簪とのありふれた日常とその周辺   作:シート

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※注意
・今回タイトル通り簪本人は出ません(名前や話には出てきますが
・簪シリーズと同様の主人公と一夏のとある話題について話すお話です。
・いつも「」付けで話してない男主が普通に話しています。悪しからず。
・一読して下さり、読んで下さった方が今回の話の内容について何か考えて下さったら幸いです。


簪はいない夜。野郎二人の会話

それはある日の出来。

 

「ただいま」

 

「おう、お帰り」

 

夜、外出から寮の自分の部屋へと帰って来るとルームメイトの一夏がそんな言葉と同時に出迎えてくれ。

 

「また、更識さんと会ってたのか」

 

「ん? まあ、な」

 

事実なので肯定の返事をする。

 

今日も今日とて夜、外出禁止時間まで彼女である簪と寮のラウンジであって他愛のない話をしていた。

本当はもっと一緒にいたいとお互いに思ってはいるが、自分達は寮生活をしている身。

規則は守らなければいけないし、仮に破ってしまえば織斑先生のきつい説教が待っているのは目に見えている。

まあ、明日も会えるんだ。こういう我慢も恋の醍醐味なんだろうと自分を言い聞かせ納得させるしかな。

 

それに一夏に対しても簪とのことは今更隠す必要はない。

自分と簪が付き合っていることは一夏はちゃんと知ってるからだ。

 

「そっか……な、なあ」

 

「何?」

 

「いやさ……何ていうか、聞きたいことがあるんだけど……いいか?」

 

明日の学校の用意をしていると一夏が問いかけてきた。

いつになく遠慮気味だ。遠慮気味というよりかは、戸惑っているといったほうが正しい気がする。

どうしたんだろうか? いつもなら遠慮なんて知らないかのように遠慮なしに物を言ってくる一夏なのに。

 

「お前さ、更識さんと付き合っているだろう?」

 

「そうだけど、それが?」

 

「ぶっちゃけ、女子と付き合うっていうか……恋人がいるってどんな感じなんだ?」

 

なん……だと……!?

 

一夏の質問を聞いて、言葉を失ってしまう。

聞き間違いかと思ったがそれはなさそうだ。

まさか、あの一夏がこんなことを聞いてくるなんて。

 

「変なもの食べた? というか、お前女子とかそういうことに興味あったんだな」

 

「食ってねぇよ! 失礼な奴だな。俺だって高一の男子だぞ。女子やそういうことに興味あるに決まってるんだろう」

 

そんなことを一夏から初めて聞いた。

驚きが収まらない。

だけど一夏もやっぱり、年頃の男子ってことか。

 

でもよく考えれば、恋愛は兎も角、一夏が女子に興味がないなんてことはなかったか。

唐変木とか鈍感とか散々言われていても、一夏のことを好きな女子達に迫られれば、困りつつも時には恥ずかしそうにして異性として意識しているみたいだった。

性欲についても織斑先生の水着に反応してたし、会長の際どい格好にも反応していたからないわけじゃない。まあ、同い年と比べて物凄く薄そうではあるが。

一夏にしたら女子の仲のいい子に対して友達感覚が強いだけで、女子を異性として見ているわけで、そういうことを踏まえて考えると一夏はやっぱり正常といったら適切なんだろうか、正常だ。

にしても、一夏が恋愛に興味あるとは。

何か心境の変化でもあったんだろうか。

 

「いや、さ……お前と簪が付き合ってこう……ラブラブしてるの見てたら、些細なことでも凄く楽しそうにしてて羨ましいっていうか。お前がそこまで夢中になる恋愛。好きな女の子……恋人がいたりして恋愛するのってどんな感じなんだろうって思ってさ」

 

「へぇ~なるほどな」

 

一夏の心境の変化にはよくも悪くも自分達が関係しているようだ。

それに一夏の言い方的に恋人がどんなものかは一応知っているようでよかった。

というか、一夏のこの言葉聞いたら、達……一夏のことがを好きな女子達は凄い喜びそうな気がする。

 

「一夏は恋人が欲しいのか?」

 

「お前ら見てると羨ましいって欲しいとは思うけど……好きな奴なんて今いないし、仲のいい女子はたくさんいるけどそれは異性でも友達だろう? 好きな女の子、恋人つくって付き合うってことが今一分からねぇんだ」

 

つまるところ一夏が言いたいのは‘恋人と友達の違い’ってことなんだろう。

難しい話だ。それは人によって定義が大きく異なるからだ。

恋人こそはいるけれど感覚でそういうものなんだろうと分かったつもりでいるだけかもしれず、自分自身実際この定義を聞かれてもよく分からない。

だから、上手く言葉にするのは難しい。しかし、一夏がこんなことを聞いてくるのは初めてのこと。

始めが肝心だ。何かしら上手いことをいってあげならいと……。

 

「そうだな……楽しいかな。簪と恋人になれて恋愛するってこと(毎日一緒に過ごすってこと)は」

 

「楽しい、なぁ……」

 

「うん、楽しい。些細なことでも凄く楽しくて幸せだ。まあ、楽しいことばっかじゃないけど、好きだと想える相手がいてまた自分のことを好きだと想ってくれる相手がいるってのは幸せだなあって思う」

 

簪の幸せそうな顔を思い浮かべながら自分は一夏に話していく。

 

「それに幸せそうな簪を見てるともっと幸せに、大切にしたいって思えるし。そんな簪がいるからもっとこれから頑張ろうって思える」

 

「惚気かよ」

 

「惚気だよ。頭いいわけじゃないからこう……実体験に基づいてしか、女子と付き合って恋愛するってのは説明しようがない」

 

恥ずかしいことを言っているのは自覚はしているが本当にこうとしか説明しようがない。

感覚みたいなもので理解しているつもりなだけに、もう少し上手く説明したいところだ。

しかし、聞いてきた一夏は「そんなものか」と納得している様子をしいるので何より。

 

「で、恋人を作って付き合うってことについてだけど……これは単純に一人の人とだけ友達以上に特別一緒にいたい、自分の傍にいてほしいって強く思うことだと自分は思う」

 

「特別か……」

 

「例えそう思う相手が友達だとしてもそう思うのなら友達以上のもの、恋人になるしかない。 相手のことが好きだからこそそう思うのであって、それが恋人関係になって付き合うってことだと思う」

 

これはあくまで自分の考え。

付き合うってことの意味はよく言われているが人の数だけあって、考え方は皆違う。

違う考え方が人の数だけあるのだから、意味なんて考え始めたらキリがないし、訳が分からなくなる。

結局は感覚の問題。自分が相手にどう感じるかが大切だと思う。

 

「……難しいな。だけど、何となくだが分かったよ」

 

「何となくでいいじゃないか。むしろ、一夏が女子や恋愛に興味あること知れて嬉しいぞ。一夏はホモ疑惑あるからな」

 

「なんだよ、それ。酷すぎだろ。俺は女子に興味はあるにはあるけど、そういう恋愛とか分からないだけで興味ないわけじゃないんだからさ」

 

一夏はいい意味でも悪い意味でも幼くて純粋なんだろう。

それは生まれ育った環境が大きく関係しているはずだ。

一夏は女子のことを異性として認識しているが、それ以上の認識ってのを分からない又は知らない。

だから、異性も同性の友達と同じ感覚で付き合うから一夏に対して好意を寄せている女子達の態度もああ鈍いものなんだろう。

今までははよ気づけと思っていたが、分からない知らないものを気づけってのは無理がある。

一夏にそういうことを教えたり、感じさせる知り合いや身内っていなさそうだからな……肉親である織斑先生は仕事や生活一筋で、恋愛経験多くなさそうだし。本人の前じゃ絶対に言わないが。

一夏のことを好きな彼女達にしても一夏に対する態度は傍から見たらあからさまでも、直接言ったわけじゃないし。

 

「だけど、俺が恋人見つけて恋愛するよりも先に千冬姉に早く恋人見つけて恋愛の一つや二つしてほしい」

 

「それは織斑先生だって思っているんじゃないか?」

 

待てよ、思ってなさそうな気もしてなくはない。織斑先生ブラコンの気があるからな。

それでも。

 

「織斑先生に恋人作って欲しいと思うのなら先に一夏が作るべきじゃないか? 相手に何かを望むのならまずは自分からだ」

 

「んなこと言ったって、やっぱり今そういう意味での好きな奴いねぇしなぁ。いないことには恋人作るなんて難しいだろ」

 

「まあ、そうだけど……幸い俺達は世界で二人だけの男性IS操縦者で学園には二人しかいない男子生徒。周りは女子ばかり、好きになりそうな子見つけられるんじゃないか」

 

可能性としてはなくはない。むしろ高いぐらい。

学園の女子は外見も中身もレベル高い子多いからな。客観的に見ての話だが。

第一、一夏は(篠ノ之)やデュノア達から好かれているわけだし。

それを教えようかと思ったが、やっぱり本人が自分で気づいた方がいいだろう。

彼女の為にも、一夏自身の為にも。知らないものや分からないものは自分で知っていたり、自分で分かっていくことに意味がある。何より、悩んだり迷ったりするのは恋の醍醐味なはずだ。

 

「見つかるか?」

 

「一夏次第だろ、それは。まあ、近いところで行くなら篠ノ之やデュノアとかいいんじゃないか? 一夏、彼女達によくされているだろ?」

 

「よくってなぁ……でも、箒は幼馴染でシャルは友達だぞ」

 

「例えばの話しだ。それにそれこそさっきの話だ。一緒にいればそのうち友達でも二人だけで特別一緒にいたい相手がみつかるかもしれない。行動あるのみだ」

 

「そうか……ああ、そうだな!」

 

今日の明日で一夏がいきなり変わるわけがないが今夜の雑談で何かしら一夏に今後変化があれば何よりだ。

同じ世界で希少なIS操縦者であり、朴念仁でも鈍感でも一夏は学園で出来た大切な男友達。

幸せになって欲しい。

 

……




今回の話のテーマは以下の通り

・オリ主がISヒロインの一人と恋人関係になり、そのことが与える一夏への影響
・恋話?する一夏を経て、一夏の今後の変化。
・オリ主が恋愛している姿を見て、一夏に恋愛感情や恋愛について考えさせる。
・一夏を歳相応の男子として描く
・一夏のホモ扱いについての個人的な答えじみたもの

です。
私が単に見てないだけかもしれないのですが、ISの二次小説でオリ主とISヒロインが恋愛して、その様子を見て一夏の心境とかに何かしら変化を起すってのは見かけないんですよね。
やっぱり、オリ主がいることでヒロイン達にも一夏にも変化はあると思うんです。
恋愛ごとでは特に。

一夏が恋愛ごとに疎いのは本編でも書いていますが、知識としては知っていても本当にそれがどういうものなのか理解できてないところにあると思うんです。
知らない、分からないことに気づけってのは無理がありますし、一夏にそういうことを教えるって言ったら偉そうですが、雑談形式で話す人物もいませんし。特に同性。

オリ主には一夏を踏み台にするのではなく、利用するのではなく、よき相談相手になったほうが同じ男性IS操縦者として深み、みたいなものが増すと考えています。

長くなってしまいすみません。
この話を読んで下さった方が、何かしら考えていただければ幸いです。

今回の話の男主も前回同様に簪の相手である男性はオリ主です。決して一夏ではありません。
無論、主人公は簪が好きなこれを読んでいる貴方かもしれません。

ちなみにこの話題でもう少し話は続いていきます。
お楽しみにしていただければ幸いです。

それでは~

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