簪とのありふれた日常とその周辺   作:シート

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簪と過ごす2018年の夏

 照りつける夏の日差し。

 輝く広大な白い砂浜。その先に絶え間なく広がる青く澄んだ海。

 そして聞こえてくるさざ波の音と人々の賑わい。

 

 これだけで充分すぎるほど夏を満喫できてしまうほどの光景。 

 今年の夏休み、珍しく海に来ているがこの光景は来た甲斐あると思える。

 後は隣に簪がくれば。

 

「お待たせ」

 

 噂をすれば、簪があらわれた。

 着替えを済ませ、水着に身を包んでいる。

 ビキニタイプにフリルがあしらわれた紺色の水着。

 初めて見る奴だ。おそらく新しい水着だろう。

 

「正解。折角久しぶりに海行くから新しいの用意してみたけど……どう、かな……?」

 

 こちらの感想を期待して待っている。

 そうだな。水着の紺色が髪によく映えてとても似合ってる。綺麗だ。

 ありきりな感想だけど、これが一番強く思った感想だった。

 

「ふふっ、嬉しい」

 

 嬉しそうにハニかむ簪の笑みが可愛らしい。

 そして簪の手を取って、ひとまずパラソルの下にあるビーチチェアへと行き腰を落ち着ける。

 

「ここ落ち着いてていいね」

 

 泊まりに来た更識家のフロント企業傘下のホテル専用のビーチだけあって、砂浜は綺麗で、人もホテル利用客しかいないので過ごしやすい。

 のんびりできそうだ。

 

「でも、このままただのんびりするのは勿体ないくない?」

 

 勿体ないとは思う。

 のんびりするのは部屋にいるのとあまり変わらない。しかし元来、簪と俺はインドア派。

 海にも勧められたから来ただけなので、特に何をするかは決めてきてない。

 まあ、海に来たとなるとすることは限られてくる。

 折角だから海に足つけるぐらいはするか。

 

「だね。そうなると……また日焼け止め塗らないと。……ん」

 

 カバンの中から日焼け止めを取り出すと突き付けてくる。

 塗れと言ってきてる。

 とりあえず、日焼け止めを受けった。

 

「前は自分でするから後ろの方、ーお願い。後で私もあなたの後ろ塗ってあげる」

 

 そう言って簪はビーチチェアの上でうつ伏せになった。

 クリームを手の平に乗せ、少し温め塗っていく。

 いつになっても張りのある滑らかな肌に触れると、慣れ親しんでいても簪が水着を着ているということがあるからか、正直興奮を掻き立てられなくはない。

 

「ん……ふふっ」

 

 オマケにくすぐったそうに微笑む簪。

 声が妙に艶めかしい。

 そして、ムラなく背中に日焼け止めを塗り終えることが出来た。

 

「ありがとう。前すぐ終わらせるからそしたら次はあなたね」

 

 今度簪は自分で前のほう、腹や足などに日焼け止めを塗り、その間に同じく俺も前を塗った。

 それから、手の届かない背中俺の背中も塗ってくれた。

 これで準備よし。体を慣らし浮き輪とか必要なものを持って海へと向かう。

 まずは足から海水へとつけてみた。

 

「わっ……ふふっ、気持ちいい」

 

 ほどよい冷たさが気持ちいい。

 更に進んで丁度簪の腰のあたりまで海水に入った。

 日差しは照りつけてくるが、海水の冷たさもあってさほど暑くもない。俗にいう絶好の海水浴日和といったところ。

 

「いい日に来れたね……えいっ」

 

 掬った水をかけられた。

 突然のことに面食らう。

 急に何やって。

 

「ふふんっ……ほらほら」

 

 顔を拭うと目の前にはしたり顔の簪が。

 そういうことか。やられたままではいられない。受けて立つ。

 掬った水を簪にかけた。

 

「わぷっ……私よりたくさんかけた……むー、えいえいっ」

 

 また水をかけられる。

 しかも、先ほどより量が多い。

 そしてまた俺からも簪に水をかける。

 そんな風に浅瀬で水をかけあい幼い子供みたいにじゃれあった。

 

 

 楽しい時間は長く続いた。

 水の掛け合いから始まり、軽く泳いだりとこんなにも体を動かして外で遊んだのは久しぶりだ。

 

「ね……楽しかった」

 

 そう隣で簪は、嬉しそうな顔を見せてくれた。

 おかげでもう夕暮れ。

 まだ周りでは遊んでいる人達はいるが、一足先に海から上がった俺達はホテルに戻る前、最後に浜辺へ腰を下ろし夕焼けを眺めていた。

 

「綺麗……」

 

 ぽつりとそう零す簪。

 海と砂浜が夕日に照れされ、キラキラと輝く景色は確かに綺麗なものだ。

 何より夕日で輝く砂浜に照れされた水着姿の簪のほうが景色以上に綺麗で目を奪われた。

 神秘的というのが一番あっているのだろうか。

 いつまでも見ていたくなるそんな姿だった。

 

「ん……?」

 

 簪がこちらの視線に気づき、眩しい微笑みを見せてくれる。

 そしてこちらを見つめ、簪の瞳の奥で情熱を燃え上がっていた。

 目は口ほどに物を言うとはよく言ったものだ。こちらもこの後……夜が待ち遠しい。 

 

 だから今はこれで。

 

「ん……」

 

 簪からこぼれる吐息。

 夕日に照らされ海から砂浜に伸びる二つの影は重なり、いつしか一つの影となっていた。

 




今回もまた簪の相手である男性はオリ主です。決して一夏ではありません。
もしかすると、主人公は簪が好きなこれを読んでいる貴方かもしれません

それでは
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