簪と風呂から出た後、俺達は各々家事をしていた。
俺は食器洗い。簪は洗濯物を畳むといった分担。
食器洗い機に入れて乾燥までした食器をしまって、簡単に台所を拭く程度なのでそんなに時間はかからない。
さくっと終らせると台所からリビングに戻った。そこでは簪がソファに座りテレビを見ながら、洗濯物を畳んでいた。
手は動いているがいつもより進みが悪い。どうやらテレビに気を取られているみたいだ。珍しい。
何見てるんだ。とりあえず簪の隣に座って、畳むのを手伝う。
「ああ……お疲れ様。これ」
簪の視線の先では何やらバラエティー番組がやっていた。
内容は家族や夫婦についての特集。よくある感じのだ。
『家族や夫婦、生活時間を一緒にするほど似てくるところが多くなってくるんです!』
『へぇ~』
「へぇ~」
簪まで同じ反応をしていた。
言ったら元もこもないがわざわざ取り上げるほどのことか。
「えー……」
凄い残念なものを見る目を向けられた。
同じ時間が増えれば似てくるのは普通のことで同じになっていくものだろうそういうのは。
実際、スタジオの女性陣は盛り上がっているが男性陣は結構ぽかんとしている。
「はぁ、分かってない……」
そんな溜息混じりに言われても困る。
『食べ物の好みだけでなく、服装などの好み。はたまた仕草や口癖などが似てきていることはありませんか?』
「私達はどうなんだろう……?」
仕草や口癖はパッとすぐには思い浮かばないが、していえば食べ物の好みとかは似てきた気がする。
昔はそうでもなかったが、簪と出会ってからは抹茶味が好きになってきた。今では迷ったら取り合えず、抹茶味を選ぶほどだ。
「あー……そういうことなら私もそうかも。私も麺類好きになってきた。特にラーメン。おかげで昔よりかは沢山食べれるようになったし」
言われてみれば、そんな気もする。
学園卒業後、同棲するようになったから家、外問わず麺類を食べることは多い。
昔の簪はラーメン半分だけでも大変そうだったが、今ではラーメン一杯はもちろん、ラーメンセットやサイドメニュー付きまで食べれる様になってきている。
簪が候補から正式な代表になっていろいろと食事面改善しあったから、それが大きいんだろう。
「あなたが現役時代、いろいろと食事サポートしてくれたからね」
後は特撮関係だろうか。簪と俺を繋げてくれた大事なの物。
付き合う前は本当にただ知っていた程度だが、付き合うようになってからはかなり詳しくなって、今では趣味の一つになるほど好きになった。
これは変化の一つとして外せない。
「だね。今でも毎年映画見に行ってるほどだし……あ、そうだ」
何か思いついたようだ。
「いや、ね。最近、本音や虚、それからお姉ちゃん達に言われたこと思い出したんだけど……私達、同じタイミングで同じ言葉言うこと多いらしい」
そ、そうだったんだ。
たった今自覚……と言えばいいのか、自覚した。
いやでも思い当たる節はあるような? 言おうとしたことを簪に言われたり、物を取って欲しい時言わなくても取ってくれたりするから、そういうことなんだろうか。
となると、似てきたところは多い。
「ふふん、だね」
簪はどこか得意げに嬉々としてふにゃと笑った。
似てきたと思えるところがあるといえばあるが、やはりただ単に同じ時間を共有してるから同じになったとしか思えない。
「もう……またそういうこと言う」
そう呆れられてもな。
いつしか洗濯物を全部畳み終えた俺達は続きを見る。
『相手の癖が似るというのは『ミラーリング』と呼ばれています』
「なるほど……ミラーリングか……上手い言い方だね」
鏡に映したように同じことをするということか。
中々洒落が効いている。そう思わず簪と関心してしまった。
『一重にこれは同じ相手と同じ時間を過しているから起きるというわけでありません。お互いを愛し、想いあってなければ、相手の仕草や口癖を知っていても無意識にはしないものなのです』
「だって……ふふっ」
何だその含みのある笑い方は。
当てはまるのは簪もだろうに。
『故意的に相手を真似て親近感を産むというコミニケーション術でミラーリングが使われることもありますがその場合露骨になってしまい逆効果。関係を悪くすることが多いのです』
「あー……確かに……」
『真のミラーリングとは意識していないふとした時に起き。それに気づけた時仲はより深まること間違いなし! カップル、ご夫婦ならきっと素敵なおしどり夫婦になることでしょう!』
そう締めくくられ、番組は次の話題へと移った。
似てくる一つでもここまでの理由や現象名があったとは。
ただ同じ相手と同じ時間を共有していればいいというわけでもなく。
相手のことを想っていなければ似てこないということは言われれば当たり前だと思うことだが、こうして改めて確認できてよかった。
好みが似てきたり、同じことを言うほど簪に愛されているんだなぁとしみじみする。
「一人でしみじみしてるけど……それ、あなたも当てはまるからね」
もちろん分かっている。
簪を愛している。それは好みが変ろうとも、考えが似ようとも変らない。変るとしても、それは簪を想う強さぐらいだろう。
あ……簪、赤くなった。照れてる。
「あ、当たり前でしょ。あなたからのその言葉何年経っても慣れないのは変らないんだから。でも、何度言ってもらえても嬉しいのも変らない。ありがとう……愛してる」
脈絡もなく始まった深夜の告白大会。
学生時代思い出すな。
「そう言って誤魔化しても無駄。照れてるのお見通しなのも変らない」
一緒の時間が増えるといいこともあるがこういう時適わない。
くすくすと楽しげに笑う簪には俺は無言を貫き通すばかり。
「ふふっ……これからももっと二人の共通点、増やしていこうね」
…
今回もまた簪の相手である男性はオリ主です。決して一夏ではありません。
もしかすると、主人公は簪が好きなこれを読んでいる貴方かもしれません
それでは