東亰ザナドゥ~火焔魔人~   作:泡泡

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 最初は目上の人に敬意を表しますが、タメ口を許された場合などにはそれに倣って軽くなります。


 2015/11/07マクバーンとソウスケとの会話を多少変更。


三話

 アクロスタワーから徒歩で行き数十段の階段を登るとそこに佇むのは九重神社。古風な建物の中に歴史を感じることができる。この目的地で一応の用事を済ませることができる。まずはよく当たると言われているおみくじを引くことにした。竹箒を持って境内を掃除している巫女さんから買って中身を見る。

 

 

 “大吉・仕事はすぐそばに・・・”

 

 

 なんとも簡潔な文章だった。大吉とは最上(さいじょう)の値だったはず。という事は何かを伝えようとしているのか?ふと横を見ると道場のような建物があった。そしてやや強い者の気配を感じたのでそちらに向かう。そして扉を開き一言声をかける。

 

 「ごめん!!」

 

 「このようなところに珍しい客人が来たものよ。さて何用か?」

 

 「アクロスタワーから望遠鏡を覗いていたところ、緑に囲まれたこの場所を見つけた。ゆえに観光に来たと・・・」

 

 ここの責任者のような佇まいをしている。眼光も鋭くこちらを何やら観察しているようだ。

 

 「地元の人ではないね。この地には何用で来た?そしてとても懐かしい匂いを感じるのだが?遠まわしな言い方では通じないかね。レムのことを知っているか?」

 

 「あなたは・・・。どうやら少し裏の事情にも詳しいようですね。では詳しくお話しても構わないでしょうね。少し長くなりますし込み入った話にもなると思いますが、これから訪問予定の客人などはいないでしょうか?」

 

 「勿論、構わないさ。っと私の名前は九重ソウスケと言う。お前さんは?」

 

 「マクバーンと言います」

 

 ソウスケから出された座布団に座り正面にソウスケも座る。

 

 「さてマクバーンや、さきほど観光と言ったがそれは建前じゃろ?」

 

 出された茶を一口飲んで潤したあと、そう呟く。道場にいるのは二人だけで静かな中にソウスケの声はよく通った。

 

 「ええ、本音ではありません。アクロスタワーから見て来たいと思ったのは本当ですが、杜宮市に来たのは今日です。これからどのぐらいになるかわかりませんが滞在するのだから見て回るのは当然だと思う」

 

 「そうか。君の出で立ちからするに外国人とも思えない雰囲気が出ているのだが、そ

こらへんは教えてもらえるか?・・・慣れない敬語はもう少し崩してもらっても構わないぞ?」

 

 「やはり気づきますかね。ではもう少し崩します。話を戻すがこれは信じられないかもしれないが、最後まで聞いてもらえるとありがたい」

 

 「勿論だ」

 

 ウムと頷きソウスケはマクバーンの目を正面から見据える。彼になら事情を言ってもからかったりしないだろうと、はっきりとしたことは言えないにしてもそう思えた。だからマクバーンは他人と歩み寄る最初の一歩を踏み出した。

 

 「感謝する。事の発端(ほったん)は俺の世界とこの世界が混ざり合おうとしていると言う報告だった。それを受けて先行した勇気ある女性が送り込まれた。そして少しの準備期間を終えて俺も送り込まれた。彼女は元の世界へ戻っていったがどうやら因果が捻じ曲げられているということらしい。・・・それ以上詳しいことはまだ分からない。だが着いて早々レムと言う子に会ったのも事実だ」

 

 「・・・・・・そうか。君から強者(きょうしゃ)の気配を感じるが何故か杜宮市には存在しないような気配だったのでおかしいとは思った。事情を話してもらって感謝する。で、君はこれからどう動くつもりだい?」

 

 「まずは仕事を探そうかと思います。向こうでは人に害を及ぼす魔獣、モンスターを討伐していればお金を稼ぐことができたが平和そのものなこちらでは無理そうですね。ここでおみくじを引きましたがこうなりました」

 

 と言って懐から二つに折りたたまれたおみくじを出す。

 

 「仕事・・・ですか。ふふっ、ちょうど空きが出ている仕事があります。失礼ですが、あなたは何か資格をお持ちでしょうか?」

 

 偶然か必然かは分からないがチャンスのような気がする。鋼のにも言われていたしユエからも資格は大事ですよと言われていて、一応この世界で通用しそうな資格は付け焼刃程度だが取ってきた。

 

 「ええ」

 

 内ポケットから自分が持っている資格の一覧が書かれた紙を出す。

 

 「拝見します。・・・うんうん、大丈夫ですね。あとはあなたのやる気次第です。最初はなれないと思いますがあなたの道の上に祝福がありますように・・・。今日は休みですので案内人を付けて案内させますね」

 

 「よろしくお願いする。ところで何の仕事なのか教えてもらえないだろうか?」

 

 「それは現場に着くまでの秘密としておこう。だが君が驚くのは確実だろうな」

 

 そう言ってどこかに連絡を取る。ソウスケの声色からするに近親者のようなもの柔らかさを感じた。そして『少し待っててくれ。茶を持ってくる』と言って立ち上がり奥へと消えた。

 

 これからの生活に戸惑いや慣れないところでやっていけるのかなどの不安が入り混じっていたが、それでもマクバーンにとってこの異変の調査を受けたのはこれから自分がどうなるのか楽しみなところでもあった。ソウスケと言う裏の事情に通じている人と知り合うことができたのも良いんだろう。

 

 「(俺がこんなふうに思える時期(とき)が来るなんてな・・・。だが強者と戦うっていうのは外せねぇな)」

 

 微温(ぬる)くなったお茶を飲み干して足を伸ばす。アクロスタワーでは人ごみの中にいたのでこの静けさは妙に落ち着く。

 

 「待たせたかな?案内する者が到着したんでな。呼びに来たよ」

 

 時計を見ると数十分経っていたのが目に入った。

 

 「いいや、そんなに待ってもいないし美味しい茶を飲んで黙想していたからな。時間がたつのが早かったぜ。それで案内人ってのは・・・・・・っ。あん、た・・・が?」

 

 「???」

 

 ソウスケの後ろに立っていた小柄な女性を視界に捉えて一瞬、息が苦しくなった。そこにいたのは前の世界で巡洋艦カレイジャスを指揮していた、トワ・ハーシェルにそっくりな女性だったからだ。

 

 「・・・私がどうかしましたか?」

 

 「ふむ・・・」

 

 「・・・すまん。とても良く似ている人に前会ったんでな。ちょっと息ができなくなっただけさ。ところでその人が案内人かな?」

 

 「はいっ、九重(ここのえ)永遠(とわ)です。今日はマクバーンさんを案内するのに来ました。・・・体調の方は大丈夫ですか?」

 

 「あぁ、声まで同じなんだな。いや、心配してもらうほど悪くはない。だから案内してもらえるかな?」

 

 こちらを伺う仕草や声まで一緒。何もかもが一緒。少し大人びていると言うかカレイジャスの子(トワ・ハーシェル)が数年たつとこうなるんじゃないかなと思わせるぐらいデジャヴを感じざるを得なかった。

 

 「ここからそう遠くないので歩いていきましょうか?マクバーンさんは杜宮市に来たばかりだと聞いているので、そのほうが土地勘を持つのに最適かと思います」

 

 「問題ねぇ。それで行こうか。ソウスケさんありがとうございます。今回のことを含め改めて相談しに来たいと思います」

 

 「うむ。待っているぞ」

 

 目を細めこちらを見る姿は永遠(とわ)と言う家族を心優しく見守る老齢の達人だった。

 

 「・・・・・・」

 

 「・・・・・・」

 

 それから数分、数十分経っていると思われるがふたりの間に会話らしい会話など無かった。それは永遠が話しかけようとして話しかけず、マクバーンがそれに気づいていて気づかないふりをする・・・の繰り返しだったからだ。このままでは良くない雰囲気になると思われるのでどちらも少しの努力がいることだがはじめの一歩を踏み出すべきだった。

 

 「あんた、俺の知ってる人によく似てんだわ」

 

 「えっ?」

 

 マクバーンが独り言のように呟いたのは目的地まで半分切ったあたりだった。

 

 「あんたの声はあいつと一緒だし、ちょっとした仕草も少し似ていた。だからだろうかあんたを見るとあいつを思い出してしまってな。あぁもう会えないわけではないし、それなりに距離もあった。だから暗い顔すんな」

 

 「あっ・・・・・・」

 

 なぜそうしたのか自分でも分からない。暗い表情を浮かべた永遠を見たら頭を撫でていた。親が子供の様子を見て落ち込んでいるのが分かった時に優しく頭を撫でるかのような、そんな感情が湧き上がった。

 

 「なっ?」

 

 「・・・私ってそんなにわかりやすいですか?なんだかマクバーンさんを見ていると暖かい気持ちになったんです。そしてあなたの声色が下がったら、自分自身のように思ったんです。きょ、教師失格かなぁ」

 

 小さいのに教師やっているんだなんて思ったのがバレたのかふくれっ面を見せて笑顔を取り戻す永遠。

 

 「あん、教師?」

 

 「はいっ、そしてマクバーンさんがこれからなるのも教師ですよ。杜宮学園に併設されている中等部ですがそこに空きができたので非常勤教師になってもらいます。最初は慣れないかもしれませんがマクバーンさんにならできると信じてますよ」

 

 両手で握りこぶしを作って励ますかのように口調を強める。

 

 「まぁやれるだけやってみるよ。はぁ~」

 

 「何かあったらこっちに来てくださいね。私は杜宮学園で働いていますから、ねっ」

 

 その日は永遠に連れられて中等部の教師たちと顔合わせをし、教師がいなくなるクラスを下見し生徒らの顔と名前を覚えるために出席簿等に目を通す事で一日を終えた。そのクラスメイトの中にアクロスタワーで会った少女がいるなんて事は、マクバーン自身忘れていることなのでスルーしていたがマクバーンが教師になった初日にどうなるかは案外予想できることなのかも知れない。

 

 それより、マクバーンは良い意味でどう成長するのだろうか。楽しみなところではある。




 九重永遠=トワ・ハーシェル。

 マクバーンは一応トワ・ハーシェルのことを認めています。その延長線上で永遠を見て驚き柄にもないことをやったので、好感度は少し上がってます。

 この作品では杜宮学園と同じ土地に中等部が併設されています。原作の中で一度も言及されていなかったので作者が創りました。

 
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