簪とのありふれた日常とその周辺   作:シート

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簪先輩の幸せ、私の幸せ

 私は、更識簪先輩が今でも好き。

 

 先輩の容姿や声とかはもちろん。努力家なところ、勤勉なところ、物静かで控えめな性格。あんなことがあっても変わらず後輩として接してくれるところ何だかんだ面倒見がいいところ。

 後、弄るとかわいい反応をしてくれるところがたまらなく可愛くて大好き。まだまだ好きなところ愛しいところはたくさんある。それこそ、この世にある言葉では語りつくせないほど。

 あれこれ好きなところをあげてみたけど、一言で言い表すのなら先輩はこの上なく素晴らしい女性だっていうこと。

 大好きで愛しい簪先輩。一人の人間として、女性として愛しているけど、私の恋は一度破れてしまった。それ自体もういい。叶わぬ恋には私の中で踏ん切りはもうついている。

 恋に敗れても私の簪先輩への想いは変らない。我ながら未練がましいかなとも思うけど、それはそれだ。

 

「何、ぼーっとしてるの。簪先輩待たせてるんだから、着替え終わったら早く行くよ」

 

「ほら、早く」

 

「もう、待ってよ」

 

 友達達の声でハッとになって、急いでISスーツの着替えを済ませる。そうだ。今私達絶賛遅刻中なんだった。ほんの数分程度だけど。

 今日は簪先輩との週に1~2回ある放課後の訓練日。ちなみに今日はシュミレーターでやるらしい。

 もう何回目にもなるけど簪先輩に訓練をつけてもらうのは私の一週間の楽しみの一つになっている。

 

「あ、更識先輩!」

 

「すみません!」

 

「簪先輩っ、遅くなりました!」

 

 いつもの待ち合わせ場所に行くとそこにはもう私達と同じ様にISスーツに身を包んだ簪先輩がいた。

 元々今日のホームルームが長引いてしまったから遅れた訳なんだけど、それでも先輩を待たせるというのはIS学園では結構マズい。

 一見緩いお嬢様学校なIS学園だけど、上下関係は思った以上にしっかりとある。それに教えてもらう側なんだから、理由があっても遅刻はマズい。

 簪先輩は大丈夫だろうけど、以前今日とは別の子達と大人気の一人であるボーデヴィッヒ先輩の訓練受けた時には今日みたいに遅刻して、それはもうこってり絞られしまった。厳しいって聞いていたけど想像以上だったなあ、アレは。

 

「ん、大丈夫。ホームルーム長引いたんでしょ? ちゃんと前もって連絡くれたんだから気にしなくていいよ」

 

 ホッとひとまず安心した。

 

「ありがとうございます」

 

「さすが更識先輩! 今日も可愛くてお綺麗です!」

 

 そう隣の子が言った。釣られて私は簪先輩を見てしまう。

 

 この子の言う通り、確かに今日も簪先輩は可愛くて綺麗。

 ISスーツを着ているせいか、身体の綺麗なボディラインが出ていて惚れ惚れしてしまう。いつ見ても小柄だけど理想的で羨ましくなるスタイルのよさだ。

 それに一つ見ていて気づいたことがある。心なしか前見た時よりもまた大きくなっている気が。何がと言えば、胸が。

 

「今それ関係ある? というか、そんな調子いいこと言っても手加減しないから」

 

「ちぇ、ダメかあ~」

 

「馬鹿言ってないでほら……って、ジッと見て何……?」

 

「いえ、本当に簪先輩は可愛くて綺麗だなあって」

 

「もう……貴女まで……。はいはい、分かったから早く訓練始めるよ」

 

 本心を言ったのにあっさりスルーされてしまった。

 残念。まあ、いつものことだ。今更こんなことで落ち込んでいられない。気にせずアタックあるのみ。

 

 簪先輩とシュミレータールームへ向かいシュミレーターを起動させ私達は訓練をつけてもらう。

 基本的には簪先輩と私達三人一人一人、先輩と模擬戦を行い、悪いところを指摘してもらったり、いいところを更によくなるようにアドバイスしてもらいながらあれこれ実践していくといった感じ。

 簪先輩の説明は時々難しすぎて理解できない時も多々あるけど、それでもちゃんと聞けば、もうちょっと噛み砕いて説明してくれる。

 あんまり人に教えるのは得意じゃないみたいで、教え方に苦労して悩む先輩もまたいい。

 

「お疲れ様」

 

「うぅ、お疲れ様です。あ~また負けた!」

 

「ドンマイっ」

 

 たった今模擬戦を終えたばかりで落ち込む私は、友達に励ましてもらう。

 自分は結構いい線いっていたと思ったけど、結局今回も負けてしまった。自信あっただけに結構くやしい。

 シュミレーターだから量産機しかお互い使ってないのにこうも勝てないとは流石は代表候補生。 

 もう勝率なんてないに等しい。一番削ってる私でもまぐれで一回勝てるかどうか。まあ何度やっても得るものが多いし、楽しい。貰えるアドバイスも確かだからいつまでも凹んでられない。

 

 模擬戦して思うのはやっぱり簪先輩は強い。私達1年生からしたら、そりゃもう反則級の強さ。

 日本の代表候補生だから当たり前なんだろうけど。他の代表候補生、デュノア先輩や篠ノ乃先輩達だって強いし。そう考えるとやっぱり、代表候補生だらけの先輩達の学年はいろいろとおかしい。

 学園最強であるあの更識楯無先輩の妹さんってのも関係あるのかも。聞いた話だと元生徒会長、今まで一度も負けたことないらしい。う~ん、姉妹揃って可愛くて美人で強いだなんて本当反則だ。

 

「じゃあ……次」

 

「はいっ!」

 

 今度は私を励ましてくれた子とは別のもう一人友達が模擬戦を始める。

 といった感じでその後も私達は簪先輩にフルボッコにされながらも、予定時間たっぷりと指導してもらった。

 

「はい、じゃあ今日はここまで。皆、お疲れ様」

 

「お疲れ様でした! ありがとうございました!」

 

 私達三人の声が重なる。

 

「今日もよかったよ、皆。特に貴女、どんどんよくなっていってる」

 

「そうですか? えへへっ、ありがとうございます!」

 

「うわっ、嬉しそうな顔しちゃって」

 

「デレデレ。更識先輩、本当好きだねぇ」

 

 うるさいな。いいじゃない。嬉しいものは嬉しいんだから。

 でも、ヤッバい。本当に嬉しい。好きな人に頑張りを褒められるって凄い力がある。幸せ。

 確かに自分でも良くなってる感じあるし、先生にもよく褒められる。簪先輩様様だ。もっと褒めて貰える様に、もっともっと頑張ろう!

 嬉しすぎてたまらなくなって私は簪先輩抱きついた。

 

「簪先輩、大好きです!」

 

「ちょっ、離れて……! 訓練終わって汗臭いいんだから……っ」

 

「そんなことないです! いい匂いです!」

 

 気にしなくてもさっきシャワー浴びたんだから大丈夫なのに。いや、簪先輩の汗の匂いが流れたと思うとそれはそれとちょっとおしいかもしれない。

 でも、本当に制服の上からでもいい匂い。オマケに凄く柔らかくて暖かくていい感じ。

 私は今前から抱きついているから、胸に顔を埋めているけど幸せ。正直、ちょっぴりだけムラムラくる。

 というか、やっぱり胸大きくなってる。今確かめているから間違いない。恋人に揉まれると大きくなるって迷信じゃなかったんだ。やるな、彼氏さん。

 

「あ~! ズルい! 私も更識先輩ハグする~!」

 

「私も~!」

 

「貴女達まで……! ひゃっ! やぁっ、む、胸はダメっ」

 

 困った様子の簪先輩が可愛い。恥ずかしいのか頬が赤いのが余計にまた。

 こうやって弄ると可愛いいい反応してくれるから大好き。食べちゃいたいぐらいだ。どういう意味ではは言うまでもない。

 もっとも本気で怒られるからさすがにしないけど、私達が簪先輩に四方八方から抱きついて反応を楽しんでいる時だった。

 聞き慣れたふわふわした声が聞こえてきた。

 

「かんちゃん、モテモテだね~」

 

「ほ、本音……助けて」

 

 現れたのは布仏先輩。

 今日も一回り大きいダボダボになっている制服着て、ゆるふわな雰囲気を放っている。見ていると不思議とのほほんとしてしまう人だ。

 こんな人だけど、意外と抜け目ない。なんせあの織斑先輩の彼女なのだから。

 

「え~楽しいそうじゃん、かんちゃん」

 

「馬鹿なの? 馬鹿だったね……本音、私が困ってるの見て分からないほど馬鹿だったね」

 

「かんちゃん、ひどーいよ~! ……ごめんなさい、睨まないで。えっと、かんちゃん苦しそうだから離してあげて?」

 

「仕方ないですね」

 

 充分簪先輩を堪能したことだし、布仏先輩の言葉通り私達は離れた。

 

「ほっ……助かった」

 

 簪先輩がホッと胸を撫で降ろしていた。

 

「改めて、皆やっほー。皆は今ご飯待ち~?」

 

「はい、そうです」

 

 今日の訓練を終えた私達は夜ご飯までまだ時間がある今、それまでの時間を潰そうとここラウジでお喋りしていた。

 

「私も混ぜてもらっていい~?」

 

「はい、もちろん」

 

「どうぞ! どうぞ!」

 

 布仏先輩もお喋りに参加してもらう。

 布仏先輩も好きな先輩の一人だ。このゆるふわな雰囲気はのほほんとして一緒にいるだけで落ち着く。

 何より、布仏先輩は簪先輩の幼馴染。だからよく簪先輩を弄るネタをくれて、一緒になって簪先輩を弄ってくれるから一緒にいて楽しい。

 

「のほほん先輩は今日、織斑先輩と一緒じゃないですね」

 

「珍しい。いつもあんなに一緒でラブラブなのに」

 

「そ、そうかな~? そんなことないと思うんだけど……」

 

「またまた~、私昨日の放課後見ましたよ。のほほん先輩と織斑先輩が学校の外にあるベンチでイチャついてるの」

 

「あっはは、見られちゃったんだ。恥ずかしいな~」

 

 布仏先輩が顔を赤くして照れる。

 私も結構な頻度で二人がイチャついてるのはよく見かける。本人達は一応周りに配慮してるみたいだけど、あの甘い雰囲気かもし出していたら意味ない。

 最初は布仏先輩と織斑先輩が付き合ってるのはかなり驚いた。こういったら悪いけど、織斑先輩はいかにもハーレム作りそうな人なのに普通のお付き合いしてるってこともそうだけど、学園に男の人がいるってことが驚きだった。それは簪先輩の彼氏さんもそう。

 最初は男の人ってだけで怖かったし、正直IS学園に男の人がいるってのはあまりいい気はしなかった。でも、話せばいい人達でかなり紳士的だから安心できた。だから今では男の人二人がいるのは気にならないし、布仏先輩と織斑先輩がイチャついてる光景は最早学園名物だ。

 

 でも、この話はしたらいけなかったみたい。

 

「へぇ~……本音、また織斑と外でイチャついてたんだ。だから、仕事中途半端だったんだ。外でもちゃんと二人仕事してると思ったのに……ふぅ~ん、そう。私達が生徒会の仕事してる時にいいご身分だね。関心する」

 

 凄い簪先輩が布仏先輩見てる。鋭い目つきだ。

 

「えっと……それはその~何と言うか~ごめんなさ~い」

 

「はぁ~……イチャつくのはどうでもいいけど、副会長なんだから仕事だけはちゃんとして」

 

「はい、すみません。だから、かんちゃんっ睨まないで~」

 

 飽きれる簪先輩と反省する布仏先輩。

 何だか幼馴染二人の力関係を垣間見た。

 

「そういう簪先輩は彼氏さんと一緒じゃなくていいんですか?」

 

「いいよ、別に。やることやるって言ってたし」

 

「今日はね~おりむー(一夏)と第8アリーナで先までずっと実機の模擬戦してたよ~」

 

「また、してたんだ。本当好きだね、模擬戦」

 

「趣味みたいなものだからね~二人とも。彼氏君にいたってはマニアの域だし」

 

 飽きれるのを通り越したかのように簪先輩は関心したようにそう言った。

 簪先輩は本当に気にしてない様子。今更なことだけど、外野の身だからこそ気になるものは気になる。いいんだろうか、それで。

 というか。

 

「布仏先輩と簪先輩カップルって本当対照的ですよね」

 

「そうかな」

 

「そうですよ。更識先輩と先輩一緒にいるところ学校じゃあんまり見ないですし」

 

「本音達がベッタリしすぎなだけ。付き合ってるからっていつも一緒じゃないとってことはないんだから」

 

「よ、余裕ある大人の発言だ。くっ、これがリア充の余裕か」

 

 凹む友達を尻目に、私はそれもそうかと思った。

 布仏先輩と織斑先輩が二人一緒にいてイチャついている姿をよく見るから、余計そう思うのかもしれない。

 一方で確かに簪先輩と彼氏さんが学校で二人一緒にいるところはあんまり見ない。まあ、お昼は毎日一緒みたいで食堂で一緒に食べているのはよく見かけるけど、大体はお昼ぐらいだけだ。

 布仏先輩と織斑先輩達みたいにイチャついてる姿は見たことない。

 何というか二人の距離感は仲いい男女の友達みたいに感じる。だからって今更、二人の仲を疑うようなことはもうしない。

 あんな聞いてるこっちの方が恥ずかしくなるようなこと目の前で言われたら流石にね。

 

 やっぱり、周りに気を使ってるんだろう。布仏先輩達以上に。

 私達が別になんとも思わなくても、織斑先輩や彼氏さんのことをよく思わない人もまだ当然少なからずいるし。

 何より、あの先輩くっそ生真面目な人だからなあ……まあ、先輩のあの生真面目さが私達も好きで慕っているわけだけど。

 何だかんだ布仏先輩達以上にいろいろ自分達でも周りのことを気にしてるんだろう。それも全て先輩が簪先輩を想うからこそだと分かるから、彼氏さんにはちょっぴり妬けちゃう。本当愛されてるなあ、簪先輩。

 

 そこでふと私の頭に気になることが思いついた。

 

「そうだ、簪先輩」

 

「ん、何……?」

 

「簪先輩は彼氏さんのどんなところが好きなんですか?」

 

「へ?」

 

 きょとんとした顔する簪先輩。

 

「だから、彼氏さんのどこが好きなんですか?」

 

「き、聞こえてるから。言っておくけど言わないから……貴女達が期待するようなこと、私言えないし。というか、何で急に」

 

「丁度今彼氏さんの話もしてたじゃないですか。ほら、皆も布仏先輩も聞きたいよね」

 

「聞きたーい!」

 

「気になる~!」

 

「かんちゃん、そういう話してくれないから楽しみ~」

 

「えっ? ちょっと……い、言わないからね……!」

 

そんなこを言っているけど、簪先輩が迷っているのが見え見え。

簪先輩はお堅く見えて何だかんだで押しに弱い。言わなきゃいけない雰囲気と場所さえ作れば、後は意外と押しきれる。後もう一押し。

 

「お願いします、簪先輩」

 

「あ、うぅぅ……分かった。ちょっとだけ、だからね……他の人に言わないでよ」

 

 キタコレ勝った。

 しぶしぶといった様子だけど簪先輩が話してくれるのを皆今か今かと待つ。

 

「その、ね……」

 

「うんっうんっ!」

 

「正直分からない……ううん、どこがなんて理由はないよ……」

 

 その言葉に私達は思わず、ズッコけそうになった。

 何それ。勝手に期待していたとは言え、凄い肩透かしされた気分。

 

「えぇ~」

 

「先輩、そんなもったいぶらないでくださいよ~!」

 

「別にもったいぶってる訳じゃない。そりゃ誠実だとか努力家だとかは上げられるけど、それは好きなところっていうよりかは彼の素敵なところであって、好きなところとは少し違う気がして……」

 

「そういうものなんですか?」

 

「私はそう思う。それに大好きな彼のどこが好きかなんてたった何文字の言葉には出来ないし、私自身そんな簡単に言えるような言葉にはしたくない。どんな彼であってもどんなところがって理由が必要がないほど、簡単には言葉に出来ないほど私は彼のことがただ好きでしかない。いいところも悪いところも全部好きだから一緒にいる。それだけ」

 

 はっきりと簪先輩は言ってのけた。

 

「う、ぉっ……」

 

 最初に誰が言ったのか。誰でないだろうし、話を聞いた全員が言ったのかもしれない。

 本当何それ。

 

「ほら、貴女達が期待するようなことじゃなかったでしょ……というか、何で聞いた皆の方が恥かしがってるの。本音まで顔赤くして」

 

「いや~かんちゃんって本当に凄いよね」

 

「更識先輩本当に凄すぎます」

 

「えっ……え? 何が?」

 

 自分がどんだけのことを言ったのか分かってない簪先輩は不思議そうにしてる。

 そりゃこんな高威力の惚気をされたら、皆赤くもなる。

 普段惚気ない人が惚気るとこんなに凄いんだ……油断してた。こうシンプルだど好きなところたくさん言われるよりもくるものがある。おかげで何か背中がむず痒い。

 これが噂に聞いていた聞いてるこっちのほうが恥ずかしくなるって奴か……どうしよう、聞いておいて何だけど本当に凄い恥ずかしい。耳まで熱い。

 

 それでも、こうやって聞けてよかった。

 簪先輩が彼氏さんのこと本当に好きなのがこれでもかと伝わってくる。疑いようなんてない。簪先輩本当に彼氏さんのこと愛してるんだね。

 失恋した身だから話聞いて辛いものがないと言えば嘘になるけど、これはいいことを聞けた。

 

「ぁ……」

 

 私はあることに気づいた。

 どうやら他の皆も気づいたらしい。

 存在感あるから気づいて当然か。というか、あちらさんはいろいろと我慢の限界みたいだ。

 

「? 皆どうした……の……」

 

 後ろの入り口の方へと振り返った簪先輩が固まった。そりゃもう見事に。

 流石、簪先輩。どんな時でもいい反応してくれる。

 

「ぶっはっ! よかったなぁ、お前。更識さんにめちゃくちゃ愛されてるじゃんか」

 

「あっ、おりむー(一夏)達だ」

 

 後ろには気持ちいいぐらいニヤニヤしている織斑先輩と、そんな織斑先輩に肩を抱かれ、顔を赤くして恥ずかしそうに口元を手で隠して、そっぽを向く彼氏さんがいた。

 

 私達の誰かが呼んだってことはないはずだから、偶然来たんだろう。それにしたら凄い偶然だけど。

 ってか、簪先輩ってやっぱり弄られる星の元に生まれているんだなあ。

 だって織斑先輩達の様子からして、さっきの話聞いていたはずだから。どころから聞いたんだろう。気になるところだ。

 

「お~い、かんちゃ~ん! しっかりー」

 

「……ハッ!」

 

 よほどショックだった簪先輩は布仏先輩呼ばれて長いフリーズからようやく復帰した。

 そして簪先輩が震える声で言った。

 

「……なんで二人が……?」

 

「ほら、もう夕飯だろ? だから、こいつと二人でのほほんさん(本音)達迎えに行こうってことになったんだけどさ」

 

 まだニヤニヤしている織斑先輩。気持ちはよく分かる。私達も楽しくなってきてる。

 ニヤニヤしてても織斑先輩は絵になってる辺り、この人本当にイケメンだ。

 

 彼氏さんはというと申し訳なさそうにしてるし、弄られたくない簪先輩は冷静でいようと必死に努めているのが、また返っておもしろくてとっても可愛い。

 

「……そう。えっと……さっきの話聞いてたよね……あっ、やっぱり。ううん、気にしてない大丈夫、これは事故だから、そう事故。ち、ちなみに……どの辺りから? あ……ほとんど最初から。……そう」

 

 言葉こそは冷静だけど、凄いショック受けて沈んでいるのが誰の目から見ても明らか。

 というか、恥ずかしいようで簪先輩は顔を真っ赤にして涙目だった。やっばい、可愛い。どうしよう。

 

 ちなみに先輩達がきいていたのは私達が簪先輩に彼氏さんの何処が好きか聞いた辺りからだった。大事な部分を全部聞いてる。

 幸い彼氏さんは満更どころか、無愛想装っていても嬉しそうなのがバレバレだから、これは怪我の功名的なものじゃないだろうか。

 

「ごめんなさい……人前でこんな。……嬉しい? 本当に?」

 

 不安そうに彼氏さんへ問いかける簪先輩に彼氏さんはたった一言本当だと言う。

 

「よかった」

 

 たった一言だけでさっきまでショックを受けて沈んでいたことなんてなかったかのように、簪先輩は幸せそうな笑顔を顔いっぱいに咲かせていた。

 

「簪先輩、よかったですね」

 

「うんっ」

 

 私にもその幸せそうな笑みを向けてくれる。

 

 やっぱり、胸が痛い。

 私ではこんな幸せそうに簪先輩には笑ってもらえないとはっきり分かってしまう。

 だけど、大好きな先輩が私と一緒でいるよりもこんな幸せにいてくれるのなら、ずっとそのままでいてほしい。

 身勝手だとしても、私の一番の幸せはこうして簪先輩が幸せでいくれることなのだから。

 

 簪先輩の笑顔を見ながら私は一人心の隅でそっと願う。

 いつまでもお慕いしています、簪先輩。いつまでも先輩の幸せが続きますように、と。

 




大分遅くなってしまいましたが、さとッチ様からの
『簪と本音が、彼氏のいないところで二人して自分の彼氏のいいところ自慢を繰り広げ
実はそれを、一夏とおり主(簪彼)が聞いてしまい、二人の興奮が高まり・・・。みたいな話』
にリクエストお答えする形で、後輩というモブ視点から見た二人の関係などについてのお話をお送りしました。
一夏と本音達のをやると話がそれたので今回は簪とあなただけとなりましたご了承を。

この後輩ちゃんについては『私とあなたの百合色恋受難』『簪との百合色恋受難』に登場した百合後輩と同じ子です。


今回もまた簪の相手である男性はオリ主です。決して一夏ではありません。
もしかすると、主人公は簪が好きなこれを読んでいる貴方かもしれません

それでは
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