――ドタン!
何がこける大きな音が聞こえた。
簪の部屋のほうからだ。駆け足で向かった。
扉の前でノックして一声かける。
「だ、大丈夫っ……ちょっと躓いただけだから」
の割には痛みを堪えているような声だ。
とりあえず中に入ってもいいだろうか。
「う、うん……」
中に入ると尻餅をついた簪がいた。
目尻にはうっすとら涙が浮かんでいる。
どこか痛めたりしているんじゃ。
「大丈夫だって……本当、ただ躓いただけだから。ごめんなさい、騒がしくして」
簪が無事なら構わない。
にしてもあんな物音出るようなこと。一体何していたんだ。
躓いたと言っていたが、クローゼットの前では椅子が倒れている。
何か上にあるものを取ろうとしていたのか。
「うん……あれ、取ろうとして」
椅子を起こしながら簪が指指していたほうへ目をやる。
クローゼットの上の方には大きめのダンボールがあった。
あれを取るには椅子に乗っても簪の身長ではギリギリ届かない。
無理して取ろうとして転けたなこれは。
そもそもあのダンボール、以前簪にお願いされて俺があそこに置いたものだったはず。
言ってくれれば取ったのに。
「いや、だって……休んでるの邪魔したくなかったし」
気持ちは分かるがそれで怪我でもしたら元も子もない。
起こした椅子の上に乗ってそのダンボールを取る。
「おおぉ……」
何故か関心されてしまった。
何なんだ。そんな関心するようなことでもないだろうに。
こうして高いところのものを取るのも初めてのことではないし。
「それはそうなんだけど……高いところのものスッと取ってくれたの何か凄く素敵だなぁって」
これは褒められたということでいいんだよな。
若干戸惑いながら取ったダンボールを簪の前に置く。
素敵と思うものなんだろうか。自分ではよく分からない。
「そういうものなの。いいな……私、もう少し身長欲しかった。まあもう……伸びる様な歳でもないけど」
確か簪の身長は154cmだったはず。
「それは学園時代の身長。あれから少しは伸びたもん……」
具体的にはどのくらいなんだろう。
「ひゃ……155cm……」
そう言った簪の言葉尻は小さかった。
「あ~っ! 小さいって思ったでしょ……1cmって結構大きいんだから。ほら、立って背比べ」
思ってないし、大きい方のは分かる。
しかし、簪は納得がいかないようで腕を掴まれて立つことを催促される。
仕方ない。言われた通り、立つ。
すると向かい合い簪に抱きつかれる。
「ほら……どう……? 伸びたでしょ」
確かに伸びた気はする。こうするとそういう実感はある。
でも、わざわざ抱きつく必要はあったのか。
「こうしないと分からないでしょ」
別の方法も思いついたがややこしくなりそうなので黙っておいた。
やっぱり、いつになってもそういうのは気になるものなんだろうか。
「気になるよ……周りの代表候補や代表選手、皆背高い人ばっかりだったし……あなたも私の背、もう少し高い方がいいでしょ……? あなた結構背高いから……」
と離れ、向かい合うようにしながらまた床に座り合い簪が言った。
確かに俺の身長は結構高い。
さっき言ってくれた簪の身長と大体20cmほど身長差がある。
キスをするときとか屈まないと正直辛い。
しかしだからといって、簪の身長が高い方がいいというわけというわけでもない。
今ぐらいの身長の簪が一番いい。
抱きしめた時、腕の中にすっぽりと収まる感じが好きだ。
「うっ……ま、まあ、あなたがそこまで言うなら今のままでいいのかな……」
満更でもない様子でそう簪は言った。
どうやら納得してくれたみたいだ。
「あ、でも……高いところのものぐらい自分で取れるようにならないと……」
どうしても取れない時は呼んでくれればいい。
それぐらいお安い御用だ。
「ありがとう。さてと……」
簪がダンボールの中を開けようとする。
中って何が入っていたっけ。
中を見たという記憶だけあるが肝心の中身の内容が思い出せない。
「これだよ」
出てきたのはDVD。
ちなみに青いタイプのほう。
他にも中にはPCにデータを移して見なくなった初回限定版円盤が
タイトルはかなり懐かしい特撮ライダーの劇場版だった。
「ネットしてたら急見たくなったけど映像のデータ見つからなくて円盤出そうと思ったの……よかったらだけど……一緒に見る……?」
そんな簪からの提案。
折角の誘い。見てみるか。
「やったっ……見よ見よ」
手早く見る用意をすると簪は定位置に座った。
床に座る俺の膝と膝の間。
腕の中にすっぽりと収まるところに。
…
今回もまた簪の相手である男性はオリ主です。決して一夏ではありません。
もしかすると、主人公は簪が好きなこれを読んでいる貴方かもしれません
それでは