簪とのありふれた日常とその周辺   作:シート

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冬にあった簪とのありふれたやりとり。その詰め合わせ2

簪とゆたんぽ使って足が絡み合う話……

 

「何してるの……?」

 

 夜、寝る前。

 一足先に歯磨きを終えベットの上であることをしていると、遅れて歯磨きから戻った簪に声をかけられた。

 やっていたのは布団の中に暖房器具の用意。

 

「それ、なんだっだけ?」

 

 簪が指したのは電機あんか。

 コードレスタイプの充電式だ。

 これを中に用意していた。

 

「ああ……それ。足元暖かくなる奴だよね」

 

 その通り。

 これは寝るとき足元に置くと足元から暖めてくれる優れもの。

 変らず寒い夜が続くのこの頃。上は布団を被って二人一緒に寝てるから寒くはないが、足元は冷えて困っていた。

 特に簪は寝ていると冷えるようで辛そうにしていることが多い。だから、用意した。

 後辛いと言えば、寝てる時にその冷えた足をこちらの足に絡めてくるからビックリする。

 

「あ、あれはわざとじゃないからっ……寒いし、あなた足先まで小さな子供みたいにぽかぽか暖かいから仕方ないの」

 

 責めているわけではない。

 無意識だろうことは分かっている。ただ寝てる時にあんなことされると驚くと言う話。

 けれど、それも今夜まで。今夜からはこの電気あんかがあるから寒くはなくなるはずだ。

 

簪を布団の中へと手招き、早速使い心地を確かめてもらう。

 

「あったかい……いいね、これ。ありがとう、私の為に用意してくれて」

 

 頬を綻ばして簪は気に入ってくれた様で何より。

 今から朝起きる時まで暖かさは続くということなのでこれでぐっすり眠れる。

 後は寝るだけ。

 明日の予定と目覚ましの確認をし、布団を被ると部屋の明かりを消けす。

 温かい状態で足元に置いといたからか、足元だけではなく布団の中全体が暖かい。

 これは丁度いい。

 

「ぽかぽか~……」

 

 簪がうとうとしながら言ったのが分かると、釣られるようにうとうとしてきた。

 もう寝よう。眠気に引きづられる様に眠る。

 はずだったのだが……。

 

「ん、どうかした……?」

 

 しれっとしてやがる。

 こっちは暖かかった足先に感じたことのあるぞわっとした違和感を感じ、思わず変な声が出てしまったのに。

 

「ふふっ、だって……ひゃぁって……ふふ」

 

 してやったりと楽しげに笑っているが誰のせいでこうなったと。

 というか何でまた足を絡めてくる。

 

「特に理由はないけど……して言うなら、人肌が恋しい……から?」

 

 聞かれても困る。

 今夜はもう暖まって簪の足先はいつもみたいに冷たくはないが、それでも触れた簪の足はすべすべとしている。

 だからこうしているとこれまでは冷たさが先にきて特に意識しなかったが、今は簪の足の感触を意識して眠気がしだいにおいやられ何処か落ち着かない。

 寝れなくなったらどうしてくれるんだ。

 

「大丈夫……こうしたらぐっすり眠れる」

 

 簪は俺の頭を抱くようにぎゅっと俺を自分の胸元へと抱き寄せた。

 目の前には柔らかな感触。

 これだと余計に眠れなくなるだろ。

 

「気にしない気にしない……よしよし」

 

 抱きしめられながら頭を撫でられる始末。

 もちろん足は絡み合ったまま。

 奇妙な状態ではあるものの不思議なことにだんだんとまた眠くなってきた。

 鼻先をくすぐる簪の甘くやさしい匂いに包まれ、撫でられているのがそうさせてくるのだろう。

 冬の寒さなんて感じさせない暖かさ。

 おやすみ簪。

 

「うん……おやすみ」

 

 

 

簪と動物タワーバトルする話。

勝ったほうが一つ言うことを聞くということに。

 

「凄い風……」

 

 簪が見つめる窓の外は窓を揺らすほどの風が吹いている。

 風の強さもそうだが、風が冷たすぎて出かけられたものではない。

 出かけようと思っていたが残念だが今日は家で大人しくするしかない。

 

「そうなるね……それはいいんだけど……さっきから何してるの……?」

 

 何とは手元で弄っているスマホのことだろう。

 暇を持て余して最近ハマってるゲームをしている最中。

 

「どんなの……?」

 

 簪は隣に腰を降ろしてスマホを覗き込んできた。

 やっているのはどうぶつを縦に積み上げ、枠外に落ちたほうが負けという対戦パズルゲーム。

 最近、話題になっている。

 

「そうだなんだ……おもしろい……?」

 

 最初は疑問だったが、やってみればこれが結構おもしろい。

 暇つぶしには丁度いい。

 

「へぇ~……」

 

 返事こそは気のないものだが、気になるらしく画面をじっと見ている。

 何なら一緒にやってみるか。

 

「できるの……?」

 

 このゲームアプリをダウンロードしてプライベート対戦にすれば二人一緒にできる。

 

「分かった」

 

 簪はアプリをダウンロードし、それが終るとアプリを起動した。

 そして対戦部屋へと簪に入ってもらうと実際にプレーしてもらう。

 

「こういう感じなんだ……内容自体は簡単。暇つぶしにはよさそう……おもしろい」

 

 ただひたすらどうぶつを積み上げていくだけのゲームだからそこまで操作が難しいこともない。

 そういうところも暇つぶしにやるには丁度いい。

 何戦かやってみたからもう簪もある程度は慣れただろう。

 

「うん……これならちゃんと対戦できそう」

 

 なら一度、ちゃんと対戦してみるか。

 

「いいよ……私も大分慣れたから。あっそうだ、罰ゲームアリにしよ。とりあえず3回」

 

 別に構わないがいいんだろうか。

 俺はやりこんでるというほどやっているわけではないが、簪は慣れたとはいえまだ始めたばかり。

 結果は目に見えている気もしなくはない。

 手加減、ハンデしてあげたほうがいいのだろうか。

 

「一つ言っておくけど手抜いたらダメ。本気で来て」

 

 釘を指されてしまった。というより、簪の変なスイッチ入れてしまったような。

 とりあえずやってみて、いい感じの対戦になるようにしよう。

 手を抜いているわけではないからセーフ。……のはず。

 そんなことを考えながらゲームを始めた。

 

「むぅ……」

 

 まず1戦目は難なく勝利。

 

「むむむっ……!」

 

 2戦目も勝利。

 

「……」

 

 結局3戦目全部勝ってしまった。

 別に簪が弱かったってこともなかったのだが本当にストレート勝ちしてしまってのは流石にマズかった。

 簪は唸り声を上げることもなく無言だ。

 そして悔しそうな顔をしている。これは簪の負けず嫌いに火をつけてしまったかもしれない。

 

「後……」

 

 簪が何かを言いかける。

 

「後一戦だけ相手して」

 

 火は確かについていた。

 まあこのまま終るのもどうかと思っていたから丁度よかった。

 最後の一戦を開始した。

 よほど悔しかったのか対戦中、簪は終始無言で集中しきっていた。本気も本気だ。

 そして結果の方は。

 

「あ……勝った」

 

 簪の勝ちだった。

 もちろん手加減なんてしてない。

 普通にやって普通に負けた。

 簪、大分上手くなった。

 

「やったっ。勝った勝ったっ」

 

 よほど嬉しかったのか珍しくはしゃいでいる。凄く嬉しそうな顔してる

 これで簪も気は済んだだろう。

 何だかんだ野良とやるよりも楽しかった。

 

「負けてた時は凄い悔しいけど勝つともっと楽しいね。じゃあ、罰ゲーム」

 

 簪が俺にするみたいな言い方しているが勝ち数が多いのはこちらのほうだ。

 するなら俺の方じゃないか。

 

「い、いいでしょ。3回勝負とは言ったけど勝ち数が多い方が勝ちなんか言ってないもん」

 

 また横暴なことを言ってくる。

 

「だったら、それにちょいちょい私の知らないテクニック使ってきたのはいいわけ?」

 

 気づかれていた。

 いつもの癖でやっていだけでわざとやっていたわけじゃないが、今思うと始めたばかり相手にやったのはよくなかった。

 

「そうそう。だから、あなたに罰ゲーム」

 

 嬉しそうに言われると困る。

 楽しげに目を輝かせられても困る。

 仕方ない。そこまでの罰ゲームはされないだろうし今回は簪の勝ちということにしておこう。

 

「ありがとう。じゃあ、罰ゲームはね――」

 

 と罰ゲームでその後も盛り上がった。

 風の強い寒い日は家で簪とゲームでもして過すに限る。

 

 

 

「ふぅ……」

 

 一息ついた簪が外にある休憩所の長椅子に腰を下ろす。

 お疲れ様と労う。

 

「ありがとう。あなたもお疲れ様。やっぱ、今年も凄いもてなされちゃったね」

 

 二人そろって苦笑いする。

 年明けの正月。今日、俺達は更識家で行われる恒例の年始行事に参加していた。

 内容は例年通り更識家本邸に新年の挨拶をしに訪れる地元の有力者や政治家。果ては新年の挨拶の為だけに来た世界的な有名人や大物の接待。

 毎年参加して今年でもう数年目。慣れはしたが肩の凝る由緒正しい行事。

 失礼のない対応をしなければならないが疲れる。

 

 一段落して休んでいたら今度はこっちから挨拶周り。

 更識家当主。簪の姉であり、今では俺の義姉でもある更識さんの言いつけであれこれ近所を周り、最後にやって来たのがここの大社。

 地元で一番大きい。というより、日本でも有名な神社で更識家とは古くから続く深い付き合い。

 実際挨拶しにいったらここの神主様じきじきに出迎えられ、凄いもてなされた。

 それがたった今お開きになって堅苦しいお役目から解放されたところである。

 今頃、同じ様に挨拶周りしている一夏と本音も同じ感じなんだろうな。

 

「だね……っと、よし。もう大丈夫。動ける」

 

 そう言った簪に手を差し伸べ手を掴むと簪は立ち上がった。

 マシににはなっただろうが疲れが抜けきらなくてもいつまでもここでこうしているのも何だ。

 役目も果たしたから家に帰るか。

 

「それもいいけど……あのね、折角だからここで初詣、お参りしてから帰らない? ほら、神主様もぜひと言っていたし」

 

 それもそうだな。

 折角だ。今簪は水色の帯に黄色の布地の晴れ着。俺は黒のスーツ。と、折角初詣らしい正月の正装に身を包んでいるのだから。

 

「うんっ……行こっ」

 

 嬉しそうに歩き出す簪と共に参拝へと向かう。

 夕方ともなれば初詣が混むピークを過ぎているからか人は少ない。

 スムーズに賽銭箱前まで行けた。

 

「……」

 

 お互い小銭を賽銭箱へ入れて手を合わせ拝む。

 俺達は神社にお参りした時、神様にお願いするのではなく神様に約束するのが恒例。

 言うなれば、一年の抱負みたいなもの。

 

「今年はなんて神様に約束したの?」

 

 いつも通り。言うほどでもないというか、簪は何約束するか知ってるだろ。

 

「知ってる。でも、あなたの口からちゃんと聞きたいの」

 

 本当にいつもと変らない。

 去年も幸せないい一年だったので今年も変らず、去年よりももっと幸せでいい一年にするので見守ってて下さい。そういうの。

 言葉にするといつもと変らないが、約束への思いは去年よりも強い。

 そういう簪はどうなんだろうか。

 

「私も大体そんな感じ。去年よりも今年は楽しくて素敵な一年にする。そしてね、大晦日に今年は去年よりも幸せだったなぁってあなたに言わせるのが目標」

 

 なんだそれ。

 大晦日って妙に具体的なのがまたおもしろい。

 

「あ~笑った~……絶対心の底から言わせてやるんだから」

 

 それはそれで楽しみにしておこう。

 とまあ、そんなやり取りをしつつ今度は社務所に向かう。

 目的はお守りとかを買う為。

 この大社は縁結びの神様として有名で、現金な話にはなるが折角だからそれに肖っておこうといった感じだ。

 

「やっぱ女性に人気だね……」

 

 簪が感心するのも無理ないほど夕方でも買いに来ている女性の比率は高い。

 やはり、恋愛成就を期待してだろう。

 ただそれだけではなくて、仕事の縁や友人、家族の縁といった様々な縁を取り持ってくれるとのこと。

 

「ああ、神主様が毎年挨拶の度に言って下さるよね。それ」

 

 おかげでこうしてすぐ思い出せた。

 実際売っているものも恋愛成就的なものが多いが、それ意外のものもちゃんとある。

 定番の破魔矢と健康守は外せないとして他は……。

 

「んーどれがいいかな……あ、これ……」

 

 簪が何か見つけたらしい。

 

「こ、これいい……?」

 

 手に取っていたのはお守りに書かれてあったのは子授守という文字。

 意味は言葉の通り。

 そういうこと……でいいんだろうか

 

「……!」

 

 コクコクと言葉なく簪は頷く。

 

「お父様やお姉ちゃんとか最近よく急かされるでしょっ? それにほらっ、生活の方も落ち着いてきたからそろそろ……ね」

 

 それはそうだな。

 必要だ。だったら買うべきだ。

 

「うんっ。じゃあすみませんっ、これお願いしますっ」

 

 お守りを買う簪は何処か楽しそうだった。

 





今回もまた簪の相手である男性はオリ主です。決して一夏ではありません。
もしかすると、主人公は簪が好きなこれを読んでいる貴方かもしれません

それでは
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