整え、唇にリップクリームを塗り、部屋の鍵を閉めて、校舎へと登校する。
彼や本音、織斑は一組だけど、私だけ四組。
今更なことだけど、考えてしまうと少し寂しい。それでもクラスでは最近、仲のいい子も出来たから、以前ほど窮屈さとかを感じることはなくなった。
「おはよう」
「おっ、更識さん! おっはよ~! ねぇねぇこれ見て!」
「可愛いね、これ」
「でしょう~」
ファッション雑誌を見せられる。
こんな風に授業と授業の合間の休み時間とかは仲のいい子と話すようにもなった。
始業のチャイムが鳴ると、つい始まってしまった授業は基本的に退屈。ついていけないからとかそんなのじゃない。知っていることや習ったことを何度もやるというのは、やっぱり退屈。それでもサボらず真面目には授業を受ける。そうしてないと余計に退屈感みたいなものが増していく。
そうこうしながら授業を受けていると四度目の終業のチャイムが聞こえた。
ようやくのお昼。開放感からか体を伸ばしているとラインが来た。彼からだ。
彼達も今からお昼を食べに食堂に向かうとのこと。サイフを持つと席を立ち、私も食堂へ向かう。
「あっ! かんちゃ~ん!」
食堂への曲がり角を曲がると、タイミングよく彼と本音達に出会った。
そのまま合流し、いつも通り一緒に昼食を取る。
今日もいい具合に込んでいる食堂の中で四人一緒に座れる席を探していると、ふと遠くの方にいる篠ノ之さんの姿が目に入った。私が名前を知らない子達と仲良さげに昼食を食べている。クラスメイト、それとも部活仲間かな。そういえば、最近はもう篠ノ之さん達が織斑に絡むことも少なくなっていった。それはいいことのはずだし、織斑は本音と付き合っていて、あれからもう何日も経っているからそんなものなのかもしれない。
席を見つけると、私達は昼食を食べ始める。
「というか、あの時お前が」
向かい側に座っている彼と織斑は談笑しながら食べている。
本音と織斑が付き合い始めてから、最近ではこの四人で一緒に食事を取ることが多くなってきた。
本音は楽しそうに聞いていたり、よくに会話に参加したりしている。私は、そんな光景を眺めながら静かに食べる。極稀に会話に参加したりはするけど、話のテンポみたいなのが速くて、のろい私じゃ中々ついていけなくて、聞いていることの方が多い。
というか、この四人での昼食だとやっぱり賑やか。むしろ、騒がしい。でも、嫌いじゃない。こういうのもいいと思う。彼と私とじゃ、こんな風に賑やかな食事にはならないし。
だけど。
「ははっ、そりゃそうだ」
変わらず彼と織斑は楽しげに談笑しながら食べ進めている。
私と食事してる時はとはまた違って、彼も凄く楽しそう。こんな風に彼を楽しくさせている織斑に何と言うか、妬けてしまうというか何というか。
嫉妬……というよりは単純、織斑のことが羨ましいと思う。彼がこんな表情するってことは織斑だから、同性だからってことは分かっているけど、羨ましいものはやっぱり羨ましい。
もっとも、こんなの何か恥ずかしくて誰にも言えない事。
ただ、見つめすぎてしまった。運悪くといったらいいのか分からないけど、彼と目があってしまった。すると彼は、そんな私を見て、フッと柔らかく微笑した。
――ッ! 見透かされた……!
彼は微笑はそうなんだと私にはすぐに分かった。
「……ッ」
とっさに俯く。なるべく静かに。
口に何も入れてなくてよかった。入れてたら、きっと咽ていた。
はぁ~羨ましいからっていくらなんでも見つめすぎた。だから見透かされても仕方ないとは思うけど、何だかとっても恥ずかしい。顔が熱くなるのを感じる。
すると、ニヤニヤした視線を向けてくる
「何したのか知らないけど、彼女だからってあんまり更識さんで遊ぶなよな」
「そうそう~。仲いいのはいいけど、こんなところでイチャイチャしないでよ~」
「してないから……っ!」
今回もまた簪の相手である男性はオリ主です。決して一夏ではありません。
もしかすると、主人公は簪が好きなこれを読んでいる貴方かもしれません。
それでは