東亰ザナドゥ~火焔魔人~   作:泡泡

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四話

 

 始業式は隣にある杜宮学園の一日前に行なわれるみたいだ。職員室で簡単な挨拶等を終わらせ、マクバーンは教師としての第一歩を踏み出した。その時何かしらの視線を感じたのでそちらの方を向くと何かを言いたそうにしている数人の教師を見た。その意味を知るにはそれほど時間はいらなかった。

 

 「マクバーン先生には最近担任がいなくなったクラスを担当してもらいましょう。途中からとは言えクラスの皆さんはとてもいい生徒なのですぐに打ち解けますよ?」

 

 「はぁ、そうですか?(なんだろ、この教頭とか言う人の大雑把な言い方とそれを遠巻きに眺めているだけの教師らは・・・)」

 

 そんなことは口にも出せずに前任の教師のことを聞こうとすると、理由があって休職中とのこと。精神に異常をきたしたとか何とか。

 

 打ち合わせ後クラスに向かう。永遠(トワ)にサイフォンで『これからクラスに行ってくる』と連絡するとすぐに『いってらっしゃい。マクバーン先生なら大丈夫だよ』と頼もしい返事が返ってきた。

 

 ここからいつまで続くかわからない平和な生活を送れるのかと思うと、少し寂しいながらもホッとしている自分がいたことに驚いている。だが深呼吸してから扉を開けると何人か、いや殆どの生徒が自分を凝視していることに驚いた。

 

 「(敵意が数人と懐疑心がほとんどか・・・。ホントに前任はなにしたんだ)」

 

 「あれ、新しい!?もしかしてこれからこのクラスのた、担任ですか?」

 

 「あぁ、今日からこのクラスを受け持つことになったマクバーンだ。以後よろしく頼むよ」

 

 「「「・・・・・・」」」

 

 生徒らはそれぞれの顔を見合わせて首をかしげる。それではまずいと思ったのか一人の生徒が声を出した。

 

 「あのー本当にこれからこのクラスの担任になるんですか?」

 

 「教頭からそう言われた。何か問題があるのか?」

 

 ちょっとイラっとした。それは教頭の含みのある言い方とこの生徒らの疑わしい目で見られ方だ。

 

 「すみません不愉快な思いをさせてしまって。・・・あの、前の先生が何をしたか聞いてますか?」

 

 「いいや。隣の学園で教師やってる人からの紹介だからな。教頭も何も言わんし、逆に理由を聞きたいぐらいだわ」

 

 「そう、ですか。・・・その前に先生に聞きたいことがあります」

 

 「ふむ、いいよ。手短にな」

 

 出席簿には鈴鳴(すずなり)正義(まさよし)とある。手で早く話すように促してから教卓にあった椅子に座る。

 

 「音楽に関してどう思います?」

 

 「音楽と言ってもなぁ。もう少し範囲を絞る事はできないか?例えば指揮棒を振る指揮者関連、ピアノやサックスなどを奏でる演奏者、そして自身の声を用いて歌う歌手などがいるが・・・。歌手って言った時に君らの動揺が伝わったな。という事は鈴鳴が言いたいことは歌手についてどう思うか、でいいか?」

 

 「もう名前を・・・ええ、遠回りな言い方をしてすみません。先生に聞きたいのは歌手についてどう思うか正直なところを聞きたいと思います」

 

 腕組みして考える。ここで自分の考えをあっさり伝えても多分信じてもらえないだろうと思う。前任の教師が、この質問に出てきた歌手に関わっているのは十中八九間違いないだろう。しかも問題を起こしたか何かして生徒らの反感を買ったからほとぼりが冷めるまで休職と言う形をとらざるを得なかった。だから始業式が終わって俺が入ってきたときの生徒たちの表情が強張っていたのも理由になる。

 

 この時のマクバーンの考えはほとんどが合っていた。それよりもはるかに悪い問題を引き起こしていたが・・・。

 

 「俺はオペラが好きだ。教師になる前はオペラハウスに足を運び週に三度は聞きに行った。その鈴鳴の話に出てくる歌手がどんなジャンルの歌を歌っているかは知らないが、歌手をしている人をけなすようなことはこれまで一度もない・・・。これでいいか?俺の答える様子を撮影している人もいたようだが、その歌手と学業を兼任している生徒にでも見せたのか?」

 

 「ええ、撮って見せたほうが話は早いかと思いまして」

 

 もうひとりの生徒が隠すことなく撮影している様子を見せる。

 

 「そうか。で、君たちに俺の今の気持ちは伝わったかな?」

 

 「僕は問題ないです。一応他のクラスメイトも同じ思いなので・・・。そっちは?」

 

 撮影している女子生徒に声をかける鈴鳴。

 

 「それが・・・行くとだけ言ってこっちに向かってるみたい」

 

 「ふむ・・・。俺は知らないだけでもしかしてどこかで会ってたりしてな。それも悪い印象ではなく、良い印象を持っていたとか・・・」

 

 教師について疑わしさを持っている生徒に対して、考えていることを口に出して彼らの表情を見る。やはり怪訝な表情や、苦笑いを浮かべている生徒が多い。このクラスは30人とあるが出席簿には28人の名前しかない。よくよく見ると二人分の名前を消したと思われる空白があった。

 

 「前の先生は何をしていたんだ?」

 

 のっぺりとした緩くまとわりつくような視線を感じてメガネをかける。(空中投影型ディスプレイを起動)

 

 「やはり、か・・・。腐ってる。(有罪だな(キルディ))」

 

 「先生?」

 

 これは生徒らには言えない。前任のヤローが自身の欲を満たしていたなんて。

 

 「あーちょっとの時間みんなのサイフォンが使用不可になるが、俺が権限を借りただけで故障とかじゃないからなー」

 

 頭にハテナマークを一杯浮かべている生徒らを横目にマクバーンは自分のサイフォンを取り出す。ユエから改造を受けたハイスペックなサイフォンだ。

 

 「先生、何をするんですか?全部は無理でも一部教えてもらえませんか?」

 

 撮影していた子が近寄ってくる。教えようか教えまいか一瞬迷ったが、軽く説明することにした。

 

 「前任のヤローが撮ってたんだよ。盗撮」

 

 多分、生徒全員が鳥肌を立たせたかもしれない。ここに向かってる子が到着していなくてホントに良かった。と言うのも、彼女らが中心になっている被害者だからだ。

 

 「今はこのクラスを中心に電波を遮断しているから向こうに送られていないし、その間にヤローの居場所やら社会的排除と精神的破滅をお見舞いしようかなと思うんだが・・・反対する人はいないな?」

 

 いないと思いつつも皆の顔を見る。案の定、反対の声を上げる人は誰もいなかった。サイフォンでハッキングを開始する。七星モールにある大型サーバーを借りつつ前任の居場所を突き止める。どうやらハッキングに対する防衛措置はとっていなかったらしくすぐに見つけることができた。被害者となった二人が来る前でホント良かった。

 

 だがそれで終わらないのがこの中等部だった。これはさすがに言えなかったが、男性職員の八割がこの犯罪に何らかの仕方で関与していたのだ。

 

 「・・・・・・(パクパク)」

 

 「先生?」

 

 「(わり)ぃがこれは言えない。警察に入ってもらうしかなさそうだ。・・・初日だっていうのにどうしてこんなことになっちまうんだ・・・?」

 

 教室の扉の外から気配を察知したのでハッキングを一時中断して皆に言う。

 

 「どうやらきたみたいだな。温かく歓迎するんだぞ?」

 

 勿論と言わんばかりに皆が頷く。

 

 ガラリと言う音を立てて二人の女子がこちらを覗く。一人は多分アクロスタワーで出会った少女だ。もう一人は髪の毛を短く切っているが女子だろう。

 

 「やっぱり!!」

 

 「顔は見てないがアクロスタワーで出会った子か?」

 

 「あの時怪我をせずに済んだのは先生のおかげですっ」

 

 力説しているが顔は見ていないのでなんとも言えず曖昧なことしか言えない。

 

 「あの時の・・・?」

 

 「ええ、そうですっ」

 

 小走りで教卓の前まで来て九十度に腰を曲げ感謝してくる。

 

 「あぁ、皆ポカンとしているから簡単に言うと杜宮市に来た初日にアクロスタワーに昇っているのだが、その時同じエレベーター内にいたのが多分君だね?「はいっ」・・・それでふらついていた君を転ばないように助けたと言う訳だよ。まぁ今日からクラスの一員として色々な事を頑張ってもらうつもりだから」

 

 手で二人には椅子に座るようにジェスチャーして自分の方針を言う。

 

 「前任がどのようにこのクラスを扱っていたかは知らん。俺の考えはひとつだけだ。差別はしないということだ」

 

 クラスメイトの表情がよく分からないと言わんばかりに固まった。『えっ?』と声を漏らした生徒もいたようだ。それで前々から考えていた考えを言葉にしてみた。

 

 「男女差別、人種差別、国籍差別、貧富の差別、勉強において出来る出来ないの差別その他色々あると思うが、親が権威持ちだからその子にも権威が使えると思ったら大間違いだ。それに片親しかいないとか、生きるためにバイトをする事大いに結構。俺が嫌いなのは学業をおろそかにすることだけだ。それを守るなら二足だろうが三足だろうが犯罪でない限り許可する」

 

 「あのーそれじゃあ・・・」

 

 タワー内で助けた子が手を挙げて聞いてくる。

 

 「そうだな、君がやっている事も学業を疎かにしない限り、あと無茶をしない限り全く問題ないと言っておこう」

 

 おぉっ!と言う驚きの声がそこらから上がるのを見て頷く。そしてその声が聞こえなくなってからもう一度話し出す。

 

 「それでも休まなきゃならない時もあるだろう。その時は連絡してくれればサイフォンに動画で授業の要点を送っておく。それを後日レポートにして纏めてくれ。そうすると悪い評価は付けない事にしようと思っている。今日はそれだけだな。他に皆から相談や連絡はあるだろうか?・・・無ければ終了だ」

 

 「「「・・・・・・」」」

 

 見渡すが無言で口を開く者はいなかった。と、思い出したかのようにマクバーンは言った。

 

 「明日から一週間ほどは外野がうるさいだろう。何かを聞かれたら『何も知りません』で通してくれ。全部終わったら話そう」





 モブ生徒は多分これっきりかもしれません。あと前任に対する制裁内容は省きます。人知れず杜宮市から去らされ、入ることを許されないブラックリスト入りを果たしました。

 最初の案として中等部の男性教師のほとんどが加担していたと言う案も考えていましたが名前考えるのに苦労したことで頓挫しました。マクバーンがやってたハッキングはどうなのかと言うツッコミは無しでお願いします。

 次の話から原作に入りたいと思います。
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