腹の空きを感じたのは休日自室で一人過している時だった。
時間を確認すれば、昼時。
朝食食べてから大分経ったから、腹が空いてくる頃だ。
何もしてなくても腹が空く時は空く。昼飯にしよう。
そう思い立ち、部屋を後にして台所へと向かった。
台所、リビングに簪の姿はない。部屋を出たとき、向かい側の簪の部屋から気配がしたからまだ部屋にいる。
そろそろ簪もお腹を空かせて、出てくるところだろう。
「もしかしてお昼……?」
噂をすれば何とやら。
簪が台所にやってきた。
頷いて答え、簪の食べたいものを聞いた。
「簡単なのでいい……というか、私が作るよ」
提案してくれたが、今朝は簪が朝食を作ってくれた。
だから、今日は昼は自分で作りたい。
とは言っても簪はあまり納得してない様子だ。
「だって今朝、たまたま私が先に起きただけだし……」
変なところ拘るのはいつになっても変らない。
ならこっちでメインのものを作るから、簪には付け合せでも作ってもらおう。
「分かった……ちなみに何作るの? もしかしてまたパスタ?」
物の見事に当てられてしまった。
考えればすぐ分かることか。麺類、パスタは作るのが簡単でよく食べている。
今日のは市販のソースを使ってではあるがカルボナーラのパスタを作ろうと思っていた。
簪は別のがよかった?
「ううん、いいよそれで……じゃあ、私は付け合せに野菜スープでも作ろうかな」
カルボナーラによくあいそうだ。
簪はインスタントとかではなく、冷蔵庫にあるものを使って作る様子。
何だか付け合せのほうが凝ったものになりそうだな。
「そんなことないって……有り合わせのものだし。あなたこそ、また凝ったトッピングするんじゃない?」
俺のほうこそ、そんなことはない。
トッピングはするけども、半熟卵を乗せる程度。
湯がくのもパスタを沸かした湯を使うからそこまで手間がなく簡単。
「半熟卵か……おいしそう。……本当、こうやって二人で料理するの久しぶり。何か楽しいね」
簪はくすりと笑って言った。
確かに。
今みたいに料理を共にできるのは楽しい。こういう一時があるというのはいいことだ。
これからはもう少しこういう機会を増やすのもアリかもしれない。
「いいね……賛成」
簪のその言葉に次の機会が待ち遠しくなった。
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「いただきます」
向かい合って座る二人の言葉が重なる。
早速、机に並ぶ料理を食べ始めた。
まずはメインのカルボナーラから口へと運ぶ。
「美味しい……ん、半熟卵黒コショウ効いてて濃いけどまろやか」
よくあるトッピングではあるが、これが一番合う。
コクが引き立てられて美味い。
「このソースはやっぱりコレに限るね……昔、二人であれこれ試したの懐かしい」
学園を卒業して同棲するようになって、自炊を始めてから結構試した。
最終的に今日使ったソースにたどり着いた。
これもある意味、二人の思い出みたいなものなんだろうか。
「そうだよ……外れも結構あったことだし……そうだ、また新しいパスタソース探しに行きたい」
いいな、それ。おもしろそうだ。覚えておこう。
それと。
「ん? あ……あ、ありがとう」
口元に少しついていたソースをティシュで拭いてやると照れていた。
今度は簪の作ってくれた野菜スープに口をつける。
少し不安そうに簪は、感想を待つ。
「……どう……?」
あっさりして美味い。
カルボナーラが濃いだけに余計そう感じる。
好きな味付けだ。
「よかった」
安心した様子で胸を撫でおろした簪は嬉しそうに頬を綻ばす。
野菜の他に小さめの鶏肉も入っている。
これなら毎日でもいい。
「ふふっ……それって、もしかして……プロポーズ?」
簪はおもしろがっている。
その証拠に口元が笑ってる。
なるほど。今言ったのは昔からある有名なプロポーズの言葉に似ている。
プロポーズのつもりではなかったけど、プロポーズなら簪の答えはどうなんだろうか。
「それはもちろん決まってる。喜んでお引き受けします、旦那様」
冗談めかし言っているが、心からそう思っているのがわかった。
今でもはもう簪もすっかり堂々としたもの。しっかりこちらの目を見つめて離すことを許してくれない。
だから嬉しさが大半。少々の照れくささから笑ってしまうと簪も釣られて笑った。
「お腹もだけど、胸もいっぱい……はぁ、幸せ」
いつの間にか二人揃って皿は綺麗に空いていた。
二人一緒に料理するのは楽しく。そうして出来たものはいつもと一味違って美味しい。
更に愛する人と食事をするというのは当たり前だと思いがちだが、この上なく幸せな一時。
腹も心も満たされ幸せいっぱい。
簪、今日もご馳走さま。
「お粗末さまです。私もごちそう様でした」
…
今回もまた簪の相手である男性はオリ主です。決して一夏ではありません。
もしかすると、主人公は簪が好きなこれを読んでいる貴方かもしれません
それでは