簪とのありふれた日常とその周辺   作:シート

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こんな簪とのハロウィンはいかが?

 女子って本当にイベントごとが好きなんだと毎度のことながらしみじみ感じる。

 ついこの間、学園祭があったばかりなのに皆凄い元気だった。わざわざ仮装まで用意して。

 今日が休日。ハロウィンだからなんだろうけど。

 

 楽しかったのは楽しかったが、疲れのほうが大きい。

 ハロウィンに託けたいつも通りのお祭り状態だったからな。

 会う人会う人にお菓子を貪り取られた。本当、多めに用意していてよかった。

 

「お疲れ様」

 

 ベットに腰掛けていると、隣に同じ様に簪が腰をかけてきた。

 同じ言葉を簪に返す。表情には少し疲れが見えた。

 簪も大変だったから当然か。後輩達、凄かったからな……。

 

「うん……そうだね……」

 

 珍しく疲れた様子で何処か遠くのほうを見つめていた。

 例の後輩にイタズラされまくっていた簪。お菓子上げたのにもかかわらず。

 まあ、それはノリみたいなもので、そのおかげでまた簪の可愛いコスプレ姿を見ることが出来たから、俺としてはよかった。

 

「よくないから……今日見たの忘れてね」

 

 難しい相談だが、前向きに検討するということで。

 

「もう……まったく」

 

 そう言って簪は、飽きれた様に微笑んでいた。

 

「で、これ……どうしよう」

 

 簪の手元には、沢山のお菓子が入った紙袋があった。

 後輩からだろう。結構な量もらったんだな。

 見た感じ種類は沢山あるから食べ飽きることはないだろうが、この様子だと食べきるの結構大変。

 

「これでも本音に少し貰ってもらって減ったんだけど……市販だし、よかったらでいいから一緒に食べてくれない……?」

 

 そういうことなら喜んで。

 気持ちは嬉しいが、こうも沢山貰うと後が大変だ。

 ちょろっと貰う程度で済んでよかった。本当、あげる側でよかったとも思う。

 

「それが正解だと思う……男子が羨ましい」

 

 女同士はお菓子交換し合ったりしてたから余計に大変だな。

 そうだ。お菓子と言えば、まだ簪から貰っていない。確か後輩達と手作りのお菓子を交換していた。

 いやしい自覚はあるが、欲しいものは欲しい。

 

「心配しなくてもちゃんと用意してあるから……でも、あの言葉言ってほしいな……」

 

 トリック・オア・トリート。ハロウィンの決まり文句。

 今日飽きるほど聞いたその台詞を簪へと言った。

 

「よろしい。はい……ハッピー・ハロウィン」

 

 満足した様子で簪はお菓子をくれた。

 悪戯をしたい気持ちがないわけではないが、まあそれは追々。

 

 簪からのお菓子は黄色のシフォンケーキだった。

 一番上にはハロウィンらしく、ジャック・オ・ランタンを象ったクッキーがデコレーションされていた。

 味はかぼちゃ味だろうな。せがんどいてアレだが、食べるのがもったいない。

 

「褒めてくれるのは嬉しいけど……食べてほしいな」

 

 いただきますと言って、食べる。

 口の中に広がる甘いかぼちゃ味。

 クッキーもサクサクとしていてビター味がケーキの甘さを押さえてくれて、丁度いい。

 上手い。簪の手作り菓子は度々食べるが、また上手になったように感じる。

 

「本当? えへへ……嬉しいな」

 

 本当に嬉しそうに笑う簪が可愛い。

 惜しみながらも美味しさのあまりあっという間に食べてしまった。

 よかった。これはまた次も楽しみだ。

 

「お粗末さまです。ね……トリック・オア・トリート」

 

 そう言った簪はいつも通りすまし顔をしているが、瞳の奥が悪戯っぽく笑っているのが分かる。

 簪の奴、これはきっと俺がお菓子用意してないと思ってるに違いない。

 甘いな。そんな訳ないだろ。

 

 俺は用意していた手作りのハロウィンクッキーを渡した。

 普段料理なんてしないから、レシピサイトを見よう見真似で作って、結構不恰好になってしまったが、味は悪くないはずだ。

 

「うん……ありがとう。頂きます。あっ……写真、取っていい……?」

 

 頷くと簪はお菓子を写真に収め、食べてくれた。

 

「美味しい……」

 

 そういってくれて安心はした。

 しかしお世辞ではないだろうが、あまり嬉しそうに見えない。

 大人しく食べながら簪はシュンと沈んでいた。

 どうかしたのか……。

 

「何でも、ない……ごめんなさい……」

 

 残念そうな簪の様子を見て、俺の中である一つの仮説にたどり着く。

 まさか……やっぱり、俺がお菓子用意してないと思っていて意地悪するつもりだったけど、お菓子渡されて、ショック受けているとか。

 

「っ!? こっほこっほ!」

 

 正解のようだ。

 耳まで真っ赤にした簪は恥ずかしいのかクッキーを慌てて口の中に詰め込むと、咳き込んでいた。

 渡した水を飲んでもらい落ち着いてもらう。

 

「気づいてたのなら……わざわざ言わなくてもいいのに。いじわる」

 

 そんなこと言われても気づいたのは今だ。

 というか簪の方こそ、悪戯したかったなら最初からそう言えばよかったのに。

 愛する彼女の気持ちを察するのが紳士的なのかもしれないが、言ってくれないと分からない。

 今だってそう。言ってほしい。

 

「あ、うぅっ~……っ、悪戯、させて……」

 

 葛藤の後、簪は恥ずかしそうにぽつりと言った。

 素直が一番。

 

「言わせといてそれ言うんだ……あなたって本当、いじわる」

 

 好きに言ってくれ。

 それより今はどんな悪戯をしてくれるのか楽しみだ。

 

「……胡坐かいて」

 

 胡坐?

 不思議に思いながらも言われたとおり、ベットの上に上がり胡坐をかいた。

 すると簪もベットの上に上がっては、そのまま俺の膝の上へ、向かいあうように座った。

 座っている位置的に自然と膝の上にいる簪に見下ろされ、楽しげな笑みを浮かべながら言われた。

 

「あなたへの悪戯は……生殺し」

 

 また随分なことを弾んだ声色で言う。

 だが、それが悪戯か。軽いな。というか、簪の方が先にギブアップしそうだ。

 

「そ、そんなことない……あなたのほうこそ、明日学校あるんだからギブアップしても我慢してね」

 

 今日はやけに煽ってくる。

 確かに先ほど以上に近くにいるせいか、簪の甘いいい匂いと体の柔らかさを感じて、生殺しと言えなくはないが、これなら余裕で耐えられそうだ。

 勝った。勝負している訳でもないのにそう思ってしまった。

 悪戯したいってか、単純に甘えたいだけじゃないのか。

 

「違……わないけど……違う。……そうだ。これ、オススメされたものなんだけど」

 

 簪が手渡してきたのは包み紙に包まれたチョコレート。

 さっきお菓子食べたばかりなのに、大丈夫か。

 

「別腹だからいいの」

 

 そんなに沢山食べるわけじゃないしまあいいか。

 しかし、このチョコレートの形はビン状。

 これってもしかしすると……。

 

「何してるの。これ、美味しいよ。食べて。……んっ」

 

 怪しんでいるとしびれを切らした様子の簪にチョコを食べさせられた。

 口移しで。

 

「ちゅっ……んちゅっ、あむっ……ちゅっ、れろ、くちゅっ……」

 

 口の中にチョコを含んだ簪は、一回二回と唇に優しくキスをすると、そのまま俺に口の中を開かせ、舌でそっとチョコを渡してきた。

 反射的にというべきなのか、俺も舌でチョコを受け取ると舌と舌が絡みあった。

 チョコを味わいながら、ゆっくりと口で互いにチョコと唾液を渡しあう。

 

「んっ……ちゅ、んうっ、れろ、ちゅ……んんっ……」

 

 溶け出したチョコによって唾液は甘さを帯び、それによって更に興奮したのか、舌を絡ませあいながら、口の中を隅々までまさぐった。チョコは簪を経て官能的に甘く、口の中で溶けて消えたチョコのように脳から解けていく感覚。

 口の中に残ったのはチョコの甘さとほんのりとした酒の味だった。

 

「ふふ、どう悦かった……?」

 

 小首をかしげながら妖艶に微笑み、問いかけてくる。

 悦かった。しかし、これはどう考えてもウィスキーボンボン。

 実際、容器の原材料の覧にはウィスキーと書かれている。お菓子ではあるが、そこそこの度数はある。これ以上は流石に食べさせられない。

 

「食べないよ、もう。一杯になったもの……お腹も心も、ね」

 

 目を細め、嬉しそうに言っていた。

 頬が薄っすらと赤みかがってるように見えなくもない。これは若干にでも酔ってる。

 本気で酔ってるいるわけじゃないから、雰囲気酔いみたいなものだろうが。

 

「ん~~っ ふふふ、うふふふっ、えへへ~……」

 

 抱きついてきて、嬉しそうな声をもらしながら簪は俺の首元へと顔を埋める。

 くすぐったい。抱きしめ返すと、ぎゅっと簪が抱きついてくる。

 向かい合って抱きしめあっている為か、柔らかなふくらみを胸板で真面真面と感じ、鼻先には安らぎを感じさせてくれる簪の匂いが擽る。

 

「ふふ、んん~……癒される……」

 

 うっとりと幸せそうな声で言う簪。見ることは出来ないがきっと表情もそうなのだろう。

 普段ならこのぐらい何ともないはずなのに、反応してしまうものがある。

 キスのせい。はたまた、さっき食べたチョコのせいなのか。

 

 当然、それは簪にも伝わってしまい。

 

「あ……凄いことになってる」

 

 簪は自分の下腹部に当たっているそれを確かめるようにぎゅっと抱きつく。

 勝ったなんて思っていたが、雲行きが怪しくなってきた。

 我慢しなければならないというのは中々辛い。

 

 簪ものことは分かっているが、だからこその行動に出てきた。

 

「んっ……ふっ、ぺろ、ちゅ……」

 

 顔を埋めていた首筋に簪は、抱きながら唇を這わせ、時折後を残すかのように強めに吸い付く。

 背筋に走る痺れた感じに耐えながら、情けないことにどうしても声が漏れてしまう。

 凄まじい煽りの愛撫。流石にこれはやりすぎだ。

 抵抗してようとしたが、ぎゅっと抱きしめられ叶わなかった。

 

「だーめ……たくさん悪戯ちゃうんだから。あなたは、じっとしてる」

 

 耳元で甘く囁いた。

 そうだ。抵抗が許されてない以上、俺からこれ以上のことはできない。

 

 しかし、こんなにも煽られてじっとしてるのは辛い。それもうかなり。

 否応なく性欲が沸き上がるのを分かる。でも、手は出せない。

 脳裏で理性と欲望が鬩ぎ合う。

 

 待てよ、激しくしなければいいんじゃないか。

 明日に響かないようにすれば、簪だってきっと答えてくれるはず。

 そう思い両肩に手をかけた。しかし。

 

「……くぅ……くぅ……」

 

 聞こえてくる幸せそうな簪の寝息。

 葛藤を他所に簪は寝ていらっしゃった。

 寝ている相手に手を出す気は流石に起きない。

 仕方ない。疲れが溜まっていたものな。

 しかし、俺はかなりの生殺し。

 

「んっ……好、き……」

 

 起さないように抱きしめるとそんな寝言の様な言葉が聞こえた。

 

 本当、してやられた。これはとびっきりの悪戯。

 簪にはいいように化かされた。

 これはそんなハロウィンでの一幕。生殺しは何時まで続くのか。

 





今回もまた簪の相手である男性はオリ主です。決して一夏ではありません。
もしかすると、主人公は簪が好きなこれを読んでいる貴方かもしれません

それでは
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